ドラフト会議
今年のプロ野球ドラフト会議の会場も去年と同じで、東京都港区にある赤坂国際プリンセスホテルだ。
プロ野球のすべての球団の、スカウトの1年の苦労が報われる日だ。
大阪ブルーローズの控え室には、球団社長、GM,監督、スカウト部長など球団のお偉いさんや、すべてのスカウトが揃っている。
「皆様1年間お疲れ様でした。今年のドラフト会議がいよいよ始まります。ドラフト会議は何が起こるかわからないんですけど、スカウトの方の1年間の努力を無駄にしないように、頑張ってきます。どうぞ宜しくお願いします」
スカウト部長の中川さんの言葉で、控え室では拍手が起こった。
ここからドラフトの会場には、球団のお偉いさんだけなので、私やほとんどのスカウトは控え室で、ドラフトの会場の内容をモニターで見守る。
「では、行ってきます」
中川さんがそう言うとドラフトの会場に、球団のお偉いさん達が向かっていった。
みんなで拍手をして、見送った。
会場では、ドラフト1位が発表される。
「第1巡選択希望選手 名古屋 小川仁海 24歳投手 世界生命」
「ここで社会人ナンバーワン投手が出た」
今年1番の即戦力投手だ。
「第1巡選択希望選手 東北 大山友 22歳内野手 王寺大学」
「ここで今年のナンバーワン内野手が出た」
ドラフトが始まり、次々と選手が呼ばれていっている。
「第1巡選択希望選手 大阪 西谷銀司 22歳外野手 富沢大学」
予定通りの指名だ。
「来るな、来るな」
横で西谷銀司外野手の担当の小森スカウトが、手を合わせ念仏のように呟いている。
うちの球団は、12球団で1番くじ運がないので、重複すれば他球団に行ってしまうので、小森スカウトの一本釣りで取りたい思いは強い。
「第1巡選択希望選手 福岡 大山友 22歳内野手 王寺大学」
第1巡の最後の指名球団である福岡の球団が、指名を終了した。
この瞬間に西谷銀司外野手の、1本釣りが確定した。
「良かった」
小森スカウトが小さい声で呟いた。
「おめでとうございます」
私を含めたこの場にいる球団スタッフが、拍手で小森スカウトを祝福する。
「ありがとう」
そういう言いながら、小森スカウトがこの場にいる全員とハイタッチしていく。
そしてすぐに裏に行って、担当の西谷銀司外野手の関係者に電話をかけいている。
テレビ画面では西谷銀司外野手が、富沢大学の監督と嬉しそうに握手していた。
鰐淵君が上位予想なので1巡目の指名が終わると中継で、PP学園が映っていた。
PP学園では、鰐淵君と安井君、宮川監督、校長が今か今かと指名をドキドキしながら待っている。
ドラフトは選手も球団スタッフもファンもこのドキドキするのが、しんどい事もあるが、それ以上にわくわくが止まらない。
支配下選手の指名が再会した。
「おっしゃー」
上原さんの担当選手が、ドラフト2位で呼ばれた。
「おめでとうございます」
私含め、ここにいる球団スタッフが祝福する。
上原さんがこの場にいる全員とハイタッチしていかず、私だけ飛ばした。
「うわーーー」
ここにいる全員が、ドン引きしている。
みんなの視線も気にせず、上原さんは担当選手の関係者に、電話をかけに行った。
「気にしなくて良いっすよ」
岡田君が気にかけてくれるが、別に気にしていない。
上原さんより、安井君が気になっている。
「第7巡選択希望選手 兵庫 伊藤浩人 24歳投手 世界生命」
「第8巡選択希望選手 兵庫 選択終了」
「これにてすべての選択が、終了いたしました」
「閉会宣言をお願いします」
「閉会に先立ちまして各球団は、選択選手の最終確認をお願いします。選択結果にご入用ございませんか。異議無しと認めます。これを持ちまして、プロ野球ドラフト会議を閉会といたします」
支配下選手の指名が、終わった。
兵庫の球団は育成選手より、支配下選手でしっかり取るという球団なので、今年は最後の支配下選手の指名をした。
支配下選手の指名が終わると、監督とドラフト1位の西谷選手の担当スカウトの小森さんは、西谷選手のもとに指名挨拶に向かった。
少し休憩のあと、育成選手の指名が始まった。
「第1巡選択希望選手 名古屋 東翔太 25歳投手 徳島オレンジソックス」
ここからは独立リーグの選手の、指名が多くなる。
なかなか呼ばれない。呼ばれないと少し不安になる。
「第5巡選択希望選手 兵庫 横山将 19歳投手 富山サンダース」
5巡目が終わったが、呼ばれない。まさか直前に辞める事にしたんじゃないよね。
「第6巡選択希望選手 大阪 安井まさお 18歳内野手 PP学園」
よかったーー。呼ばれた。
顔を上げてモニターを見ると、埼玉にドラフト3位で指名された鰐淵君と安井君が、涙を流して抱き合っている。
それを見ると私も嬉しくなる。
「おめでとうございます」
この場にいる球団スタッフが、1人を除いて拍手で祝福してくれる。
「ありがとうございます」
私はお礼を言いながら、ハイタッチしていく。
上原さんのところに来た。
手を後ろに回している。
私はその腕を掴んで体の前に手を出し、思いっきりハイタッチした。
「痛ってーーー」
上原さんの悲鳴が聞こえるが、気にしない。
今、苦労が報われて、最高の気分だから。
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