第33話 旅立ちの宴 〜小ハーレムに未練タラタラしていいですか?
夜。アスティオの許へ。モーリツ伯爵邸へ向かう3人。
フード付マントをすっぽりと被って。
夜警の巡察はあるので、絶対安全とはいえない。しかし、どうあってもアスティオの協力が必要なのだ。
夜の王都を足早に進む。謀反人ユリオの布告状手配書人相書きが、相変わらずベタベタと貼ってある中を行く。
そもそも、アスティオは今夜、邸にいるのか?
それも、わからない。
ユリオの前世と違い、電話やメールといったものがない。「今、在宅してる? そう、じゃ、これから行くから待ってて」
とはいかないのである。
貴族なら、まず侍臣に手紙を持たせ遣り取りするのが普通だが、そういうわけにもいかない。モーリツ伯爵邸の者にも見られず、ユリオの知っている隠し通路から入らねばならないのだ。アスティオからは、いつでも来てくれ、と言われていたが、正面から入るわけにはいかない。
なんとか夜警にも誰にも見咎められず、モーリツ伯爵邸に着いた3人。さっそく裏手の敷石を外して地下通路に潜り込む。
「ここで待ってて、俺がアスティオの様子を見てくる」
ユリオは、ルルとエミナにそう言うと、邸宅への階段を上る。狭い壁の中の隠し通路に。まず、アスティオの一番いそうな場所、彼の客間。壁画に空いた穴から覗くが、いない。誰も。次にそうな場所はーー寝室かな。
壁の中を伝って、寝室の方へ。
隠し通路の中、真っ暗だ。手探りで進む。邸宅の内部構造は、はっきり覚えている。狭い通路を息を殺して足音も立てずモギュモギュと体をよじりながら進みーー
あ。
伸ばした手。何か柔らかいものに触れた。これ、人間?
隠し通路に誰かいた!
思う間もなく、
「キャッ!」
声がした。しまった。まずい。見かったーー
このままじゃ……狭くて真っ暗な中、何とか手を伸ばし相手を捕まえるユリオ。
「キャアアアアアッ!」
また上がる悲鳴。
バタン、と。隠し扉が開いた。ちょうど部屋の隠し扉となっている壁画の前で、相手と揉み合いになったのだ。相手が思いっきり、秘密の扉を押して開けたのだ。
そのまま。
ユリオは捕まえた相手と絡れてアスティオのベッドの上に倒れ込んだ。
「あ……ロシアナ」
ユリオがベッドの上に押し倒したのは、アスティオの妹、ロシアナだった。下からユリオを睨んでいる。当年10歳の星見の姫。
「あ、あれ?……ねえ……ロシアナ……隠し通路で、何やってたの?」
一体何が起きたのか。頭の整理ができないユリオ。
「何って……その……ここは私の邸よ。何したって……いいじゃない!」
ツンとするロシアナ。
何したっていい?
そりゃ、そうだけど。
やっと状況が飲み込めてきたユリオ。
ロシアナは、兄の寝室を隠し通路から、覗いていた。今、アスティオはいないけど、これから戻ってくるのだろう。
兄の私生活の覗き? なんだか不穏だ。この子、まだ10歳だよね。この前は、兄のベッドの中に隠れていたし。大丈夫なのか?
「ねえ、ユリオ、いつまで私を押さえつけてるの? 私とこのまま夫婦の契りをするってこと? 私の大公爵妃の件は、決まりってこと?」
ビミョーに不敵な調子のロシアナ。ユリオは慌てて飛び退く。
そして、また「あっ」となる。
ロシアナの衣裳……透け透けのドレスだ! 下着も身に付けていない。つまり下着を身につけてないのもわかるほど、透け透けなのだ。透け透けといっても紋様が縫いこまれ、大事な部分は隠してるけど。いや、大事な部分だけ隠しているといういうべきか。
慌てて目を逸らすユリオ。
ロシアナは、悪びれもせず平然と小さな体を起こすと、兄の寝室の椅子の背に掛けてあった、兄のガウンを羽織る。
相変わらず……なんなんだ? この娘は。
兄の寝室の覗きをしていた……それだけじゃなくて……兄が戻ってきたら、隠し通路から飛び出そうとしてたのか? あの透け透けドレスで……背徳とかを仕掛けようと?
あの堅物のアスティオが、そんなの相手にするわけはないと思うけど。
まったく大したマセガキ、メスガキだ。夫婦の契りとか言ってやがった。もう知ってるのか? 大人のする、いろいろ全部を。なんだろうが、10歳女児は俺の守備範囲外だ。いや、守備範囲の問題じゃなくて。魔王にも選ぶ権利があるぞ。
「どうしたんだい、ユリオ、それにロシアナ」
アスティオが入ってきた。当然ながら驚いている。いつも真面目な青年貴族。
ユリオは、丁寧に会釈して、
「実は、その、頼みたいことがあって……急に寝室に入ってきたりして、本当に迷惑だよね。でも、どうしても、会わなきゃいけなかったんだ」
微笑むアスティオ。
「もちろん。何でも相談に乗るから、いつでも来てくれていいんだよ。本当に、頼りにしてくれて嬉しいよ」
ロシアナは、澄ました顔で、
「私、今日もユリオが邸に来るような予感がしたの。星見の感ね。だから、先回りしてお迎えしてたのよ」
無邪気な表情。透け透けドレスは、しっかりと兄のガウンで隠している。
「それは、ご苦労様」
気のいい兄は、妹の言葉を露ほども疑わない。
嘘吐け、とユリオ。
このメスガキの透け透けドレスの狙いは、絶対に兄貴だった。全く、ユリオが邪魔しなかったら、いったい、どうなってたんだろう?
◇
昨夜と同様、またアスティオの寝室での会議となった。ルルとエミナを地下通路から呼ぶ。
「お初にお目にかかります」
慇懃に、完璧な礼儀作法で、頭を下げるエミナ。
「堅苦しい事は、抜きにして」
アスティオは、エミナにも、ユリオや妹に向けるのと同じ微笑みを。
「はい……光栄に存じます」
ぷっくらした頬を、ピンク色に染めるエミナ。相手は、王国中の女性を虜にする貴公子である。
アスティオはユリオの幼馴染みなので、エミナとも顔を合わせたことはある。ただ身分が違いすぎるので、正式な紹介をされたことはなかったのだ。
ピンク色の頬を、ぷるぷるさせるエミナ。王国一のイケメン貴公子に優しい言葉をかけられた女の子の、普通の反応。ドギマギしているようだ。
「いかんな、これは」
みんなで卓を囲みながら、ユリオは、そっとルルを窺う。
ルルは。イケメン貴公子アスティオに心を動かしたりは、してないのだろうか? していない、ように見えるけど……今は、選ばれし勇者の使命があるから、恋だなんだ言ってる場合じゃない、そういうことか? でも、17歳の女の子。男に全く関心がないことは、ありえない。
「やっぱり、奴隷の監督はちゃんとやらなきゃな」
内心呟くユリオ。
本題の要件。
ユリオとルルは、率直に話をした。
禁断の森へ行くことにした。ついては、そのための装備を整えるのに、協力してほしい。
もともと、ゴルゴネの指輪を使って封印を解き、禁断の森へ行くべし、というのは、アスティオとロシアナがルルに伝えたのである。これからの冒険について相談しても、問題はなかった。
「わかった、喜んで協力するよ。君たちの使命、きっと王国のため、世界のためになる、そう感じるんだ。ユリオ、なんでも欲しいものは言ってくれ」
う、う、なんと頼りになる男か。やっぱり持つべきものは友であるなあ。昨夜、アスティオをぶった斬ろうとこの邸に潜入したことも忘れて、ユリオは感激する。
3人で作った欲しい物リストを、アスティオに差し出す。
「これを揃えればいいんだね? 任せてくれ。明日中にやる。明日の夜、また来てくれ。待ってるよ」
話がついた。今夜のところは、これで引き揚げることとする。
また、そそくさと隠し通路から出る3人。
ロシアナが、そっとユリオに耳に囁く。
「またユリオに抱かれちゃった。うふ、私のこと抱きたいなら、いつでも来てね。今度は私の部屋でしようよ」
うぐ、となるユリオ。
メスガキめ。何を言いやがるんだ。
モーリツ伯爵家の善心は全てアスティオに、邪心はすべてロシアナに受け継がれたんじゃないか、そう思わざるを得ない。
◇
「さあ、ユリオ、ルルーシア、エミナ、よく見てくれ。なんとか揃えたよ」
満足げなアスティオ。
翌日の夜である。
約束の刻限に、またコッソリとモーリツ伯爵邸を訪問したユリオたち。今度は、アスティオの客間である。
また、ロシアナの〝お出迎え〟があるかと警戒していたユリオだが、さすがになかった。星見の姫は、兄の横で澄ました顔をしている。
客間には、アスティオが集め揃えた魔法具、一般では手に入らない装備が、並べられている。律儀な親友は今日1日、これを集めるため奔走したのだ。
目を輝かせて検分するユリオたち。
魔法で鍛えられた剣が4本。鋼に魔法石が埋め込まれ複雑な神聖紋様の描かれた、最高品質の業物だ。
そして、鎧。
ユリオには、魔力の縫い込まれた皮鎧。ルルとエミナの女の子2人には、布製の鎧。皮や布の鎧といっても、通常の金属の鎧より物理攻撃に強い。護符呪符が縫い込まれ、こちらも神聖紋様で彩られている。
エミナは剣士であるが、身軽さと敏捷さを身上とする剣なので、少しでも軽量で動きやすいほうがいいと、皮鎧でなく、布鎧を希望したのだった。布鎧といっても、ふわりと膝まで裾のある、ワンピース仕様。腰のベルトで止める。華麗なドレスに見えた。
「こ、これ……本当に私が……いいのですか?」
自分用の装備を手にするエミナ。震えている。身分上、最高品質の剣や鎧、手にした事は無いのだ。
アスティオは、しっかりとエミナを見て、
「エミナ、君はユリオを守ってくれるんだよね。ユリオの戦いは、王国の正義のための戦いだ。君の戦いも、この世界のため。本当なら、僕が一緒に行かなきゃいけないんだけどね。それはできない……本当に、この誰よりも気高い僕の自慢の親友ユリオのこと、頼んだよ」
「はい!」
すっかり感激なエミナ。王国きっての上級貴族貴公子から、超高価な贈り物と「よろしく頼む」との言葉。これ以上の光栄は無いのである。
武器は。結局、腰に下げる剣だけで良いとなった。ユリオは武術武芸の鍛錬で、剣に槍、弓などを習ったが、3人での旅である。あまりかさばるものは持っていけないのだ。
剣と鎧の他は、消耗品。あれこれの効能の護符呪符に回復薬、治癒薬、元気丸、などなど。元気丸というのは、魔術師が練り上げた秘薬で、一粒口に含めば3日は飲まず食わずで耐えられる、戦場や冒険の旅で、とても重宝するものである。消耗品はたっぷりと用意されていた。それでも、無くなったら途中で買って補充するとわけにはいかないのでる。どれもこれも、その辺で気軽に買えるものではない。用心して、本当に必要なときだけ、使わなければならない。
ルルの欲しかった魔法の杖、魔力回復薬は無かった。これは魔術師魔法使いの間だけで流通するものなので、アスティオにも手に入らなかったのだ。
ともあれ。
スゲーな。
ユリオ、親友の尽力に、感謝の言葉もなく。
これだけの装備、買うとしたら。
その値段、金貨200デュエル(約2000万円)、いや、300デュエル(約3000万円)にはなるか。
代金はちゃんと払うから、と申し出たユリオ。ルーベイ城から持ち出した資金、まだ、たっぷりある。今夜も持ってきている。
しかし案の定というか、アスティオは笑って断った。
「何をいってるんだい? まだまだこれから大変なんじゃないか。金は必要。もしあるなら、君のために使ってくれ。正義が実現して君が地位を回復したら、払ってくれればそれでいいさ。何せ、これは僕の戦いでもあるからね。本当はもっといいものを揃えたかったんだけど、これだけしか集められなくて、面目ないよ」
「いや、本当に十分すぎるから」
ただただ恐縮するユリオ。アスティオはモーリツ伯爵家の御曹司だが、当主ではない。伯爵家の家産を自由に使える立場では無い。それでも精一杯ユリオの旅立ちために、素晴らしい贈り物を用意してくれたのだ。
有り難く受け取ることにした。これで魔法具、冒険の装備問題は解決。
そうだ、とユリオ。
禁断の森。白月王の遺産とか、眠ってたりしてないのかな。すごいお宝とか見つけたら持ち帰って、今度こそアスティオにお返しの贈り物しなきゃ。
とらぬ狸の皮算用なことを考える。
「さ、僕の用意した装備道具は、気に入ってくれたかな? じゃ、これから僕とロシアナに、付き合ってもらうよ。まだまだ、帰すわけにはいかないからね」
アスティオは朗らかに言うと、奥の卓に掛けてあった布を取り除く。
豪奢な食事が用意されていた。
おお、となる3人。
蜂蜜館で毎日食べていたエミナの優しい家庭的な料理もよかったが、アスティオの用意したのは、大貴族のお抱え料理人が、贅を凝らして作ったもの。見ているだけで涎が出る。
遠慮なくいただくことにした。
アスティオは、侍臣従者を遠ざけておいていた。卓を囲むのは、ユリオ、アスティオ、ロシアナ、ルル、エミナ。
楽しい晩餐が始まった。
エミナは最初ひたすら恐縮していた。ユリオの家臣、貴族の末席身分である。大貴族の饗宴の席に対等の立場で列するのは、本来ありえないことなのだ。
「気兼ねしないで。みんな、僕の友人だから」
アスティオの言葉に、緊張もほぐれていく。
これからの旅を考えると。ユリオは香料を利かせた大きな炙り肉を頬張りながら思う。こんなご馳走も、当分食べ納めだな。ま、小さい頃から父の方針で、質素堅実に耐えることには慣れてるけど。
アスティオ、本当にいい奴だ。でも……
ついつい、ルルをチラ見してしまう。ルルは、アスティオやロシアナと楽しそうに話をしている。
ニコニコとその美貌を輝かせて、
「この前頂いた肩掛け、冒険に持っていきますね。アスティオ様の恩義、絶対に忘れません」
なんて言っている。なんだ、アスティオ様って。俺のことはユリオって呼んでいるくせに。いや、俺がそう呼べって言ったんだけど。
ユリオの視線に目ざとく気づいたロシアナ、ニヤリ、と悪戯っ子な笑みを浮かべ、
「ルルーシア、王国最高の男2人に両腕を引っ張られるのって、どんな気持ち?」
「ええっ?」
頬を紅潮させるルル。ロシアナは、なおも、
「こんな綺麗な人、私、見たの初めて。託宣が降りたのも納得。ルルーシア、あなたなら、どんな鍵だって開けられるよ。誰の心の鍵だってね」
また、微妙なことを。
「こら、ロシアナ、やめなさい。ルルーシアは、宿命のために戦おうとしてるんだ。からかったりしちゃ、ダメだ」
兄の厳しい声が飛ぶ。
「はーい」
首をすくめるロシアナ。ユリオにウィンクしてみせる。
メスガキめ、また要らんことを、とユリオ
全く……余計なことを言って、ルルに意識させちゃったら、どうするんだ。乙女心。何がきっかけで揺れるか、わかったもんじゃない。ルルの美貌、誰の心の扉も開けることができる。うん、そうだ。ルルを見たら……みんな参っちまうからな。メロメロに……それにしてもアスティオはルルに欲望しないのか? やっぱり……少しおかしいんだ。すごくいいやつだけど……欲望。それが人間の核心の筈だ。俺は正しい……で、ルルにも欲望が……乙女心……ヤレヤレ……これからずっと心配してなきゃいけない。旅の間ずっと……それはそれで気が重いな。
通常の奴隷主が考えるような、奴隷の逃亡反抗については、ユリオは心配する必要がない。何せルルは、自分が奴隷解放自由の身と思い込んでいるのだ。だから、ルルの恋心、それだけが心配なのだ。女勇者だからって、恋に落ちないとは限らない。恋なんて突然くるものだし。ずっと見張ってないと。それに。ルルがユリオの本性を知ったらどうなるか? よくない結果しか見えない。エミナも。「ユリオ様がこんな人だとは、知りませんでした。ショックです。もうお仕えすることはできません!」となる? アスティオも。もう親身に助けてくれたりはしないだろう。良い子の仮面を脱ぐことはできないのだ。俺が、この仮面を脱ぎ捨てる時は。ルルをガッチリと束縛し思うままに支配蹂躙できる、そうなった時だ。俺は、そのために戦うんだ。欲望の炎に従う。それが俺の宿命の道だ……
王国の話もした。
ユリオとの宴を心から楽しんでいたアスティオだが、国王の話になると、その美貌に翳が差した。
「僕は毎日、王宮に出仕している。王宮は今、ピリピリしてるよ。嫌な雰囲気だ。グラハド国王も以前のように、僕たちに親しく接してはくれない。壁を作ってるんだ。こんな事件が起きたんだから、当然だけどね。ベリルのことは信用している。いや、ベリルしか信用していないように見える。2人きりで長時間閉じこもって、何か話をしている。貴族の間じゃ、いろんな噂が飛んでるよ。次は誰が取り潰しに遭うだとか。みな、身の危険を感じている。ユリオ、君が密かに兵を集めて決起する、そんな噂まで流れているよ。僕はなるべく穏便に解決できないかと考えているけど、なにしろ国王とは、まともに話もできない状況だからね」
…………
宴は終わった。
名残りを惜しむアスティオとロシアナの兄妹に、ユリオたちは何度も厚く礼を述べ、貰った装備道具を有り難く携え、またコッソリと邸を出た。
美しい星々が煌めく夜空の下、蜂蜜館に戻る。
もうこれで。旅立ちの準備、全部できた。
持っていくものは、用意できた。
蜂蜜館の片づけもした。例の拷問部屋の道具一式は、とっくに道具屋を呼んで引き取らせていた。全部で銀貨50ドラメ(約50万円)になった。結構な売値である。道具屋は、「こういうのはマニアの方がおられるので、なんだかんだ買い手がつくものでございます」と言っていた。うむ、そうだ、とユリオ。またいずれ買い戻して、鬼畜プレイしてやるからな、絶対に。
買う物は買い、貰う物は貰い、売る物は売って。
残ったユリオの手元の資金は。
白色水晶1本。
金貨350デュエル。銀貨850ドラメ。
合計1万4350パナード(約1億4350円)
まだまだ、たっぷりある。一財産である。ルルを買うために城の金庫からゴッソリ持ち出した全現金資産の余りだ。
ユリオは、ため息。これだけの金と、このなかなか素敵な館。それに美少女2人。もし、ルルとエミナと3人で、優雅に小ハーレム生活ができるなら、政争だ冒険だ宿命だ全部忘れて楽しく暮らせるなら、どんなにいいだろう。
でも、問題は。
肝心の美少女2人が、ユリオに身体を任せるつもりが全くないということ。美少女ハーレム。現状では夢でしかない。
「くう……ラーグ公爵猊下大師匠は、毎日毎夜、女を集めて乱痴気騒ぎしてるってのに……」
いつもの嘆きである。
しかし、運命は変えられない。
蜂蜜館での、およそ2週間に及んだ潜伏生活。それなりに甘美な日々であった。が、2人の美少女をただ指をくわえて見ているばかり。結局、フラグは何も立たない。
このままではいけない。前へ進まなくては。
いよいよ禁断の森へ、出発。
その前に。
「お風呂に入ろう!」
と、いうことになった。




