弱小チームが勝つには
今、都立山王子高校に岡田君と来ている。
「大宮監督、夜空君、スカウト会議に行ってきました。残念ながら支配下選手での指名を、確約は出来ませんでした。でも活躍すれば、支配下選手での契約を勝ち取れる可能性はあります。必ず甲子園に行きましょう」
「やはり現状では厳しいですか」
夜空君は少し悲しげな顔をした。
「夜空、下を向くな。強豪の長谷田学館を倒して、甲子園に行けばいい。夜空をプロの支配下で行かせる為に、みんな絶対に甲子園行くぞー」
「おおーーー」
大宮監督の言葉に、山王子高校野球部のナイン全員が気合いを入れた。
「みんな、ありがとう。絶対に甲子園に行くぞ-」
夜空君がみんなにお礼を言って、練習を始めた。
山王子高校の他の選手も鑑定したが、プロに来られそうな選手はいなかった。
「やっぱり、あまり上手くないですね。内野なんか両手を広げて、外野と捕手との直線と距離を測っていますよ」
岡田君が馬鹿にする。実際にある地域の少年少女野球で、指導された事がある練習方法だ。
「確かに少年少女野球ですることかも知れませんが、山王子高校には野球未経験者の子達もいます。その子達の事を悪く言うのは止めてください」
「ごめんなさい」
大宮監督に怒られて、岡田君は謝った。
「岡田君、見てみなよ。手を広げたことで、外野から捕手まで直線になり、外野の選手から内野の選手、内野の選手から捕手へとボールが行き、外野手から捕手まで投げるレーザービームに負けないぐらい、良いバックホームが出来ている」
「本当だ」
岡田君も感心している。
「私達は強豪チームの選手と違って、個々の能力は高くありません。でもそれでも勝たなければなりません。なので、個々ではなくみんなで強くならないといけません」
強豪チームは個で、弱小チームを圧倒する力がある。
「内野も二塁手が取ったボールの体制が悪いと、強豪チームなら肩の強さで投げられますが、うちは投げられないので、体制の良い遊撃手に渡して投げています。2人の連携を上げるために、行動は常に一緒にしています」
二塁手と遊撃手の連携は完璧で、ゴールデンコンビ(鉄壁の二遊間コンビ)と言っても良いくらい良い。これは強豪チームでも、難しいプレイかも知れない。
行動を常に一緒にしているのはおそらく広島の球団が昔やっていた、練習方法をマネしたのだろう。
「肩も強くないので、守備の上手くない1塁手が取れるように、必ずワンバウンドで投げるようにしています。また強いノックを打てる選手がいないので、守備位置より前でノックを受けて速い打球に対応しています」
徹底した弱小チームならではの練習だ。
守備の練習を見た後に、打撃も見に行った。
「うちのピッチングマシーンは潰れたバッティングセンターからもらった物なので、球速が140km/hしか出ません。なのでマウンドより前に置き、球速が150km/hの練習をしています」
兵庫の球団の代打の神様と言われた選手が、練習の時にピッチングマシーンをマウンドより前に置き、速い球に対応する練習をしていた。
「全然パワーがない。こんなのホームランを打てないぞ」
岡田君が疑問を口にした。
「ホームランって必要でしょうか。必要ではないとまでは言いませんが、ホームランを打たなくても試合に勝つことは出来ます」
確かにホームラン無しで勝つ試合なんて、プロ野球でも毎日1試合ぐらいあってもおかしくない。
「うちのチームはホームランを打てる選手がいないので、ホームランの練習はせずにランナーを進める、バントや進塁打の練習を徹底しています。またランナーをホームに帰すスクイズや犠牲フライの練習をランナーを置き、実践形式で練習しています。状況に応じたエンドランやダブルスチールの練習もしています」
弱いなりの野球。大宮監督の甲子園への、執念みたいな物を感じた。
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