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双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
4 桜の下旅館と名探偵?

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名探偵の名推理?

 今度ははっきりと自覚できる。僕は口をあんぐり開けていた。先生は期待以上だと言わんばかりに目を輝かせている。


 写録(しゃろく)?随分珍しい苗字だな。それにホームズとお呼びくださいって。


「なるほど、写録で、シャーロック、家をホーム、達を複数形のsとしてホームズか。面白いね。探偵になるべくしてつけられた名前ということかな。写録ってのは確か、記録を取ることを意味する単語だったかな。君の役割、取られちゃってるね。」


 先生は僕の方を見ながらそんなことを言ってきた。


「私ちゃんの名前は、言葉紡。職業は、」


先生も自己紹介をしようと名前に続けて職業を言おうとした時、ホームズさん(もう、この呼び方で呼ぶことにする)は、先生の前に右手を出してその言葉を制止する。そして、そのまま右手で指を鳴らす。


「私が予想するに、漫画家、いや、作家さんでしょうか。」


「え?!」


 僕は思わず声を上げる。当たってる・・・。本家のホームズと同様、先生の職業を会話する前に推理している。ふざけた格好をしている変な人だと思ってしまって申し訳ないな・・・。いや、変な人ではあるんだけど。


「ほう。どうしてそう思ったのか教えてもらってもいいかな?ホームズ君」


「ええ、初歩的なことですが。最初姿を見たときは、申し訳ありませんが子供かなと思いましたが、そちらの青年があなたを先生と呼んでいる声が聞こえました。日本で先生と呼ばれる職業はいくつかあります。最も一般的なものはもちろん教師でしょう。ですが、申し訳ありませんがあなたは中高の教師という風貌ではない。次に考えたのは、もしかしたら大学の先生で、研究職をしている方ではないかということです。そちらの青年も見たところ大学生くらいの年齢に思えました。先ほど、ここの宿に来た目的をこの桜の樹と言っていましたからね。ですが、桜の樹やなんかを研究している学者にしてはあまりにも肌が白いと思いました。桜の木を目的にくる研究職の方ならもっと外で活動することが多いでしょうから、いくら日焼け止めを塗っていたとしても限界があるでしょう。なので、学者の先生というのも選択肢から外しました。では、他には何があるでしょうか。医師、弁護士などがすぐ思いつきますが、どちらもそこの青年を連れてここにくる理由の説明がつきません。そこで、あなたの見た目の特徴から推測することにしました。まずは先ほども言った、肌が白いこと。これから室内で作業をする仕事だと思いました。そして、あなたの姿勢、少し猫背でかつ巻き肩に思われます。巻き肩はデスクワークが多い人がなりやすいと言われています。では室内でデスクワークをする先生と呼ばれる職業、それでいて仕事関係のためにこの桜の樹を見に訪れるのはなんだろうか。ああ、仕事関係だと思ったのは無論あなたを先生と呼ぶその青年を連れているからですが。私には三つの可能性が浮かびました。それが、漫画家、画家、作家です。漫画家や画家であればこの桜の樹をモチーフにした作品を描くために訪れても不思議じゃない。作家も取材でこの樹を見にくるという可能性はありますが、漫画家や画家に比べれば低いでしょう。そして、あなたと握手した時です。一般的に筆やペンを使い続ける方々はペンだこ、筆だこができる方が多いです。ですが、あなたの手はその痕すらなく、綺麗なものでした。なので、漫画家や画家ではなく作家さんだと予想したということです。まあ、ただただ仲がいいだけの料理教室の先生と生徒という可能性もゼロではありませんが。」


「なるほどね。ホームズ君は目と耳が優れているようだね。私ちゃんはホームズ君のいう通り作家をしている。ここには取材のために来たんだけど、ぜひ君のことも取材させてほしいな。」


 ホームズさんの見事な推理に僕は感嘆する。僕の先生を呼ぶ声と先生の風貌、姿勢、そして手のひらから職業を見事に推理するなんて。それにその手順は見事なものであったと僕は思う。僕では先生という単語を聞いても画家や作家を連想することはできないだろうなと思う。先生という単語で想像できる限界は医師や弁護士だろう。その発想力も探偵には必須のスキルなのだろうか。


「君は?」


 ホームズさんが僕の方を見ながら、聞いてくる。確かに、僕はまだ自分が何者であるのかを示していなかった。


「ああ、この子は私ちゃんの助手さ。私ちゃんとの取材についての記録係をしてもらっているんだ。」


 僕が自己紹介しようとしたら、先生が先に割って入る。しかも、ずいぶん適当に。だが、なぜかホームズさんは目を輝かせているように見える。


「記録係で助手か。まさにワトソン博士ですね。君のことはワトソン君と呼ばせてもらうことにしようかな。」


「ワトソン君。いいじゃないか。それでいこう。なあ、ワトソン君。」


 先生もホームズさんの意見に賛成しているようだ。ホームズにワトソンなんて。なんだろう、これからレストレイドやグレグスン、ハドソンでも出てくるのだろうか。そんなことを考えていると、


「後はレストレイド警部やハドソン夫人が出てきたら完璧です。」


 ホームズさんは、笑いながらそんな冗談を言っている。いや、あの目は冗談ではないのか?


「そうなったら、ぜひ舞台でもやってもらおうじゃないか。脚本は私ちゃんが書いてあげるよ。」


「勘弁してくださいよ。」


 僕の苦い表情を見て、先生は高らかに笑っていた。


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