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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
3 桜水泉

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電車の旅

 弁当を食べ終わり、先生のゴミと僕のゴミをまとめて袋に入れる。ふと先生の方を見ると、先生は食べ終わって副交感神経が優位になったのだろう。窓から入ってくる日の光を浴びながら気持ちよさそうに寝ている。先生に直接は言えないが、本当に子供にしか見えない。


 昨日寝てないって言ってたもんな。気持ちよさそうな顔だ。


 先生の幸福そうな寝顔を見ていると自然に笑みが溢れる。本来、年上の人間に対して使う表現ではないとは思うが、先生の顔を見ているととても和むような、落ち着くような微笑ましい気持ちになる。例えるなら、親戚の子供たちが遊び疲れてすやすや寝ているのを微笑ましげに見ている時のような。


 そんな先生を見ていると、僕にも眠気が襲ってくる。昨日は早めに布団に入ったが、それでも睡魔というやつは満足しないらしい。僕の瞼の上で元気にテントを張り始めた。いくら筋トレをしようとも鍛えることのできない部位が、完全に奴らの支配地へと変わり果ててしまったようだ。全く睡魔というのは、場所を選ばない。とりわけ、電車の中という場所は、奴らの生息域の中でも屈指の生息地なのだろう。電車の程よい揺れと管理された温度が心地よい眠りの世界へと誘う。


 ああ、ここが人類のゆりかごか。


 そんなことを考えながら、僕も先生と同じ世界へと迷い込んでいった。



「君、そろそろ起きたまえ。」


 僕の肩をどんどんと叩きながら、先生が僕を起こす。声は優しいのに行動はそれに伴っていない。僕は心地よい世界から急に現実の世界へと引き戻された。


「は!やばい!」


目を開いた僕は立ち上がり周囲をキョロキョロと見回す。先生の強い衝撃による目覚ましで、僕は寝過ごしてしまったのだと焦ってしまう。


 周りを見渡すと、僕の突然の行動に驚いた周りの乗客たちと目が合う。360度全ての方向の乗客(先生を除く)と目を合わせ、その人たちが目を丸くしている様子を眺め、僕は自分の顔が熱くなっていくのを感じながらストンと自分の席へと座り直した。隣では先生が、「君は一体何をしているんだい?」といったような憐れんだ表情で僕を見ている。


 いや、あなたの起こし方のせいですけどね!


「すみません。」


 シュンとしながら先生へと言葉をかけると、かわいそうなやつを見るような目で僕を見ていた先生は、ニヤッと笑った。


「いや、すまないね。まさか、急に立ち上がるとは。」


 僕は内心でふくれっ面になりながらも、努めて冷静に先生へと質問する。


「先生、もうすぐ到着するんですか?」


「ああ、次の停車駅だ。降りる準備をしておきたまえ。」


 先生の声と同時に車内のアナウンスがかかる。


―「次は、〇〇駅。降り口は左側です。乗り換えは〜」


「この後は少し乗り換えをしつつ、また電車で移動だ。まあ、そこまで時間はかからないよ。」


「わかりました。」


 僕と先生は列車が停車するとすぐに降りて、次の電車のホームへと向かう。先ほど僕たちの周りに乗車していた何人かの人たちも僕たちと同じルートを辿っている。


 この人たちも僕らと同じ目的地だったりするのかな。


 先生は詳しい目的地の地名を教えてくれてはいないが、きっと有名な観光地なんだろうと勝手に思っている。それは先生がわざわざ取材旅行へと足を運ぶくらいなのだからという単純な理由だが、先生はそんなに単純な思考ではないという気もする。


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