犯罪をした有望な外国人選手
「で、どんな犯罪をしたんですか。まさか殺し・・・」
「違います。そんな事しません。殴っただけです」
殴っても駄目だろう。
「野球を終えて家に帰ったら、妻が浮気をしてまして、それを見て頭に血が上り妻と浮気相手をボコボコに殴り逮捕されました。妻と浮気相手に賠償金を払わないといけないので、球団に入れて欲しい。色々なバイトしたけど、それじゃ賠償金を払えない」
うーん、殴ったら駄目だが、妻にも非があるのか。話を聞くと一応アメリカで、裁判も終わっているみたいだ。
そういえば鑑定で短気、熱い男、乱闘、暴力と不穏な特殊能力があった。
「まあ、ここで言っても仕方ないので、どこかそこからへんの球場に行こう。吉田も気になるんだろ」
「はい」
「わかりました。宜しくお願いします」
そう言うとガソリンスタンドの店主に、事情を説明に言った。
「吉田よ。犯罪している選手を、取るときは気をつけろよ」
「ああ。わかっている」
ダメダスに珍しくアドバイスされた。それほど難しいことなのだろう。
しばらくして店主に許可をもらったタイソンを乗せて、近くの公園にやって来た。
広島の球団のアカデミーに行っても良いが、タイソンの存在を、知られるわけにはいかない。
公園に着くとそこで野球の練習をしている、青年達にグローブを借りた。
間近でボールを見たいので、キャッチャーを私がする事にした。
スパイクを持っている青年はいなかったので、タイソンは自分の靴を使用する事にした。靴は灯油のにおいがする、穴が開いたボロボロの靴だ。
あの靴で投げれるのか心配だってので、タイソンに靴を買ってこようかと聞いたら、そんなのいらねぇと拒否された。
そんな靴で大丈夫かと心配する私をよそに、タイソンは第1球を投げた。
「ビューーーン、ズバーーン」
タイソンのストレートは凄い音をし、私のグローブに吸い込まれていった。
「凄い、ボールだ」
「あの人、プロ野球選手なの」
「150km/hぐらい出てるんじゃないか」
周りのドミニカの人も、ざわつきはじめた。
「ダメダス、何キロ出てた」
私はスピードガンを持っている、ダメダスに球速を聞いた。
「155km/h」
びっくりしていて思考が止まっていたダメダスだったが、どうにか機動して教えてくれた。
スカウトのダメダスが、びっくりするぐらい良いボールだった。
「すげー、兄ちゃん。150キロ後半のボール投げられるのか」
「プロでもいけるんじゃないか」
「そういや、そこにいるの日本人だろ。日本で野球するんじゃないか」
周りの熱はさらに、ヒートアップしている。
タイソンも気分が良くなったのか、鼻歌を交えながらボールを投げた。
2球目もストレート、先ほどより球速が出ていた。
「すげー、さらに速くなった」
陽気なドミニカの観客の人達は、騒いだ。
3球目は高速スライダー、非常に速いスピードで良い曲がりだった。
「ありゃー、当たらねぇな」
「普通は空振りするね」
4球目のシュート、変化は少ないが相手に腰を引かせるには、良いボールだ。
「こわー」
「俺なら尻餅ついてたかも知れない」
変化は少なくても、球速が速く自分に向かってくるボールは恐い。
5球目のチェンジアップ、ブレーキのきいた良いボールだった。
「球速差があんなにあったら、空振りするね」
「これがプロに行く人の球か・・・」
「もう、いいよ。ありがとう」
私が止めたので、タイソンは投球を止めた。
「兄ちゃん、凄かったぞ」
「サインちょうだい」
「日本でも頑張ってこいよ」
タイソンはいつの間にか出来ていた観客に、手を上げて拍手をもらっていた。
「タイソン君、君との契約だが、さすがにフリーの選手でも、普通はどこかの球団に所属しているが、タイソン君はどこにも所属していない。今年、実績のない選手を多額の金で取るのは難しい」
「わかっています。でも俺には妻と不倫相手への賠償金があるので、少しでも高く雇ってもらえませんか?」
そうだよね。今、お金必要だよね。
「そこで出来高払いをつけるのは、どうだろうか」
「いくらもらえるんですか?」
タイソン君は悔い気味に聞いてきた。
「まず契約金と年俸を合わせて1000万円で、その1000万に加えて出来高として、先発なら1勝ごとに100万円、10勝なら合計の1000万に特別にプラス1000万の2000万円、中継ぎなら1試合ごとに20万円、50試合なら合計の1000万に特別にプラス1000万の2000万円、抑えなら1Sごとに30万円、30Sなら合計の990万に特別にプラス1100万の2000万円を出す」
「つまり素晴らしい成績を上げるとどの位置で投げても、3000万円もらえる契約にする」
10勝、50試合、30Sどれか達成してくれる選手が、3000万で雇えるなら安い物だ。
「さらに1軍の最低保証年俸である1,600万円から、日割り分が支給される制度もある。 それ以外にも球団や監督が大事な試合に、勝利ボーナスをつけることもあるので、もう少しもらえる」
タイソンの目が、輝いている。
「契約します」
タイソンはニコニコした顔で言った。
よし、有望な外国人投手を格安で手にいれれた。




