第17話 セーラー服が呼ぶ運命とはなんですか?
ユリオとルル、2人で揃って蜂蜜館を出た。2人とも、フード付きマントをすっぽりと被って。
ユリオとしては、せっかく手に入れたルルともっと一緒にいたかったのだが、立場というものがある。大公爵が、供も連れず、行き先も告げずに外出。そう長く王都の本邸を空けておくわけにはいかない。大事なルーベイ大公爵お披露目式の準備もあるし。もちろんルルは式に参加しない。ま、沿道でパレードを見る分には、いいだろう。ユリオの盛大な晴れ舞台を見て、胸をときめかしてもらおうじゃないか……
ついついルルのことを考えてしまうユリオ。
「いかんな。いろいろとやる事はやらなきゃ。そもそも、領地から一足先に来たのは、お披露目式の前に気軽な立場で貴族学院の仲間と会っておく、そういう話にしておいたんだっけ。そっちの用事も済ませなくちゃ」
貴族学院。考えると、憂鬱になる。ユリオの〝友人〟として指定されたのは、祖母の方針で悪徳とは無縁の良い子の坊ちゃんばかりである。つまり、〝ひたすら面白くない〟〝つまらん連中〟である。学院の令嬢たちとは、親密な交際は禁止されていた。2人きりになることも許されなかった。貴族学院。ただただ、フラストレーションの溜まる場所である。ルルのいる今となっては尚更。
「ま、急に魔王に豹変するわけにもいけないし。俺の大公爵お披露目式はちゃんとやらなきゃな。それに」
美少女奴隷を買う。夢が現実になった。いろいろ必要なものが出てきた。王都で探すのだ。
「うーんと、やっぱりなんといっても、『完全奴隷自殺逃亡逆襲防止マニュアル』かな。『完全奴隷調教マニュアル』なんてのもあったらいいな。ルルの自害だ逆襲だがきっちり防げれば。もう怖いものなしだ。〝ガチ恋愛ルート〟クリアしたり、ダメだったりしたら、すぐ押し倒しちゃえばいいんだ。いや、我慢ができなくなったら、すぐにでも……ルートなんてどうでもいい、ルルをどうするかは俺が決めるんだ。俺が御主人様だからな。とにかく奴隷の扱い方の教本だ。昔から奴隷制度はあったし、昔の方がもっと盛んだったはずだ。いろいろ先人の知恵ってものがあるだろう。何事も勉強だ。勉強第一。あといろいろ、当座必要なものを買わなきゃ」
2人で外出したのは、ルルのためだった。
服だ靴だなんだ、身に付けるものに、しばらくの食料、必要な日用品。
ユリオの集めた〝激えっち衣裳〟コレクションは、〝同級生ガチ恋愛ルート〟となった現在では、まずいのだ。ユリオとしては激えっち衣裳で別に構わないのだが……ルルにとっては、あの衣装はとんでもないものなので、まともな服を買わねばならない。ユリオはこれから王都で忙しくなる。ルルは蜂蜜館で一人暮らし。時々ユリオが訪れることになる。愛人宅そのものだ。まだ、全然愛を交わせてないけど。
いろいろ、買い物に必要なこの辺の店をルルに案内し、教えるつもりだ。もちろん金を出すのは、ユリオだ。奴隷のルルは、一文無しである。
ルルに、デュエル金貨3枚(約30万円)を渡した。ルルはひたすら恐縮していたが、ユリオは言った。
「気にしないで。必要だったら、もっと出すから。何でも言ってね」
お前は俺のものだ。お前が買うものは、結局俺のものだ。腹の中でユリオはほくそ笑んでいた。激えっちじゃない女の子の服。ルルがどんな格好するのか、それはそれで楽しみだ。
そうだ、セーラー服。
前世の高校時代。琴見咲良のセーラー服姿。思い出す。尊くまばゆく輝いていた。
「ルル、こっちの世界に飛ばされてきたときは、セーラー服姿だったはずだ。でも、王国の摘発捕縛にあったんだよな。持ってきたセーラー服なんて、どっか行っちゃっただろう。琴見咲良のセーラー服姿、また見たいなあ。そうだ!」
ピコーン! とひらめく。
「なに悩んでいるんだ! 俺はルーベイ大公爵様じゃないか。服くらい、仕立て師に作らせよう。セーラー服ってどんなのだっけ。細かいとこまでは思い出せないけど。何ならルルにも手伝ってもらって作らせよう。うむ。金があれば、何でもできるのだ。そのために大公爵の地位があるのだ」
琴見咲良のセーラー服姿がまた拝める。じっくりと見つめることができる。見つめるだけじゃない。色々と……愉しめるのだ。
この考えに、だいぶ気をよくした。
「素っ裸に剥くよりも、制服、それもセーラー服って扇情的だよなあ。こっちへ来てずっと制服女子なんて見てないし。あはは。あは、グヘ……また、王都でする仕事が増えたな。制服、制服、セーラー服! 持って来い、セーラー服!」
並んで歩くルルの横で、グヘヘ、な妄想に浸るユリオ。
◇
商店に向けて歩きながら。
「ルル、本当に遠慮しないで、何でも好きなもの買ってね」
ユリオは太っ腹なところを見せる。そういえば、女の子とルンルン買い物デート。これも最初の人生でも、2度目の人生でも、初めてだ。
デート!
それもクラス委員長琴見咲良とだ!
「そうだ。女の子ってプレゼントに弱いんだよな。よし、奮発してやろう。アクセサリーか何かを、俺からだと言って買ってやろう。グホッ、ガチ恋愛ルート、案外、あっさりクリアかな。金、地位、容姿、俺は何でもある男だ。堂々としていいんだぞ。委員長相手だからって、怯む事は無い」
毎度の妄想膨らませるユリオ。並んで歩くルルは、
「ありがとう。お世話になりっぱなしで。ユリオ、私、絶対この恩を絶対返すからね。そうだ、魔法、ユリオ、私の魔法封印を解く鍵は持ってるよね。私が今できることって、魔法くらい。必要だったらいつでも言って。絶対にあなたの役に立つから」
クラス委員長の時と同じで、ルルは相変わらず責任感が強い。しかし魔法? ユリオは思い出す。ルルのしてる錠付きの首輪、あれが魔法封印なんだ。そうだ、ルルは、高度で強力な魔法を使えるのを、隠してるんだっけ。ユリオの持つ鍵で、ルルの魔力解放したら。
「それは、まずい」
と、思う。どんな魔法が使えるのかわからないけど、普通の女の子じゃなくなる。強力な魔法使い。いきなり押し倒したりとか……できなくなっちゃう! 魔力解放なんてとんでもない。絶対しないぞ! 魔法少女は、魔王に対抗する力を持ってはならない。前世で好きだった漫画に「奴隷は2度刺す!」という名言があった。刺されるのなんて……1度だって真っ平御免だ!
「はは。俺はルーベイ大公爵だよ、今、ルルにしてることなんて、何でもないよ。それにグドルクの奴に言われたんだ。魔力封印は絶対解くなって。魔法とか使ったら、問題になっちゃうんじゃないかな」
ルルに笑顔をみせる。ルルも素直に、
「そうだね。私が魔力を隠してるのを王国に知られたら、危険だよね。わかった」
ほっとするユリオ。魔法少女大復活。危ない、危ない。俺は刺されないぞ。
これでいい。魔法は永遠に封印だ。そして……ルルにセーラー服姿でご奉仕させる姿を、想像する。制服プレイ。セーラー服ルート攻略。娯しみが広がる。
肉体年齢15歳、精神年齢は前世と今世で合計32歳の少年の野望は、止めどもなく膨らんでいった。




