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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
10 名探偵ホームズ

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隠す目的

「まずは、確定している事柄について整理していくべきだろうね。」


 先生が僕たちに話す。僕はノートをバッグから取り出し、事件の概要とメモを書いていく。これも記録係としての僕の役割だ。というよりも推理ができない僕のせめてもの役割である。先生とホームズさんがお互いに今わかっている事実だけを列挙する。


① 目的は不明だが、虹日の首は切断され、その体は隠された。


② 陰は腹部の刺し傷からの出血で死亡した。


③ 陰は月夜のストーカーだった。


④ 午後三時以降、誰も宿を出ていない。


⑤ 午後三時以降、誰も虹日と陰を目撃していない。


⑥ 虹日は杜若との会話で、庭には従業員が来ないことを知っていた。



「そして、夕食前の三時間と夕食後の三時間どちらのアリバイもないのは月夜君だけだということ。」


 先生は深く息を吐きながらそう言った。僕は思わず書いていたペンを止めた。


「いや、それは。」


「ワトソン君。あくまで今は事実を述べているんだ。実際、その時間に何のアリバイもないのはミス月夜しかいないんだ。」


 僕は苦い顔をしながらも頷き、ノートに書く。


⑦ 犯行時刻のアリバイがないのは月夜のみ。


「今わかっているのはこんなところかな。」


 先生の言葉にホームズさんも頷きを返す。


「そして、ほぼ確実な事実としては、ミスター虹日とミスター陰は二人で会っていた。そして、メールの送られてきた時点では、ミスター虹日は生きていたということですかね。」


「ああ、そうだね。後もう一つ、陰君が死亡現場。あの桜の根元、覚えているかい?あの異常な量の出血は、あそこで虹日君の首が切断されたものと推測できる。」


「つまり、二人の死亡した現場は同じである可能性が高いと。」


「ああ、虹日君の殺害と切断が同じ場所で行われていたらそうなるだろうね。」


「確かにあの血の量は多すぎましたからね。二人分と考えれば納得できます。そして、わざわざ違う場所で殺害したミスター虹日を移動させて切断する合理的な理由は今の所なしですか。」


 僕はノートを書き終えてテーブルの真ん中に二人が見えるように置く。二人も改めてノートを見ながら、考えているようだ。


「ところで、ワトソン君。君、実にいい字を書くね。綺麗なうえに読みやすいよ。」


「ああ、私ちゃんの記録係だからね。」


 僕が褒められたはずなのに先生が威張っている。確かに僕は自分で言うのも何だが、字は綺麗な方である。昔、母親に文字はその人のひととなりや性格が全て出るから綺麗に書きなさいと教わったのだ。ありがとうお母さん。


「ん?」


 ホームズさんが不意に声を上げる。何かに気がついたのか?僕はホームズさんの顔を見るが、ホームズさんはすぐに表情を戻し、


「いやなんでもないよ。まだね。」


 そう言って再びノートに視線を落とした。



「さて、やはり一番のポイントとなるのは、見つからない虹日君の体か。」


「そうですね。」


「なぜ切断され、そして隠されたのか。そこには必ず大きな理由があるはずだ。Why done it(ホワイダニット)。なぜその行為を行ったのかの真相はこの事件の鍵になるはずだ。」


「体を隠すことの目的ですか。」


「ああ、首を切断すると言うのは意外と重労働だし、体を隠すのはもっと面倒だ。なのにそれを行ったのはなぜか。そうしなければならない理由があるはず。」


「体を隠すことで何かを隠したかった・・・。」


 僕の不意な発言に先生とホームズさんが沈黙する。


「確かに、体を隠すことが目的というよりも体を隠すことで何かを隠したと考えられる。いい発想だね、ワトソン君。」


 ホームズさんが僕に笑顔を向ける。僕は少し照れながら軽く頷く。


「だがそれを考えるのも、やはり体が見つからないことには考えることはできないか。」


 先生はそう言いながら部屋の天井を見上げている。一方ホームズさんは、ノートと僕が昨日撮った写真を見ながら真剣に考えている様子である。そして、ホームズさんがハッと何かを思いついたような表情をする。僕はその表情を見てホームズさんに声をかける。


「何か思いついたんですか?」


「いや、まだ仮説の段階だ。それに、そんなことがあり得るのか?いや、でもこう考えると・・・。」


 ホームズさんはブツブツと呟きながら、自分の考えをまとめているのかもしれない。先生はというと、スマホを取り出しながら陰さんの死亡現場、桜の樹の根元の血溜まりを撮影した写真を見ている。何枚も撮ったので、いろいろな写真を見比べるために何度もスクロールしながら観察している。


「ん?」


 今度は写真を見ていた先生が、天井を見上げていた体勢から状態を起こして、スマホに自分の顔を近づける。至近距離でスマホの画面の一枚の写真を凝視する。画面に顔を近づけても倍率が変わるわけではないのだが。


「虹日君の体の場所を見つけたかもしれない。」


先生は写真を見ながら、僕たちにそう宣言した。


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