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デビル・スキャンダル  作者: たっくん


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episode10 ステージの悪魔

 ライトが眩しかった。


 《Korean Arts Awards》メインステージ。


 数千人の観客。


 テレビカメラ。


 歓声。


 そして。


 ステージ中央で、

 “ユン・セア”が微笑んでいた。


『皆さん、お久しぶりです』


 拍手が爆発する。


 観客達の感情が、

 会場中へ溢れていた。


『綺麗……』

『やっぱり格が違う』

『オーラやばい』

『女王だ』


 愛。


 羨望。


 熱狂。


 悪魔はそれを、

 全身で吸い込んでいた。


 まるで栄養みたいに。


「……っ」


 裏口から会場へ侵入したユン・セアは、

 その光景に息を呑んだ。


 分かる。


 悪魔が強くなっている。


 会場の人間達が、

 “ユン・セア”を信じるほどに。


「急ぐぞ」


 ハン・ジフンがスタッフ用通路を走る。


「中継室へ行く」


「本当に放送ジャックする気……?」


「もうこれしかない」


 男は立ち止まらない。


「全国放送で正体を暴く」


 ユン・セアの呼吸が荒い。


 身体が重い。


 脚も、

 少しずつ老婆になっている。


 階段を上るたび、

 骨が軋んだ。


「っ……!」


 その瞬間。


 視界が揺れる。


 通路の鏡。


 そこに映っていたのは——。


 完全な老婆。


 片腕。


 濁った瞳。


 腐った肌。


「……嫌」


 ユン・セアが壁へ手をつく。


「嫌……」


 もう自分の顔が思い出せない。


 本当の自分が、

 どんな顔だったのか。


「しっかりしろ」


 ジフンが肩を支える。


「まだ消えてない」


「……でも」


「お前、戻りたいんだろ」


 男の声は真っ直ぐだった。


「だったら最後まで足掻け」


 その時だった。


 館内モニターから、

 歓声が響く。


『続いての特別ステージは——』


 映像。


 ステージ中央。


 悪魔が歌っていた。


 アカペラ。


 静かなバラード。


 その瞬間。


 会場全体が静まり返る。


 観客達が、

 全員涙を流していた。


「……嘘」


 ユン・セアの顔色が変わる。


 魅了。


 以前とは比較にならない。


 韓国中が、

 悪魔へ心を奪われている。


『愛してる』

『ユン・セア……』

『帰ってきてくれてありがとう』


 感情が流れ込んでくる。


 巨大すぎる。


 気持ち悪いほど。


 悪魔が笑う。


 スポットライトの下で。


『人間って、本当に単純だねぇ』


 頭の中へ声が響く。


『綺麗なら許す』

『泣けば許す』

『愛してると言えば信じる』


 悪魔が歌いながら、

 こちらを見た。


『だから私は、人間が大好きなんだ』


 その瞬間。


 ユン・セアの右脚が崩れ落ちた。


「っ!!」


 皺。


 腐敗。


 完全に老婆の脚。


「セア!」


 ジフンが支える。


 だが。


 もう限界が近い。


「……早く」


 ユン・セアが震える声で言う。


「私……もう……」


 その時だった。


 館内放送が突然ノイズを走らせる。


 ブツッ。


 会場の映像が乱れる。


 ステージ上の悪魔が、

 ゆっくり歌を止めた。


 笑顔が消える。


『……あぁ?』


 低い声。


 会場の空気が凍る。


 悪魔が、

 何かに気づいた。


「急げ!!」


 ジフンが叫ぶ。


 二人は中継室へ走る。


 だがその瞬間。


 通路の先に、

 黒い影が現れた。


 スタッフ達。


 いや、

 違う。


 全員、

 目が真っ黒だった。


 魅了されている。


「ユン・セア様の邪魔をするな」


 一人が呟く。


「排除しろ」


 次の瞬間。


 スタッフ達が一斉に襲いかかってきた。


「っ!!」


 ジフンがユン・セアを庇う。


「下がれ!!」


 だが数が多い。


 完全に操られている。


 その時。


 ユン・セアの中で、

 何かが弾けた。


 怒り。


 恐怖。


 執念。


「——どきなさい」


 黒い力が溢れる。


 瞳が闇色へ染まる。


 瞬間。


 スタッフ達の動きが止まった。


 全員、

 膝をつく。


「……え」


 ユン・セア自身が驚く。


 力が、

 以前より強い。


 すると。


 ステージ上の悪魔が、

 ニヤリと笑った。


『そうだよ』


 声が響く。


『それが、お前の本当の力』


 その瞬間。


 ユン・セアは理解した。


 悪魔を倒すには。


 自分もまた、

 “怪物”にならなければならない。

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