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この食べ物まずい!

森の中を歩きながらクロエは、自分の失敗に苛立っていた。

魔王復活。その点では成功したと言えるけど、中身があのまま来るとは思ってなかったわね。まぁ賢しい感じじゃないし比較的に扱いやすそうではあるけど。

やっぱ5万年程度溜めた魔力じゃ無理だったのかなぁ…

朱くなりつつある空を見上げて溜め息が漏れる。様々な星を渡り歩けど、やっぱり夕陽と言うのは何処でも綺麗なもんね。

後ろを振り返るとアリシアが、その金色の髪に柔らかな光を帯びつつ、私の歩いた所を危な気に着いてくる。その見た目は可愛らしいが、昔を知ってる私からすると只々気持ち悪いの一言につきる。


「日が沈みきっちゃうわね。この調子だと。」


仕方ない。環境にはよろしくないけど、


ーー<リムーブ>ーー


周囲の森や石やゴミが歩きやすい様に一斉に私の目の前から押しのけられ、開けた一本道が出来上がった。遠くで鳥や動物の鳴き声が響き、いつの間にかすぐ近くまで迫ってたアリシアはポカンとした後、何か納得したようだった。


「さ。これで歩きやすくなったし、今日中にはこの森抜けるわよ。」

「……いやまぁ、良いんすけど。どうせなら最初っからそれつかってくれませんかね?」

「だってこの魔法使うと環境に悪いんだもの。できれば使いたくはないわ」


この魔法。すごく便利が良いけど、途中に生命がいれば潰れるし、建物は崩壊する。幸い今回はいなかったようだが、まぁ気をつけるにしくはない。

それからしばらくの間、雑談を交えながら歩いていると、森を抜けきる前に日が完璧に沈んでしまった。


「出るのが遅かったわね。今日中には抜けれるかと思ってたんだけど。結構大きな森だったのね。仕方ない。アリシア、そこらで枯れ枝でも拾ってきて。私は野営用の防御魔法展開するから。」

「え、こんな暗い森の中に入ってかなきゃダメ?魔法とかで明かり灯せない?」

「できるわ。でも最近使ってないから下手したら失明するぐらい明るくなるわよ?それでもよければ「わかったわかった。ちょこっと探してくるわ。この体夜目きくのかなぁ…」


ぶつくさ言いながら、茂みを掻き分けアリシアが森の中に入っていく。

さて、何の魔法からつかおうかなぁ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クロエが作った道のせいで、押しのけられた草木が森の中を進む邪魔になる。

このチビな体じゃなかったら入ることすらままならなかっただろう。

にしても、服作ったり俺の体(?)をこんな少女にしたりと魔法って便利なんだな。ん?それなら俺も魔法が使えたりするのだろうか?あぁ…でもよく異世界から来た人は魔法が使えないとか有るよね。MPとかで表してくれてたら楽なんだけど。


「ま。一度試してみるか。」


とりあえずは水系統の魔法だな。火なんか使って火事にでもなったら大変だしね。一息ついた後、手を前にかざして念じてみる。ふんッ!!ぬぬぬぬぬ!!出ろ〜水、出ろ〜……っはあダメだ。あれかイメージ力が足りないのか?それともなんか唱えないとダメなのか?まぁとりあえず戻ってからききゃいっか。

諦めて周囲の落ちている枯れ枝を、ひょいひょいと拾っていると、少し離れた所からカサカサっと何かが動いた音がした。

……はい。問題です。夜に森の中1人少女がいます。そんな子は一体どうなるでしょうか? 音のした方向を注視していると、突然右手側から何かが飛び出してきた。


「ーーーー!!!!!!」


枯れ枝をぶち撒けてその場に倒れこむ事で何とか初撃を交わすことに成功する。はい!正解は!野生動物に襲われる。です!…やっばい。倒れこんでるし何か光ってる目が増えて来た。2、3、5、7。7匹か。コイツら姿は狼に似ているけど、明らかに、こいつら殺す為だけに進化してる。やい!狼に似てるなら狼のかわいらしさも踏襲しろ!


「どうしようか…腕吹き飛ばされも元には戻せたけど食われたら戻るとは限らんし。ハハっ……詰んだかな?」


こちらが諦めた事を感じたのだろう。1匹が大口を開けて、襲いかかって来た。


「ウルヴァァァァ!!!」

「タダで食われてたまるかボケェええ!!」


咄嗟に右手で殴ると、拳でトマトを潰したような感覚が伝わって来た。

ビチョビチャっと顔と体に赤い液体が降りかかり、頭を失った体は俺の横にグチゃりと落下し転がった。


「ーーーーう、ヴォええええ、え”っほえ”ほ」


思わず吐いてしまう。他の獣たちは何かヤバいと感じたのだろう。続いて襲って来ず、周囲を囲ってこちらを観察し始めた。俺は立ち上がってファイティングポーズを取って、襲いかかって来そうな奴を牽制する。一撃でやれると分かると、人って予想以上に安心するのだな。

ジリジリと睨み合いを続けながらクロエの方までゆっくりと後退する。

すると、集団の中で一番小さい奴が左後方から飛びかかってきた。それを俺は肘打ちで潰す。その一瞬の間に他の2匹が逆方向から飛びかかってきて、足首と右上腕に噛み付かれた。


「んのやろぉ!!!」


即座に右足に噛み付いた奴の胴体に左腕を叩き込み、上腕に噛み付いた奴は噛み付かせたまま木に体当たりして潰した。 残った3匹は撤退していった。


「ふぅ…なんとかなったな。ってあーあー白い服が血塗れやし。べちょべちょやがな。」


赤く染まったワンピースを引っ張りながら悪態を吐く。とりあえずこいつらの肉食えるかもしれんし、持って帰るか。

ちょうど右足に噛み付いた奴は離れてないし、このままでいいや。応戦時に散らばった枯れ枝を拾い集めながら森の外に向かう。

元の道に戻ると、クロエが暇そうにしてた。


「今戻ったぞー」

「随分おそかったのねって!!ギャァーーー!!!ちょとアンタ!誰もハンティングしてこいって言ってないわよ!!」


血塗れで死体を引きずる俺を見て、クロエが絶叫をあげる。


「いやいや。したくてしたんじゃなくて襲われたから殺っただけだって。この肉って食える?」

「食べれるっちゃあ、まぁ食べれると思うけど…美味しいかどうかは」

「ふーん。じゃあとりあえず捌いてもらっていい?俺そんな事した事ないからさ。こう魔法でバラバラに出来るでしょ?」

「無理。そういった地味なの使った事ないし。」

「そっか。じゃあ仕方ねぇな。」


そう言って、足に噛み付いて離れない死体を足ごとちぎって茂みに投げ捨てた。傷部分は意識するとあっという間に元に戻るからすっごい便利。痛くもないし。

集めた枯れ枝にクロエが火をつけて暖をとる。しかし、俺はそのうち帰れるのかな。よく分かんない感じでクロエに付き従ってはいるけど、向こうでやり残した事が多すぎる。…そういや新刊の発売今日だったなぁ……夜空に溢れる星を見ながら感傷に浸っていると、


「ねぇアリシア。ひとつ聞いてもいい?」

「ん?」

「あなたの記憶って本当に私が連れて来る前の世界の事しか覚えてないの?」

「なぁんにも。こっちの事もクロエの事もなぁんにも覚えてねぇよ。変な事聞くな。」

「……そ。まぁそれならそられでいいんだけどさ。」


火をまたいで対局に座るクロエは普通に惚れるほど美しい。そんな美人が憂いを帯びて座ってるとか、普段なら喜ばしいが、なんとなくそんな気にはなれなかった。


「それよか食事にしようぜ。腹減った。」

「そうね。そうしましょう。待ってて今取り出すから。」


そう言ってクロエはポケットに手を突っ込で、中から◯ィンダーインゼリーみたいなのを取り出してこっちに渡してきた。2個もよくポケットに入ったな。


「え?晩御飯これ?」

「そうよ。これ、結構お腹膨れるしビタミン豊富。しかもカロリー控え目。ダイエットにどうぞ。」

「いや、そう言う問題じゃねぇだろ。」

「そう言われてもねー。他になんも持ってないし。我慢してよ。」


仕方なしに飲む。……うっわ感想に困るなぁこの味。不味くも旨くもない。

クロエの方はさっさと飲みきって、ポケットから次のを取り出してまた飲んでた。あのポケットは何なんだ。4次元ポケットか。魔法があるぐらいだし、そんなのが有っても不思議はないか。………うーん1つで十分だな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クロエの放った魔法は、彼女にとっては初歩的な魔法だが、普通の人からすると天変地異の出来事である。クロエ達がいる森からおよそ2kmの地点にある。王国内指折りの交易都市の、ここフィロネスシティでは大騒ぎになっていた。

それもそのはず、普段肉を手に入れる為に狩りが行われている森に、いきなり道が出来たのだ。魔物や悪魔が普通に存在する世界で異常が起こる事それすなわち、死ぬ可能性があると言う事。連絡を受けた町組合で、町の代表者4名と首都からの調査員が集められ、話し合いが行われた。


「夜分遅くにすまないな。皆も聞いてはいると思うが、迷いの森でハンター達が帰宅の途についてる時、いきなり森に道が出来たらしい。そこで、この件についての対策だが、ひとまず調査隊を派遣する事と、首都に使いを送る事は確定している。問題は、これが我らでは対処不可能な場合、この町を捨てるか、それとも首都から送られるであろう討伐隊の派遣を待つかだ。その点について皆の意見を聞きたい。」


町長からの説明から話し合いは始まる。始めに言の葉を出したのは、町長から右奥の席に座る、頬がこけている痩せ気味の男だった。


「はい。まず始めに、この件に関してはまず間違いなく魔物ではないでしょう。おそらく悪魔の類かと思われます。」


次に発したのは、その男の左斜め前に座る小太りの男だった。


「魔導隊長の意見は正しかろうが、しかし悪魔と言っても、ここは奴らの生息地からはほど遠い。何よりここまで奴らが辿り着いているなら、それは南東の要塞が堕ちたという事。そんな事が伝わってきていないのはおかしい。」

「では何だと言うのです?これはどう考えても魔法での行為です。魔物は魔法が使えても、せいぜい攻撃魔法のみ。創造系は使えませんよ 。守備隊長もその事はご存知でしょう。」


2人が討論を始めようたした所で、町長のに最も近い所に座る、比較的若い男が割って入る。


「お二人共、敵が誰かなどどうでも良いではないですか。町長が問題になさったのは逃げるか戦うかのはずですよ。」

「失礼ながら調査官殿は馬鹿でありますな。逃げるにしても戦うにしても、相手が分かってから対応してたら間に合わんわ。」

「その通りです。どちらであるかある程度予想を立てねば、準備にかかる時間がかなり変わってきますからね。」


首都から送られた調査員などの発言は、長年この町を守ってきた、守備隊隊長と魔導隊隊長によって切り捨てられる。

それに反論をしようと、口を開きかけた時、


「この際考えるべきは魔物でも悪魔でも無く、天災の再来を考えるべきでしょう。」


ぼそりと、集まった5人の中で唯一の女性たるギルド長が発した言葉に一同の

注目が集まった。


「いえ、守備隊長がもうした用に悪魔がここに至ってる可能性は低いでしょう。かと言って、魔導隊長が申したように魔物では到底不可能な案件。残されるのは天災の出現だけかと。」


その発言で部屋の空気が絶望に包まれる。


「天災……天災か…」

「しかしどの天災が再び現れたと?50年前にこの国を襲った奴ですか?それとも、つい先年帝国に現れた奴ですか?」

「いや、完全に別種でしょう。帝国に現れたのは爆発系魔法を使ったと聞きますし、50年前に現れた奴は空を飛んでいたそうですから道は必要ありませんし。」

「そうだな。その可能性が一番高いだろうな…しかし天災が相手となれば防衛戦などものの秒ももたん。直ぐにこの町を放棄した方が良いな。」

「うむ。では明日の朝に町民に避難勧告を出すとしよう。守備隊長。調査隊、いや観測隊の編成を勧めてくれ、魔導隊長は、観測隊との連絡網の構築の用意を頼む。なるべく天災から離れなければならないからな。」

「「は。承りました」」

「調査官殿は、この事を首都に伝達してくだされ。」

「ええ。もちろんですとも。今夜中にたたせていただきます。」

「では私はこれで。ギルドの方の書類や商品の類の荷造りをし始めねばならないので」


全員が去った後、町長は月明かりに照らされた町を見て溜め息をつく。

なぜにここに天災が現れるのだ。比較的大きなこの町の利権を握ってまだ2年。これからが楽しい時間になるはずだったのになぁ。もう一度溜め息をついて、町長は町長としてのやるべき事を始めた。



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