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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第80話 人間じゃない

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 第80話 人間じゃない

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 この遺跡調査隊を阻む谷。深さがどれほどあるか、俺は知らない。真っ暗で、下は何も見えない。まるで深淵を覗き込んでいるようだ。

 幅は200mってところかな。


「この谷はどう越えるんだ?」


 グランベルさんの問に、俺は笑みを浮かべて槍とロープを出して繋ぐ。それをでグランベルさんに渡した。


「はい、お願いします」

「まさかこれを投げろと?」

「気合いを入れて投げてください」

「お前は前回どうしたんだよ?」

「ジャンプしました」

「……なるほど」


 納得してくれたようだ。


「それじゃあ、お願いします」


 しかし、このロープはすごい量だな。一応、余裕をもって250mを用意してあるが、めちゃくちゃ重いぞ。


「そんじゃー投げるぞ」

「お願いします」

「ふんっ!」


 槍は高速で飛び、ロープがすごい勢いで減っていく。

 ガツンッと槍は地面に刺さった。

 届かなかったら、俺がジャンプして向こうに持っていこうと思ったが、ちゃんと届くとは、さすがはグランベルさんだ。人間の腕力じゃない。


「わたくしはジャンプする」


 リンリーリンさんがふわりとジャンプしていく。今日はスカートの中は見えない。残念。


「あたしもいくぞ」


 プリママは相変わらず力業でジャンプ。莫迦力があればなんでもできる! そんなプリママだ。

 リンリーリンさんがロープを木に括りつけてくれる。こっちも木に括りつけたら、1人ずつ渡る。

 最後にロープを解いて、ジャンプして向こうに渡る。あとはロープを回収。ロープを張ったままにして、モンスターに悪さをされたら嫌なので、回収した。




 俺たちは5つの大きな山と3つの深い谷を越え、あまたのモンスターと戦い、予定より4日遅い24日目で、やっと遺跡に辿りついた。


「遺跡なんかないぞ?」

「地下にあるんです、ゴライアンさん」

「地下なのは聞いていたが、地上には何もないのかよ。これでよく遺跡を発見したな」

「まあ、そこは秘密ということで」

「聞きたいが、仕方ねぇ。で、どうやってその地下に入るんだ?」

「こちらです」


 俺が掘った穴を隠すようにアルファン高地の赤っぽい巨岩が置いてある。それが目印だ。

 巨岩をアイテムボックスに収納すると、穴が現れる。


「この穴を降ります」

「こんな穴を見つけても、普通は入ろうと思わんだろ?」

「見つけたのではなく、掘りましたよ。グランベルさん」

「マジか……」


 そんなに呆れないでよ。地下に遺跡があるなら、掘るでしょ?


「は、早く入ろうではないか!」


 いつもしかめっ面の学者のパックさんが、珍しく自分から喋ったよ。


「まだだ。ここにベースキャンプを張る。調査はその後だ」


 プリママが珍しく普通のことを言っている。何か腐ったものでも拾い食いしたか?


「クライド」

「……なんでしょうか?」

「死にたいか?」

「……いえ、ごめんなさい」


 なんで心の声が聞こえるんだよ、この人!?


 パックさんはプリママの言うことを聞いて、ベースキャンプの設営に協力……しなかった。あの野郎、ずーっと本を読んでやがるんだよ!

 これまでも暇さえあれば本を読んでいたけど、本当にブレないオッサンだ。


「アリス君。この穴の上に少し大きめのドームを作ってくれるかな。頑丈なヤツを」


 ドラゴンの攻撃にも耐えられるヤツをお願いね。


「任せてください、師匠! ……ドーム!」


 ゴゴゴッとドームが出来上がる。コンコンと叩いてみるが、かなり硬く土というよりは金属的な質感だ。

 アリス君は俺の言いつけを守って、しっかり精進しているようで、オジサン嬉しいよ。


「ほう、これはなかなかのものだな。殴っていいか?」


 グランベルさんが、ウズウズしている。


「アリス君、いいかい?」

「はい。壊れたらまた作りますから大丈夫です」

「よし、そんじゃー、思いっ切りいくぜ!」


 腕をグルグル回して、やる気満々のグランベルさんが、ゆっくりと腰を落とした。


「何をしているんだ?」

「アリス君が作ったドームをグランベルさんが殴って壊せるか、試すところですよ、ゴーゴルさん」

「なんだと? それ、俺にもやらせろよ」

「アリス君?」

「グランベルさんの後ならいいですよ」

「よし、決まった! おい、グランベル! さっさと終わらせて俺に変れ!」

「うるせーぞ、ゴーゴル。黙ってそこで見ていろってんだ」


 このゴーゴルさんは【破壊の巨人】一の力自慢らしく、こういうことには目がないようだ。


「はぁぁぁっ!」


 グランベルさんが腰の回転を活かした鋭いパンチを繰り出した。

 ガキッと嫌な音が鳴る。ドームが破壊されたのか、と様子を窺う。


「いってーっ! 硬すぎんぞ、これ!?」


 グランベルさんは拳を擦り、フーフー息を吹きかける。あの音で、その程度のダメージなの? どんな硬さの拳なんだろうか?

 ドームのほうを見ると少し凹んでいるが、破壊には至っていない。


「ガハハハ! 情けねーヤツだぜ。どけ、俺がぶっ壊してやるぜ!」

「ホザケ。俺が壊せねーのに、てめーなんかに壊せるわけねーだろ!」

「負け犬は引っ込んでな」

「この野郎!」

「なんの騒ぎだ」

「「っ!?」」


 喧嘩になりそうなところで、プリママがやってきた。グランベルさんとゴーゴルさんが直立不動になる。プリママの恐怖が魂に刻まれている行動だな。


「アリス君の作ったこのドームを拳で壊せるか、試していたんです。ちなみにグランベルさんは傷をつけはしましたが、壊すには至っていません」


 拳の跡を指差す。


「ほう、面白そうだ。次はゴーゴルか。さっさとやれ。その後はあたしがやるからな」

「はい!」


 ゴーゴルさんが息を大きく吸って吐く。そして、拳を突き出す。


「うおぉぉぉっ!」


 ゴンッ。ドームに拳の跡が出来たが、破壊には至らなかった。

 ゴーゴルさんもグランベルさんみたいに、拳が痛かったようで、めっちゃ涙目だ。


「だらしないねぇー、その無駄にデカい図体が泣いているぞ、お前たち」

「「すみません!」」


 プリママ登場。ラスボス感が半端ない。


「へー、かなりの強度だね。アリスはいい魔法使いのようだ」


 プリママがドームをコンコンと叩く。


「あ、ありがとうございます!」

「それじゃあ、いくよ」


 プリママは棒立ちの状態から、拳を出した。しかもその拳は裏拳だ。

 大した威力があるようには見えないが、あれで壊れるとでも思ったの? いくらなんでも舐めすぎでしょ。

 そう思っているのは、俺だけじゃない。グランベルさんもゴーゴルさんも眉間に皺が寄っている。

 だが、その次の瞬間、裏拳が当たった場所からドームにヒビが走り、ドーム全体がバリンッと砕け散った。


「「「うっそーんっ!?」」」


 俺、グランベルさん、ゴーゴルさんの声がシンクロした。

 やっぱりプリママは人間じゃないな。

 てか、どう見てもドームを破壊できるようなパンチじゃなかったでしょ? もしかしてあれなの? 経絡秘●的な?

 プリママは四男坊じゃなく長兄、いや『肉親も友も情けもない、あるのは己一人、生まれついての皇帝、将★のサウ●ー』だ!

 聖帝十●陵と共に埋まってしまえ!


「マジかー……」

「嘘だろ……」

「私のドームが……」


 グランベルさんは口をあんぐり開け、ゴーゴルさんも呆然とし、アリス君は簡単に破壊されたことにショックを受けて涙目だ。


「あんたら、このくらいできるようにならないと、SSS(トリプルエス)にはなれないよ」

「「無理だろ!」」


 グランベルさんとゴーゴルさんの声がシンクロした。その気持ちは分かる。激しく同意だ。

 どう考えてもプリママが異常なんだよ。やっぱり一国の王様に頭を下げさせた暴君は伊達じゃないな。


 その後、アリス君はプリママに何度もドームを破壊されながら、修行に明け暮れる。

 グランベルさんとゴーゴルさんは拳の骨が砕けていたので、ミルキーさんたちに説教されながら治してもらっていた。やせ我慢していたのね……。

 他の人たちは、グランベルさんとゴーゴルさんを揶揄いながら楽しく夕食を摂った。



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