表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デビル・スキャンダル  作者: たっくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/18

episode12 伝説の巫女

 静寂だった。


 会場全体が、

 一瞬だけ息を止める。


 白い巫女装束。


 銀髪。


 裸足。


 女は、

 巨大ステージ中央へ静かに立っていた。


 その瞬間。


 悪魔の笑みが初めて消えた。


『……へぇ』


 低い声。


『まだ残ってたんだねぇ』


 女は答えない。


 ただ、

 真っ直ぐ悪魔を見る。


 その瞳には、

 感情がほとんど無かった。


「誰だ、あれ……」


 ジフンが呟く。


 すると。


 隣のソヨンが、

 わずかに顔を強張らせた。


「……まさか」


「知ってるのか?」


「噂だけ」


 ソヨンが低く言う。


「韓国怪異対策機関の最終手段」


「“悪魔祓いの巫女”」


 その時。


 ステージ照明が、

 一斉に明滅する。


 バチバチと火花。


 観客達が悲鳴を上げる。


 だが巫女は動かない。


 悪魔が笑う。


『相変わらずつまらない顔だねぇ』


「黙りなさい」


 女の声は静かだった。


 だが。


 空気そのものが震える。


 次の瞬間。


 会場中へ、

 白い光が広がった。


「っ……!」


 ユン・セアが目を見開く。


 暖かい。


 優しい光。


 その瞬間だけ、

 侵食が止まった。


 老婆化していた腕が、

 少し戻っている。


「え……」


『チッ』


 悪魔が舌打ちした。


 ステージ後方の巨大な黒い影が、

 苦しそうに歪む。


『本当に鬱陶しいねぇ、お前ら巫女は』


「あなた達が嫌われているだけです」


 巫女が一歩前へ出る。


 その瞬間。


 会場に散らばっていた黒い感情が、

 一気に浄化されていく。


 魅了されていた観客達が、

 次々と正気へ戻った。


「……え?」

「俺、何して」

「血……!?」


 パニック。


 だが。


 悪魔が両手を広げる。


『黙れ』


 瞬間。


 会場全体の空気が重くなる。


 黒い霧。


 怨嗟。


 悲鳴。


 無数の腕が、

 悪魔の背後から伸び始めた。


『私はねぇ』


 悪魔が笑う。


『人間の欲望が大好きなんだよ』


 腕が増える。


 観客席へ伸びる。


『愛されたい』

『美しくなりたい』

『上に行きたい』


『皆、願うだろ?』


 その声に反応するように。


 観客達の瞳が、

 再び黒く染まり始める。


「まずい!」


 ソヨンが銃を構える。


 バァンッ!!


 狙撃。


 だが弾丸は、

 悪魔へ届く前に黒い霧へ呑まれた。


『人間の武器が効くと思ったかい?』


 悪魔が嗤う。


 その瞬間。


 ゴォッ!!


 チェ・ガンウが突っ込んだ。


「なら拳だろうがぁっ!!」


 超高速。


 人間離れした踏み込み。


 拳。


 空気が爆発する。


 ガンウの一撃が、

 悪魔の顔面へ叩き込まれた。


 轟音。


 ステージが砕ける。


 観客達が悲鳴を上げる。


 だが。


 悪魔は笑っていた。


『痛いねぇ』


 次の瞬間。


 黒い腕が、

 ガンウの全身へ巻き付く。


「っ……!!」


 床へ叩きつけられる。


 人間なら即死。


 だが。


 ガンウは笑った。


「いいねぇ」


 口から血を流しながら。


「やっと怪物らしくなった」


 男の筋肉が膨張する。


 血管。


 異常発熱。


 まるで人型兵器。


 ソヨンが舌打ちした。


「出力上げすぎよ馬鹿!」


「黙れ!」


 ガンウが黒い腕を引き千切る。


 その光景に、

 ジフンが完全に固まっていた。


「……なんなんだお前ら」


「説明してる暇ない」


 ソヨンが言う。


「今は悪魔を止める」


 その時だった。


 巫女が、

 ゆっくりユン・セアを見た。


 初めて。


 その瞳に感情が宿る。


「あなた」


 静かな声。


「まだ自分を諦めていないのですね」


 ユン・セアが息を呑む。


「……え」


「普通なら、既に喰われています」


 巫女が近づく。


 その瞬間。


 悪魔の顔が歪んだ。


『触るな』


 黒い感情が爆発する。


 会場のガラスが割れる。


 悲鳴。


 だが巫女は止まらない。


 そして。


 そっと、

 ユン・セアの額へ指を当てた。


 瞬間。


 大量の記憶が流れ込む。


 契約者達。


 絶望。


 老い。


 奪われた人生。


 そして。


 悪魔の“核”。


「——見つけました」


 巫女が呟く。


 その瞬間。


 悪魔が初めて、

 本気の殺意を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ