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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第36話 潔白を証明

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 第36話 潔白を証明

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「これからの質問には、全て「はい」で答えてくれ」


 俺は頷いた。


「君はAランク冒険者か?」

「はい」


 水晶が赤く光った。嘘だ。


「君はDランク冒険者か?」

「はい」


 水晶は青く光った。本当だ。


「君の名前はクライドか?」

「はい」


 水晶は青く光った。本当だ。

 クライド君の本名はクライドフェールンだけど、俺はクライドだからな。


「クライドはロイメス男爵家五男のアッパス殿を殺したか?」

「はい」


 水晶が赤く光った。嘘だ。

 あれは自殺なのだから、俺のあずかり知らないことだ。


「赤色だ。つまり、クライドはアッパス殿を殺していない。ゴルガス殿、分かったかな?」

「そんなはずはない!」


 ゴルガスが唾を飛ばして否定した。なぜか半狂乱のような状態だ。彼をここまで狂わせる原因はなんなのか?


「この嘘を見抜くマジックアイテムが正常に動いていることは、ゴルガス殿がしっかりと確認している。それなのにどんな根拠があって、違うと主張するのか?」

「そ、それは!?」


 タジッと1歩後ずさるゴルガス。

 それを見て俺は手をプレートから離し、息を吐いた。


「ちょっといいですか?」

「なんだね、クライド」

「この際なので、もう少し質問してもらえますかね、あの人が納得するまで。二度と変な言いがかりをつけないようにしてほしいのです」

「……いいだろう。これからの質問には素直に回答をしてくれ。嘘を吐かないようにな」

「はい」


 再びプレートに手を置く。


「ゴルガス殿。質問してみるか?」

「当然だ! 貴様! アッパス様に何をした!?」

「それは殺したかという意味の質問ですか?」

「ゴルガス殿。抽象的な質問は避け、質問は明確にしてくれ」

「……アッパス様をなぜ殺した」

「俺はアッパスという人を殺していません」


 水晶は青く光った。本当だ。


「くっ……貴様はアッパス様を知っているだろ!?」

「1度森の中で会いました」


 水晶は青く光った。本当だ。


「その際にアッパス様を殺しただろ!?」


 俺は大きくため息を吐いた。

 先ほどから殺してないと水晶が反応しているんだから、いい加減他の質問をすればいいのに。


「殺したから答えられないのだろ!?」

「同じ質問ばかりしないでください」

「クライド。質問に答えるんだ。アッパス殿を殺したのか?」

「殺してませんよ」


 水晶は青く光った。本当だ。


「この人はどうしても俺を犯人にしたいようですね? 何か俺に恨みでもあるのですか? そもそもロイメス男爵領はただ通り過ぎただけで、関わりなんてないのに?」

「ゴルガス殿も同じことばかり質問しないでくれ。他に質問がなければ、これで終わるぞ」

「ま、待て! こいつは必ずやっているはずなんだ?」

「ゴルガス殿。では、貴殿がこのプレートに手を置き、クライドがやった証拠を持っていると、証言してみるかね?」

「うっ……」

「その反応だけで、証拠もないのに無理矢理クライドを犯人にしようとしているのが分かるぞ。いい加減にしないと、ただでは済まなくなるがいいのか?」

「くっ……」

「あのー、俺の潔白は立証されましたよね? もうロイメス男爵家から狙われないと思っていいのですかね?」

「ああ、クライドの無実は確定した。今後、アッパス殿を殺害した罪において、ロイメス男爵家が君を裁くことはできない。ゴルガス殿はそのことをロイメス男爵に伝えられるがいい」

「うっ……」

「それはどうしてでしょうか?」

「ああ、そうか。冒険者はあまり知らないかもしれないな。実は―――」


 オルガノさんに聞いたのだが、貴族には貴族のルールがあるそうだ。

 罪を犯した者を裁くのは、その罪人を捕らえた土地の貴族だ。そして罪を確定させるのも、その土地の貴族である。

 ただし、貴族の親類縁者を害した者は別だが、これも当事者の家から人が出ており、捕縛された土地で取り調べが行われて白だと分かると、二度と手出しができなくなる。

 ここで大事なのが、『当事者の家から人が出ている』必要があることだ。つまり立会人だね。この立会人がいないと、その取り調べ自体に有効性がなく、当事者の家が独自に対象を捕縛して取り調べることができるのだ。もちろん、立会人の同席を求めたのに、拒否された場合も同様の扱いになる。

 今回の場合、ロイメス男爵家からゴルガスが出席していることから、俺の潔白が立証されたらロイメス男爵家は俺に対して手出しができなくなる。

 もし、手を出せば、それこそプレンサス伯爵の顔に泥を塗ったことになり、戦争に発展しかねないのだ。

 伯爵と男爵で戦争になるかというと、まずならない。家格も違うが戦力も違うのが普通だ。


「このことは冒険者ギルドにも通達する。もし、ロイメス男爵家がクライドに手を出した場合、冒険者ギルドと我がプレンサス伯爵家を敵にすることになる。ゴルガス殿も貴族家の家臣であれば、そのことを知らぬとは言わさんぞ」

「うっ……」

「それでは俺は解放してもらえますね」

「ああ、もちろんだ。時間を取らせたな」

「いえいえ、身の潔白を立ててくださり、ありがとうございました。これで失礼します」

「クライドは本当に冒険者か? 随分と丁寧な言葉遣いだな」

「俺は貴族ではないですよ。言葉遣いは、こんなものではないですか?」

「ハハハ。こんなものか。なるほどー」

「それでは」

「詰所の前まで送らせる。おい」

「はっ!」


 俺はゴルガスの目の前を通り、控えていた兵士からマジックバッグと剣を受け取って個室を出た。

 兵士に連れられ詰所を出ると、両手を突き上げて背伸びをし、大きく息を吸った。


「シャバの空気は美味いですねー」



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