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第58話 緋の色を好む少女 (2) 〜女の子が1人で……処理するのを覗いてもいいですか?



 「ルル、なんてやつだ」

 

 ゾクゾクするユリオ。


 ルルが1人で宿の部屋に泊まると言った理由。


 密かに女の子の欲望を発散させるため、人の目を気にせず思いっきり悶絶しまくりたい……


 そうだ。そうに違いない。


 ユリオは、決めつけていた。


 あの迷子の少女は、5歳児か6歳児だ。布団をひっかぶせて眠らせておけば、ルルが何してるかなんて気づきやしないだろう。誰憚ることなく、ルルは大胆に……欲望悶絶発散処理を……


 そうだ。女の子だって欲望はある。間違いなく。


 ユリオが前世で大好きだったエ◯ゲーでは、清楚可憐な美少女が蹂躙調教されまくって挙句、欲望悶絶全開モードに目覚め、御主人様の……をおねだりして狂おしいまでにむせび泣いてすがりついてくる、そういう内容が多かった。


 ルルも、やはり目覚めたのだ。もう17歳だし。


 エ◯ゲー脳少年は妄想する。


 ルル……清楚可憐なクラス委員長……でも、目覚めちゃったのか。俺が目覚めさせてやりたかったんだけど。ま、現実(リアル)はゲームと違うからな。女の子が勝手に目覚めちゃうことだってあるだろう。


 欲望の虜となったルル……どんなことするんだろう? 


 独りで……思いっきり乱れちゃう?


 いつものクールで優等生な美少女勇者ヒーローとは、似てもにつかない姿に?


 うーむ、気になる。


 これは只事ではない。俺の奴隷が勝手に……まったく、奴隷ってのは御主人様がちょっと目を離すと、すぐとんでもないことを始めるんだ。


 これは御主人様として、しっかり……ルルが何をするか、見ておいたほうがいいよね? 自分の奴隷のすること、やっぱり全部知っておかなきゃ……そうだよね……御主人様として、奴隷への監督責任、ちゃんと果たさなくっちゃ……


 よし。


 決めた。


 覗こう。


 コッソリと。


 ルルーシア、圧巻の正義女神優等生クラス委員長琴見咲良(ことみさくら)が、絶対に誰にも見られたくない痴態を……



 グホッ



 覗くのだ。


 しっかりとこの目で見るのだ。


 ユリオは、寝台(ベッド)から起き上がった。


 口元はグへヘ、と歪み、ヨダレを垂らしている。



 ◇



 宿の2階には、奥から、ルル、ユリオ、エミナ、の順で部屋を取っていた。ルルとユリオの部屋は隣である。しかし壁は。ドルジェでも一番の立派な宿をとったため、ご大層なことにしっかりとした石造りときていた。隣の部屋を覗くのは無理だ。


 ユリオは、そっと部屋を出る。ルルの部屋。どん詰まりである。廊下に人通りもない。エミナも寝入っていることだろう。


 よし。


 抜き足差し足で、ルルの部屋の前へ。扉は立派ではあるが、木製である。そんなに厚みは無い。


 うむ。いいぞ。ここから覗こう。


 まず、扉に耳をぴったりとくっつけ、物音を聴く。何も聞こえない。


 ルルは、まだ1人悶絶プレイを始めてないのか? いや、大声出したらさすがに一緒に泊まっている少女もびっくりするだろう。声を出さないでするに違いない。


 プレイが始まってるのかどうか、わからないけど。


 とにかく覗きだ。 


 覗き穴を開ける。


 この旅には、無人森林地帯の踏破もあるしで、一応、簡単な工具一式を持って来ていた。ユリオが取り出したのは、小さな(のみ)でる。これで扉に穴を開けようというのである。


 大胆すぎる手口といえた。


 しかし、ユリオはルルの悶絶絶頂痴態をその目に収めんの妄念に完全に支配されていた。いささか度が過ぎるが、本人は全く気にしていなかった。


 慎重に、音を立てぬようにしながら、扉を削っていく。案外、柔らかい。そもそも木製の扉には、麗々しい装飾が彫りこまれている。細工しやすい材質なのだ。うまく削ることができる。


 いいぞ。


 なるべく薄そうな箇所に、とにかく1カ所穴を開ければいいんだ。中を覗くための。


 覗き。


 何が見れるんだろう?


 その奥には、どんな光景が?


 沸騰しまくるユリオの脳。


 一心に、扉を削っていく。


 あと、ちょっとだーー



 「君、何をしているのかね?」


 後ろから声をかけられた。


 なんだろう、と振り返るユリオ。


 「あぐ……?」


 まともに声も出ない。


 ルルの部屋の前で(のみ)を振るうユリオを、多勢が取り囲んでいた。


 しかも。


 その制服。


 王国の捕吏だ。



 ◇



 なにこれー!


 絶句するユリオ。


 最近ずいぶん多いことであるが、またまた脳がひっくり返る。


 (いかめ)しい制服と表情の捕吏たち。宿の廊下に、10人は(ひしめ)いている。


 「な、なんで王国の捕吏が……?」


 こんなに多勢なのに、背後に来るのに全く気付かなかった。女の子の部屋を覗きたいの一念で(のみ)堀りに夢中になってたってこともあるけど、こいつらも忍び足で、物音立てずにそっと近づいてきたんだ。


 なんで?


 どういうこと?


 さっぱり、わからない。


 「君は誰だ? そこで何をしている?」


 捕吏の隊長とおぼしき男が、また言う。昨日の料亭(レストラン)の事件で会った隊長とは別人だ。ドルジェは大きな都。捕吏も何(チーム)もいるのだろう。


 何をしてる? と訊かれた。


 俺が、ここでしてたこと……


 ルルの部屋を覗こうと、宿の扉に穴を開けようとしてたんだけど……


 あ。


 これ、かなりまずいよね。


 犯罪現場を露骨に見つかってしまった。しかも相手は王国の捕吏。


 捕吏の隊長は重ねて、


 「この部屋は、ルルーシアという女性客の部屋だ。宿で確認した。それに間違いない。で、君は?」


 うん。間違いない。ルルの部屋だから、俺は覗こうと……


 え? もしかして、ひょっとして?


 ドルジェの捕吏って、宿の女性客が覗き被害とかに遭わないための夜廻りパトロールとかもやっちゃってるの?


 すごいサービスだな! 女性の安心安全のために、そこまでするか? 王都でもそんなの聞いたことがない。前世世界の警察も、パトロールはするけどここまではしないだろう。


 女性を守るドルジェのパトロール隊。


 で、俺はモロに犯行現場を見つかっちゃった!?


 冷や汗いっぱいのユリオ。


 とりあえず、手に持った(のみ)をササっと後ろに隠す。もう遅いけど。


 マズイ。


 何とか切り抜けないとーー


 「あ、あの」


 冷や汗びっしょりで、やっと言えた。


 「俺は……ルルの……ルルーシアの連れのエスト=デュレイ……ピエの旅商だ……宿帳にも間違いなくそう書いてある……確認してくれ……俺はルルと一旦部屋を別れた後、相談することができたから、この部屋の扉を叩いたんだ。でも、全然返事がない。それで心配して、何とか扉を開けられないかやっていたんだ」


 「なるほど」


 険しい顔をしたまま頷く捕吏の隊長。咄嗟のでまかせだったが、何とか筋は通っている? とりあえず、俺が覗きをしようとして扉に穴を開けようとしていた、それはバレてないみたいだ。


 「なんだって? 呼んでも返事がない? それは本当か?」


 捕吏たちの後ろから、血相を変えた男が現れた。


 王国魔術師だ。王国官制の魔術師ローブ姿。間違いない。まだ若い男だ。髪を長く伸ばしている。


 深刻な顔している。


 「私は王国魔術師のイーセルだ。君は、ここに宿泊しているルルーシアの連れだな? で、返事がないと。これはいかんな」


 眉を寄せるイーセル。


 なんだ、今度は魔術師の登場か。さらにわけのわからんユリオ。ドルジェじゃ魔術師まで、「女性の安心安全のための夜廻りパトロール」に参加するのか?


 魔術師イーセルは、捕吏隊長に、


 「ひょっとして、もうコトが起きてしまったのかもしれん」


 と言ってユリオに、


 「君、確認するが、この部屋に居るのは、君の連れのルルーシアと、そして赤毛紅瞳の少女だな?」


 「え、ええ……そうです……あの、でもなぜそれを?」


 「広場の高札に貼り出しててあっただろう。ルルーシアが、この宿で赤毛紅瞳の少女を預かっていると。それを見てきたんだ」


 「あ、なるほど」


 つまり。


 この一隊の目的はあの赤毛紅瞳の少女? 


 そういうこと?


 あの少女のために、この大人数で繰り出してきた? ……なにそれ。あいつは一体何者なんだ?


 あの子にはなんだか不吉な気がしたけど。やっぱり何かあるんだ。


 ドンドンと、扉を叩くイーセル。


 「ルルーシアさん、開けてください。ドルジェの代官所のものです」


 返事を待つが何も返ってこない。扉を開けようとするが、中から鍵がかかっている。


 「ダメだ」


 また、捕吏隊長と顔を見合わせるイーセル。


 「思い切って破りますか?」


 隊長が言う。


 「うむ。それしかないな」


 「わかました。おい、お前ら、扉を破るぞ」


 屈強な捕吏たちが身構える。


 覗きじゃなくて、扉を破って踏み込むのかよ。こいつら過激だな、とユリオが思う間もなく、


 

 ドーン!



 捕吏の体当たりによって、扉が開いた。


 突入する魔術師イーセルと捕吏たち。ユリオも続く。


 「ああっ!」


 先頭のイーセルが、いや、踏み込んだ皆が絶句する。


 ルルの部屋。誰もいない。


 ガランとしている。


 そしてーー


 寝台(ベッド)と床に、夥しい血が広がっていた。まだ、流されたばかり血。血溜まりとなっている。


 「しまった。遅かった!」


 蒼白となって頭を抱えるイーセル。


 大量の血溜まりに、捕吏たちも呆然と立ち尽くす。


 ユリオも。


 これ、なに? ルルの血? 何が……いったい何が……


 「魔族だ」


 イーセルが、髪を振り乱しながら、叫ぶ。


 「エスト=デュレイさん、あなた方が保護した赤毛紅瞳の少女は、魔族だったのです! その魔族が覚醒し、あなたの連れのルルーシアさんを喰ったのです……何ということ……私がもっと早く気づいていれば……あとちょっとだったのに……やられてしまいました……」


 「く、喰われた? ……ルルが……」


 ユリオは、愕然と。


 おい、嘘だろ……そんなの……俺のルルが……血溜まりだけ残して、喰われちまうなんて……

 

 そんな。そんな!


 ルル!


 俺のルル!


 嘘だろおっ!!



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