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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
10 名探偵ホームズ

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ホームズの推理

 大広間にはまだ誰も来ていない。どうやら僕たちが一番早く着いたようだ。


「ホームズ君の推理を聞かせてもらえるということでいいんだよね?」


「はい。」


「ではその推理を楽しみにしていようか。」


 先生は大広間の奥側に行き座布団をとってその上に座る。僕も先生の隣に座る。大広間には続々と人が集まってきた。菖蒲さん、杜若さん、桔梗さんに、桜花さん。そして、月夜さんもすぐにきた。


「事件は解決したと、警部さんがおっしゃっていましたけど?」


 桜花さんはホームズさんに聞いている。休屋警部は、昨日の夜に事件は解決したとみんなに報告したようだ。


「先ほど、ミスター虹日の体が発見されまして。新たな可能性が生まれたので、皆さんに集まってもらったんですよ。」


「お兄様の体が見つかったんですか?」


 一番に反応したのは月夜さんだった。驚いた声を出しながらホームズさんに詰め寄る。虹日さんの体が発見されて喜んでいるのだろうか。僕の位置からでは表情までは見えない。


「すぐに警部も来ますので、少々お待ちください。」


 ホームズさんがそう言うと、各々が床に座る。大した距離があるわけではないが、僕たちと他の皆さんは顔を合わせて軽く会釈する程度の距離にいる。この状況で月夜さんたちに挨拶に行くようなことはできない。


 次に部屋に来たのは、さっき虹日さんの体を掘って運んでいた刑事さんだ。何かをホームズさんに耳打ちしている。ホームズさんはそれを聞き頷いている。何を聞いたんだろうか?その後、三十分しないくらいで休屋警部は宿に到着し、大広間にきた。


「体が見つかったと言うからきたが、なんだ?大広間に集まれって。事件は昨日の俺の推理で解決しただろう。」


「いいえ、レストレイド警部。昨日のあなたの推理にはいくつかの疑問点がありました。あの推理は間違っている。」


 ホームズさんは完全に言い切った。休屋警部はその言葉を聞き、あからさまに嫌な顔をする。まあ、自分が自信を持ってした推理が間違っているとはっきり言われたらあんな顔をするのも無理ないのかもしれないが。


「さて、皆さんお集まりのようですね。」


 いよいよ、ホームズさんの推理がお披露目されるのか。


「名探偵 皆を集めて さてと言い。本当にその状況を体験できるとはいい機会だね。」


 先生も隣で期待感を滲ませる表情をしている。とは言う僕もホームズさんの推理を楽しみにしている。



「では、私の推理をお話ししましょう。」


 ホームズさんはみんなの前に立ち、話し始める。僕たちはそれを座りながら聞く。休屋警部だけは入り口近くの壁にもたれかかりながら聞いている。


「まず、レストレイド警部に一つ。ミスター陰は自殺ではありません。殺されたのです。」


「「「「!?」」」」


 菖蒲さんたちと月夜さんはホームズさんの言葉に驚きの表情を見せる。先生はあまり驚いていないようだ。僕も薄々は予想していた事実なのでそこまでの驚きはない。


「そんなわけないだろう。陰はナイフを握って自分の腹に刺して死んでいた。それに奴は月夜さんのストーカーだったんだぞ。口論の末に虹日さんを殺してしまった。そして、観念した末に自殺したんだ。」


「では、その推理通りだとして虹日さんはいつ殺害されたとお考えですか?」


「は?そんなの時間はいくらでもあるだろう。午後三時には虹日さんはすでにいなかった。つまりこの時間以降に陰と会っていたんだ。」


「月夜さんに届いたメール。あれは六時半ごろでした。それの前ですか?後ですか?」


「どちらもあり得るだろ。前だとしても、陰が虹日さんを装ってメールをしたんだ。」


「それです。そこについてミス紡が疑問を呈していました。」


「なんだと?」


「メールにしろ何にしろ、文章にはその人の性格や癖が出る。特に虹日さんがいないことに不安を感じていたはずの月夜さんに虹日さんを装ってのメールは、偽装がバレる可能性がある。そんな状況でリスクを冒してまでミス月夜のメールに返信する必要があるのかと。しかも2回です。夕方からにかけてミスター虹日は2回ミス月夜にメールを送っている。」


 休屋警部は言葉につまり黙ってしまう。


「そして、これは極め付けとでも言えるかもしれませんが。ミス月夜。夕食の時送られてきたメールの文言をもう一度見せてもらってもいいかな?」


 ホームズさんは月夜さんにメールを見せてくれるように促す。月夜さんは少し戸惑いながらもスマホを出し、メールを開いてみんなに見せる。


 遅くなってすまないね。思ったよりも用事に時間がかかってしまった。夕食は自分で済ませたから申し訳ないけど、菖蒲さんたちにそのことを伝えておいてもらえるかい?桔梗さんにも謝罪の意を伝えてくれ。すぐに帰るよ。鍵がないから部屋で待っていてほしいな。


「これが何だと言うんだ?」


 休屋警部はメールを見てもわからない様子である。すると、先生が思い出したかのように声を上げる。


「そうか、名前か」


「その通り、このメールには菖蒲さんと桔梗さんの名前があります。」


「それがどうしたと言うんだ?」


「警部、昨日3人に事情聴取した時の質問をお忘れですか?ミスター陰とはミス菖蒲もミス杜若も大した会話をしていないのです。それにミス桔梗に至っては会ってすらいない。」


「だが、名前くらいはわかるんじゃないか?」


「その可能性もあります。しかし、メールの内容を見ると、それぞれが何の担当をしているのかを理解していないと書けない内容だと思いませんか?」


 確かに、夕食がいらないということは菖蒲さんに伝え、料理を作っている桔梗さんに謝罪している。桔梗さんに会ってもおらず、菖蒲さんたちとも会話をしていないのに彼女が料理を作っていると知るのは無理だろう。


「つまり、このメールはミスター虹日が書いたものだと推測できるのです。」


「だ、だが、そのメールをした後に陰に殺されたのかもしれないだろう。」


「本当にそうでしょうか。先ほど警部ご自身が言っていたように、ミスター虹日は午後三時過ぎにはミスター陰と会っていたんですよ。夕食までの3時間に何もなく、メールを返す余裕すらありながら、その後に急に殺された?不自然でしょう。」


「だが、」


「それに、ミスター虹日は手紙を見てミスター陰に会いに行ったんです。呼び出されたと考えるのが自然でしょう。そして呼び出されていくということは、ミスター虹日は、スター陰がストーカーであるということを認識しながら行った可能性が高い。出なければ呼び出されても行かない可能性が高いですからね。そんな状況で呼び出され、会っていたのに事件が起きたのは六時以降というのはあまりにもおかしい。つまり、夕食の前にはどちらかは死んでいた可能性が高いということですよ。」


 休屋警部は、口を一文字にして何も話さない。


「そして、ミスター陰が死んでいたと仮定すると、誰が殺したのか?答えは一つ。ミスター虹日です。そしてミスター虹日が殺してしまったとするならば、メールの意味も理解できる。メールを返さなければ心配した月夜さんが探しに来る可能性がある。一人ならまだしも、昨日実際に起きたように我々と一緒に探す可能性も十分考えられる。だからメールを送って、その時間を先延ばしにしたんです。」


 ホームズさん以外誰も言葉を発さない。ただ、ホームズさんの推理の声だけが大広間に響く。休屋警部も自分の推理が間違っていると感じたのだろう。


「そして稼いだ時間でミスター陰が自殺したように偽装した。先ほど、刑事さんに調べてもらいました。ミスター陰の遺書と思われたもの。あれはやはりミスター陰のものではありませんでした。宿泊者台帳と照合した結果、ほとんど間違いなく虹日さんの字で間違いがないようです。つまり、自殺したように見せかけてミスター二次被害書を書いたということです。手書きにせざるを得なかったのは、これが計画的な犯行ではなく、突発的なものであったからと推測できます。」


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