第34話 クライド塾(完)
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第34話 クライド塾(完)
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6日目。ツキオス君とレットン君の剣と槍は、そろそろいいと思う。これ以上は俺では教えられない。俺も少し齧っただけなんで。
「そろそろモンスターを狩りましょうか」
「いいのですか!?」
「ええ、いいですよ。ツキオス君」
今の3人ならゴブリン程度にどれだけに囲まれても負けないと思う。数によってはドームの中で長期戦をすることになるけどね。
魔力フィールド、魔力触手、魔力結界は、3人は使えなかった。これらの魔力操作はもっと練度がいるのかもしれない。もしかしたら、俺が転生者だから使えているのかもしれない。
どっちにしろ、魔力の訓練は魔法に頼らない身体強化が可能だし、魔法を素早く発動させるのにも役に立つから、訓練を続けて損はない。
本当は魔力フィールドだけでもできたら、索敵の役に立つんだけどなー。その代わり、ツキオス君は耳に、レットン君は鼻に魔力循環を集中させ、強化するように指示した。
「あ、耳が……遠くの音が聞こえます」
「僕も色々な臭いが分かります」
「ツキオス君はよく聞こえるでしょ?」
「はい」
「音を聞き分け、モンスターや人間の接近を早めに気づくようにね」
「はい!」
「レットン君の鼻もかなり利くようになったと思うけど、鼻は風の向きに左右されるから、気をつけてね」
「はい」
3人と共に森へと向かった。
魔力フィールドには、多くのモンスターの姿がある。
「アリス君。ウオーターネットは大丈夫だね」
「はい。瞬時に発動できます」
俺は頷き、微笑む。
ドームを瞬時に発動できるようになったアリス君には、水魔法で網を作る訓練をしてもらった。さすがのアリス君だ。たった2日で水網をものにしたよ。これで鳥系モンスターを狩りやすくなる。
俺自身は発動させられる魔法属性に制限がないように思えるのだけど、アリス君は回復、土、水属性しか使えない。
俺の魔法が全属性使えるのは、転生者だからなのか、この世界の常識がなかったことで好き勝手に魔法を使っていたからなのかは、分からない。
魔力フィールドは展開しているけど、索敵はツキオス君とレットン君に任せる。
俺はいざという時の補助要員で、基本は口を出すだけで手を出さない。
「師匠、鳥の声がします」
先に気づいたのは、ツキオス君だ。
「どっちですか?」
ツキオス君が耳に手を当てて方角を確認する。
「この方角です」
ツキオス君が2時の方角を指差す。
「距離は20mもないと思います」
距離まで判断できるとは、なかなかやるね! ツキオス君は聴覚による空間把握能力に長けているのかもしれないね。
「それじゃあアリス君、ネットをお願いします」
「はい。ウオーターネット!」
空に蜘蛛の巣状のネットが展開された。
「レットン君。石を投げてください」
「は、はい。やっ!」
意外と腕力のあるレットン君。魔力循環からの身体強化も相まって、かなりの腕力だ。レットン君は気が弱いため槍を使っているけど、腕力はツキオス君よりある。
ツキオス君は170cmの細身、レットン君は175cmで恰幅がいい。そんな感じなので、体重差もあるだろう。
ちなみにアリス君は150cmの可愛らしい少女だ。
石が木に当たり、鳥が飛び立つ。その先にはネットが展開しているので、鳥は絡め捕られてしまった。
ネットの中でバタバタと足掻くが、地面に落ちてくるとツキオス君とレットン君が動けない鳥にとどめを刺した。
それはいいんだが、石が木にめり込んでいるよ。いい感じに身体強化できているようだね!
「こんなに簡単にアルフィンを狩れるなんて……」
「本当に僕たちが狩ったんだよね?」
「お兄ちゃん、レットン、やったわね!」
3人が抱き合って喜んだ。
今回はアルフィンが8羽手に入った。ライークに比べ小型で単価は安いけど、それでも1羽が4万から5万Gにはなる。それが8羽なので、最低でも32万Gだ。
「3人とも、おめでとうございます」
「これも師匠のおかげです! ありがとうございます!」
「ツキオス君たちががんばったからですよ」
「師匠のおかげです。本当にありがとうございます」
「レットン君もよく頑張りました」
「師匠、私本当になんと感謝すればいいのか……」
「アリス君もよく頑張りました。ですが、これからも精進は怠らないようにしてくださいね」
「はい!」
「さて、こいつらでは戦った気にはなれないと思うから、次のモンスターを探しましょうか」
「「「はい!」」」
次はレットン君がゴブリンを発見した。ゴブリンは臭いので、かなり遠くから臭ってきたらしい。
「30m先にいます。数は5体です」
「5体なら、3体をアリス君が、残りは1体ずつツキオス君とレットン君が倒してください」
「「「はい!」」」
草むらに隠れ、ゴブリンを視認する。5体が動物を食べている。
「いきます。アースランス」
最初にアリス君が土魔法で地面から槍をゴブリンに突き上げる。3体同時に槍に刺されてうな垂れている。それを見た2体が「グギャッ」と耳障りな声を発してキョロキョロと周囲を窺う。
「いくぞ、レットン」
「うん」
2人が草むらから飛び出すと、ゴブリンのほうもこちらに気づいた。
双方走り寄る。
「やーっ!」
ツキオス君が地面を蹴って飛び上がり、剣を振りおろす。
「グギャッ」
ゴブリンがその剣を受けたが、身体強化して力が上がっているツキオス君はゴブリンの剣を弾き、がら空きになったその胴体に剣を突き刺した。
「グ……ギャ……」
ゴブリンが力なく倒れた。
一方レットン君は、突っ込んでくるゴブリンに合わせて槍を突き出した。その突きは鋭く、ゴブリンの喉に刺さった。
「ゴフッ……」
「はぁはぁ……やった、やったよ、僕!」
倒れるゴブリンを見て、レットン君は飛び跳ねて喜んだ。
「3人とも、よくやりましたね」
「「「師匠、ありがとうございます!」」」
「今後は3人で力を合わせ、やっていってくださいね」
「師匠……」
「ありがとうございます、師匠」
「私、師匠のことを忘れません」
「生きていれば、どこかで会えると思いますから、その時は酒でも飲みましょう」
「「「はい!」」」
これでクライド塾は終わりです。
さようなら、3人。
See you again




