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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
9 事情聴取

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事情聴取2

 次に休屋警部が読んできたのは、ホームズさんだった。


 ホームズさんと休屋警部は向かい合って座り、僕たちは休屋警部の斜め後ろに並んで座る。ホームズさんは、僕たちをみてニヤリと笑っている。


「では、家達さん。お話を聞かせてもらえますか?」


 休屋警部の質問にホームズさんは淡々と答えていく。多少離れていた時間があるとはいえ、ホームズさんは僕たちとほとんどの時間を一緒に過ごしていたから、犯行は無理であろう。と言うより、ここでホームズさんが事件の犯人だったら、衝撃的すぎる。衝撃のあまり失神してしまうかもしれない。


「では、三時過ぎに宿に戻られてからの一時間弱と夕食後風呂に入っていた間の数十分間以外は、後ろの二人と一緒にいたと?」


「そうですね、改めて考えると今日はほとんどの時間をワトソン君と過ごしているね。」


「ワトソン君?」


 休屋警部は誰だ、そいつと言うような表情を僕たちに向けてくる。僕は羞恥心に打ち勝ちながら僕ですと弱々しく手を上げる。そんな呼ばれ方をしているのかと言いながら手帳にメモをする警部。


 頼むから変なことはメモしていないでくれ。警察の調書にワトソンとして名前が刻まれるのは流石にやめてほしい。


「宿泊客の中で陰さんを見ていたのはあなただけだそうですが?」


「そうですね、ミスター陰と私は一昨日からこの宿に宿泊しているので。一昨日は姿を見て軽く挨拶しましたよ。」


「その時の印象などはありますか?」


「いや、特にこれといった印象はありませんね。普通の男って感じで、挨拶したときも普通に日常会話をしただけです。」


「何をしにこの宿に来たかは聞きましたか?」


「それは聞きましたね。でも、普通に観光しに来ただけだと言っていました。桜と温泉を楽しみにきたと。」


「なるほど。その後はあなたも他の皆さんと同じく陰さんの姿は見ていないんですね?」


「昨日からは一切見ていませんね。ミス桜花の話では部屋にこもっているということでしたしね。」


「虹日さんについてはいかがでしょうか?昼間は一緒に行動されていたということですが、この宿に帰ってきてから姿は見ましたか?」


「いや、私も皆と同様に姿は見ていませんね。というのも、帰ってきてからもほとんどの時間を後ろのお二人を過ごしていましたから。」


「なるほど。」


 休屋警部はメモをとる手を動かしながら質問を続ける。しかしここで、僕の隣で大人しく話を聞いていた先生が急に口を挟む。


「昼間一緒に行動していた時、虹日君について何か気になるところはなかったかい?」


「そうですね。気になるというほどではないかもしれませんが、ミス月夜について心配しているふうな態度は多く見られました。」


「と言うと?」


 休屋警部が手を止めてホームズさんの顔を見る。


「ミス月夜のストーカーについてですね。自分がマネージャーとしてついているうちになんとか解決したいと。」


「ストーカー?」


「ええ、ミス月夜は最近ストーカーの被害に悩まされていたそうです。とは言ってもそこまでの実害は出ていないそうですが。ミスター虹日としては心配だったんでしょう。何せ双子の妹のことですからね。」


「ストーカーか。」


 休屋警部はメモをとりながら部屋の外に待機していた刑事さんを呼び何か耳打ちしている。


「そのほかには何かあったかい?」


「いや、そのほかについては特に。ワトソン君と綺羅星兄妹と楽しんでいただけですからね。ワトソン君も何もなかったろう?」


「そうですね。僕は月夜さんとお話するタイミングが多かったんですが、月夜さんも月夜さんで虹日さんの身を案じるようなお話をされていて。お互いがお互いを思い合っている中の良い兄妹だなと思ったくらいですかね?」


「ん?月夜さんが虹日さんの身を案じていたというのは?」


 僕の発言に休みや警部が反応見せる。少し言い方を間違ってしまったかもしれない。


「いえ、身を案じると言っても、虹日さんが綺羅星家の当主になって色々忙しくなるだろうことについての心配です。綺羅星家の当主は大変だし、おじいさんが結構難しい人だと言っていました。」


「そういうことか。」


 休屋警部は露骨につまらなさそうな態度をとる。自分の求めているような答えではなかったからだろう。メモすら取らずに目線を僕から外す。


「とりあえず、家達さんからの事情聴取はこれで終わります。また何か進展があれば聞かせていただくかもしれません。」


 休屋警部は手帳を閉じたち上がろうとする。その時を見計らっているのか先生は休屋警部に声をかける。


「休屋君。ぜひ、ホームズ君も事情聴取に立ち合わせたいだが。」


「えぇ、家達さんもですか?うーん。それはちょっと、どうだろう。」


 休屋警部は迷っているようだ。無理もない、先生と僕が立ち会っているだけでも異常なのに、さらに増えるなんて。


「ホームズ君の観察眼は確かなものだ。その力が事件解決に役立つと私ちゃんは思っているんだがね。」


「それならどうぞ。」


 事件解決。その言葉に反応してすぐに態度を変える休屋警部。


 この人大丈夫なのだろうか。先生の扱いがうまいとはいえ、ちょっとチョロすぎないか?まあ、事件の解決に一番重きを置いているということにしておこう。


「ご期待に添えるように尽力させていただきますよ。」


 ホームズさんは軽く一礼して僕の横に座る。先生に笑顔で会釈し、先生も笑顔で返す。これも先生の予定通りだったのだろうか。休屋警部はまたもや部屋を出て次の人を呼びにいく。


 次に連れてきたのは、今回の事件の証人の中で最も重要な役割を担うであろう人。


 月夜さんだった。


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