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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
10 名探偵ホームズ

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秘密

「だが、待てよ。待ってくれ。その推理で行くと、虹日さんはなんで死んだんだ?陰に殺されていないなら、他の誰かが殺したっていうことだろう?」


 休屋警部が突っ込む。確かに、そこは疑問である。僕も陰さんが自殺ではない可能性については思考が至ったが、その後に虹日さんが死んだ理由の説明がつかずに途中で思考をやめた。


「夕食のときまで虹日さんが生きていたとなると、その後の三時間の間に死んだっていうことだよな?その時間アリバイがないのは・・・。」


 休屋警部は、事情聴取を思い出しながら眉間に皺を寄せ、ある一人の人物を見る。一人だけアリバイのない人物、月夜を。警部の視線に釣られて菖蒲さんや桜花さんも月夜さんの方を見る。


 見られた月夜さんは驚いている。しかし、ホームズさんは軽く笑みを浮かべながら警部の推測を否定する。


「いいえ、殺されたなんて言っていません。ミスター虹日は自殺したんです。」


 ホームズさんの衝撃的な言葉に、今度はみんながホームズさんの顔を見る。


「何だと!?」


 その驚きを言葉にできたのは休屋警部だけだった。僕は驚きのあまり言葉にできない。隣の先生の様子を見ることもできない。先生も驚いているのだろうか。


「そんな馬鹿な。虹日さんが自殺だって?馬鹿げてる。虹日さんの遺体は首を切断されていたんだぞ?それに体は埋められて隠されていた。自殺した死体がそんなことになるか?」


「レストレイド警部。それはいい着眼点です。そう、自殺した遺体はあんなことにはならない。では、あんな状態にした人がいるはずです。そして、ここにいる人の中でそれができる人はただ一人。あなたですね。ミス月夜。」


 ホームズさんの言葉に再びみんなが月夜さんを見る。月夜さんは、今度は黙ったままだ。でも、そんなことがあり得るのか?あんなに大事に思っているお兄さんの体を切断して体を埋めるなんて。


「ホームズさん、そんなことが。いや、でも。あり得ない。」


 僕は思わず声を上げる。うまく言葉にできないが、あり得ないということだけは言葉にする。


「ワトソン君。実行できる人はミス月夜しかいないんだ。」


「だって、そんな。やる理由がない。」


「彼女には隠さなくてはいけない理由があった。それは決してバレてはいけないミスター虹日の秘密であり、そしてミス月夜を守るための秘密でもあった。」


 ホームズさんは月夜さんを真っ直ぐ見ている。月夜さんは、しばらく沈黙した後、一つため息をつく。


「お兄様の体が見つかった時点で隠し通すのは不可能ですね。それにホームズさんはもうわかっているようですし。」


 月夜さんはホームズさんの隣へと歩いていく。そして視線をこちらに向ける。


「お兄様の首を切断して体を埋めたのは私です。」


 僕は彼女の言葉が信じられず、言葉を発することができない。桜花さんや菖蒲さんたちも同じようだ。


「じゃあ、あなたが虹日さんを殺害したのですか?」


 動揺した様子を見せながら休屋警部が質問する。信じられないと言った顔である。


「レストレイド警部。落ち着いてください。ミスター虹日は自殺したと言いました。ミス月夜は、夕食の時私たちの前に姿を見せています。その後にミスター虹日を殺して、一人で穴を掘り、首を切断して埋めるのは時間的に無理です。」


「そ、そうか。では、どういうことだ?」


「ミス月夜は、虹日のある秘密を隠すために埋めたのですよ。私が言ってもいいのですか?」


 ホームズさんは月夜さんに確認を取るが、月夜さんは軽く頷き、そのまま俯くだけである。


 ていえホームズさんも月夜さんのその反応に頷き、一息ついてから口を開く。


「ミスター虹日は、ミスター虹日ではなく()()虹日だった。つまり、女性だったのです。」


「「「「「!?」」」」」


 大広間にいた全員に衝撃が走る。


「ミス月夜はそれを隠すために、体を埋めたのです。」


「いや、仮に虹日さんが女だったとして、どうしてそれを隠すために体を埋めなくてはならないんだ?」


 またもや口を出したのは休屋警部である。まあ、休屋警部は綺羅星家の話を聞いていないから仕方がないが、僕と先生は多少であれば理解できる。綺羅星家の当主は直系の()()しか継ぐことができない。つまり虹日さんはこの条件を満たしていないのだ。


「ここからは私の推測になってしまいますが、」


 ホームズさんが続きを話そうとした時、隣で俯いていた月夜さんが声を上げる。


「いいえ、ここからは私がお話します。私とお兄様の呪われた運命を。」


 月夜さんはもう話すしかないというような悲しみを含んだ表情を浮かべている。


「今ホームズさんが話したように、私と虹日、本当の読み名は虹日(にじか)ですが、は一卵性の同性双生児です。二卵性で異性なのに顔が似ているとされていましたが、あれは違うのです。ただ、一卵性であるというだけ。よくある話です。ですが、虹日は生まれた瞬間にある運命を背負ってしまった。それは綺羅星家の次期当主になることです。私たちの母親は、私たちの出産時の事情により、子供が産めない体になってしまいました。そして、父には男兄弟はいません。つまり、私たちの後に直系の男児が生まれないということです。そうなれば、決まりにより分家の資格あるものに当主の権利が移ります。ですが、それを私たちの父は許しませんでした。私たちの父は綺羅星家の権力という呪いに取り憑かれていたんです。そして、その結果虹日を男ということにしたのです。」


「したのですって言ったって、そんなこと可能なのか?」


「綺羅星家の力を使えば可能です。ですが、そのことを分家の方々に知られるわけにはいかない。当主であったおじいさまには反対されながらも、何度も頼み込み、何とかしてもらったそうです。これで虹日は戸籍上も男として誕生しました。私よりもほんの数分早く生まれただけで人生が決まってしまったのです。」


 それを話す月夜さんの表情はどこか憎しみにも見える暗い顔をしている。虹日さんの運命を変えた父親を恨んでいるんだろうか。


「とはいえ、虹日が当主になるのは当分先のはずでした。次の当主は父がなることになっていたからです。しかし、父は突然いなくなりました。()()()、急な事故で母もろとも死んだのです。これのせいで虹日が次期当主として確定してしまいました。そして、家の決まりがある都合上、二〇歳には確実に当主にならなければならないことが決まったのです。一方の私は、特に何かを縛られるということはありませんでした。ただ、マナーや作法などを虹日と一緒に叩き込まれただけです。ただそれだけ。虹日が決められた人生であるのに対して私の人生は自由でした。ですが、虹日は私に対して当たるということはありませんでした。私がモデルとしてスカウトされるとその応援をしてくれて、マネージャーまでしてくれました。いつも私の活動を支えてくれて、応援してくれました。今回のことも全ては私を守るためのものだったんです。」


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