野球部に戻って監督を驚かせよう
「宮川監督、お久しぶりです」
「今日は宜しくお願いします」
「おう、吉田君。久しぶりやな。カメラマンの人も今日は宜しく」
私はカメラマンの友人を連れ、PP学園の野球部監督の宮川監督に挨拶をした。
「監督、夏の大会のベンチ入りメンバーはまだ決めてませんよね」
「ああ、まだ決めていない。この時期に伸べてくる選手もいるからな。ギリギリまで悩むよ」
まだ決めてなくてよかった。せっかくの安井君のアピールの場がなくなるところだった。
「監督、安井君のベンチ入りメンバーに入るテストしていただけませんか」
「安井のテスト?何を言ってるんだ。安井はマネージャーぐらいしか出来ない子だぞ」
宮川監督は懐疑的な表情を浮かべている。
「いえ、今は成長したので強豪のPP学園でも、ベンチ入りメンバーに入る実力はあります。私が保証します」
「まあ、吉田君がそこまで言うならやってもいいが・・・」
宮川監督は納得はしていないが、渋々了承をしてくれた。
「PP学園の正捕手の選手と盗塁勝負をしていただけませんか?」
「本気で言っているのか?陸上部で練習していたのは知っているが、それぐらいでうちの正捕手の池田には勝てないぞ。なんせ池田の強肩だからな。ちょっと練習したぐらいじゃ池田から、盗塁なんて無理に決まっている」
私は池田選手を鑑定した。
PP高校 池田龍 17歳 右投げ右打ち
捕手D
野球脳C 成長 早熟
ミートF パワーF 走力E 肩C 守備E
野手の能力 チャンスE 左投手E 右投手F
バントE 盗塁F 三振D 捕球D
特殊能力 頑丈A 送球D リードD
フレーミングD 回復D
未来の能力 池田龍 17歳 右投げ右打ち
捕手C
野球脳B 成長 早熟
ミートF パワーE 走力D 肩C 守備C
野手の能力 チャンスE 左投手D 右投手F
バントC 盗塁D 三振D 捕球C
特殊能力 頑丈A 送球C リードD
フレーミングD 回復B
守備型の捕手だ。宮川監督の言うように高校生にしては、肩の強さCは非常に強い。でも走力Bある安井君の相手ではない。
「監督、必ず安井君が勝ちます。池田君との盗塁勝負をお願い出来ますか?」
「わかった、吉田君がそこまで言うなら、やってもいいよ」
「ありがとうございます」
よし、これで安井君が勝てば、ベンチ入りメンバーになり公式戦の実績を作る事が出来る。実績が出来ればスカウト会議でアピールする事が出来る。
「おーい、池田。今から安井と盗塁勝負してもらうぞ」
「えーーー。監督、どういうことですか。安井はマネージャーでしょ」
グランドにいる高校球児達はざわつき始めた。そんな中、勝つ事を確信している私は笑みをこぼした。
グランドのざわつきは、まだやみそうにない。
「マネージャーがなんで、池田と盗塁勝負なんかするんだ」
「そもそも安井って滅茶苦茶に下手だったから、野球出来ずにマネージャーになったんじゃなかったか」
「そうだそうだ。下手だったし鈍足だった」
周りからあまり良くない声が聞こえてきた。
安井君を見ると体が縮こまって震えていた。
「周りの言葉なんか気にしなくて良いんです。私は安井君が勝てると思ってます。ここを勝てばベンチ入りメンバーになれます。そうしたら試合に出て、公式戦の実績が作れます。その実績はドラフトに指名される事に、1歩近づく事になります」
「はい」
まだ少し体が震えている。
「さあ、安井君。みんなの度肝を抜いてやりなさい。本当の安井君は凄いんだとみんなに見せておいで」
「はい。僕、がんばります」
安井君の震えはなくなった。
安井君は1塁ベースについた。
投手は第1球を投げた。
安井君は走った。良いスタートだ。盗塁Dにもなっているので、盗塁もうまくなっている。
キャッチャーの池田君がボール受けて、2塁に投げた。
さすが高校生では肩の強い池田君、良い送球だ。
しかし池田君の送球が2塁ベースに届く前に、安井君は楽々2塁に盗塁した。
「セーフ」
審判の声が響く。
「よっしゃー!!!」
安井君は2塁上でガッツポーズをした。
みんな安井君の走力にびっくりして、声が出ない。
「監督、ベンチ入りメンバーが1人決まりましたね」
「ああ、そうだな」
監督に話しかけたが、まだ放心状態だった。
「スゲーーーー!」
「安井って足速いんだな。知らなかった」
「ってかなんでマネジャーなんてしてたんだ」
放心状態の監督より先に、ぽつぽつと球児達の方が意識を取り戻し、安井君に歩み寄った。
「安井、その足の速さでチームに貢献してくれよ」
「そうだ。もうマネージャなくて、苦楽を友にするチームメイトだ」
「しんどいけど、一緒に頑張ろう」
安井君はみんなに囲まれて、嬉しそうだった。彼にとっては本当の意味で、野球部の一員になったのだろう。
「安井。負けたよ。凄い足の速さだった」
捕手の池田君は、安井君に手を差し出した。
「ありがとうございます」
安井君は池田君とがっちりと握手した。
「吉田君、いつから安井の才能に気づいていたんだ」
「安井君と始めて会った時です」
放心状態だった監督が、やっと意識を取り戻し私に話しかけてきた。
「さすがだな。あの時のわしは安井の才能なんて、全然感じなかった。相変わらず目だけはいいな」
「ありがとうございます」
監督が珍しく褒めてきた。
その後、安井君はチームが出場した大会の全試合で代走で出場して、すべて盗塁を決めた。甲子園出場時には、走力がAまで上がっていた。チームは甲子園で健闘したが、準決勝で敗れた。
敗れはしたが、安井君やPP学園のナインの顔は、清々しい表情をしていた。
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