63”『冷儚閉』
雨が降り注ぐ村から、西へと突き進み、聖剣が眠るヒヨドリの森を抜けた先、リズルゴールド王国。此処では、死闘を繰り広げる人間達。
人々の声は聞こえず、魔樹の雄叫びと悲鳴が混じるこの国。そんなリズルゴールド王国で死闘を繰り広げる。
「はい!これで20体目です!さぁ、どんどんかかってきなさーい!!」
「‥‥‥‥。」
無数に蔓延る魔獣。押し寄せて来る波を難なく交わし投げつけるヘレンと、慈悲なく斬り刻む敦紫の姿。此処では死闘を繰り広げている。それは魔獣と?‥‥はぁぁぁ、
「ほらほら!どうしたんですか?顔色が悪いですが?」
「‥‥‥‥。」
「‥‥うるさい。」
襲いかかり爪を向けて来る魔獣にそっと触れて空へと投げ飛ばす。傍ら、魔獣が突進して来る物のそれすら目に入れず、通り過ぎ木っ端微塵にして行く。
「よいしょ!!これで私は21体目です。私の方が上とゆう事です!」
「‥‥‥‥。」
「この状況で、尚且つ数なんて物で競い合って、やっぱりお子ちゃまだね君は。」
「‥‥‥‥。」
「!?。ムキー!、口ばっかり動かして!手を動かしたらどうですか?」
両方に挟まれる巨体。2人の死闘をため息を吐きながら目を細め固まっている。2人の歪みあい、三人が整列した状態の中、敦紫が一本先に、足を動かす。目を真っ赤にさせ地を抉りながら、もう突進してくる数匹の魔獣へと足を動かす。
腰を下ろし、握るペンドラゴラムを横へ振りかぶり、2人の先頭でじっと硬直。魔獣が鳴らす盛大な足音が大きくなって行くと、その群れに冷酷な瞳を向け、目を合わせた。
一閃。
天傘 敦紫は消える。続けて、魔獣の群れからは綺麗な一太刀の残像が入り、散りと化す。
「‥‥因みに、僕はこれで40体目だ。話しかけてくるなら、数ぐらいは揃えて欲しい物だね。」
「‥‥‥‥。」
「!?、貴方も数を数えているじゃないですか!!それに40?どうせインチキでもしたのでしょ!!?」
「‥‥‥‥。」
「‥はぁぁ、そんな事する訳ないだろ?都合が悪くなればそればっかり。」
「‥‥‥‥。」
「そればっかりって、貴方が嘘つきだからでしょうが!!」
「‥‥‥‥。」
魔獣は、引っ切り無しに攻めてくるが、見ずに互いに睨みやい、いとも制圧。戦う筈のドクレスは両方に挟まれ、身動きが取れず、2人の痴話喧嘩を聞きながら、魔獣が空へと投げ飛ばされる光景と、切り刻まれる光景だけを眺めていた。
ドクレスの立ち位置が一番、この国で安全とも言える程、魔獣が近づいてこない。安全だとゆう事に越した事はない。しかし、ドクレスの耳は限界に達しようとしている。
「何処で、どの場面で、君に嘘をついたんだい?被害妄想も甚だしい。(シュン!!—-パラパラパラ
「‥‥‥‥‥。」
「なにを。笑わせないで下さい。羽織っているそれ、どの様に手にしたのかも明らかにせず、ラーガ様から貰ったなどと嘘を吐いていたではないですか。(ブン!!—-ドタァァン!!
「‥‥‥‥‥。」
「しつこいなぁ。貰ったと言ってるじゃないか。嘘なんてつかない。しつこい女性は怖がられるよ。‥想い他人に。ね。(ジャキィィーン!!—-パラパラ‥‥
「‥‥‥‥‥。」
「‥‥‥。関係ないでしょう!!ほんと、性格の悪い方ですね!!どうせ貴方の様な人間は一匹オオカミとして生きてきたんでしょ。(ブゥゥンン!、—-バコォォォン!!
「‥‥‥‥‥。」
「‥それは、どうだろうね。君に話す価値なんてないよ。」
「‥‥‥‥‥。」
「ふん、強がらなくても結構。ご友人がいたならそんな性格にはなりません。例え居たとして、貴方を正さなかったご友人がいるのなら、飛んだ拍子抜けですね。」
「‥‥ふぅぅ。」
「冷めた態度に発言。ご友人がいたのなら同じく貴方の様な冷たい人間なんでしょうね!!私は —-
途端に静かになり、返答がなくなる。だが気にする事なく、目の前の魔獣と接敵する束の間、背後からは殺気が飛んでくる。
その正体は、軌剣ペンドラゴラム。
その殺気に目を見開き、首を横に傾け殺意は通過して行くと、目の前にいた魔獣に刺さる。飛んできた物を確認しようと目を動かすと、彼女の背後にはまた歪な殺意を放つ人間が、横切る。
「!?!?」
「‥‥‥(スゥ‥‥」
この時、彼女は初めて腰に遣わせるその剣を握り、重心を下ろす。すると、背を横切った敦紫が魔獣の腹に刺さったそのペンドラゴラムを触り、目に見えぬ剣捌きでまたまた細切れにした。
「なにも知らないお前がでしゃばるな。」
「‥‥ごめんなさい‥。少し‥‥言い過ぎました‥‥」
「‥‥そんなに嫌なら、此処でこのコートを力尽くで引き剥がせばいい。」
「えぇ、そうしますわ。そんなに死にたいなら叶えてあげましょうか。」
「‥‥、」
「どちらのセリフだろぉ?‥‥ね?」
もぉぉぉぉ!!!!!
堪忍袋の尾が切れた。破壊音が混在するこの国で一番の大声を放ち、今までの我慢を全て吐き出した。
「‥‥‥‥。」
「2人とも喧嘩は後でにしてくれないか!?敦紫殿もいつも通りの冷静さを見せてくれないか!?」
「‥‥‥‥。」
「ヘレン様も!!何故喧嘩を売る様な喋り方しかできないのか!?それに!!オーランを何処にやったのだ!!」
「元々はこのお子ちゃまから始めた事だ‥‥」
「もぉ!!大人なら子供の煽りには乗らぬ!!」
「‥知らないわよ。勝手に城へ逃げんたんじゃない。」
「適当な事ばかり喋らない!!」
ドクレスの顔は真っ赤、頭からは煙を上げて2人を怒鳴りつける光景に、何故だか魔獣はこの状況下で立ち尽くしてしまう。それでも変わらず、ヘレンの首元には敦紫の剣先が一つ。同じく敦紫の首元にも、である。
治らぬ2人のいがみ合いに喝を入れるべく、互いの脳天に制裁の鉄槌を喰らわし、頭を冷やさせる事に成功するのであった。
「‥い‥‥。」
「はぁぁぁ。」
「いたぁぁい!!なにするのよ!!」
「‥はぁぁ、英雄や救世主だと讃えられる御二方が蓋を開けてみればこの様とは‥‥はぁぁ、もうすこし大人になりましょうね。」
ようやく2人の痴話喧嘩は幕を閉じ、ドクレスの鼓膜は正常に戻る。仲直りとは行かぬもののこの現状を打破するまでは停戦と言う形で話に折り合いがついた。
一つ、難が過ぎたことにより、すこしだけドクレスの肩の荷は軽くなるが、
「にしても、魔獣が減らん。」
「そうねぇ。」
敦紫とヘレンはサボっていた訳ではない。喧嘩をしながらも、この国を徘徊する魔獣を引っ切り無しに制圧してきたつもり。それなのに一向に魔獣の数は減らず、増してや魔獣の数は増える一方。これではどれだけ倒しても埒が明かない。
「‥‥‥。」
「‥んー。何か一掃出来る様な魔法があれば‥‥」
「なら、この救世主様に任せてはどうかしら?馬鹿みたいに巨大な火の玉をぶつけてお終いよ?」
「‥‥‥。」
「コラ!煽らない!それにそんな魔法使えばスイレ王国の二の舞になりますぞ。」
「じゃあどうするのよ。」
「‥‥‥。」
「一掃出来る魔法。しかし、他を壊さない様なそんな魔法があればいいのだが‥‥」
「‥はぁぁ、そんな都合のいい魔法なんてある訳ないでしょ?‥‥‥え!??」
2人の前方では明らかに可笑しい風が吹き荒れた。ドクレスとヘレンの会話を聞いていた敦紫は無言のまま、足に力を込めて地を蹴り飛ばし、空へと舞い上がって行く。
「敦紫殿!!なにをする気だ!!」
「‥‥‥‥。おぉ、」
「逃げ出したのかしらね。」
「‥‥‥いいねぇ。」
「コラ!煽らない!!」
地上で立ち尽くす三人を置いてゆき、敦紫は国が隅から隅まで見渡せる程の上空へ身を投げ出す。やはり、魔獣の数は計り知れないもの、何処に目を配っても所狭しに魔獣が歩き回っている。
「‥んー。上から見れば探せると思ったけど、やっぱり駄目か。」
空へ飛び原因究明、魔獣を呼び寄せる張本人の居場所を突き止めようとするが、どうやってこの魔獣達が出現しているのかも、呼び寄せているあの黒服の男も見つからず。
「‥はぁぁ、完成するまでは皆んなに見せたくなかったけど。あ。ペン、喋っていいよ。」
「ふいぃーーー!!黙るのも疲れるぜ!酷いことするよな敦紫って奴は。俺は喋るのが仕事だっつのに。」
「仕方ないだろ。ペンは煩くて仕方ないんだから。君は剣なんだから剣らしく遣われとけばいいの。」
「そんな酷いこと言わなくてもいいじゃないかよ!!」
上空。彼の手元で話す可笑しな武器。大陸兵器”代百具、軌剣ペンドラゴラム。いつもの事ながら、黙っとけと言う命令に従い武器として役割を果たした。敦紫とは正反対にお喋りさんなので仕方ないのだが、戦闘中にベラベラと喋られては集中もできぬ為、今日に至った。
そんな大陸兵器に、この空で、この状況で、気になることが浮かび上がった。
「ペンは偉大な『代百具』」なんだよね?」
「そうだぜ!俺は数多の代百具たちの軌跡を辿る、軌剣のペンドラゴラム様だ!」
大陸兵器、このトロイアスが傾く程の力を有する兵器。普通なら持つ事すら許されていない危険な武器。手にした物は生気を奪われて自我の損失。最悪死に至る。惑わしの森と同様、禁忌と言われている程。
そんな兵器を保管するセンテインピード。そして、その代百具の所有権を握り、並びにこれらを盗む輩の執行と秩序を乱す物の執行。それが、戦鋼番糸。
敦紫の白きコート。このコートが怖がられる理由は幾つかあるが、最も大きい要因として、その代百具にある。
「‥君達がいるから。他国同士が戦争を起こさないだよね。」
「あぁ、そうなるなぁ。それでよ‥‥」
「それなればこのコートを見ただけで怖がられる理由もわかる。」
「‥あぁ、そうだなぁ。‥でよ‥‥‥」
「でも。そんな兵器って、名前だけなのかい?確かに頑丈ではあるけど、何か能力はないの?」
「あぁ。気になるか?でもよ‥‥俺を!!足場がわりに使うな!!」
落下せぬ様、唯一浮遊できるペンドラゴラムの上に立つ敦紫。ペンドラゴラムの問い正しには勿論無視である。
「‥‥‥‥。ふぅー。空を飛んでる気分だよ。」
「無視かよ!!」
「それで、どうなの?軌剣ペンドラゴラムさん。」
「ふ。よせやい。今更フルネームで呼ばれちゃあ、てれちまうだろぉが。」
「いいから、そう言うの。」
そんな彼はこの世界にやってきた初日。ラーガとの戦いの中で、代百具なる物を見て味わっている。可笑しくも美しくもある空から星を降らしたあのブーツを。
あのブーツと同じならば、星を降らす事はできなくとも、特殊な能力が備わっているのではないかと。だが、ペンドラゴラムと出会い今日まで、それらしき挙動や能力の提示はなかった。
「ったく、楽しく会話も出来ねぇのかよ。ウチの主人様は。」
「‥‥‥‥。(ニコッ」
「‥はいはい。分かりましたよ。あぁ、なんだ能力はあんだ。だが今は使えねぇんだ。何せ、辿る兄弟に触れてねぇからな。」
「そう、気長に待つよ。」
「‥サンキューな。んで、こんな飛び上がってなにする気なんだ?」
「んー?それはねぇ。僕も急いでるんだ。だから速いところ終わらせようと思って。」
「??。」
何処からとも無く黒いモヤが掛かり出現する魔獣。どれだけ斬りつけても減らず増えて行く一方。ヘレンに対しては、投げ飛ばすと言う数の減らない行為の為、この状況あまり意味がない。剣を持ち、力もあると言うのに硬くない使おうとはしない。
手を取り合ってこの状況を打破する様な関係でも無く、此方からごめんだ。極論、この国も、この大陸もどうなろうが知った事ではない。全てを無視して、この国を飛び出し結朱羽を探す事もできる。
「このまま、ほったらかしにして逃げようかな。」
「えぇ?なんだ急に。さっきは片付けるって、カッコいい事言ってたじゃねえか。」
「‥、僕には関係ないからね。僕だって価値観がある。この国で生きる人々や仲良くしてくれた人たちには申し訳ないけど、それよりも大事な人が苦しんでいる。」
「‥‥‥。まぁ、しゃねぇ人間だからな。」
「君は、そんな僕を冷たいって言うかな?」
「いや、主人様だからなぁ。俺は、お前のいいなりになるぜぇ?」
此処で時間を潰して、結朱羽に何かあったらどうする。僕の残されたかけがえの無い友人だ。彼の過ごせたあの時間にいた最後の1人なんだ。もう、失くす訳には行かない。
逃げて、皆は僕を罵るだろうが、関係ない。そもそも、あまり良い関係を作れていなかった気がするよ。
「‥さぁ、ペン。今日から僕も、スイレの勇者の様に、追われる身になるから、暇がなくなるよ。」
「おぉ!!いいじゃねえか!!退屈で真っ暗な部屋で眠ってた時期に比べれば百億倍マシだよ!!」
「じゃあ、このままシオン村にいけるかな?」
「‥おぉ、良いぜ。シオン村に何かあるんだな?‥よし!‥‥あ、そうだ。一つだけ、」
壊されて行くこの国を上空で眺めながら息を吐く。器用に乗ったペンドラゴラムがゆっくりとその刀身を動かす中、お喋りな大陸兵器の口は止まらず。
「ん??」
「俺が決めたんだ。俺がお前を辿るって決めたんだ。だから、こんな事言うのは俺の意味に反する。でもなぁ、悔やんでる所は見ててつまらねぇ。なぁ、」
「なんだい勿体ぶって?」
「ふぅぅ。この国が今まさにあの黒服が呼び寄せた魔獣によって潰されて行く。分かるか?、この状況、アイネちゃんは‥‥」
ペンドラゴラムの口は止まり、体も止まる。なにも言われていないのに、その刀身はこの上空で止まった。同時に籠った笑い声を流して、この身体の上に乗る人物の顔を確認する。
垂れ下がる黒い髪は上がり、紫色の瞳が顔を出し、輝きだす。羽織るコートは揺れ浮き靡き、両手を前に出す。
「‥‥なにする気だ?ご主人。」
「‥‥‥アイネちゃんがこの夜を平和に眠れる様に。冷たい人間なりの手助けさ。」
彼の視界、浮く魔胞子は色を変えて水色になって行くと現実へ姿形を変えて出現する。彼が前に出すその両手から少しの感覚を話し、水色になった魔胞子が現れ集まりだす。
上空を見つめる地上。ドクレス達は終始彼の行動を眺めては頭を傾ける。
「敦紫殿はさっきから何をしているのだ。」
「‥‥‥。」
「動いたり止まっり、尻尾巻いて逃げるつもりかしら。」
「‥‥‥。」
地上、敦紫の可笑しな行動を眺めて、口々に予想を語る者達。そんな中、敦紫が浮くその目の前からは、何かが出現すると、更にさらにその形が大きくなってゆき、この離れた地上からでも確認する事が出来た。
「‥?。敦紫殿が出しているのか?‥あれは‥水?」
「‥‥うん。そうだね。」
「水‥‥魔法かしら?」
「‥おぉ、正解。」
口々に話す中、敦紫の唱えた魔法。即ち水の球体は計り知れない大きさに成長し、空ではこの国中が敦紫の唱えた魔法により影がかり暗くなって行く。
「‥信じられん魔胞子の量だ。しかし水魔法で何をする気だ。」
「‥‥‥‥。なんだと思う?」
「‥あ、あれよ!もっともっとあの水の球体を大きく作って、そのままこの国に落とし、浸水させる。魔獣の呼吸を奪う!策略よ!」
「ハッハッハ!!良いねぇ、実に面白い考えだ。でも魔獣は海を泳げるよ。」
「‥んー。なら、あれを分裂させ水の礫を無数に作る。そして途轍もない速度で魔獣の身体を、打ち抜く。これなら、魔法として理に叶うだろう。」
「‥‥おぉ、でも硬い硬い発想だ。そんなつまらない事をする訳がない。元より、魔獣は魔胞子で出来た身体だ。」
彼の意味不明な行動を解析しようと、地上の者は手を足を止めて頭上にいる敦紫を眺めるばかり。辺りの可笑しな状況は気付かずにいた。
——————
地上を眺める此処は空。敦紫は更にこの両手の前で集まる水を大きくさせてゆく。
「ふぅぅ。」
「なんだなんだ?急に浮かない顔して。やっぱり逃げるか?」
「‥‥いや、そんな事したらアイネちゃんが可愛そうじゃないか。」
「‥じゃあ、どうしたんだよ。」
今からこの空に魔法を放つ。今からやる事は、従来人が描いてきた魔法とはかけ離れた物。普通ならば出来ない、と言うよりも思いつきすらしないのだ。
この魔法は、敦紫だからこそなし得る可能性の魔法なのだ。しかし思い出して欲しい。スイレで起きた嵐の日、彼は従来の魔法とは掛け離れた物を唱え創造する事に成功している。
魔法は、誰かに魔胞子を当てて攻撃する方法。それを否定し、守るための魔法を編み出しそのまま現実世界へと形を作り出せた。しかしそれは嵐の力に負け失敗に終わる。
そして今回はもっと複雑な魔法。
これを魔法として定義付けして良いのかすら怪しい所。スイレ王国で使った魔法。即ち、魔胞子を扱い、何かを守る方法。これは、歴史の中でもあり得る話。現時点でその魔法を使える人物が存在する。不可能ではないのだ。先人がいるのだ。失敗してもいつかは成功する。誰かが成し遂げているのだから。
その魔法を扱える者の背中を追えば必ず叶う所業。しかし、今回は誰も先に歩いていない。此処は未開の地。
何をするのか?それは‥‥。
【水属性系統魔法】: 1 9 9 1
敦紫が唱えた瞬間。目の前の球体は爆裂する。月を隠していた大きな球体は離れ離れになり、空に浮かぶ月の光が一気にこの国を照らす。破裂し、飛び散る飛沫は月の灯りを飲み込み輝き、この国全体を優しく濡らしてゆく。
その光景を見た地上人達は。
「なんだ!?爆発したぞ!!失敗かぁ!?」
「‥‥、ハッハッハ!!あれが失敗に見るのか君は!ハッハッハ!!随分と硬い知識を入れてきたんだねぇ。」
「‥でも、これではこの状況なにも解決しませんよ‥‥冷た‥‥??。‥?。え?」
空から降り注ぐ奇妙な雨。手にあたり首にあたり、その冷たさに目が覚めると、この場所には数があわない声の存在に気づき、目を向けてようやく異変に辿り着く。
「!?、おぉ!!誰だ君は!!」
「あぁ、ごめんね。通りすがりの一般人さ、気にしないで。」
「‥一般市民の方が此処にいては危ないですよ。早くお逃げ下さい。良ければ私が城まで案内を‥」
「優しいねぇヘレン様は。でも良いよお気遣いだけ貰っておくよ。それより。ほら!ほらほらほら!!」
指を刺す一般市民。2人が着こなす王国騎士団の甲冑とは違い、布で包まれた服装。一般市民と言い張る男、確かに戦闘向けではないその服装ではあるが、見た事がない服装。何に似ているかと聞かれれば、空で何かをするあの救世主様の服装に類似している。
「‥貴方は何処の国の者だ?リズルでは見た事がない服装だ。‥‥とゆうより‥‥」
「良いから良いから、私の事なんて知ってもつまらないし。それより、ほら、もう直ぐはじまるよぉぉ。」
「‥‥貴方はお分かりになるのですか?あの者が何をするのか。」
「‥ハッハッハ!!どうだろねぇ。でも、これから歴史がかわるよぉ。」
一歩前に出て、降り注ぐ飛沫を受けながらその一般市民は両手を広げてコートを靡かせる。
「‥どれだけ君は偶然に恵まれているのだぁ!!後悔は無かった!!あの時、君にもう一度チャンスを与えて、君を追いかけて良かったと!!思っている!!さぁぁ!!見せてくれ!!」
私ですら、追い求める事が出来ない!!新たな魔胞子の可能性を!!
——————
高笑いに大声、それすら耳には届かず集中する敦紫。上空で煌びやかに発光する人工的な雨粒を見つめて、また彼は両手を前に上げる。
「‥‥、これは‥ペンのお陰だよ。」
「??。」
この力は、発言者とその概念を創り出した者の間で創り出せること。この空間の中では、僕と言う人間がその言葉自体の存在になってしまう事。城の中に避難した彼の人と僕の間が僕の言葉通りの世界になる事。
だが、それだけでは成れず、得れず。その言葉にすら該当しない事。この力には第三者が必ず必要になる。思考を持ち、価値観があり、心がある者なら全てが該当者。それは人間だけの事じゃない。
「ねぇ、ペン。」
「なんだ??。」
「僕は冷たい人間かな?正直に話してみて。」
「‥‥んー。まぁ、接し方は優しい人間を装っているが‥‥内心は冷え冷えだ。現に俺に対しても冷たい態度取るしよ。それに‥敦紫の笑顔はみんな恐怖で身体が固まっちまうよ。」
「そう。僕は凍らすぐらい冷たい人間なんだねぇ。」
「そうだよ。だから少しは俺に優しくしてくれよな!!」
どうかな?僕は変えられない。変えるのは君達だ。
【概念】 :『盲聾の世界』




