第72話 打ち合わせ
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第72話 打ち合わせ
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朝8時半に冒険者ギルドに入ると、冒険者はかなり少なくなっている。その代わり学者たちの護衛と思われるお揃いの鎧を着た人たちが陣取っていた。
お目当ての【雷神の鉄槌】の皆さんはフードコートにいるようだ。
「グランベルさん、皆さん、おはようございます」
「おう、やっと帰ってきたか」
グランベルさんが手を振ってくるので頭を軽く下げると、3人も一緒になって下げていた。
「久しぶりね、クライド君。そちらの3人が知り合いの人たちね」
「はい、そうです。ミルキーさん」
「こちらがツキオス君、こちらがレットン君、こちらがアリス君です」
「「「よろしくお願いします!」」」
「おう、俺はグランベルだ。SSランク【雷神の鉄槌】のリーダーをしている」
「同じく【雷神の鉄槌】のミルキーよ。よろしくね」
「ミリアだ!」
「ドゴゴンだ」
「わたくしはリンリーリン」
挨拶が終わると、早速3人に戦闘技術の指導をお願いしてみた。
「おう、槍なら俺に任せろ!」
「よし、訓練場にいくぞ!」
グランベルさんとミリアさんが、ツキオス君とレットン君を引っ張っていった。がんばれー。
「アリスさんは、魔法が見たいのよね? どんな魔法がいいのかしら?」
ミルキーさんが魔法を見せてくれそうだ。
「私は回復、土、水の魔法が使えます。そういった魔法で参考になればと思っています」
「回復と水なら私が使えるわ。見てみる?」
「はい。是非お願いします」
ミルキーさんとアリス君が訓練場に向かうので、俺もついていく。
説明会にはまだ時間があるから、それまでは俺も魔力の訓練をしましょうかね。
「ギャーッ!?」
「うわーっ!?」
訓練所に入る直前、悲鳴が聞こえた。どうやら、ツキオス君とレットン君の悲鳴のようだ。
訓練場に入って見た光景は、2人が地面に倒れていたものだった。
「まったくあの2人は、手加減というものを知らないのだから、困ったものね」
丁度いいので、回復魔法を見せてもらうことになったようだ。
俺は訓練場の隅に陣取り、魔力循環をハイスピードで行う。
10分ほど魔力循環をしたら、今度は魔力触手を10本の指から出す。
最近はモンスターの魔力をチューチューしていたおかげで、魔力量が増えている。そのおかげもあり、魔力触手が10本出せるようになった。ただし、その制御は5本よりはるかに難しいので、訓練あるのみだ。
右手の魔力触手と左手の魔力触手同士を戦わせる。バチバチ激しいぶつかり合いだ。
30分ほど魔力触手の模擬戦をしていただろうか、グランベルさんたちの訓練が終わったようだ。
「ツキオスはなかなか見どころがあるぞ!」
ぐったりしているツキオス君の背中をバンバン叩くのはミリアさんだ。盾の才能があるようで、よかったね。
「レットンもなかなかのものだぞ」
グランベルさんに肩をバンバン叩かれたレットン君も目が死んでいる。グランベルさんに認められるのだから、そんな死んだ魚のような目をせず誇りなさい。
「そんじゃ、クライドも体を動かしておくか!」
「あ、俺はこの後説明会がありますので、今日は止めておきます」
またボコボコにする気でしょ!
「少しだけだ」
「その少しで再起不能になったら、プリママが暴れますけど、いいですか?」
「……よし、今日はこれまで!」
プリママが相当怖いようだね。フフフ。
そこにトルテンさんがやってきて、いつもの眼鏡をクイッとした。
「クライドさん。打ち合わせしたいので、会議室へお越しください」
【雷神の鉄槌】の面々もツキオス君らも一緒だ。
会議室ではプリママもいた。プリママは窓の外を眺めていた。後ろ姿はいい女だが、中身は残念、胸はまな板だ。
「ぐぎゃっ!?」
一瞬消えたかと思ったら、俺の顔をアイアンクローで掴んだプリママがいた。
「い、痛い……止めてよ、ママ」
「フフフ。何か失礼なことを考えてなかった?」
「ナ、ナンノコトデショウカ?」
メリメリと聞こえます!
痛いから、離して!
「ゴメンナサイ」
「フフフ。今回は許してあげるわ」
「アリガトウゴザイマス」
この人、怖い。
「あの師匠が手も足も出ないなんて……」
「ギルマス、すごいです……」
「私、まったく見えなかったよ……」
ツキオス君らの呟きが聞こえる。
「さて、座ってくれたまえ」
プリママが座れというので、ツキオス君らと座ろうとしたら襟首を掴まれた。
「クライドはこっちだろ」
黒板の前に立たされた。俺は課題を解かされる生徒か?
てか、黒板があるんだな。この世界は日本にあったものがちょくちょく見られる。不思議な感じの世界だ。
「クライド。地図上に遺跡の場所を記入してくれ」
「大体ですけど、この辺りですね」
簡易的な地図に×を描き込む。
「その辺りにいるモンスターは?」
「ドラゴンとかグリフォンですね。SSSが多いですし、ここにいくまでもSSSの生息地を横切ります」
「ドラゴンか!? 腕がなるぜ!」
グランベルさんが嬉しそうだ。それとは真逆にツキオス君は顔を真っ青にしている。ドラゴンなんて大したことないから、大丈夫だよ。
「片道は歩きで20日以上、これはそれなりに歩き慣れた冒険者、という条件がつきますね。学者はちゃんと歩けるのですか?」
「歩けなければ、置いていけばいい。あたしらはあいつらのお守りじゃないからな」
プリママの考え方、好き。
「いいのですか?」
「構わない。こっちはこっちで遺跡探索をする。あいつらは勝手についてくるだけだ」
「なるほどー」
学者が嫌いなんだね。




