第67話 賞金稼ぎのアルベロ (6) 〜賞金首の二番手じゃダメですか?
「おい、見ろ、こいつらスゲー金貨持ってるぞ!」
叫ぶキンエイ。縛られたユリオたちを、検めていたのだ。
さっそく見つけた金貨タップリの袋。なにせ、デュエル金貨200枚(約2000万円)がズッシリと。普通の旅人が持ち歩く金額ではない。
それだけではない。
「な、なんだこいつらは?」
旅荷を開けたキンエイ、絶句。
アスティオに貰った超貴重な魔法装備道具の数々が、悪党たちの前に、広げられる。
魔法強化剣。魔防鎧に魔防戦衣、護符呪符に、魔符。あれこれの消耗道具。最高級の品々。普通の商店には売ってないものばかりだ。
どれもこれも、追剥一味が、初めて目にするものばかり。
「こ、こりゃ魂消た。こいつら、ただものじゃないぞ!」
お宝ザクザクにラドゥマの一味、たまらじと皆、馬から降りて荷台に飛び乗る。リーダーのラドゥマも自らズシン、と荷台に飛び移る。
「ほんとだ、スゲー!」
「こりゃ大変だー!」
「こんな獲物、初めてだぞーっ!」
「旅商エスト=デュレイ、やっぱり目をつけただけあったな。こいつら、この街道筋で、さんざん金をバラ撒いてたからな」
「見ろ、女も上玉だ。高く売れるぞーっ!」
「ヒャッホー!」
たちまち歓声奇声の嵐に。
「おい、お前ら」
鋭い声がした。
アルベロだ。
「何してるんだ? 俺の取り分も、もちろんあるんだよな?」
金貨の袋を覗いてウヒョヒョしていたラドゥマが、ぬう、と首を捻じ曲げ睨む。
「なんだ、テメー、まだへらず口が利けるのか。テメーの取り分? ああ。そりゃ、あるぜ、これだ」
ずい、と山刀を突き出すラドゥマ。
凄む親分に、追剥一味は、みな、へっへ、と笑う。
一味の1人が、斧をビュッと振る。
「親分、こいつは俺1人で十分だぜ。親分が出るまでもねえ。おい、小僧、テメーなんなんだ? 駆け出しの追剥か? 俺たちと張り合おうなんて、100年早えな。この稼業で人様の獲物に手を出したらどうなるか、わかってねーのか? 掟ってものを、よくわからせてやるよ。あの世で後悔しな」
「俺は追剥じゃねえ」
アルベロは、悠然と御者台に凭れている。
「追剥じゃねえ? じゃ、なんだ」
「賞金稼ぎよ。賞金稼ぎのアルベロだ。これでもちっとは名が売れてるんだぜ」
賞金稼ぎ。
その言葉が出ると、ラドゥマ一味、ピリっとなる。
ラドゥマ親分が、ギロリと目を剥く。
「おいおい、賞金稼ぎのお出ましだとよ。ハハ、こりゃ面白れー、こいつ、本物の莫迦だぜ! そうだよな?」
アッハッハ、と大声で笑う一味。ラドゥマはこれ以上なく険悪な形相で、
「俺様がラドゥマだと知ってるんだよな? テメーの名前なんて知らねえ、どうでもいい。なぜかわかるか? 知ってるよな。俺こそが賞金首だ。そして目の前に現れた賞金稼ぎ野郎をことごとくこの刀の錆にしてやった賞金首の王、300デュエルの賞金首ラドゥマ様だ。賞金稼ぎ殺しとは俺のことよ。なるほど、また莫迦がイキって俺様の前に飛び込んできたってわけか。ホントに面倒だぜ。やい、テメーが賞金稼ぎと知ったからにゃ、タダじゃ殺さねえ。まずその手足をぶった斬って、それからゆっくり時間をかけて嬲り殺しにしてやる。それが賞金首の作法よ。わかったか? ジタバタしても無駄だぜ」
「お言葉を返すようだが」
アルベロは、平然としている。
「ラドゥマ、賞金首の王は、あんたじゃねえ。賞金首の王は、ユリオだ」
「おうよ」
ラドゥマは、もう我慢できないとばかりに目を瞋らせる。
「俺が最高額の賞金首だったんだ。あいつが出てくるまではな。ユリオの野郎……あいつのせいで、俺が2番目の賞金首になっちまったんだ。クソッ! ユリオの野郎も早く見つけてブった斬ってやる。賞金首の王は俺だ! 誰がなんと言おうともな!」
縛られて転がりながら聞いているユリオ、こんなことを言われて、気が気でない。ラドゥマの賞金額300デュエル(約3000万円)。これはこれで、悪党に懸けられた賞金額としては破格なのである。威張るだけの事はある。しかしユリオの10万パナード(約10億円)には、かなわない。追剥と謀反人の差といえば差である。
お、おい。
完全に蒼白となっているユリオ。荷台の悪党どもを見上げながら。
ルルは何をしてるんだ? こっちはいつ八つ裂きにされてもおかしくないのに。いや、ルルとエミナは闇市場で売られるみたいだから、殺されはしないんだろうけど。
ともあれ、もう、魔法ズドンしかないぞ。
王国の魔力探知に見つかるとか、気にしてる場合じゃない。
必死に、隣のルルに目配せするユリオ。
ルルは、落ち着いた瞳をしている。この状況、わかってるのか?
◇
アルベロは余裕の表情。フッ、と笑う。
この態度にさらに苛立ったラドゥマが、さらに声を張り上げようとした時、
ビュウウッ、
アルベロが消えた。
いや、消えたのではない。跳んだのだ。御者台から荷台へ、一気の跳躍。
そして一閃した両刃剣。
一瞬の早業だった。
300デュエルの賞金首ラドゥマは、何か言おうとしたまま、白目を剥いた。アルベロの両刃剣がその脇腹を抉り、斬り裂いたのである。ラドゥマは鎖帷子を着込んでいたが、その鉄甲ごと斬ったのだ。
ドサッ、
血飛沫とともに崩れ落ちるラドゥマの巨体。
何が起きたのかわからず愕然となる追剥一味。
ビュウウ、
ビュウウ、
そしてラドゥマの頭が荷台に落ちるよりも先に、アルベロの剣は次の斬撃に旋回する。
ズサッ!
ビュオッ!
一閃ごとに血飛沫を上げ斃れるラドゥマ一味。
逃げようとした者も、背中を真っ二つに切られ、肉塊となり荷台の下に落ちた。武器を構えようとした者も間に合わず、腕ごと斬られた。
あっという間の出来事だった。
荷台の上でお宝ヒャッホー歓喜していた8人。血と肉の塊となり、其処此処に転がっている。
残ったのは。
相変わらず縛られたままのユリオ、ルル、エミナ。
血塗られた両刃剣を、すっとユリオにかざすアルベロ。
お、おい、こっちもいきなり殺すのか? ちょっと待った、とりあえず話し合いをーー
いろいろ言いたいが、声も出せない。
スパッ、
アルベロの剣が、ユリオの手首を縛っていた縄を斬る。
スパッ、
続いて足首の縄も。
なんだ?
縛めを解かれ、体が軽くなった。
でも、急には体を動かせない。ぼんやりとアルベロを見上げるだけ。
アルベロは、ルルとエミナの縄も、要領よく斬っていった。
自由になった女の子2人も、急には起きられない。
アルベロは微笑んでいた。
「ユリオだな」




