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いつか、どこかで君と出会った  作者: 鷺岡 拳太郎
第18章

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75/78

第75話

 

 18


「5月11日 日曜日


 杉原由貴様。

 どうしても眠れなくて、日曜日の早朝にこの返事を書いています。


 君の質問にまずは答えたいと思います。

『あなたは、どのようにしてこのノートに文字を書いているのでしょうか』とのことですが、私は右手にボールペンを持ち、自分の手を使って実際に文字を書き込んでいます。決して念写でもないし、他に何か特別な超能力があるわけでもありません。

 私はこのノートを介して君が書いた文字を見ています。その文字も決して『念写』のようなもので転写されたようには見えません。文字を見ると、生身の君がこの文字を書いているようにしか思えないのです。

 君もレジデンス・ノアの1101号室に住んでいるそうですね。

 だけど、私には君の姿を見ることができません。そして君も私の姿をみることができない。同じ空間にいるはずなのに、お互いの姿はどこにも見えない。そのようなことが本当にあり得るのでしょうか。


 君が考えたように、私もこの状況を説明できるような仮説を考えてみました。


 以前、私は次のような映画を見たことがあります。

 映画のタイトルは『バタフライ・エフェクト』といい、パラレルワールドをモチーフにした映画でした。バタフライ・エフェクトとはカオス理論の一つで、わずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の世界が大きく異なってしまうという現象のことです。


 映画ではエヴァンという一人の少年が登場します。

 時折、短時間の記憶を喪失することがあったエヴァンは、心理療法士の勧めで治療の一環として、少年時代から日記を書き続けていました。

 大学生になり、エヴァンは日記を読み返しますが、日記を読むことで『日記に書かれている過去の時点』に戻れる能力が自分にあることに気づきます。そしてエヴァンは過去に戻り、幼馴染のケイトを救おうとします。ケイトは子供の頃、父から性的虐待を受けていました。

 エヴァンは過去を書き換えますが、過去を書き換えることによって現在も書き換わり、複数の未来、複数の時間軸、そして複数の世界線が生まれるのです。


 同じ部屋に住んでいる二人。

 しかしお互いに姿を見ることはできない。


 もしも、君か私の過去の何処かで『書き換え』が発生し、そこで二つの世界線が生まれたのだとしたら。君と私はその別の世界線の住人だとしたら。そして、何らかの理由で、その異なる二つの世界線が『一冊の青いノート』でつながったのだとしたら。


 そう考えれば、今の私と君の状況についての一つの説明になるのかも知れません。

 ですが、もしそれが事実なのだとしても、なぜ二つの世界線が生まれたのか、そしてなぜ一冊のノートを介してその二つの世界線がつながったのか、その理由は私には分かりません。


 君は、私のこの仮説について、どのように思われるでしょうか。


 上原祐樹より」




「5月12日 月曜日


 上原祐樹様。

 今日は会社に行っていました。

 ですが、頭の中ではどうしても、あなたが昨日書いた『仮説』について考えてしまいます。


 あなたの『仮説』について、『そんなことは常識的に考えてありえないだろう』と思ってしまう自分がいるのも事実です。ですが、私の目の前に、そしてあなたの目の前に『ありえない状況』が発生しているのも事実なのです。

 もしかしたら、『ありえない状況』を説明できるのは『ありえない仮説』なのかもしれません。そのようなことすら考えてしまいます。


 もしも、あなたの仮説が事実なのだとしたら。


 なぜ二つの世界線が生まれてしまったのかについて、私も私なりに考えてみました。ですが、私には全く心当たりがありません。


 あなたには、何か心当たりはあるのでしょうか。


 杉原由貴より」


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