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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第70話 やればできる

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 第70話 やればできる

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 レッサーベヒモスの突進。

 興奮しているのか、体から炎を噴き出しながらの直進的な攻撃だ。

 俺には爆走するトラックに見えるよ。


「僕は右、レットンは左だ」

「分かった」


 2人は連携してレッサーベヒモスを迎え撃った。2人が左右に避け、攻撃したことでレッサーベヒモスは足を止めた。その瞬間、アリス君の魔法が炸裂。


「アースランス!」


 突き上げるように地面から槍が出てきて、腹部に深々と刺さった。

 さらに喉にアースランスが突き刺さり、それでもレッサーベヒモスは生きている。さすがの生命力だ。


「こんのーっ!」

「やーっ!」


 ツキオス君とレットン君が2本のアースランスに刺され、身動きができないレッサーベヒモスに攻撃を加える。

 レッサーベヒモスはSランクの中では別格ともいうべき防御力を持っている。あの火を纏った体は攻撃しにくいだけでなく、高い防御力なので倒すのはなかなか難しい。

 だから、こいつだけSランクモンスターの中でかなり高い買い取り金額になっていたはずだ。ほぼSSランクのSランクだな。

 ツキオス君とレットン君の攻撃を嫌がったレッサーベヒモスは全身から炎を噴き出して2人を攻撃。

 危うく丸焼けになるところだった2人だが、なんとか回避……ちょっと火傷したか。


「ロックシュート!」


 巨大な岩が上空に現れ、落下。上から圧すると、アースランスがレッサーベヒモスの体を突き抜けた。ジ・エンド、だな。

 うな垂れ動かなくなったレッサーベヒモスの炎が徐々に小さくなり、完全に消滅した。


「ツキオス君50点、レットン君60点、アリス君90点」

「えーっと、それはなんですか?」

「3人に点数をつけているんですよ、ツキオス君」

「点数?」


 この世界には学校なんてないし、平民は家庭教師もいない。だから点数なんてものは、ほとんど知られていない。

 ま、貴族だったクライド君も家庭教師なんてものには無縁だったけどね。


「気にしないでいいですよ」


 俺が勝手に点数をつけているだけだから。


「それよりも、その剣と槍はもうダメだね」


 ツキオス君の剣もレットン君の槍も、ボロボロだ。


「どうしよう、武器の替えを持ってないですよ、僕たち」

「ここに連れてきたのは俺なので、3人はちゃんと無事に帰します。ですが、俺が守らなくても、武器がなくても、無事に帰ることができる手段を、ツキオス君とレットン君に覚えてもらいます」

「あの、私は何をすればいいのですか、師匠?」

「アリス君はそのまま魔法を極めてくださいね」

「分かりました」

「それでは2人にはモンスターを感知してもらいます。もちろん、モンスターよりも先に感知できないと意味がないですよ」

「僕の耳とレットンの鼻、ですか」

「そうです。今よりもさらに広範囲の索敵ができないと、死にますよ」

「そうです、か」

「僕、がんばります」

「レットン君は前向きでいいですね。ツキオス君もがんばりましょう」

「分かりました。僕も死にたくないので、がんばります」

「人間、死ぬ気になってがんばれば、なんでもできるものですよ、2人とも」


 2人は死にたくないのだろう、必死に索敵範囲を広げた。おかげで、大概のモンスターは避けて進めるようになった。

 2人が協力すれば、モンスターの奇襲を受けることはないだろう。問題は音も臭いも出さないか、微妙なものしか出していないモンスターだ。

 最初にツキオス君が襲われたジュブレールエメラルドスネークは臭いが周囲の木々と変わらないモンスターだったが、心臓の音を聞き分けることができるようになったツキオス君によって索敵可能になった。

 やればできるじゃんね。


 そんなわけで、ジュブレール大森林から出て、ホルトンに向かった。

 久しぶりに顔を見せた俺に、門を守る警備兵さんたちが敬礼をしてくれる。俺も敬礼し、冒険者証を見せて通る。

 3人は不思議そうにその光景を見ていたが、冒険者証があるので問題なく通過。

 冒険者ギルドに向かう間に出会った警備兵の皆さんにも敬礼されるので、敬礼を返す。


「先ほどから警備兵が師匠に敬礼してますよね?」

「師匠は何者なんですか?」


 ツキオス君とレットン君のその疑問に、俺はただ微笑んで応えるだけにした。だって、養母が暴君だなんて、恥ずかしくて言えないじゃん。

 冒険者ギルドに入ると、昼過ぎの暇な時間帯なのに人が多い。

 魔力フィールドでプリママがどこにいるか確認し、解体所へと向かう。解体所には空いており、暇そうにしているジョルゴスさんの姿を発見したので、声をかける。


「ジョルゴスさん、引き取りをお願いします」

「ん、おう、クライドか。今までどこにいっていたんだ?」

「ちょっと知り合いを迎えにいっていたんです」

「知り合い? 後ろの坊主たちか?」

「はい。こちらがツキオス君、こっちがレットン君、この子がアリス君です」

「「「よろしくお願いします」」」

「おう、俺はジョルゴスだ。ここの主任をしている」


 巨躯のジョルゴスさんに見下ろされ、萎縮する3人。顔が怖いって……。


「で、今日は何を持ってきた?」

「この3人が狩ったレッサーベヒモスとジュブレールエメラルドスネークです」

「この3人が狩ったのか? クライドじゃなくてか?」

「俺は手を出してませんよ」

「ほう……まあいい。こっちへこい」


 作業場で2体を出す。


「いい型だ。それにジュブレールエメラルドスネークの皮にあまり傷がないな」


 ジュブレールエメラルドスネークの皮はかなり綺麗な緑色をしている。それこそエメラルドのような美しさだ。

 だから、皮の価値が高い。以前、狩ったた時にたべた肉は、鶏肉のような感じで悪くない味だった。ただ、ライークと比べると、ライークのほうが美味しいと断言するけど。


「お前ら、冒険者証を出せ……Dランクかよ!? まったく、なんでDランクがSランクのモンスターを狩ってくるんだよ。どこかの化け物と同じじゃねぇか」

「化け物だって、よかったね、3人とも」

「いや、その化け物は師匠でしょ!?」

「うん、師匠ですね」

「師匠に間違いないわね、化け物は」

「嫌だなー、俺はただの人ですよ。痛っ!? なんで殴るんですか、ジョルゴスさん!?」

「誰がだたの人だ。お前が一番の化け物だよ」

「えーっ!?」


 驚愕の事実!?



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