外国人選手のスカウト会議3
「あの、怪我してるかも知れないので、メディカルチェック(健康診断や機能検査)をした方が良いのではないでしょうか?」
「俺が大丈夫だと、本人から聞いている。メディカルチェックするなら、入団しないと言っている」
私が福山GMに言うと、ダメダスはムッとしながら言った。
「ダメダスも大丈夫だと言ってるし、入団してもらわないといけないので、メディカルチェックはしない」
過去にはメディカルチェックを理由に、契約をしない選手がいた。でも拒否すると言うことは、怪我をしている可能性が高いことでもある。
私もマキシマム・タイソン獲得の為にも、ボビー・ハワードの獲得を認める訳にはいかない。
「でも、やっぱりメディカルチェックをした方が・・・」
「少し吉田うるさい。黙っとけ」
その後も福山GMに色々言ったが、ボビー・ハワードの獲得が覆ることはなかった。
どうやら最初から、ボビー・ハワード獲得は決まっていたみたいだ。
「これで今回の外国人のスカウト会議は終了と・・・」
「ちょっと待った!」
ここで外国人のスカウト会議を、終わらせる訳にはいかない。マキシマム・タイソン獲得の話が残っている。
「もう1人、獲得したい選手がいます。お話を聞いてくれませんでしょうか?」
「吉田、もう今年の予算分の外国人は獲得した。外国人のスカウト会議は終了だ」
福山GMや他のスタッフも、帰ろうとしている。
「もう少しだけ話を聞いてください。お願いします」
私は福山GMに頭を下げた。
「まあ、そこまで言うなら聞いてやるよ」
その言葉を受け、帰ろうとしていた人も着席した。
「えー、お話ししたい選手ですが、マキシマム・タイソンという投手になります。左でなんと最高球速157km/h出まして、変化球に高速スライダー、チェンジアップ、シュートを持っています」
「左で157km/hは凄いな」
よし言い感触だぞ。
「年齢も25歳と若くこれからさらに、球速が伸びます。メジャーでもプロスペクトになったことがあります」
「素晴らしい選手じゃないか」
よしよし宮西球団社長も、乗り気になってきた。
「そんな言い選手が、何で日本に来るんだろうな。犯罪とかしてるんじゃないか」
上原さんが急に立ち上がり、嫌な笑みを浮かべながら言った。
ちっ、後からちょうど良いところで言おうとしてたのに、余計なところで言いやがった。
今日、スカウト会議に出た理由は、これが言いたかったのか。
どこからバレたんだ。ダメダスの方を見ると、目線をそらした。
お前かー。以前ばらした新人スカウトの、岡田君と同じじゃないか。
「吉田よ。その選手は犯罪をしているのか」
「はい、でも家庭問題なので、そんな殺人とかではないです」
少しでも良い印象になるように、家庭問題ということにした。
「聞いた話だと、暴力事件だったけどなー」
上原、余計なことを。
「暴力事件なのか」
「はい、でも奥さんの不倫が原因の暴力事件なので、少し大目に見てやってください」
宮西球団社長は悩んでいる。
「ある球団は犯罪を犯した選手が出て、大変なことになってたけどな」
上原、1番言わなくて良いことを。
「うーん、やっぱり、今回は見送・・・」
「出来高はつけていただきますが、契約金と年俸を合わせて1000万円でいいんです」
宮西オーナーが獲得の、見送りを決める寸前に言った。見送らせねーよ。
「えっ、プロスペクトの選手が、そんな安くでいいの」
よし、食いついてきた。
「はい、左の投手で160km/hに迫る球が投げられる、先発投手というのはメジャーでも少ないので、大きく評価されていて、左で159km/hの先発投手という売りで、何十億の大型契約を結んだメジャーリーガーもいたぐらい、球の速い左投手の先発はメジャーでも貴重です。彼も成長すれば160km/hが投げられます」
「何十億が1000万で雇えるのか。ポケットマネーで雇うかな」
宮西球団社長も、乗り気になってきた。
福岡の球団は会長のポケットマネーで、選手を獲得する事もあるが、うちの球団社長もポケットマネーを出して、選手を獲得してくれるみたいだ。
「でも今は157km/hしか出ないんだろ。それに試合にも出ず、ガソリンスタンドでアルバイトしてるそうじゃないか。そんな実力も怪しいやつ、雇ったら駄目ですよ」
「言われてみれば、変な選手雇わさない方がいいか」
せっかく、決まりかけたのに。上原さんは、何処までも邪魔をしてくる。
「彼は暴力事件により、ビザ発給も永久停止処分を受けて、アメリカから国外追放されました。もうアメリカで試合には出れません。日本で成功したいんです。こんな素晴らしい才能を潰したくありません。どうかチャンスをいただけませんか」
「わかった。じゃあ、実力があるか現役選手と勝負してもらおう。入団テストをする」




