第41話 しくじった
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第41話 しくじった
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気球探索2日目。これまで何度もモンスターの襲撃を受け討伐した俺だったが、とうとう遺跡を発見した。
遺跡はホルトンの町から歩きで3日ほどの距離にあり、森に飲み込まれていた。ちょっと見ただけでは分からなかっただろう。
大きな建物は倒壊しかけているけど、蔦や苔に覆われていて魔力フィールドがなかったら、通り過ぎるところだった。
気球を下ろし、俺は遺跡の中に入っていく。
最近は誰もきていないのか、自然と同化している。
「フッフフンフーン♪」
鼻歌が出るほど俺の胸は高鳴っている。
そして現れたモンスターは、Sランクのメタルトロル。皮が金属のように硬く、剣の刃を弾くらしい。
そんな強力なモンスターが5体だ。
「正直言おうか。5体も要らないですけど!」
あの巨体は4、5tありそうだ。そんなものを5体も収納したら30-6のマジックバッグがあっと言う間に一杯になるじゃないか!
そんなわけで、拘束して魔力を吸い出すのだけど、ほんの少しだけ残しておく。そうすると、メタルトロルは動けなくなるけど、死ぬことはない。
「さすがはジュブレール大森林だな。30-6のマジックバッグでもすぐに容量が満タンになりそうだよ」
動けなくなったメタルトロルの横を通り過ぎ、大きい建物へと入っていく。
いまにも崩れ落ちそうな壁や天井、そして床もいつ崩落するか分からない。そんな中を気をつけながら進んでいくと瓦礫の山がある。その瓦礫をマジックバッグに収納し、横に出すを繰り返すと地下に繋がる縦穴が出てきた。
この縦穴は魔力フィールドで結構前に発見していたけど、おそらくはエレベーターの縦穴だと思われる。古代文明は機械文明が発達していたのだろう。
迷う必要はない。この縦穴を降りていかずして何が冒険者か。
「アイアム冒険者! レッツゴー!」
ライトを発動させ、魔力触手をつっかえ棒にしながらゆっくり降りていく。縦穴は100mはあるが、3カ所に扉があるようだ。
1カ所目と2カ所目の扉は、向こう側が完全に崩落している。そして一番下の3カ所目はエレベーターの残骸っぽいものがあるけど、これはマジックバッグに収納した。
扉は閉まっている。構造的に自動ドアのようなもので、鍵穴はなく無理やりこじ開けるしかなさそうだ。
「本当に完全にエレベーターだな、この穴」
魔力触手でわずかな隙間をこじ開けると、その先は廊下になっており、20mほど先のどんつきにまた扉がある。
その扉も鍵穴がない自動扉のようなものなので、魔力触手によって力技で開けて進む。
「遺跡のお宝発見ですよー……あれ?」
目の前には金銀財宝、ではなく本があった。本棚にビッシリだ。
「こんなに本があるってことは、図書室? せっかくお宝ザックザクと思ったのになー」
本もお宝かもしれないけどさー。
そんな感動も何も浸っていないと、ピーピーピーピーと警報が発せられた。
「あちゃー、警報が鳴ったってことは、システムが生きていたってことかー」
崩落こそしていないが、この建築物が生きているとはさすがに思わなかったので、そこら辺はあまり気にしてなかったなー。
カタカタと軽い音が警報音に紛れて聞こえる。何かが動いている……?
そして現れたのは、四角いボックスに4本の細い脚のある機械だ。大きさは中型犬くらいか。
4足をカタカタ鳴らし歩いてきて、俺の10m前で止まった。
「degurabekuiderugouto」
「え? 何? 何か言った?」
意味不明っす。
今のは古代文明語かな?
「appurekkuforugabenuizakorudemu」
「すまないな、何を言っているか分からないんだ」
俺がそう言った瞬間、ボックスの側面が開き、そこから銃口が出てきた。
「マジかよ!?」
俺は常日頃から魔力結界を体に貼りつけている。その魔力結界をゴリゴリに強化していく。
あれは危険だ、と危機を管理している勘がそう言っている。
くそ、逃げる場所が通路しかない。俺は速攻で部屋を出て通路を戻る。
ダダダダダダダッ。
「くっ!? ウオォォォッ!」
魔力結界が弾丸を防ぐが、1発1発があり得ないくらい強力だ。Sランクモンスターの攻撃にもびくともしない俺の魔力結界が、ガリゴリ削られていく。
エレベーターまで戻ったところで、1発の弾丸が魔力結界を貫通し、俺の左足を撃ち抜いた。
「ぐあっ」
足が引き千切られたような痛みを、歯を食いしばってエレベーターの穴に飛び込み、魔力触手を使って穴を上る。
ボックスは穴の手前まで追いかけてきたが、そこで止まって引き返していった。
「くそ……いってーなー……」
魔力触手で左足に残った弾丸を引っ張り出す。
当たり所が悪ければ即死だった。俺にはまだ運がある。まだ生きてもいいようだ。
「ぐぅ……」
動脈を傷つけたようで血が大量流れ出ている。
「ハイヒール」
覚えていてよかったよ、ハイヒール。
だけど失った血はすぐには戻らない。
魔力結界を縦穴に展開して固定し、俺はそこで横になった。
「しくじったわー」
流れ出た血を作るために、パルクラスのレバーを火で炙って食べる。
「くそ。次は失敗しないからな!」
レバーを食って食って食いまくる。
食った後は寝る。
起きたらまだふらつく。
「……まだ血が足りないな」
またレバーを食いまくる。そして寝る。
「随分と楽になった……ふー」
さて、あのボックスを倒す方法を考えないとな。
魔力結界の底にちょっとした穴を開け、魔力触手をロープ代わりにして逆さまの大勢でエレベーターの入り口から頭だけ出す。
ボックスは図書室エリアに戻ったが、入口付近で待機している。
嫌だねー、俺を待ち受けているようだよ。




