切り札
上原さんは恐らく私が担当したから松川球児選手の情報を調べて、サボり癖の件を掴んでいたにだろう。自分の担当に全力を出せば良いのに本当に面倒な人だ。
「吉田、サボり癖の話ほんまか」
「はい」
福山さんに言われ返事した。隠しておきたかったが、ばれては仕方がない。
「どうします。宮西さん」
部屋は静まりかえった。
このままでは松川球児選手を指名せず滝中順次選手に行くかも知れない。それは駄目だ。
静まり返る部屋。ペンをテーブルに置く音さえも響いてしまう緊張感の中、私は最後の切り札を話すことにした。
「宮西さん。山北選手がメジャーに行くときに使用したポスティングシステムで、いくら譲渡金が入りましたか」
山北選手は元大阪ブルーローズの選手で、ポスティングシステムを使用しメジャーに行って世界で戦っている日本最強投手だ。
「おい。何を言ってるんだ吉田。宮西さんに失礼だろ」
福山さんに怒られたが、私の話しは止まらない。
「確かに松川球児選手はサボり癖あるのかも知れない。でもそれは一時的なもので、必ず私が治します。治しさえすれば松川球児選手はメジャーでも通用する大投手になる投手です」
「うーん」
宮西球団社長はまだ少し悩んでいる。あともう少しだ。
「松川球児選手がメジャーに行く場合、ポスティングシステムを使用します。その場合の譲渡金は山北選手の70億円を超え100億円以上になります。そんなお金になる金の卵をみすみす他球団に手渡して良いのでしょうか」
「良くない」
宮西球団社長は急に立ち上がり叫んだ。
「福山GM。今年は松川球児選手を1位で指名する。これは決定事項である」
「わかりました」
私は溜息をつきふと視線のする方を見ると上原さんがすごい形相で、こちらを睨んでいた。
なので私は上原さんにガッツポーズをしたら、上原さんの形相はさらに恐ろしくなった。
スカウト会議が終わると続々と関係者はスカウト会議室を後にした。
「先輩、上原さんに話してしまいすいません」
「別にいいよ。次からはやめてくれよ」
今回はうまくいったので、岡田君を許してあげた。
「しかし、100億の選手ですか。すごいっすね」
「まあ、100億円の選手になるか解らないけどね」
「でも先輩。100億の選手になるって断言していたじゃないですか。嘘を言ったってことっすか」
私がそういうと岡田君は私を嘘つき呼ばわりした。
「嘘じゃないよ。実際松川球児選手は100億の選手になる素質は持っている。ただあそこは断言しないと100億の選手になるかも知れないし、ならないかも知れないなんて言ったら、宮西球団社長は松川球児選手の1位指名を決めてくれなかったかも知れないじゃないか」
「なるほど。大人はすごいっすね」
岡田君、君も大人だよ。
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