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第16話 エ◯ゲー脳にガチ恋愛ルート攻略はできますか?



 「この館、商人が王都に来たときの足場にしたり、大貴族の隠れ家別宅だったり、そういう目的で建てられているんだ。この辺は、割とそういうタイプの館が集まっている」


 異世界で奇跡の再会を果たした2人。飲んで食べて、ルルは服も着て、おしゃべりして、一応お互いの立場がわかった。呼び名も決めた。


 いい感じの出発である。


 ルルは、あちこち見回して、


 「素敵な(うち)ね。名前とかついてるの?」


 「名前? 蜂蜜館(ハニーハニーハウス)っていうんだ」


 「え?」


 「あ……前の持ち主がつけたんだよ、この名前。きっと誰か好きな人とのとっておきの場所だったんだろうね」


 まごつくユリオ。別に奴隷にどう思われようが、御主人様が慌てる必要はないのだが、まずは同級生ガチ恋愛ルートをプレイする。そう決めたのだ。


 ルルは素直に、


 「ふうん、ロマンチックね。部屋がいっぱいあるのね。見てもいい?」


 「うん、どうぞ」


 ルル、興味津々で、


 「ここは何かしら?」


 小さな扉を開ける。


 「あっ!」


 焦るユリオ。ルルが開けたのは……拷問部屋だ! しまった!


 「なに、これ……」


 息を飲むルル。薄暗い部屋にズラリと並んだ拷問道具は、不気味に鈍い光を放っている。 


 ルルの顔から、みるみる血の気が引いてくる。


 ユリオは、うわわっと、


 「この(うち)買った時、家具から何から全部置いていってもらったんだ。すぐ住めるようにしようと思って。そうしたら、こんなのがあったんだ。見つけた時、僕もびっくりしたよ。あはは。なんだろうね。不気味だよね。でも、本当に使うんじゃなくて、観賞用かもしれないよ。こういうのを見てキャッキャするのが好きな人だっているから」


 〝同級生ガチ恋愛ルート〟死守に、必死である。まずいものを見られた。これを自分で買ったなんて、到底言えない。


 ルルは、拷問道具をじっと見つめている。その目線の先にあるのは、人形の機械(カラクリ)。ユリオが期待を込めて興奮して買ったものである。


 「あれ……なんだろうね。一体どうやって使うんだろう? こういうの見ちゃうと……人間の業みたいなものを、感じちゃうよね。人間には、底知れない恐ろしさ、闇がある。元の世界でも、異世界(こっち)でも、それは変わらない。私も魔法団が酷い目に遭わされてそれはよく知ってるけど。こういう道具には……次元の違う暗い世界が宿っている、そう感じる。本当に、ユリオに出会ってよかった。助かったよ。みんながユリオみたいな人じゃない事は、わかっている。でも、ユリオを見ていると、やっぱり人間を信じなきゃ、そう思えるの。本当にありがとう」


 うーむ。このお嬢様のカンチガイ、激しいな。この拷問道具のコレクションを見ても、まだ人を信じられるとか言っちゃうんだ。同じものを見ても、人間どうしてこうも違った受け止め方をするんだろう。ユリオは、人形の機械(カラクリ)にルルを磔にしていじくり回す姿を想像して、グヒョ、グヒョ、と興奮する。ヨダレが出てくる。でも、まだだ。楽しいプレイをするには、準備が必要。美味しいプレイ。後で取っておくんだ。いきなり、がっついてはいけない。ルルよ。しっかりと堪能させてやる。人間に宿る暗い世界ってやつをな。本当の地獄を見せてやる。俺が真の魔王となった時、お前は無力で、泣き叫ぶことしかできないのだ……


 「これって、どうするものなんだろう?」


 ルルが手にしたのは……浣腸器具だ!


 慌てて取り上げるユリオ。


 「触らないほうがいいよ。こ、これ、なんだろうね、危険な仕掛けがあるかもしれないから、触っちゃダメ。もうこの部屋のことは忘れよう。ここにあるものは、道具屋を呼んで引き取らせるから」



 ◇



 「うわあ素敵」


 笑顔のルル。


 2階に案内した。この館は2階建てである。1階居間(メインルーム)は吹き抜けとなっていて、広い螺旋階段で2階に上れるようになっている。


 ルルを案内した部屋。ピンクを基調としたなかなかお洒落な部屋である。いろいろなシチュエーションで奴隷とプレイしたかったユリオは、様々なタイプの部屋を用意していた。ここは1番女の子らしい部屋。ルルの私室にすることにした。


 「ありがとう」


 フカフカのベッドに腰かけるルル。すぐにも押し倒したいユリオだが、ここはじっと我慢。


 「遠慮しないで。ここは君の(うち)だからね。必要なものがあったら、何でも言って」


 「うん。何度感謝してもしたりないね。(うち)を買うのって全部自分でやったの? 使用人とかはまだ雇ってないの?」


 そのうち、「ヘッヘッヘ、わかっております、御主人様」という下僕を雇わなきゃ、と思うユリオだったが、


 「1人で息抜きするために買った(うち)だからね。大公爵の身分てのは、結構疲れるんだ。いつも人に囲まれててね。たまには1人もいいもんだよ」


 「じゃあ、私がいたら邪魔?」


 心配するルル。


 「そんなことないよ、全然! ルルなら、ずっといていい。前世の同級生が異世界(こっち)に飛ばされて来ちゃったんだ。責任は持つよ。君の事はしっかりと。できる事は、何でもするからね」


 ルルは瞳をウルウルと。


 「ほんと、しっかりしてるんだね。ユリオは。大公爵の身分なのに、1人で何でもできて。前の世界の同級生のことも考えられて。まだ15歳なのに、凄いよ」


 15歳? ちょっと引っかかった。うん。いかにも俺は15歳だ。


 あっ、


 重大なことに気づく。


 15歳。前世じゃ、中学生年齢だ。全然気にしなかった。自分は今も、17歳の気持ちだし。(実際には、前世と異世界(こっち)で合わせて精神年齢32歳だったが)15歳の中学生男子。


 ルルは、琴見咲良(ことみさくら)は恋愛対象にするのか?


 突然湧いた疑問。


 琴見咲良(ことみさくら)の性格を考えると。前世だったら、中学生と恋愛なんてしないだろう。


 ルルは、まだ俺をコドモだと見ている?


 じゃあ、なに? ガチ恋愛ルートは不成立?


 いやいや、そんな事はない。


 ユリオは、自分に言い聞かせる。


 「異世界(こっち)異世界(こっち)だ。俺は確かに15歳だけど、上背もあるし、前世と比べ物にもならないくらい逞しい。下の〝モノ〟だって立派に……ふふ……今の俺が十分〝男〟だと、ルルに〝わからせ〟てやるさ。そんなの何でもない」



 ルルはピンクの自室の窓を開けて、気持ちよさそうに風に吹かれている。


 漆黒のロングヘアが揺れ、青いワンピースには、(しり)(ライン)が。


 ゴクリと唾を飲み込むユリオ。


 「いいぞ。このルート、いけるぞ。しかしどんなルートだろうが、ルル、お前は必ずこの魔王の(にえ)として蹂躙されるのだ。せいぜいこの(うち)を楽しむがよい、ここは魔王がお前を囚える檻なのだ。グッハッハ」



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