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いつか、どこかで君と出会った  作者: 鷺岡 拳太郎
第18章

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第77話

 

「5月13日 水曜日


 上原祐樹様。

 前々回の日記で、あなたは『バタフライ・エフェクト』という映画について書いていましたね。私自身はこの映画を見たことはありませんが、あなたが書いたそのあらすじを見たときに、どこかデジャブのような感覚を覚えました。

 主人公のエヴァンは子供の頃に記憶の欠落があって、心理療法士の勧めで治療の一環として日記を書き続けていた。

 実は、私が抱えている問題は、エヴァンに近いのです。

 私が抱えている問題も『記憶の欠落』です。


 それが初めて私の身に起こったのは、4月17日でした。

 その前日の16日、私は取引先であるミューズという会社に向けてのプレゼンの準備をしていました。ミューズへのプレゼンは18日の朝に行う予定でした。私は16日の夜、プレゼン資料をあと少し修正すれば完成するというところまで作って家に帰ることにしました。最終的な仕上げは翌日の17日に行おうと考えたのです。

 そこまでは何も異常はありませんでした。

 そして、次の日の朝、私は会社に出社しました。

 私とチームで仕事をしている会社の後輩に、長谷川利奈という同僚がいて、彼女とは一緒にミューズを担当していました。私が会社の居室に顔を出すと、彼女が私に不思議そうに言うのです。

『杉原さん、どうしてここにいるんですか?』

 私は彼女の言葉の意味が分かりませんでした。『どうして?』と逆に彼女に尋ねると、彼女は『だって、今日は朝から行うミューズへのプレゼンのために、ここには寄らずにミューズに直行するのではなかったのですか?』と言うのです。

『ミューズのプレゼンは18日だから、明日よ』

 私の言葉に、彼女はどこか怪訝そうな表情で、『18日は今日ですよ』と言いました。それが、私が異常に気づいた始めのきっかけでした。

 私は始め、彼女がいたずらで言っているのだと思いました。ですが、その日は4月1日のエイプリルフールでもなかったし、そもそも彼女はそのようないたずらを言うような女性でもなかったのです。何よりも、彼女はいつまでも心配そうな表情のまま私を見つめていました。

 そこに至って、間違っているのは彼女ではなく、私の方なのかも知れないと思いました。ポケットのスマホを取り出して日付を見ると『4月18日』と表示されていました。急いでパソコンを立ち上げそこでも日付を確認したのですが、やはりどこを見ても『4月18日』と表示されていました。私は青ざめながら、パソコンのローカルディスクに保存していたミューズのプレゼン資料を立ち上げました。すると、その資料は私が知らない間に完成していました。私自身はその仕上げをした記憶はありません。ですが、私が直そうと思っていた部分が寸分違わず修正されていたのです。まるで私自身がそれを行ったかのように。

 きっと、その修正を行ったのは実際に私だったのでしょう。

 17日の私はきちんと会社に出社し、きちんと仕事を行った。

 だけど、その17日の記憶は私の頭の中からきれいに消え去っている。まるで、4月16日の次に、17日をワープして18日に飛んできてしまったかのような感覚でした。17日の記憶が部分的に消えているのだとしたらまだ納得できるのですが、私の中には17日という日が存在したという記憶が怖いくらいに無いのです。私に17日という一日が存在したことが信じられませんでした。別の誰かが私になり代わって17日をやりすごした。そのようなことすら考えました。今までそのようなことが私の身に起こったことはもちろん一度もありません。私の身に何かが起こっている。だけど何が起こっているのか私には分かりませんでした。

 私はこの現象に何の説明もつけられずに数日を過ごしました。それからしばらくは何事もなく平穏な日々が続きました。私はその日々の中で、『きっと、仕事ずくめで疲れていただけなんだ。ストレスか何かで一時的に17日のことを忘れてしまっているだけなんだ』と自分に言い聞かせていました。その言葉を私自身が信じ始めた矢先に、二度目の記憶の欠落が起こったのです。


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