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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
違和感

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進展

 僕が先生の仕事部屋に着くと、そこには休屋警部の姿もあった。


 おそらく、先ほど先生が言っていた、新しい情報とやらを報告していたんだろう。僕が部屋に入ると、僕に気がついた先生が声をかけてくる。


「やあやあ、お疲れさん。」


 休屋警部も振り返りながら軽く声をかけてくる。


「休屋警部、直接いらっしゃっていたんですね。」


「ああ、電話は聞かれている可能性もあるし、メールだと履歴が残るからな。」


「誰かに聞かれるとまずいんですか?」


「一応な。俺らは今回の件からもう手を引いたことになっているからな。それに、この間警視正にも少しな……」


「君、まずは例のものをもらってもいいかな?」


 僕は先生に頼まれていたものを先生に手渡す。


「どうぞ。」


「それはなんだ?」


「まだ秘密さ。」


 休屋警部の質問は、答えをはぐらかす。


「本当は君のところで調査してもらうのが手っ取り早いんだが、それはやめておいたほうがいいだろうからね。」


 休屋警部は首を傾げている。何が何だかわかっていない様子である。


 とはいえ僕も、何使うのかはわかっていないのだが……


「では、話を戻そうか。」


 先生は一つ手を叩くと、休屋警部の方に向き直る。


「ああ。」


 休屋警部は少し不満気な顔を浮かべながら、自分の手帳に目を落とす。


「えーっと、どこまで話したっけか。そうそう、前も言った通り、8年前の綺羅星両親の事故。やはりあれにも不思議な点は多く見つかった。それについて、灰呂の手を借りながら調査を進めていたところ、事故後に退職した警察官を発見することができた。」


「ほう、やめた警察官がいたか。」


「ああ、だけど探すのは本当に大変だったぞ。公的な記録では、その警察官は事故には関わっていないことになっていて、退官理由も自己退職ってことになっていたからな。」


「よく見つけられたね。」


「そこは俺じゃなくて、灰呂の力だな。当時の聞き込み記録や調書記録を徹底的に検証した結果、不自然な部分が見つかったらしく、どうやら事故に関わった警官の人数が改竄(かいざん)されていることに気がついたそうだ。説明されたが、俺には理解不能だった。」


 休屋警部は、両手を広げてやれやれと言ったジェスチャーを見せる。


「そこからは、その事故後の退職リストと照らし合わせながら候補を絞って行ったそうだ。」


「それはお見事だね。それで、その人にはコンタクトが取れたのかい?」


「灰呂がその後のおおまかな行方(ゆくえ)を絞ってくれたからな。あとは俺が足で探したよ。」


「さすが、名コンビじゃないか。」


 先生は休屋警部をお立てるが、休屋警部は苦い顔を見せる。どうやら、灰呂警部とはひとまとめにはされたくないようだ。


 灰呂警部とは僕は一度だけ会ったことがある。会ったというか声を聞いただけに過ぎないが。先生の部屋にバイトに来ていた時に、電話がかかってきたのだ。ある事件における先生の意見が聞きたいと。なんで先生なんだろうと思ったが、どうやら休屋警部から連絡先を聞いたということだった。


 僕の感覚では、休屋警部よりも丁寧な人だと感じた。話し方が穏やかで、知的な雰囲気が会話から感じられるような人だったと思う。


 別に、休屋警部が知的でないと言っているわけではない。まあ、知的なタイプではないと思うが。


「その人物に聞き込みは?」


「もちろん行ったとも。」


「さすがだね。」


「最初は渋っていたんだが、今回の事件のことを話したら、いろいろなことを話してくれた。今はそのことについての事実確認を進めるって段階だ。」


「なるほどなるほど。で、その内容は?」


 先生が休屋警部に質問する。僕も休屋警部の顔を見て、その口から発せられる言葉に集中する。


 ブーブー


 だが、その集中は僕のポケットにあるスマホから発せられたバイブ音で掻き乱された。


 僕はすぐにポケットからスマホを出し、画面を見る。そこにはホームズさんの名前が表示されていた。


 僕は部屋から一度出て、その電話に応対する。


「もしもし。」


「ワトソン君かい?」


「はい。」


「今どこだい?ミス紡のところにいるかな?」


「はい、先生の仕事部屋にいます。」


「ミス紡に伝えてくれないか?例の場所が判明したと。行く日はミス紡に合わせるから、ぜひ一緒に行かせて欲しいとね。」


「例の場所?」


「ああ、まだワトソン君は聞かされていなかったのか。とても重要な場所さ。」


 僕の脳内にはクエスチョンマークが無数に浮かび上がる。


 まあ、いつものことなのだが。


「とりあえずわかりました。先生が日程を決めたらすぐに連絡します。」


「頼んだ。僕はこれからもう一つの仮説についての調査をする。その場所編訪問日までには、なんとか形にしてみせるよ。では。」


 ホームズさんは、そう言って電話を切った。


 僕は再び部屋に入る。部屋に入ると、休屋警部は手帳をパタンと閉じている。どうやら先ほどの話は終わってしまったようだ。


 また大事な部分を聞けなかった。


 先生の方を見ると、休屋警部の話に満足したのか笑みを浮かべている。


「先生。」


 僕は早速先生にホームズさんからの電話の内容を伝える。すると、


「さすが、ホームズ君だね。タイミングも完璧だ。では、日にちを決めるとしようか。今回は私ちゃんたちに加えて、休屋君も一緒に行ったほうがいいだろうね。」


 先生の言葉に休屋警部は首を傾げる。


「一般人のお宅に、私ちゃんたちだけで言ったら怪しまれてしまうだろ?君がいれば捜査ということになる。」


「公権力の濫用だけどな。で、どこに行くんだ?」


「それはね……」


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