表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
9 事情聴取

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/59

事情聴取3

 菖蒲さんたちが付いていたからか虹日さんの遺体を発見した直後の動揺していたときよりはいくらか落ち着いた様子を見せている。それでも、顔色は悪く落ち込んでいる様子が見てわかる。


 お互いのことをとても大事に思っている瓜二つの奇跡の双子。その片割れがあんなことになってしまい、傷心しているのだ。それでも、休屋警部の質問になんとか答えていく。多少言葉に詰まるところもあるがそれは仕方がないことだろうと思う。


「虹日さんは宿に帰ってきた後にすぐまた出かけて行ったんですか?」


「はい、三時ごろに宿に帰ってきたとき部屋に戻ると入り口のところに何か手紙のような封筒が置いてありました。それをお兄様が見て、その後出かけて行ったんです。」


「どこに行ったかはわかりますか?」


「いいえ、すぐに戻るからと言って要件も場所も言わずに出て行きました。」


「封筒の中身は?」


「それもわかりません・・・。すぐにポケットにしまって持って行ってしまったので。」


 きっと、あの時に封筒の中身を確認しておけばと思ってしまっているんだろう。あの時やらなかったという後悔はいつになってもなくならない心の傷になってしまう。それが肉親を失ったことにつながっているとなると、僕なんかでは想像もつかないほどの後悔だろう。


「虹日さんがあのようになってしまったことに何か心当たりはありますか?虹日さんが誰かから恨まれていたとか。」


「わかりません。お兄様は私と違って表に出る職業ではありませんから。それに今はもう綺羅星家の当主になっていましたし。」


「お家の方でのトラブルとかは?」


「ないと思います。そもそも当主になってからまだ日が浅いですし、今は相談役がついているので。」


「相談役?」


 休屋警部は綺羅星家に内情について月夜さんから聞いていないからか、聞き返す。


「お兄様はまだ若いので、先代当主が相談役としてサポートするんです。」


「そうなんですね。いろいろ大変そうだ。」


「いえ、相談役がいるおかげで楽ができそうだと言っていましたよ。」


「なるほど。綺羅星家は名家として有名ですが、横のトラブルはないと?」


「先代である祖父は当主である期間が長いですから、分家の方々のことは完全に掌握していると思いますよ。綺羅星家の当主ともなればその権力は絶大ですから。」


 自分で聞いては見たものの、スケールの大きい話に思わずペンを止めてしまっている休屋警部。大きく唾を飲み込みながら一つ頷く。


「お辛い時に申し訳ありませんが、月夜さんは虹日さんが出かけられてから夕食までの間はどこで何を?」


 月夜さんは顔を上げて休屋警部のことを見る。今自分が疑われている、アリバイを聞かれているということを理解しているんだろう。それでも、私を疑っているんですかと逆上しないのはそれが警察の仕事だと理解しているからなのか。悲しみの中にあっても冷静さは失っていない強い人なのだと思う。


「お兄様が出かけられてからは、部屋に一人でおりました。誰も部屋を訪ねてきていませんし、誰にも会っていないので証明することはできません。」


 休屋警部も月夜さんが今アリバイを聞かれているということを理解しているということを理解しているのだろう、どこか申し訳なさそうな居心地が悪そうな顔をしている。


「大丈夫です。それがお仕事だということはわかっているつもりですから。それであなた方に対して根に持つなんていうことはありません。」


「ありがとうございます。では、夕食後は?」


 休屋警部は月夜さんの言葉に安心したのか、質問を続ける。


「みなさんに見せたのですが、このメールが届きまして。お兄様がすぐに部屋に帰ってくると思いましたので、部屋でずっと待っておりました。その間も一人です。」


 月夜さんは夕食時にみんなで確認した虹日さんからのメールを見せながら休屋警部に答えている。僕たちも改めてメールを確認する。メールが送られてきた時刻は、午後六時半ごろ。


 確かに僕たちが大広間で夕食を食べていた時間である。休屋警部は先生やホームズさんの顔を伺い、間違いないと二人が頷くことでありがとうございますといってスマホを返す。


「そのあとは先ほど話していただいた通り、紡さんの部屋に行き、四人で虹日さんを探していたというわけですね。」


「はい、そうです。」


「なるほど。」


 休屋警部は手帳に書く手を一旦止めて、改めて月夜さんの顔を見る。今までよりも真剣な眼差しを向けているのか月夜さんの表情にも少し緊張が走っているように見える。


「月夜さん。あなた、ストーカーの被害を受けていたそうですが。それについて詳しく教えていただけますか?」


 休屋警部の質問に隣の先生もピクリと反応する。先生も直接聞いたわけではないから気になるのだろう。それにもしかしたら今回の事件に何か大きな関わりのあることかもしれない。


「はい、ですがストーカー被害は今に始まったことではありません。ちょっとしたストーカーのような行為をする方はみなさんが思われているよりも多いと思います。ですが今回のストーカーは普段の方々よりも少し過激でした。プライベートの盗撮写真やそれを用いた脅迫まがいの手紙まで、いつ実害が出てもおかしくはないとお兄様は言っていました。」


「誰が犯人かはわからなかったんですね?」


「はい。警察に被害届を出すかどうかも迷いましたが、お兄様が綺羅星家の当主になり、そして私もドラマの主演が決まっているこのタイミングで大きな騒ぎになるようなことをするべきではないと。だからストーカーの熱が冷めるまで少し露出を控えることにしてここを訪れたんです。」


「わかりました。ありがとうございます。」


 休屋警部はお礼を言いながら手帳を閉じる。そこで僕の隣にいる先生がおもむろに発言する。


「ちょっといいかな。ちなみになんだが、君たちがここを訪れることを知っていたのは何人くらいいるかな?」


 不意な質問に休屋警部も月夜さんも意表を突かれたような表情を見せる。とは言う僕も同じ顔をしていたかもしれない。


「え、えーと。おじいさま、先代の当主である私たちの祖父と・・・。いや、私はそのくらいでしょうか。お兄様はわかりませんが、誰彼構わず伝えていたと言うことはないと思いますよ。」


「そうかい。ありがとう。」


 先生は満足そうな顔で頷く。休屋警部が他に聞きたいことはないかと僕たちに視線を送るが、僕とホームズさんは軽く首を振ることで答える。


「では、一旦聴取は終わります。大広間に戻っていただいて結構です。次は、従業員だというあの女性を呼んできてもらってもよろしいですか?」


「え、と。」


 従業員が全員女性だから誰を呼べばいいのかわからないのだろう。月夜さんは僕たちに視線を送っている。


「ああ、あなたに付き添っていたあの3人のことです。全員一気に呼んでいただいて構いません。」


 休屋警部は自分の言葉を捕捉しながら、月夜さんに頼む。なんで今回は自分で呼びに行かないのだろうと思ったが、すぐに理由はわかった。


「いやあ。月夜さんについてはどう思う?」


 月夜さんが部屋を出るとすぐに振り返りながら僕たち3人に質問してくる。どうやら意見が聞きたかったから呼び出しを任せたらしい。


「どう思うというと、犯行に関わっているかどうかと言うことかい?」


 先生が答える。


「ああ、いまのところ犯行時間のアリバイがないのは月夜さんだけだからな。一応疑うのは大事だろう。犯行とは言っても何も殺人と言っているわけじゃないが・・・。」


「まあ、可能性はある。まだ今回の事件の全貌が全くわからないが、彼女には少し引っかかるところがあるのは事実だ。ただ、この違和感というか引っ掛かりが何かはまだわからないがね。それに彼女が虹日君をどうこうする動機はないだろう。」


 先生も曖昧(あいまい)なことしか言わない。まだ自分の中でうまく言葉にすることができない違和感があるのだろう。


「私が気になるのはやっぱりストーカー被害だね。虹日さんが何かしらに巻き込まれた結果ああなってしまったとするならば、可能性が高いのはやはりそのストーカー事件だと思う。まあ、その他に何かしらが二人の周りを取り巻いていた可能性はあるが。」


「それについては、今他のものにも調べさせている。虹日さんに何かトラブルはなかったのかをな。だが、妹の月夜さんも心当たりがないと言っていたからな。あまり期待できないかもしれん。」


「やっぱりストーカーについて調べるのが最優先だろうね。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ