↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
市影譚 ―怪異を解する―  作者: 宮城 歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/70

4-2 初日


 翌日の二十時五十分。


 ノアは、昨日灰島に指定されたコンビニの駐車場に停まっていた。


 昼間に見れば、郊外によくある店だ。


 だが夜になると、駐車場だけが白く浮かび上がり、その外側にはすぐ暗闇が広がっている。


 ここから指定区間までは、車で十分ほど。


 今日から最大十日間。


 二十一時から午前二時まで、その道を繰り返し走ることになる。


 栞は買ったばかりのコーヒーをカップホルダーへ置いた。


「領収書、取ってあります」


「一応ね。経費は出すって言ってたから」


「コーヒーもですか?」


「とりあえず、渡してみよう」


「じゃあ次から、もう少し高いの買います」


「そういう時だけ遠慮なくなるな」


 桂一が笑って、自分のコーヒーを置く。


 後部座席には飲み物と軽食、メモ帳、懐中電灯。


 そして昨日取り付けた黒い通信機がある。


 助手席側には、今までなかった太いアンテナが一本立っていた。


 時刻は二十時五十七分。


 桂一が車の時計を見た、その時だった。


 コンコン。


「きゃっ」


 栞が肩を跳ねさせる。


 運転席の窓のすぐ外に、人が立っていた。


「……普通に来いよ」


 桂一は驚いた様子もなく、窓を下げた。


「こんばんは」


 灰島だった。


 栞は、初めてその姿を直接見た。


 想像していたより、ずっと若い。


 見た目だけなら三十代の初めくらい。


 男なのだが、どこか宝塚の男役を思わせるような、整った顔立ちをしている。


 肌が妙に白いせいか、眉だけが少し浮いて見え、唇の赤さが目についた。


 綺麗なのだが。


 どこか、綺麗に作られすぎている。


 人の顔を、そのまま形だけ整えて被せたような。


 そんな印象が、一瞬だけ頭をよぎった。


「初めまして、相沢さん」


「あ、初めまして」


 電話では何度も声を聞いている。


 それでも、実際に目の前へ立たれると少し緊張した。


 灰島の視線が、栞の首元へ向く。


「お守りはいかがですか?」


「付けてます。ありがとうございます」


「それは良かった」


 桂一がシートベルトへ手を掛けた。


「降りるよ」


「いえ。すぐ時間になりますし、そのままで結構です」


 灰島が片手を上げる。


「今買ったレシートがあれば預かりますよ?」


「嗜好品が混じっているぞ」


「酒たばこ以外なら大丈夫ですよ」


 栞は思わず灰島を見る。


 怪異らしきものを追うために、夜中まで山側の道を走る。


 正体の分からない通信機まで積んでいる。


 その仕事を依頼した人物が。


 コンビニのコーヒー代を気にしていた。


「経費って、本当に見るんですね」


「仕事ですから」


「そこだけ普通なんだよな」


「そこだけ、とは?」


「何でもない」


 灰島は貼り付けたような笑顔のまま、ジャケットのポケットへ手を入れた。


「もう一つ、お渡しする物があります」


「まだあるの?」


「はい」


 取り出したのは、手のひらに収まる程度の卵型の物だった。


 黒に近い灰色。


 表面には小さなボタンが一つ。


 表示も、メーカー名らしいものもない。


 灰島は、それを桂一へ差し出した。


「これは?」


「レーザービームです!」


「レーザービーム?」


「レーザービーム?」


 二人の声が重なった。


 きちんとしたスーツ姿の男が口にするとは思えない単語だったので、つい驚いた。


 整った顔で言われると、余計に調子が狂う。


「レーザーポインターみたいな?」


 栞が訊いた。


「そんなようなものですね」


「ならそう言えよ」


 桂一が手の中の機械を見る。


「操作は簡単です」


 灰島が指を差した。


「裏のスイッチが主電源になってまして、表のボタンを押すとレーザーが出ます」


「俺、運転するから持ってて」


「はい」


 栞が受け取る。


 見た目より、少し重い。


「裏のスイッチ?」


 確認しようと手首を返した。


 底の近くに、小さな切り替えスイッチがある。


「これですか?」


「そう――」


 カチ。


「あ」


 指が引っ掛かった。


「わたたっ」


 卵型の機械が、手の中で滑った。


 慌てて掴み直そうとして、指が表側をなぞる。


「――っ!」


 窓の外にいた灰島の上半身が、一瞬で後ろへ引いた。


 あまりにも速かったので、栞は灰島が消えたように見えた。


 どうにか両手で機械を掴む。


「す、すみません」


「いえ」


 灰島が、何事もなかったように元の位置へ戻った。


 桂一は目を丸くしている。


「お前でも焦ることがあるんだな」


「危ないですよ」


「何が?」


「目に当たると、失明の恐れがありますからね」


 栞の手が止まった。


「……え?」


「普通のレーザーポインターの話か?」


「普通のレーザーポインターもです」


「意味深だな」


「電源切ります」


 栞は慌ててスイッチを戻した。


 カチ。


 卵型の機械は、再びただの無機質な塊になった。


「これ、本当にレーザー出るんですか?」


「出ますよ」


「どのくらい強い?」


「使用する必要が生じた場合に説明します」


「嫌な言い方するなあ」


「今のところ、操作する必要はありません。私から指示があった場合のみ使用してください」


「分かりました」


 栞は、さっきよりずっと慎重に持った。


 桂一がフロント中央の窪みを指差す。


「そこに置こう。転がらないだろ」


「はい」


 栞は卵型の機械を置き、軽く揺らして動かないことを確認した。


 手を離してからも。


 念のため、もう一度主電源が切れていることを確認する。


「ああ、それと」


 灰島が言った。


「走行中は、AMラジオをつけておいてください」


「AM?」


「相談メールの中にあったでしょう。後ろから車が近づいてきた時、ラジオが急に乱れたという話が」


「あったな」


 栞も覚えている。


 走行中。


 突然ラジオへ雑音が入り。


 その直後に、バックミラーへ後続車が現れた。


 そんな内容のメールがあった。


「ラジオをセンサー代わりにするんですか?」


「そう考えていただいて結構です」


「でも、なんでAMなんですか?」


 灰島は少し考えるような顔をした。


「何もない道はAMですよ。オシャレな街はFMです」


「適当なことを言うな」


「え?」


 桂一が栞を見る。


「相沢。AMは田舎でも電波が入りやすいからだ」


「そうなんですか?」


「FMだと山が近いと雑音が入りやすい。AMは強いんだよ」


「なるほど」


「そういう理由もあります」


 灰島が何食わぬ顔で付け足した。


「そっちを先に言えよ」


「何もない道はAM、というのも悪くないと思いますが」


「仕事中に相沢へ変な知識を植え付けるな」


「危うく覚えるところでした」


「ほら」


 灰島は小さく頭を下げた。


「では、AMでお願いします」


 桂一が後部座席の通信機へ目をやる。


「トランシーバーは?」


「ハイパートランシーバーのチャンネルは一つだけです。電源を入れれば、そのまま繋がります」


「設定はいらない?」


「はい」


「それは楽だな」


「相手が現れたら、こちらから指示を出します。その時はハイパートランシーバーをオンにして連絡をください」


 桂一が灰島を見る。


「本当にハイパーで通すんだな」


「分かりやすいでしょう?」


「まあ、分かりやすいけど」


 昨日まで、ただの通信機だったはずだ。


 一晩で名前が決まってしまった。


「休憩は?」


「指定区間を出る時は連絡をください。戻る時は分かるので大丈夫です」


 栞が灰島を見る。


 戻る時は分かる。


 その部分だけ。


 少し引っ掛かった。


 桂一も同じだったらしい。


 一瞬、眉を動かしたが。


 特に追及はしなかった。


「電話でいいか?」


「はい。任務中は出れますので」


「普段もそれくらい出ろよ」


「それは難しいですね」


「だろうな」


 桂一は小さくため息をつく。


「お前達は、どこかに待機してるのか?」


「区間が広いので、何ヶ所かに分かれて待機しています」


「何人いる?」


「必要な人数です」


「出たよ」


「何かありましたら、こちらから指示を出します」


「了解」


 灰島は、貼り付けたような笑顔のまま頭を下げた。


「では、そろそろ時間ですね。お気を付けて」


「はいはい」


 桂一が窓を閉める。


 ノアはコンビニの駐車場を出た。


 店の明かりが、少しずつ後ろへ流れていく。


 栞は何となく振り返った。


「……消えてませんね」


「ん?」


 桂一はバックミラーを確認した。


 コンビニの明かりの下。


 スーツ姿の灰島が、貼り付けたような笑顔でこちらへ手を上げている。


「そういえばそうだな。見送りたい気分なんだろう」


「期待したのに」


「何を?」


「見たことないから、見たかったのに」


「消える所?」


「そうです」


「消える所を見たいとは、言い得て妙ってやつだね」


 栞はもう一度、後ろを見る。


 灰島はまだいた。


「いつの間にかいなくなるところ、一回ちゃんと見てみたいんですよ」


「見てたら消えないんじゃない?」


「それ、ずるくないですか?」


「俺に言われても知らないよ」


 コンビニの明かりが遠ざかる。


 灰島の姿も、やがて見えなくなった。


 少しして。


 栞が口を開いた。


「灰島さんって、想像よりすごい若かったです」


「ん?」


「電話の声だけだと、もう少し年上かと思ってました。三十代の初めくらいにしか見えませんでしたけど」


 桂一は。


 少しの間、何も言わなかった。


「あいつは、俺が会った時からあんな感じだよ」


「会った時から?」


「佐原さんが三十年くらい前に会った時も、ほとんど変わってなかったらしい」


「……え?」


 栞は、反射的に後ろを見た。


 当然。


 もう灰島は見えない。


 三十代の初めくらい。


 そう見えた。


 それが。


 三十年前からほとんど変わっていない。


 それなら、少なくとも還暦前後。


 もっと上でも、おかしくない。


 ぞくりとした。


「……そんな人に、よく対等に話せますね」


「散々な目に遭わされてるからな」


 桂一は前を見たまま言った。


「もういいんだよ。あいつとか、お前とかで」


「慣れるものなんですか?」


「慣れたくて慣れたわけじゃないけどね」


 栞は、バックミラーを見る。


 さっきまで。


 そこに普通に立っていた男が。


 三十年前から、ほとんど同じ姿をしている。


 レーザービームより。


 そちらの方が、よほど現実味がなかった。


 桂一がラジオへ手を伸ばす。


 FMからAMへ切り替えた。


 少し籠もった音質の声が、夜の車内へ流れ始める。


 今のところ。


 雑音はない。


 街の明かりが少しずつ減っていく。


 しばらくして。


 桂一が前を見たまま口を開いた。


「そういえば」


「はい?」


「お母さん、何か言ってなかった?」


「何がですか?」


「この仕事。十日間も夜だけ出掛けるとか」


「ああ……」


 栞は少し言いにくかった。


「妙な勘繰りはされました」


「妙な?」


「そこは聞かなくていいです」


「そう?」


「はい」


 栞は窓の外を見る。


「でも、テレビに出たのが大きかったみたいです」


「テレビ?」


「桂一さんの評価、百八十度変わりました」


「そんなに?」


「前は結構怪しまれてましたからね」


「……何だと思われてたんだろ」


「よく分からない仕事をしてる、よく分からない人です」


「間違ってないな」


「自分で言います?」


 栞は笑った。


「でもテレビに出てからは、『水野さんなら大丈夫でしょ』って」


「それは良かった」


 桂一は、本当にそれだけ言った。


 少しも気を良くした様子がない。


「嬉しくないんですか?」


「何が?」


「信用されたんですよ」


「相沢のお母さんに?」


「はい」


「それはありがたいよ」


 少し間を置いて。


「娘を夜中まで連れ回す側だからね」


 栞は横顔を見る。


 そういうところなのだ。


 本人はたぶん、何とも思っていない。


 けれど。


 昨日、灰島が言っていた。


 水野さんは真面目ですからね。


 少しだけ。


 その意味が分かった気がした。



 二十一時七分。


 ノアは指定された区間へ入った。


 栞はメモ帳を開く。


「二十一時七分。天候、晴れ。路面、乾燥」


「交通量は少なめ」


「はい」


 前方から軽自動車が一台来る。


 すれ違う。


 それだけだった。


 道路沿いの家は、少しずつ減っていく。


 街灯も途切れ始めた。


 昼間なら畑だと分かる場所も。


 夜になると、ただの黒い空間にしか見えない。


 桂一は速度を少し落とした。


 周囲を見るように走る。


「最初の一周は、道を見るぞ」


「道?」


「追われた時に逃げられる場所がないか、確認しながら走る」


 栞も前を見る。


「逃げられる場所って?」


「広い駐車場。コンビニ。交番。人がいる施設。車を止めても、後ろから塞がれにくい場所」


「なるほど」


「逆に、細い農道とか行き止まりには入らない。道を譲るにしても、完全に止まらなくていい場所の方がいい」


 桂一が、左側に少し広くなった路肩を見る。


「ここは使える」


 栞がメモ帳へ印を付けた。


 少し先。


 古い建物の前に、広めの駐車スペースがある。


「ここも」


「はい」


 さらに進む。


 右へ細い道が伸びていた。


「こっちは?」


「入らない。地図だと先で細くなる」


「覚えてるんですか?」


「昨日見たからね」


 桂一は前を見たまま続ける。


「普通の煽り運転なら、逃げ道を持っておけば大体なんとかなる」


「普通じゃなかったら?」


「その時は、その時考える」


「そこは考えてないんですね」


「相手が何か分からないのに、全部先回りはできないよ」


 栞は小さくうなずいた。


 分からないものを。


 分かったつもりで動かない。


 昨日。


 通信機について桂一が言っていたことと同じだった。


「夜だと、昨日より全然違って見えますね」


「夜道なんてそんなもんだよ」


「ここを五時間ですか」


「まだ始まったばかりだよ」


「二十万円」


「それ唱えながら乗り切るつもり?」


「大事なので」


 桂一が笑う。


 AMラジオは。


 普通に流れていた。



 二十一時四十分を過ぎた頃。


 二度目の往路。


 バックミラーの中に、二つのライトが現れた。


「後ろ、来ました」


「うん」


 栞が振り返る。


 白い軽トラックだった。


 距離は普通。


 速度も普通。


 ラジオにも変化はない。


「まだ何も変じゃない」


「はい」


 桂一が少し速度を落とす。


 軽トラックは無理に詰めてこない。


 しばらく後ろを走った後。


 右へ曲がり、農道へ入っていった。


 赤いテールランプが。


 闇の中へ消える。


 栞は少し息を吐いた。


「普通の軽トラでしたね」


「普通の車を、普通じゃないって思い始めたら終わりだからね」


「気を付けます」


 また走る。


 古いガードレール。


 緩い左カーブ。


 畑へ入る細い道。


 山の黒い輪郭。


 何度か車とすれ違った。


 どれも。


 普通の車だった。



 二十二時五十分。


 栞が時計を見る。


「そろそろ休憩します?」


「そうだね」


 桂一はスマートフォンを取り出した。


 灰島へ電話を掛ける。


 二回目の呼び出し音で繋がった。


『はい』


「休憩入る。指定区間から出るよ」


『分かりました』


「本当に出たな」


『任務中ですので』


「普段も――」


『それは難しいですね』


「まだ言ってないだろ」


『大体分かります』


「そういうところが怖いんだよ」


 電話が切れた。


 栞は笑う。


「なんだかんだ、仲良いですよね」


「どこを見てそう思ったの?」


「会話が慣れてます」


「散々な目に遭えば、これくらいにはなるよ」


 ノアは指定区間を外れ。


 先ほどのコンビニへ戻った。



 二十三時過ぎ。


 トイレと短い休憩を済ませる。


 運転を栞へ交代した。


「戻りますって連絡は?」


「いらないって言ってたろ」


「あ」


 栞は思い出す。


 戻る時は分かるので大丈夫です。


「……どうやって分かるんでしょうね」


「考えない」


「そんなもんか?」


「そう。そんなもんか」


 桂一は助手席へ座り、シートベルトを締めた。


「行こう」


「はい」


 ノアは再び。


 暗い指定区間へ入った。



 午前零時。


 何も起きない。


 一時。


 また同じ道。


 AMラジオは乱れない。


 後ろから来る車も。


 普通の車ばかりだった。


 同じカーブ。


 同じガードレール。


 同じ農道。


 何度も走っているうちに。


 栞も少しずつ、道路の形を覚えていった。


「本当に何も起きませんね」


「起きない方がいい仕事なんだけどね」


「でも、何も起きなくても二十万円」


「そこだけは忘れないな」


「十日なら二百万円ですよ」


「分かったよ」


 栞は笑った。


 怖くないわけではない。


 暗い道。


 正体の分からない通信機。


 フロントの窪みには。


 本当に目を失うかもしれない、卵型のレーザーが置かれている。


 そして。


 何を待っているのか。


 肝心なところを、灰島はほとんど説明していない。


 それでも。


 栞は嫌ではなかった。


 桂一がこれまで一人で関わってきた仕事。


 灰島と。


 佐原と。


 自分が知らないところで繋がっていた世界。


 その一部に。


 今夜から、自分も加わっている。


 怖さとは別のところで。


 少しだけ嬉しかった。



 午前一時五十八分。


 最後の区間を走り終える。


「今日は終わりかな」


「何もなかったですね」


「初日から出る方が嫌だよ」


 桂一がスマートフォンを取り出した。


 その直前。


 電話が鳴った。


 画面には、灰島。


「……本当に見てるな」


 桂一が通話へ出る。


「はい」


『本日は終了してください』


「今ちょうど掛けようとしてた」


『それは良かった』


「今日は何もなかったぞ」


『ええ』


「明日も同じ?」


『お願いします』


「はいはい」


『相沢さんも、お疲れ様でした』


「あ、はい。お疲れ様です」


『それでは』


 通話が切れた。


 栞は時計を見る。


 午前二時。


 本当に。


 五時間、何も起きなかった。


「これで二十万円ですよね」


「最後までそこか」


「大事です」


 桂一が笑った。


 ノアは帰路へ入る。


 AMラジオは最後まで。


 一度も乱れなかった。


 初日は。


 何も起きなかった。


 煽り運転も。


 強い光も。


 説明のつかない何かも。


 ただ。


 栞は一度だけ。


 フロント中央の窪みへ目を向けた。


 そこには。


 灰島が直接持ってきた、卵型の機械が置かれている。


 結局。


 使わなかった。


 使う必要もなかった。


 そのはずなのに。


 なぜ灰島が。


 これだけは段ボールへ入れず。


 自分で持ってきたのか。


 そのことだけが。


 少し、引っ掛かっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。