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第154話 秘湯! 熱闘! 大死闘!! 19 女湯の3人美少女



 女湯へと。

 

 ルル、エミナ、クローリディアの3人は進んで行く。


 目の前に広がる圧倒的な光景。言葉を失っていた。


 「わあぁ……っ! すごいです、ルルさん! 見てくださいなのです! 上からも下からも、ツララみたいな岩がたくさん生えているのです!」


 ぴょんぴょんと跳ねて歓声を上げるエミナ。


 細い鍾乳洞の通路を抜けた先に広がっていたのは、外からは想像もつかないほど巨大で神秘的な地下大空間だった。


 天井からは無数の鍾乳石がシャンデリアのように垂れ下がり、地面からは竹の子のような石筍がニョキニョキと突き出ている。


 洞窟の壁面に掘られた無数の壁龕(へきがん)には、ほのかな光を放つ置燈(ランプ)が一定の間隔で据え付けられていた。だが、この空間を何よりも幻想的に彩っているのは、その灯火を反射する岩肌そのものだった。


 「本当に綺麗……。ただの石灰岩じゃなくて、きらきらした結晶が混ざっているのね。まるで、星空の中に迷い込んだみたい」


 ルルも、うっとりと吐息を漏らす。


 濡れた岩壁を見上げると。


 この地の石灰岩には、大森林の地脈が育んだ微細な閃光石がびっしりと混じり合っており、置燈(ランプ)の光を受けて洞窟全体がダイヤモンドを散りばめたようにキラキラと五色に光り輝いているのだ。


 「フン、まぁ、薄暗い泥泥した穴蔵かと思えば、なかなか目の保養になる意匠(つくり)をしているじゃない。この私をお迎えするのだから、これくらい当然の演出ですわね」


 扇子をパタパタと動かして胸を張るクローリディア。相変わらずの高慢さだが、その瞳は隠しきれない興奮で輝いていた。


 さらに3人の女子をワクワクさせたのは。その光り輝く空間のあちこちに、自然の悪戯によってくり抜かれた大小様々な「湯壺」が、湯煙を上げて点在していることだった。


 「ルルさん、あっちを見てくださいなのです! すっごく綺麗な、エメラルドグリーンのお湯が湧いているのです! 『妖精の化粧水』って看板が立っているのです!」


 「本当ね! きゃあ、あっちには真っ白な乳白色の湯壺もあるわよ? 『白銀の這い湯』って、さっき案内図にあった、お肌がすべすべになる温泉じゃないかしら!」


 「まぁ!? あ、あそこにある黄金色に濁った湯壺は何かしら!? 『黄金の贅沢泉』……? ちょっと、ルル、エミナ、下賎な湯壺は放っておいて、まずはあの私に相応しい高貴な色の湯から攻めるわよ!」


 普段は冷静(クール)な宿命を奉じる魔法使いルルも、料理番の仕事から解放されたエミナも、そして最上級の世界を知る高飛車なクローリディアまでもが、見たこともない彩り豊かな温泉の数々を前にして、完全に年相応の少女に戻る。


 キラキラと光る鍾乳石の群れと、立ち上る温かい湯煙。


 その幻想的な迷宮の奥へと、3人は吸い込まれるように、弾んだ足取りで進んでいく。



 神秘的なきらめきを放つ鍾乳石に囲まれた『白銀の這い湯』。


 まず、ここから。


 乳白色の滑らかな湯がなみなみと湛えられた天然の湯壺で、3人の少女は旅の疲れを洗い流していた。


 完全な女湯である。


 周囲に他人の気配もない貸切状態とあって、三人は窮屈な麻の湯着を脱ぎ捨て、その身を一切遮るものがない、全裸で湯に浸かっている。


 湯面からは、透き通るような白い肌と、それぞれの個性が際立つ肢体が惜しげもなく露わになっていた。


 ルルは湯に浸かってなお、その圧倒的な爆乳の双丘が自重でぷかぷかと湯に浮き、お湯を大きく溢れさせている。


 エミナは健康的に引き締まった小柄な肢体。その胸は、花開こうとする蕾のようにぷっくらとしている。


 クローリディアは彫刻のように完璧な、出るところがツンと出た大人の色香を漂わせる極上の肢体(プロポーション)を横たえていた。


 「はぁぁ……極楽なのです……。大森林での泥まみれの毎日が、嘘みたいに溶けていくようなのです……」


 エミナは首まで湯に浸かり、ぷはぁ、と幸せそうな吐息を漏らした。その手には、洞窟内の売店で購入した、素焼きの小瓶が握られている。


 「エミナ、それ、美味しいの?」


 岩肌に背中を預け、こちらは竹筒の、冷たい鉱泉水で喉を潤していたルルが微笑みながら尋ねる。


 「すっごく美味しいのです! これ、この地方の山羊のミルクを酸っぱく発酵させた『白山羊の生酸乳 (メー・ラクト)』っていう飲み物らしいのです。甘酸っぱくて、冷たくて、お腹に優しく染み渡るのです!」


 『白山羊の生酸乳 (メー・ラクト)』は、ヴォシュ村の周辺で親しまれている、山羊の乳を野生の乳酸菌で発酵させた伝統的な飲料である。素朴で深い味わいがある。


 「ふふ、可愛い名前の飲み物ね。でも、本当に夢心地だわ。温泉の成分が肌に吸い付くみたい」


 「フン、下賎な民の飲み物なんて興味ありませんわ。やはり温泉の供といえば、これに限りますわね」


 少し離れた特等席の岩棚で、クローリディアがガラスの杯を揺らしていた。ヴォシュ村特産の山桃の果実酒(ワイン)だ。


 クローリディアのお気に入り。これも洞窟内の売店で見つけたのだ。


 すでに数杯を重ねている。


 クローリディアの普段は青白く冴え冴えとした美貌が、湯熱とアルコールによって林檎のようにぽっと赤く染まっている。


 「冷やした山桃の酒精……。この野生味溢れる酸味……清冽な香り……本当に……悪くありませんわ。身体(からだ)の芯から、とろけてしまいそうですわね……おーほほほ……」


 高笑いも、どこか締まりがなくなっている。高慢女公爵も、今や完全に毒気を抜かれて夢心地。



 ◇



 『白銀の這い湯』の乳白色の湯面には、3人の少女たちの弾んだ声がなおも響く。


 『白山羊の生酸乳 (メー・ラクト)』の素焼き瓶を抱えたエミナ。その視線は、先ほどから一点に釘付けになっていた。ならざるを得ないのだ。


 湯のなめらかなヴェールの下で、ぷかぷかと豊かに浮き沈みしている、ルルの圧倒的な質量(ボリューム)双丘(バスト)である。


 「……ルルさん」


 「な、なあに、エミナ?」


 熱い視線に気づいたルルが、気恥ずかしそうに自分の豊かな胸元を両腕で隠すようにして、身を縮めた。


 「エミナ、ついつい気になってしまうのです。ルルさんのそれは、どうしてそんなに大きくて、ものすごい質量(ボリューム)があるのですか? エミナの胸も、いつかルルさんみたいに、湯船のお湯を全部溢れさせるくらい立派になるでしょうか……?」


 エミナは自分の、花開こうとする蕾のような尖った胸を見つめながら、ぽつりと呟いた。14歳の少女にとって、17歳にしてすでに完成されたルルの圧倒的な発育は、驚異であり憧れだったのだ。


 「も、もう、エミナったら何を言い出すのよ……っ」


 ルルは顔を真っ赤に染め、さらに湯の中に深く体を沈めた。


 ルルにとって、この規格外ヤバスギな爆乳は、いくら布で締め付けても隠しきれない歩くお色気トラップのようなものであった。ルル自身は、自分の胸の破壊的な存在感(ボリューム)で勝負しようなどとは全く考えていないのだが、普段から、どうしても男たちの下卑た視線を集めてしまう。悩みの種でしかなかった。


 「いい、エミナ? 女の子にとって本当に大事なのは、そんな……大きさなんかじゃないわ。日々の鍛錬で培った魔法の技術や、努力して身に付けた知性、そして品性よ。貴方はとっても働き者で、弓の名手で、料理が上手で、思いやりのある素敵な女の子なんだから、胸の形なんてくだらないこと、気にしなくていいの。自分を磨いていけば、それで十分素晴らしい大人の女性になれるんだから」


 ルルは努めて生真面目な口調で、エミナを諭すように言った。


 知性や品性、努力して得たものこそが、人間の価値を決める――それこそが、ルルーシア=琴見咲良(ことみさくら)の誇りであり、信念だった。


 だが。その生真面目な言葉を、冷やした山桃の果実酒(ワイン)に煽られた高笑いが一刀両断にする。


 「おーほほほほ! 相変わらず、耳を塞ぎたくなるほど哀れで庶民臭い言い訳ですわね、ルル!」


 クローリディアが杯を岩棚に置き、湯の中からゆっくりと立ち上がる。


 「絶対的な『尊貴さ』というものはね、そんな浅ましい『努力』ごときで後から身に付くものではありませんわ。生まれながらにして天から与えられた血統、この完璧な造形美こそが全てなのです!」


 湯気の中から現れたクローリディアの肢体。まさに圧倒的だった。


 クローリディアも見事な巨乳の持ち主であったが、恥ずかしそうに隠すルルとは対極に、その豊満な双丘(バスト)をこれみよがしに天に向かってピンと堂々と突き出している。


 クローリディアにとって、己の美しさ、尊貴さは、隠したり恥ずかしがったりする必要など一毫もないものだった。


 むしろ、世界の全てに見せつけ、ひれ伏させるための武器なのだ。常に己を誇り、堂々としていなければならない。


 「この気高き双丘の立ち姿をご覧なさい! これこそが国の頂点に立つ大貴族の品格というものですわ。ルル、貴方が、見事な宝を持っているのは認めるわ。でも、それをコソコソと隠すのは、天への冒涜であり、それこそが『品性がない』と言うのですわよ?」


 「なっ……! な、何が天への冒涜よ! 貴方みたいに、四方八方に(バスト)を主張して歩く方が、よっぽど破廉恥で不作法だわ!」


 「なんですって!? この私の完璧な肢体(プロポーション)を破廉恥呼ばわりするなんて、ただの嫉妬ですわね! 見苦しいことこの上ない!」


 「エ、エミナはただ、将来ルルさんみたいになれるか聞いただけなのですーっ!」


 乳白色の秘湯の中で、真っ赤になって怒るルルと、どこまでも上から目線で胸を張るクローリディア、そして置いてけぼりを食らったエミナの、微妙に噛み合わない女子トークがヒートアップしていく。


 幻想的な鍾乳洞温泉の湯壺で美少女3人が全裸で肌を寄せ合う光景は、間違いなく天の楽園ような美しさであったが、その会話の内容は、温泉の熱気も手伝って、なんとも微妙な方向へと流れていくのだった。


 年頃の少女の関心事、双丘(バスト)肢体(プロポーション)



 ◇



 キラキラと輝く鍾乳洞の奥で、湯煙に包まれながら、少女たちの他愛のない笑い声と甘いお喋りが優しく反響する。


 大森林の過酷な旅の苦労も、ダルトン殺害の記憶も、この瞬間だけは完全に、美しい地下の秘湯へと溶けて消えていた。



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