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第34話 女子風呂を覗こうの作戦 前編 〜火遁水遁魔法の正しい使い方知ってますか?



 「お風呂に入ろう!」


 ユリオが密かに買った蜂蜜館(ハニーハニーハウス)。立派で見事な広い大理石の大浴場があった。もちろん、ユリオが手に入れた美少女奴隷とあらゆる欲望を試すためのものである。


 しかし、ここでの潜伏生活のおよそ2週間。


 自慢の風呂は、全然使わななかった。


 ガスも電気もない世界なのである。広い浴槽いっぱいの湯を沸かすのも、一仕事である。落ち着かない潜伏生活の日々。だれも風呂を沸かそうとは言わなかった。


 結局みんな、盥一杯の湯だけ沸かし、タオルで濡らして体を拭いたり、髪を洗ったりするにとどめていた。


 しかし、いよいよ蜂蜜館(ハニーハニーハウス)に別れを告げる時が来た。禁断の森へ旅立つのである。


 アスティオとの別れの宴の翌日の朝早く。朝食を終えた3人。


 荷造りはすっかりでき上がっていた。


 昼過ぎに、王都の中央広場から乗合馬車に乗って()つ。それまで、まだ時間があった。


 「こんな立派なお風呂があるのに入らないなんて、もったいない! 最後に入ろうよ」


 「そうですね! エミナが頑張って沸かします!」


 と、女子2人が主張したのである。


 「うん、いいよ。そうしよう」


 ユリオは別に、反対の理由もなく。


 エミナはルンルンだった。


 ユリオの前世の快適便利科学文明世界と違い、異世界(こっち)では、何をするでも「人力」であり、大仕事になる。幸い、この蜂蜜館(ハニーハニーハウス)には上水道が引かれていた。王都エスタミダルには自慢の上水道網が整備され、庶民の区域(エリア)には共同水場まで、富裕層は各戸まで、水道が引かれている。前世における江戸の水道網や、ローマ水道のようなものである。


 そして、蜂蜜館(ハニーハニーハウス)の大浴場は、半地下にあった。従って、庭を流れる上水道から直接水を引き込むことができた。栓を開ければ、浴槽に水を張れたのである。この世界でかなり面倒な仕事である、水汲みをしなくて良いのだ。


 一方、沸かすのは、薪をくべるしかない。大きな浴槽である。ひたすら薪をくべ、風呂の釜焚きをするのはかなり重労働である。


 これはエミナが、


 「お任せ下さい! 私の仕事です!」

 

 と、張り切っていた。館で使う基本燃料である薪は、薪屋を呼んで、まとめて買ってあった。まだそれが、だいぶ山積みになって残っていたのである。出発前に、それを盛大にくべて風呂を沸かそう、とのわけだった。


 ユリオは、ルルに訊いてみた。


 「魔法で風呂って沸かせないの?」


 「もちろん沸かせるけど……魔法って、どうしても必要な時しか使っちゃダメって教えられているの。安易になんでも魔法に頼る癖がついちゃいけないからって」


 とのことで、エミナに風呂焚きは、任せることにした。



 「風呂か……俺の風呂……だよね。あの大浴場があったから、蜂蜜館(ここ)を買うの決めたようなものだけどな」


 ユリオは1人、寝室のベッドにゴロンとしながら。ついついラーグ公爵のことを考えてしまう。 


 「うん……俺の理想の師匠ラーグ公爵のように、美女美少女たちをいっぱい集めて、あの立派な風呂で……するはずだったのに……ああ……おかしいな。なんでこうなってるんだろ……」


 これから風呂に入る、といっても、当然ながら男女別浴である。2人の美少女は、混浴は最初から問題外だと考えていた。


 「お風呂が沸いたらお知らせします。ユリオ様、先にお入り下さい」


 「私とエミナは、後から入るから。まずユリオがゆっくりお風呂、楽しんでね」


 と、言われた。ユリオは、いや、風呂を使うのは女子からでどうぞ、と断って、寝室に引っ込んだのである。


 一緒に混浴できないなら……せめて女子の残り湯残り香でも、楽しみたい……そんなふうに考えたのである。だだっ広い風呂に、1人で浸かったって、別に何も楽しめないし。


 女子2人は、キャッキャしながら大浴場を満喫するんだろうなあ。


 当然のごとく、想像する。いろいろと。


 うーむ……ルルとエミナが素っ裸で……ぐふっ……何とか、そこに混じれないかな……そもそも、そうするための風呂なんだけど……でも、さすがに……無理。


 風呂には、中庭に面した窓があるけど、さすがに少女2人は、ぴったりと鎧戸を下ろしてしまうだろう。


 こっそり覗くのも無理だ。


 覗く?


 その考えが、妙に頭に響く。


 そうだ。風呂といえばフラグだ。前世の恋愛ゲーにエ◯ゲーじゃ、必ず何かが起きる。女子たちが風呂に入りました。気持ちよかったです。それで終わりなわけはない。


 何も起きないなら……何とか起こせないものか?


 どうやって?


 前世やり込んだゲームを必死に思い出す。


 何か使えそうな攻略法はないか?


 風呂場の上の階にいたら、いきなり床が抜けて裸の女子2人のところに飛び込んじゃうとか。


 急に風呂場を魔獣が襲って、素っ裸のまま逃げ出した女子2人を助けるとか。


 うーん……現実的じゃないな。


 現実(リアル)でフラグなるものを立てるのが、いかに難しいか、またまた思い知るユリオであった。


 攻略法はない? ダメか。


 何とか姿を隠して女子風呂に潜入とか、できないかな。


 その時。


 ピコーン! と閃いた。


 そうだ、魔法!


 異世界(こっち)には前世のような、ガス電気ガソリン文明は無い。でも、そのかわり魔法がある! 魔法文明世界だ!

 

 ルルの言った通り、日常生活で気軽に用を足すに使うものではないけれど。


 魔法。


 それは前世では考えられなかった奇跡を呼ぶ。当然だ。魔法なんだから。


 ガバっとベッドから身を起こしたユリオ。


 アスティオから貰った魔法具(アイテム)をしまった包みを開く。昨日貰ったものは、入念にチェックしている。何があるか、しっかりと覚えている。


 あった。


 ユリオが取り出したのは。


 魔符。水遁の魔符である。


 「これだ! これを使えばいいんだ! これで美少女どもの御尊体を……」


 グヘヘ、とヨダレを垂らすユリオ。眼はギラギラと妖しく光っている。


 魔符とは。魔力を籠めた(ふだ)である。この(ふだ)を使えば、魔法使い魔術師魔導士でないものでも、誰でも魔法を使えるのだ。


 例えば、攻撃魔法である火炎魔法。その魔法を籠めた火炎の魔符を使えば、誰でも火炎魔法を発動することができる。超便利アイテムである。


 護符呪符魔法装備などと同様、熟練の上級魔術師が、丹精を込めて製作したものだ。上級魔法の魔符を作れる工芸魔術師はごく少数しかいない。それも長時間かけて、微妙な調整を繰り返しながら(ふだ)に魔力を籠める作業を行うのである。したがって生産量はごく僅かであり、大変な貴重品である。


 ユリオがデヘへ、グヘヘ、とヨダレを垂らしながら手にしている水遁の魔符。これで水中に潜伏のすることのできる水遁の魔法を発動できるのだ。一定期間なら、水中で息ができなくても過ごすことができる。さらにその姿は、完全に隠匿される、目に見えなくなるのである。本来は、強敵に追われたときの緊急避難や、逆に敵を待ち伏せするときに使うものであるが、ユリオはーー


 「これだ! こんな素晴らしい切り札があったのに、なんで今まで気づかなかったんだ! 姿を消して、見えなくなって、風呂の中に潜伏する。それなら……見放題じゃないか! うお、うおおっ! グヘッ、ヒャッ! ああ……やるぞ、絶対。やっぱり異世界は良い。異世界最高だ! 魔法最高……待てよ……魔符を使って姿を消しても、ルルが気配探知の魔法を使ったら、バレちゃう……いや、心配ない。ルルは、まさか自分の(うち)で覗かれるとか、思いやしないだろう。わざわざ魔法を使って探ったりなんてするわけない。あはは。ルルよ。お前はかなりな強力上級魔法使いらしいが……そのお前が、今度は魔法に足を掬われるというわけだ……フホッ……ゲヘッ、ああ、もう、なんだか……」


 ヨダレが止まらないユリオ。


 

 ◇



 「うーむ……いいぞ。この魔符で、風呂に先回りして、女子どもに気づかれず、湯の中に隠匿潜伏してしまえば……待てよ……」


 エミナが沸かしに来る前に、水の張られた浴槽に、水遁の魔符を使い潜伏する。エミナが湯を沸かしに来る。


 異世界(こっち)で風呂を沸かすといえば。微妙な温度調整はできないので、普通は薪をガンガンくべて、一旦沸騰させ、後から水でうめて調整する方式である。


 最初から風呂に隠れていたら、沸騰する湯の中で煮えちゃう。それじゃダメだ。エミナは風呂を沸かしたら、そのままルルを呼んで、一緒に入るだろう。どうしても、先回りして風呂に潜伏してなきゃいけないんだけど。


 「そうだ!」


 また、ピコーン! と閃く。


 「これだ! これを使おう」


 ユリオがまた取り出したのは、火遁の魔符。火遁魔法を発動する魔符である。


 燃えさかる炎の中でも、一定期間、焼けず焦げずに気配を消して潜伏できるという、スグレモノである。炎の中だけでなく、煮えたぎる油の中でも、耐えることができた。耐温性の効果抜群なのだ。究極の潜伏隠匿魔法を発動できるのだ。


 「これを貼っておけば、煮えたぎる湯の中など、何の問題もない」


 水遁と火遁の魔符を両手に、グヘヘ、なユリオ。


 先回りして、誰もいない風呂に、水遁の魔符で潜伏する。そしてエミナが風呂を焚き出し、沸き立ってきたら、火遁の魔符で凌ぐ。風呂が沸いたら、エミナは水を入れて温度を調節する。丁度良くなったら、ルルを呼んで、美少女2人が入浴する。


 ユリオの目の前でだ!


 「すごい! ……凄過ぎるぞ! いよいよ、ルルの全てが見れるんだ! 全部! グドルクのところじゃ紐ビキニで隠していた部分も……もう何から何まで! そうだ、奴隷の身体(からだ)を隈なく隅々まで検分(チェック)する、それは御主人様として、当然の権利なのだ。本当はグドルクのところでルルを買うときに、しっかりやっておかねばならなかったのだ。あの日はなんだかのぼせ上がっちまってたからな。やるべきこと……全然やれてなかった。そのままズルズルと……やっと、ちゃんとやってやるんだ。それにエミナも。いつもガッチリ防御(ガード)してやがるからな。鉄のパンツ娘。いい感じに発育成長してきたってのに……うほっ、御主君といえば、親も同然だ。やっぱり家臣の娘の身体(からだ)は、ちゃんと検分(チェック)しないと……くう……女子2人が、完全に無防備な裸身で……でも」


 さすがに、いささか気になった。


 「いいのかな……こんなことに魔符を使って」


 水遁火遁の魔符。滅多に手に入らない貴重なものである。本当に、いざというときの切り札となるものなのだ。アスティオが親友ユリオのために苦心して入手し、プレゼントしてくれたものである。


 水遁火遁の魔符、それぞれ1枚ずつしかなかった。使ってしまったら、もうおしまいである。


 そんな大切なものを、女子風呂を覗くのに使ってしまうなんてーー


 「いいのだ!」


 ユリオはすっかりコーフン逆上していた。


 「この魔符は、正義の士アスティオが()れたのだ。正義のためにと()れたのだ。俺が奴隷や家臣の娘の肉体(からだ)検分(チェック)する。これは正義だ。どうあっても実現せねばならぬ正義だ。(王国法上、主君が家臣の娘の肉体(からだ)検分(チェック)するのが正義だなどとはいうのは、いかなる根拠もなかったのだが)フッフッフ、アスティオ、ありがたく使わせて貰うぞ。今こそこの魔符を使う刻なのだ。俺はやってやる。ホヘッ、楽しみだなあ、グオッ」


 味気ない1人風呂のはずだったのが。


 一転して、美少女2人の御尊体を拝めの大作戦に!


 ユリオはコーフンして、グヘヘが止まらない。ヨダレを垂れ流しっぱなし!


 「目の前で、俺の目の前で、俺が風呂に潜伏しているとも気づかず、美少女2人がその肉体(からだ)を晒けだす。一糸まとわぬ姿で! キャッキャ弾ける! 女子っていうのは、とにかく風呂でキャッキャするもんだろうからな。全部見れるんだ。遂に。うぐ……」


 女子風呂を覗く。それも、すぐ目の前で。完全に、女子の秘密の花園に、踏み込むのだ。


 「男子の目の届かない秘密の花園で……女子どもは、俺に普段見せない顔を見せてくれる……ルルとエミナの2人。キャッキャしながら、どんなおしゃべりするんだろう? ひょっとして……俺の悪口とか?」


 ふと気になる。


 男子のいないとき、目の届かないときの女子2人。


 「やっぱり悪口とか言うかな。だいたい、家臣だ奴隷だは、御主人様御主君の悪口を陰で言い合って、盛り上がったりするものなんだ。あの2人も……いつも俺のことを絶賛してやがるけど……陰では、どんなふうに言ってやがるんだろう? そういうのも、今日、全部わかる。うむ、なるほど……これは貴重な機会。やっぱりしっかり潜伏しなきゃいけない。御主人様御主君の立場として、当然せねばならぬことをするのだ。奴隷や家臣の監督、それは御主人様御主君の神聖なる務めだ。うむ。俺はルーベイ大公爵ユリオだぞ。大貴族たる者の務め、しっかり果たしてやろう」


 妄想がエスカレートするうち、単なる女子風呂の覗きが、神聖なる務めに昇華する。


 「そうだ……あの2人、お互いの肉体(からだ)には、どう反応するんだろうな。17歳ルルの、究極女神な肢体(ボディ)。14歳エミナの、花開き始めたばかりの可憐な身体(からだ)……俺は、湯の中で頭が沸騰しないように気をつけなきゃ。女子の肉体(からだ)を目にしての頭の沸騰は、火遁魔符でも防げないはずだ……気をつけよう……女子2人は、どうなんだろう? やっぱりそれなりに気にしちゃう、感じちゃうのかな?」


 急にムクムクと。今まで考えたことのなかった疑問が首をもたげる。


 「あれ? そうだ。ひょっとしてもしかして、あの2人……何か始まっちゃったりする? ルルとエミナ、深い友情と信頼で結ばれているように見える……友情と信頼、それだけなのかな。それだけじゃない、としたら。ありえるの? その、女の子同士で……扉が開いちゃうとか。それって前世のアニメだゲームじゃ、一大ジャンルになってたよね。そういえばあいつらは、そもそも俺を置いて、女の子2人で手を取り合って、冒険の旅に出ようとかしてたんだっけ? 危ないな」


 ルルとエミナが!


 百合!


 突如、閃いた可能性に、沸騰するユリオ。


 「うーむ。けしからん。俺の奴隷と家臣が勝手に……風呂の中で、俺の目の前で、いきなり肉体(からだ)肉体(からだ)から入っちゃう?……おっぱじめちゃう? うわっ! なんだかすごい光景になりそうだ! 御尊体が正面から交わる? それは……お嬢様方、ちょっと大胆すぎない? どうすりゃいいの? でも……ダメだよ。お前らは俺の奴隷と家臣だ。御主人様御主君の目を盗んで勝手にそんなことしちゃ……そうだ、奴隷だ家臣だなんて、いつも御主人様御主君の目を盗んで悪さすることしか考えてないんだ。そういうものだ。俺の目の前では、いつも俺に感謝感激とか言ってやがるけど! ダメ、ダメ、いかん! お前たちの肉体(からだ)は、絶対に俺のものだ! 自分で勝手に何かしちゃダメ! ちゃんと奴隷の務め、家臣の務めを果たしなさい! ああ……やっぱり絶対、俺がちゃんと監督しなきゃダメなんだ! ふう、奴隷主って本当に苦労が絶えんな。ただ美少女奴隷を買って愉しみたいと思っただけなのに」


 前世でも異世界(こっち)でも、女子同士で風呂に入るのは、別にごく当たり前のことであった。だから女子が2人で風呂に入ったからといって、すぐ何かがおっぱじまるというのもありえないのだが、前世と今世で精神年齢合計32歳のエ◯ゲー脳少年は、すぐゲーム感いっぱいな妄想を暴走させてしまうのだった。


 「よし、決めた! 何があろうとも、俺は女子風呂を覗く! ルルとエミナの御尊体を拝む! 奴隷と家臣の監督検分(チェック)をしっかり行う! 俺の全てを懸けて!」


 寝室(ベッドルーム)で独り。高らかに宣言するユリオであった。



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