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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第83話 翻訳機

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 第83話 翻訳機

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 お尻、薄いな。

 おっといけない。こんなことを考えていると、プリママの鉄拳制裁に遭うぞ、俺。


「なんだ?」

「いえ、なんでもないです」


 勘が神がかっているんだよ、この化け物。


 2階に上がると、やっぱりそうだ。俺は確信を持った。

 この建物は間違いなくショッピングモールだ!

 1階はそうじゃないけど、2階は服や雑貨、靴、アクセサリーなど多くの販売エリアがある。

 しかし、妙に前世のショッピングモールに似ているな。ショッピングモールは世界が違っても共通なのだろうか?


「わー、これ可愛い!」


【炎姫】の魔法使いのライヒスさんが、服を手にとって自分に当てている。数千年か万年か経過しているのに、服がそのままの状態で残っていることに違和感を感じる。

 さすがは古代文明というべきか、それとも服の素材も特殊なものなのかな?

 日本のように素材を調べる機器があればいいんだけど……ってか、それくらいあっても不思議じゃないよな、この遺跡? よし、この地底都市での目的は、研究所だ!

 これだけ広いんだから、研究所や生産工場があってもおかしくはないはずだ!


 この建物は2階と3階がショッピングモールで、3階の一角にそれはあった。


「携帯ショップ!?」


 日本かよ!? と突っ込みを入れそうになったが、そこは我慢した。

 そもそも日本なら、俺が文字を読めないわけがない。この遺跡で見る文字は、明らかに日本語ではない。英語やハングル文字、中国の漢字でもない。ま、地球上の文字で俺の知らないものは多いと思うけどね。

 いやいや、なぜ地球文明を思い浮かべる!?


「……違うよな?」


 10万年後の地球! 誰かがそんなことを言ったら、俺、驚くよ。間違いなく「えーーーっ!?」と驚くさ。


「携帯を使えたらいいんだけどなー」


 はい、無理でした。電源が入りません。


「コンセントはどこだ?」


 これか? 豚の鼻ではなく、田の4角がない感じのものだ。

 まあ、このビルに電力がきてない時点で、充電はできないんだけどね。

 そもそもそれが本当に電力なのかも怪しい件について。


「先は長そうだ。でも、探索は楽しいな!」


 文字がしっかり読めれば、動力が電気かどうか分かると思うんだけど、プリママのせいで途中で止まってしまったからな。


「おおお、ここは通信機器のショップか!?」

「え?」


 振り返ると、パックさんがいた。ショーケースに頬ずりしている。キモッ。

 それはさておき、今『通信機器』と言った?


「パックさんは、ここにあるものが分かるのですか?」

「初めて見るが、古代文字はある程度読めるからな。ここに通信機器と記載があるぞ」

「なんですとーっ!」


 そういえば、優秀な学者だと聞いた気がする。まさか古代文字を読めるとは、お主やるのぅ。


「パックさん俺に古代文字を教えてくれませんか?」

「君に? 無理」

「え!?」


 即答かよ! 少しは考えようか。


「ボクは研究で忙しいんだ。君に構っている暇はない」


 マジもんの研究バカか。ならば、交渉するだけだ。


「それは残念ですねー。古代文明のいい情報を持っていたのにー」

「なぬっ!? 情報だと!? 寄こせ! ボクに情報を寄こすのだ!」


 オッサンに迫られても嬉しくない。


「それはパックさん次第です」

「ぐぬぬぬ……その情報がボクの貴重な時間を割くに値するものなら、僕が翻訳した資料をみせてあげよう。それで君は学べばいい」

「翻訳の辞典のような資料ですか?」

「そうだ」


 オッサンと2人きりで勉強とか拷問だ。むしろ資料を見せてもらえるだけでいい。


「交渉成立ですね」


 俺が手を差し出すと、パックさんが握ってきた。シェイクハンド。


「で、その情報とは?」

「実はですね。プリママ、ああ、ホルトンのギルマスのことですけど、そのプリママは古代文明の書物を大量に持っています」

「なんだと!?」

「ホルトンの近くにある遺跡で、俺が発見したものです。本来の所有者は俺なんですけど、全部カツアゲ……取られました」

「あの遺跡にまだ書物があったのか!?」

「書物店が開けるくらいはありましたよ」


 あれらの書物はプリママの家にしっかり保管されている。俺も読むことはできるが、持ち出しは禁止だ。俺のものなのにね。

 でもまあ、交渉材料として使えるものだろう。


「だが、ギルマスが見せてくれるだろうか?」

「プリママも古代文明に興味があるようです。しばらくホルトンで一緒に研究しようと誘えば、見せてくれると思いますよ」

「なるほど……いいだろう。そうなったら、君に古代文字の資料を見せよう!」

「はい、よろしくお願いします」


 とりあえず、この地底都市内ではパックさんを翻訳機の代わりにしようかな。


 調査は順調に進んでいく。

 翻訳機があると便利だが、やっぱり自分で読みたいよな。


 4階以上はホテルっぽい。レストランとかもあって、本気で日本かと思ったよ。

 ただ、キッチンではコンロなどいいアイテムが手に入った。

 キッチンのマジックアイテムはまだなかったから、これらのアイテムを元に復元してもらおうと思う。そういった職人はパックさんが知っているので紹介してくれると約束してくれた。


 建物の探索が終わると、パックさんはプリママに共同研究を持ちかけた。


「書物を大量に所有しているそうですね。お互いに古代文明のことを探求する者同士、共に切磋琢磨しませんか?」


 プリママがギロリと俺を睨んでくるが、それは俺の本だから!


「クライドが持ちかけた話か?」

「そ、そうです」

「なら、構わん。ホルトンに帰ったら、共同で研究してやろう」

「っ!?」


 ま、マジか。こんなにあっさり受け入れるとは、思ってもいなかったので驚いたよ。


「本当かね、アアメンター殿」

「嘘は言わないさ。それにギルマスをしていると、落ちついて研究もできないからね。今回のことで区切りをつけようと思っていたところなのさ」


 プリママとパックさんは握手し、この話はあっさりとまとまった。

 パックさんが立ち去るのを見送った俺は、よかったと胸を撫で下ろす。これで古代語を学べるぜ。


「ところで、クライド」

「なんですか?」

「ゆっくり話をしようか」

「え!?」

「フフフ。あたしに黙って話を進めて何を企んでいるんだ?」

「た、企むだなんて、心外な。俺は古代文明のことが少しでも分かればと思ったんですよ!」

「ほー……まあいい。これからは先に相談するようにな」

「はい!」



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