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 追想行進華 —庭園の足跡—  作者: 玉袋 河利守
2章”貴方が選んだ形、拾い上げた物は
68/70

67”涙を養分に。


 

   歩いて。

   歩いて。

   歩いて。

   ‥‥歩いて。


   やっとの思いで此処までやって来た。

   此処に辿り着くまでの道のりは、酷に感じた。

   

   疲れた。

   もう、無理だ。



 「‥カッカッカ。やっぱ、ここは綺麗な所だ‥‥」



   スイレ王国の道を朦朧と歩き、引き摺って歩き、

   隣り合わせに立ち並ぶ建物の隙間を潜り、

   迷路となる裏路地を花の匂いを辿りに、

   ようやく、見つける事が出来る。


 

 「カッカッカ。お前らは此処の住人か?」



   あれだけあった建物達は、いつしか無くなり。

   今、歩くこの土の道には、緑しか在らず。

   太さ、形、全てが違う木々が生えたこの道を歩き

   耳元で羽ばたく蝶に話しかけてみた。



   此処は、俺が知る。俺だけが知る。

   秘密の場所。

   誰も、この場所には入って来れない。

   誰も、この場所には迷い込めない。

   誰も、この場所を見つける事はでこない。



 「おぉ。見えて来た。‥‥‥カッカッカ。」



   この緑を数分歩くと、白い柵が見えてくる。

   誰もが飛び越える事が出来る低い柵。

   その柵に、お利口に止まる者が俺を‥俺に‥笑いかけてくる。


   花々、溢れる園。

   柵の中、一帯に埋め尽くされた彩りどりの花。

   俺は‥花が好きだ。


 「儂は花が好きじゃ。」


   満遍なく咲き誇る花畑。

   この花全てが俺に笑いかけて、揺れてくれる。

   俺が来て、嬉しそうなのが伺える。

   俺も同じく。

   何がが有れば、

   俺は、あの場所を思い出して、心落ち着かせる。


 「儂は、やな事が有れゃ、この場所、思い出しとった。」


   柵を跨ぎ、足の踏み場のない花畑に足をつける。

   しかし、花を踏む事なく、花畑を歩いて行く。

   花達は皆、俺が踏むであろう箇所にその茎を寄せて、踏み場を作ってくれる。

   賢いのだ。此処にいる花は


 「‥カッカッカ。お利口じゃのぉ。」   


   一歩、更に一歩、もう一歩、

   俺は、この花畑の中央へ。

   白い柵に囲われた花畑には、埋め尽くされた大量の花。

   しかし、中央には花は咲かず、芽も生えず。

   真ん中、木が生え作り出す木陰には、何も無い。


 「‥‥カッカッカ‥‥。‥はぁ、」


   世の花は、陰で咲かず。

   陽の灯りを求めて、その芽を出し茎を伸ばす。

   そして、受け止める為に花弁を広げる。


 「‥かっかっ‥‥‥。‥(パタ‥‥」


   よって、この場所に花は咲く事はない。

   陽の目を浴びれないから。


 「‥‥‥‥‥。」


   見えぬ所では花は咲わない。


 「‥‥‥‥‥‥‥。」


   自分の大好きな物だけがあるこの場所。

   夢にまで見た場所。

   そんな夢を囲う裏腹に、現実を呑み込み引き攣る顔。


 「‥‥‥はぁ、はぁ、はぁ。」


   震える顔を、止める。

   漏れる瞳を、閉じる。

   重くなった頬を、上げる。


   無理だ。


   震える顔を、叩く。

   漏れる瞳を、握り潰す。

   重くなった頬に、指を押し立てる。


   無理だ。


   震える顔を、打つける。目の前の木に。

   漏れる瞳を、打つける。目の前の木に。

   重くなった頬を、打つける。目の前の木に。


 「はぁ、はぁ、はぁ。」


   ‥‥無理だった。


 「‥‥、はぁぁぁぁ。」


   長い長いため息を、上を向き空に向ける。

   しかし、視線の先には空はなく、陽の光りはなく、

   陰を作ってくれる原っぱのみ。


 「‥‥、あぁ、そうか。その為に‥‥来たのか‥‥‥。」

   

   力が抜けた。

   腕が落ち、ガクッと首は下がる。


 「‥クソ‥‥クソ‥クソクソクソ。」


   ‥‥。

   もう、いいよ。

   もう、いいって。

   もう、経験したって。

   もう、こうならない為に、

   今日まで生きて来たのに‥‥。


 「‥‥‥‥。」


   ‥‥‥‥。

   

 

    アァァァァァァ!!!!



 もういいんだ!!何度やれば気が済むんだ。


 

 「何回、何回‥‥何回。、何回!!やれば気が済むんだぁぁ!!」


 

 こうなるから!こうなるから!俺はずっと笑ってた!人が俺に寄り添わない為に!笑ってた!!何故俺に近づく!!どうせ、消えて行くのに。‥どうせ、‥そうゆう存在なのに‥‥命を無駄に使って。何故俺に擦り寄る‥‥


 「‥あ、あぁ、あぁぁ。儂は、‥‥俺は‥‥なんじゃ‥‥なんなんだ‥‥。」

   

 ‥違う‥‥俺が甘えたんだ。世界が変われば、自分も変われるかもしれない。そうやって甘えた。


 弱みを見せるから、寄り添ってくれる。‥‥だから‥‥


 「違う。‥‥違うんだ。‥‥‥違うんじゃ‥‥」


 皆んなが‥手を差し伸べてくるから‥‥。俺がまた‥‥


 「何が悪い‥誰が悪い‥‥俺か?‥元いた世界か?‥儂か?‥この世界か?」


 ‥元いた世界?‥何を言ってんだよ俺はぁぁ!!


 「‥‥‥。」


 ‥‥‥。


 

 ‥


 「はぁぁ。なんで俺を助けたんだ。ヒュドール。」


   届くはずの無い相手に話しかけてしまう。

   あの日、あの時、お前が俺を庇った日。

   俺は死んでもよかった。

   俺らとゆう存在が必要なこの世界。

   なら、俺ではなくシフォンのままでよかった。


   あの時、死ねば、‥‥

   すんなりと、解決した。

   誰とも接点を持っていない時点で‥、

   察すれば良かった。



 「‥‥じゃあ何故‥儂は‥‥生きようなどと‥‥諦めること‥視野に入れんかったのか‥‥」


 

   ‥花。‥‥、?。

    (‥‥。約束です。死なないと‥‥



 「‥なんで俺は‥‥、独りじゃなかったんだ‥‥」



   ‥花なのか?‥‥そうか花が好きだから‥‥そうか。

    (‥‥。貴方を‥この私が守りますとも‥‥



 「‥馬鹿か。どうせ消えんだ‥‥だから遠目で見といてやるから、静かにしてくれ‥‥お前が理由で生きたんじゃない‥‥いや、誰だお前は‥しらねぇ声だ。」



   ‥花が‥‥花が俺の生きた‥理由だ。

    (‥‥‥。


 「どうしようもなく、儂は‥花が好きみたいじゃ。‥」



   ならば。俺は此処に居ようか。

   俺とゆう存在は必要なんだろう?

   なら、生きてやるよ。

   ‥‥立ち直る?馬鹿言っちゃいけない。

   どうせ、また繰り返すのだから‥

   立ち直る気力なぞ、出てこやんよ。



 「‥‥。はは。此処なら誰にも見つからねぇ。だれも近づかねぇ。‥‥ずっと‥寝てられる。‥‥はは、ははは。」


 『君も‥‥ほんと、面倒くさい性格してるよね。』


 「‥ふん、お前には言われたくねぇよ。」


 『だから‥。君も‥って言ってるじゃないか。』


 「めんどくせぇな。的確に返事してくんじゃねえよ。」


 『えぇ?、だって会話‥でしょ?』


 「良いんだよ、適当で。」


 『‥適当?』


 「いつも言ってんだろ。お前はいつも考えすぎなんだよ。適当に生きやがれ‥引き摺んな‥‥適当に‥だ。」


 『そう。そうだね。気をつけるとしよう。‥でも君も悪い癖出てるよ。』


 「なんだよ?俺に悪い癖?冗談が吐けるようになったとは‥関心関心。」


 『忘れがちな君。それを武器に、忘れたフリまでする。‥本当は、わかってるんでしょ?‥‥、生きた理由。‥もう、見えてるでしょ?』


 「うるせぇ。良いんだよ俺は‥‥そうだ‥弾いてくれよ。‥‥落ち着くんだ。‥‥だからさ、あの音聴かせて‥‥‥


 『』


 「‥‥‥。」



    花が揺れた。

    懐かしい声が聞こえて振り返るが、

    花弁が舞う光景のみ。



 「‥、はぁぁ。どっちもどっちだな。」



    姿は見えない。

    返答もない。

    それでも、声を出した。



 「‥‥。お前のせいで‥‥お前のお陰で‥騒がしい毎日送れたよ。」 



    アイツは生きてるのだろうか。

    俺が助けたんだ。

    死なれちゃ困る。



 「‥。お前に怒られる日が来るなんてな。はは。」



    そう言えば。お前だけは消えなかったな。

    思い返せば、優しさの欠片もなかった奴だ。

    手を差し伸べてくる事もなく、

    擦り寄ってくるわけでもなく、


    ふと気づけば、何故か隣を歩いていたな。


   

 「‥‥。なぁ、俺がいねぇ、そっちでも上手くやれてるか?‥どうせ天才天才、って言われて不機嫌になって、八つ当たりでもしてんだろ?‥。顔がいいからってモテて、クールな感じ出してんだろ?。」



    ‥‥。  

    お前との約束、守れなかったな。

    すまん。



 「‥花の良さ‥俺が教える!なんて言って俺は別の世界に飛ばされちまった。‥‥はぁぁ、」


   

    スイレ王国にある秘密の花園。

    この絶景をお前に見せたかった。

    分かってくれるかな。

    


 「‥‥、見せてやりてぇな。‥‥。‥アイツに‥‥。?。‥‥本当に、後悔するからよ。この絶景を見ずに‥死ぬなんて‥‥クールぶった‥‥。‥?。‥アイツ?‥の顔を‥‥」



    アイツ?。あぁ、アイツだ。

    アイツだよ。‥‥アイツって?

    ‥あぁ、あの女の子みたいな顔した‥

    なんでも出来るが‥何にも出来ねぇ‥‥


    あれ?‥‥あれ?‥‥アイツだよ。アイツ。


   

    名前が‥‥出て来ない。



 「え?、え?。いや、顔は頭に浮かんでるんだ。‥目が‥‥?あれ?‥‥。いや、いや。えっ‥と‥‥。」


 ‥‥‥。


 ‥‥。


 ‥。



 ここは花畑、見渡す限り、花が満遍に咲く場所。

 ヘレンと出逢えた特別な場所。

 彼にとって大切な場所。

 花など興味もない掛け替えのない親友に一番見せたい場所。



 「そんな訳ない。嘘じゃないんだ。アイツとは‥色んな所に‥」


 

 此処は花畑。路地迷路を抜けた先に顔を出す生き生きとした自然。

 自然を思うがままに堪能しながら、真っ直ぐ歩くと、柵に包囲された何百と異なる花が風に揺られ踊る。

 その中心部には、木が一本、生い茂る樹冠は小さな影を造り出す。


 

 「本当なんだ。‥嘘じゃない。‥何か‥アイツの‥」



 ‥‥‥‥。



  此処は木が作り出す木陰。

  この場所には、花はなく、彼が探す証拠もなく。


 「違う‥‥違うんだ‥‥フリじゃない。‥本当に‥」

    


 彼が座る位置からこの木の裏側には、なんと、

 一輪の花が萎れている。

 たった一つ。

 色は黄色、歪な形。

 花と言われれば、そう見える。

 だが、従来の様な花びらの形をしておらず、変わった形状。



 「‥‥。あれ?‥‥‥アイツの‥‥嘘だ‥‥、お前も‥消えんのか‥‥。なぁ、なぁ。頼むよ。‥‥はぁ、はぁ、思い出せ、思い出せぇぇ!!クソ、クソクソクソォォ!!」


 あのスイレ王国の事件、あの日から我慢してきたもの。

 その全てがある物に変わり、溢れ出してしまう。



   「クソ‥‥‥クソ!!‥‥クソ!!」



 此処は、木が作り出す陰の下。

 彼は、硬い硬い握り拳を作ると、

 目を殴る。何かを止める為、何度も、何度も。

 瞼が潰れてしまう、それ程までに目を瞑り

 押さえ込む。



   「クソ!!落ち着け!俺‥‥いつも通り‥‥いつも通り。はは、‥‥ははは、‥は‥‥‥。」



 肩は震え、どれだけ顔を殴ろうと目を瞑ろうと溢れ流れてくる。

 こぼさぬ様、上を向いても湧いて出てくる。

 それでも彼は顔に力をいれ、

 口元に指を押し当てると笑顔を作る。

 ‥作れない。



 ここは花畑、普通の人間では到底辿り着けない場所。

 

 ここは木陰、誰も見ちゃいない。見えるはずなどない。


 

   「‥‥‥‥‥‥‥あぁ‥‥‥どうして‥‥‥。」


 

 ここは木陰、笑顔を作る彼を木が見守る。

 

 その後ろでは萎れていた歪な形をした花がゆっくりと‥ゆっくりとその茎を伸ばしていく。



 流れる。抑えていた全ての物が流れ、溢れ、落ちる。


 その雫が落ちる音は、この静かな場所でさえ聞こえやしない。


 溢れ流れ出てくる感情の結晶。

 手を使い、顔全体を覆い、掬おうとする。

 ‥それでは、何も解決しない。

 手では拭えぬ程、一つ、一つ、一つ、こぼれ落ちてゆく。



   「————————————。」

 

 此処は、日の目を遮りし木陰。

 この木を境界線とし、蹲り不細工な笑顔を作る彼の見えない反対側。

 黄色の花は、美しく鮮やかに、その茎を伸ばし芽を咲かして行く。


 花は、日が当たる所で目を咲かす。

 それなのに‥


 影ですくすくと育つ少し変わった花。


 中心部が盛り上がりその下で花弁が羽を作る少し変わった花。


 黄色をした鮮やかな色彩で遠くからでも確認できる花。



 彼の見えない裏側で、その花は咲き誇る。

 その花もまた誰にも見られないような場所で影で咲く。



   

  両者、互いにその日陰で咲う。

   誰も入れない、誰も視認できない透明な空間で



 

 この花は生涯で二度その芽を伸ばし開花する。


 今日がその一度目。

 二度目はまた違った感情で咲くことになるが‥‥‥それはまた先のお花し。


  

 

   そんな少し変わった花の名は団子菊。



   別名。 へレニウム。


 


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