スカウト会議3
いつもと同じで大阪難波にあるホテルの1室で、スカウト会議は行われる。
今回のスカウト会議には全区域の担当スカウトに加え、編成育成本部長兼スカウト部長の中川克也さん、ゼネラルマネージャー(GM)の福山豊さん、球団社長の宮西宗一郎さんに加え、監督の鷲田大介さんとお偉いさんが全員揃っている。
「それでは時間となりましたので、スカウト会議を始めようと思います」
編成育成本部長兼スカウト部長の、中川克也が進行している。
「えー再度ご確認いたしますが、1位は富沢大の西谷銀司選手で問題ありませんか?」
誰も反対意見を言わなかった。
「特に反対意見もないようですので、今年のドラフト1位は富沢大の西谷銀司選手と確定します」
どこからともなく、拍手が起こった。
「次にもし重複した時の選手についてですが・・・」
その後も支配下選手の指名の、話が続いていく。
「支配下選手の指名は以上といたします。つづいて今年の育成選手の指名ですが、ご意見がある方はいらっしゃいますか」
「はい!」
私は手を上げ、立ち上がった。
「おい、吉田。まさかあの野球部のマネージャーの事じゃないだろうな」
近畿地区担当のスカウトで私にいつも突っかかってくる上原さんが、小馬鹿にしながら言った。
「その通りです。前回にご紹介した。最強の野球部のマネージャ-のPP学園の安井まさお選手です」
「はっ、出た。まだ狂った事言ってますよ。どうします福山さん」
上原さんのせいで、話が進まない。
「実はその事で話しがあるのだが、大阪ブルーローズの正捕手の山口銀丸捕手とPP学園の安井まさお選手との、盗塁勝負を私とスカウト部長の中川と、球団社長の宮西さんと監督の鷲田の、4人で観戦してきた」
「大阪ブルーローズの正捕手と素人の野球部のマネージャ-の勝負なんて、言わなくても結果はわかります。相手にならなかったでしょう」
GMの福山さんが山口銀丸捕手と安井君との盗塁勝負の内容を話そうとすると、上原さんがちゃちゃを入れてきた。
「いや、勝ったんだよ。山口銀丸捕手から安井まさお選手が、盗塁を決めたんだよ。本当に凄い勝負だった。あんなに足の速い選手を私は見た事がない」
GMの福山さんが、盗塁勝負の内容を興奮気味に話した。
「それは山口銀丸捕手が、手を抜いたんだ。だから勝ったんだ」
上原さんはあの安井君の、命をかけた勝負を馬鹿にしてきた。私もさすがに我慢できない。
「なんじゃ、上原よ。山口が、八百長でもしたと言いたいんか!」
私が上原さんに怒ろうとすると横の中川スカウト部長から、ドスの聞いた怒鳴り声が聞こえてきた。
「いや、八百長なんて、言ってないです。ただ手を抜いたと言ったんです」
「同じだ。山口は常に全力で、野球に取り組んでいる選手だ。山口は手を抜く選手じゃない。スカウトした俺が、1番わかっている。次に山口を侮辱したら、許さないからな!」
「はい。すいませんでした」
さすがの上原さんも上司の中川スカウト部長に言われたら、謝るしかなかった。
「えー、話は戻しますが、安井まさお選手の指名はどうしますか?」
球団社長の宮西さんが、静まりかえった会議の進行を進めた。
「えー、安井まさお選手担当スカウトの、私が話します。まず、先ほどGMの福山さんからお話があった通り、山口銀丸捕手と安井まさお選手との盗塁勝負は、安井まさお選手が盗塁を決め、勝利いたしました」
まず最初に山口銀丸捕手と安井まさお選手との、盗塁勝負の話をした。 勝った事は、アピールポイントなので、かなり大きい声で言った。
「球界の中でもトップ級に肩の強い山口銀丸捕手から、盗塁を決められた事からも、ほぼどの球団の捕手からも、盗塁を決める事が出来る選手です」
上原さんも怒られたからか、特に何も言ってこない。
「次に高校での野球の成績出すが、高校2年までは入院してため、成績はありません。高校3年生の成績ですが、打撃と守備は1度もしていません。出場は代走のみですが、すべて盗塁を決めています。成功率は100%になります」
PP学園の監督も打撃と守備が出来ない事はわかっているので、代走のみの起用をしていた。
「走力だけの選手なんて、いるかよ」
上原さんは山口銀丸捕手の話が終わって、中川スカウト部長に怒られない内容になったため、復活した。本当に小物だ。
「まず盗塁ですが、盗塁の成功や失敗はだいたい3秒代での戦いになります。一般的な俊足ランナーの2塁への到達時間は3・2~3・3秒で、去年盗塁王を盗った福岡の選手は、3・1秒になります。安井選手は去年盗塁王を盗った選手を上回る、3秒ジャストで盗塁しています。つまりプロ野球選手の中で1番盗塁を成功出来る、日本一盗塁がうまい選手と言うことになります」
まあ、その選手のコンディションにもよるものなので、一概に日本一盗塁がうまい選手というわけでもないが、ここはアピールの場なので黙っておく。
「その日本一盗塁が上手い選手を支配下選手でもなく、格安の育成選手でとる事が出来る。非常にお得だと思いますが、宮西球団社長、指名の許可をいただけますか?」
「確かに日本一はいいな」
宮西球団社長も指名に、乗り気になってきた。これで決まりそうだ。
「待って下さい、宮西球団社長。吉田の話に騙されてはいけません。走力しかない選手ですよ。打撃や守備は、出来ないんですよ」
上原さんが一番邪魔されたくないタイミングで、余計な事を言ってきた。
「うーん。足は魅力だが、やはり打撃や守備もないんじゃ、さすがに指名は止めておこうかな」
決まりかけたのに上原さんが、余計な事を言いやがった。上原さんはこちらを見ながら、勝ち誇った様に笑った。
だがまだアピールは終わってない。念のために隠していた、切り札が残っている。
「すいませんが、ある人をこのスカウト会議に、参加する事を認めて貰っても良いですか?」
「この会議は極秘会議だぞ。外部に絶対にバレてはいけない。外部の人間の参加なんて、認められるわけないだろう!」
さすがにGMの福山さんも怒った。
だがここで引くわけにはいかない。
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