第142話 秘湯! 熱闘! 大死闘!! 7 メロンと美少女
ヴォシュの村の石灰岩の土壌が育んだ数々の至高の珍味は、ユリオたちの胃袋をこれ以上ないほどに満たしていった。大森林の過酷な強行軍で干からびかけていた心と体に、豊かな滋養が隅々まで染み渡っていく。
皿の上に残ったハーブのソースや仔羊の骨を眺めながら、ユリオは「ふぅ」と、蝦蟇の大口から満足気に、しかし相変わらず湿った音のため息を漏らした。
首から下はすっかり軽くなり、長旅の緊張が心地よく解きほぐされていくのを感じる。食堂の窓から差し込む陽光は穏やかで、満腹の幸福感が一同を包み込もうとしていた。
食事の余韻に浸り、そろそろ席を立とうかという空気が流れ始めたその時、厨房の奥の扉が重々しく開いた。
現れたのは、またまたまた、宿の主人だった。今度は何を持ってくるのかとユリオが横にせり出した金色の眼球を向けると、主人はうやうやしく、まるで国宝でも運ぶかのようなもったいぶった足取りで歩いてくる。その両手には、見事な装飾が施された大きな木製の大盆が捧げられていた。
「皆様、素晴らしいお食べっぷり、誠に恐れ入ります! これより、我がヴォシュの村が誇る、本当の『主役』をお持ちいたしました。お食事の締めくくりに、こちらのデザートをどうぞ!」
主人が大袈裟な声を張り上げながら、大盆をテーブルの上へと滑らせた。
ドスン、と心地よい重量感を伴ってそこに鎮座したのは、ユリオの蝦蟇の目から見ても驚くほどに見事な、大玉のメロンが二玉だった。
それは大森林の野生の果物とは一線を画す、完璧な球体に近い見事な代物だった。巧みな農夫の手によって、石灰岩質の土壌がもたらす豊富なミネラルを吸い上げ育ったのだろう、表面には、まるで一流の職人が細い銀の糸で編み上げたかのような、均一で美しい芸術的な網目がびっしりと張り巡らされている。皮の緑色は深みがありながらも瑞々しく、まだ切られてもいないというのに、豊潤で甘やかな、どこか高貴な香りが周囲の空気を一瞬にして塗り替えていくのが分かった。
主人は、その二玉の巨大なメロンが載った大盆を、迷うことなくルルの目の前へと置いた。
これまでの宿の部屋割りの交渉や、金貨2枚を迷いなく差し出してきたその毅然とした態度、そして何よりその圧倒的な気品から、主人はルルこそがこの一風変わった旅の一行を率いる「若きリーダー」「女主人」であると判じたに違いなかった。
「さあ、ご覧ください! これぞ我が里の結晶、石灰岩の地下水が育てた特大の大玉メロンでございます! これから厨房へ下げまして、当宿秘伝の天然蜂蜜と特製の濃厚な山羊乳クリームをたっぷりとあしらい、極上のデコレーションを施して皆様にお出しいたします。しかしながら! その前に、この大森林の奇跡とも言うべき見事な作物の、調理前の最も美しいお姿を、まずは皆様に直にご覧いただこうと思い、こうして先にお持ちした次第でございます! いやはや、この張り、この大きさ、素晴らしいでしょう!」
主人は一人で悦に入り、熱弁を振るっている。
しかし、ユリオは主人の言葉が、ある瞬間からまったく頭に入らなくなってしまった。
(……あ、いや。待て、これは……何て言うか、配置が悪すぎるだろ……いや、良すぎるというべきか……うん、そうだよね)
ユリオの蝦蟇の目は、人間のそれとは比較にならないほど広い視野を持っている。焦点を一つに絞らずとも、左右に飛び出た金色の眼球は、テーブルの上の光景をパノラマのように完璧に捉えてしまうのだ。
そして、その広すぎる視野が今、あまりにも不条理で、かつ、どうしても抗えない「二つの対比」を完璧に網羅してしまっていた。
ルルの真ん前に並べられた、二玉の巨大なメロン。
そして、そのメロンのすぐ後ろに位置する、ルルの胸。
ルルは膝下まである狩衣をいつものようにきっちりと着こなしており、首元まで布地で覆う潔癖な佇まいを維持している。その衣服の帯は、ルルの驚異的な「超爆乳」を少しでも周囲の目から隠そうと、尋常ではない力で強固に締め付けられている。
だが、そんなルルの涙ぐましい努力など嘲笑うかのように、抑えきれない圧倒的な質量を持った超爆乳は、胸元を爆発的に押し広げ、机の上に乗り出さんばかりの重厚な存在感を放っていた。
つまり、ルルの正面には今、衣服に包まれた圧倒的な質量を持つ二つの球体と、そのすぐ手前に、網目の美しい緑色の巨大な二つの球体が、完全に並行して並んでしまっているのだ。
主人が「この張り! この大きさ!」と声を張り上げるたびに、ユリオの視線は、手前のメロンから奥のルルの胸へ、そしてまたルルの胸から手前のメロンへと、無意識のうちにスライドを繰り返してしまった。
どっちを褒めているのか一瞬分からなくなるような、脳がバグを起こしそうな奇妙な構図だった。
(でけえ……。いや、どっちも信じられないくらい、でけえんだけど……これ、どっちがどっちだ……?)
ユリオは蝦蟇の口を半開きにしたまま、硬直した。人間の理性が「見てはいけない、メロンだけを見るんだ」と必死に命令するのだが、カエルとしての本能的な索敵視野が、その二組の豊満な存在感を同時に、かつ鮮明に脳内へと送り込んでくる。
どっちがどうとか、いうより。
なんだかまるで。
ルルの破壊的なまでに豊満な超爆乳が、そのままポン、と取り出され、「さぁ、どうぞ」とお盆に陳列されている。そんなふうに見えてしまうのだ。
気まずい沈黙が、卓を支配し始めた。
そう見えたのは。ユリオだけではなかった。
隣に座るエミナは、最初は「わぁ、大きなメロンなのです!」と目を輝かせていた。しかし、その丸い瞳は、メロンの曲線をなぞった後、ふと視線を上方にスライドさせ、ルルの超爆乳の曲線へと至り、そこでピタリと動きを止めた。エミナは自分のささやかな胸元をそっと見下ろし、それからもう一度ルルの胸とメロンを見比べ、小さくため息をついた。完全に、口には出さないけれど、心の中で何かを計量している目だった。
いつも温和な巨漢のシュレンもまた、冷や汗を浮かべていた。宿の主人の口上を「ほう、これは見事な……」と聞きながらも、巨躯を心持ち後ろに引き、視線の置き場に激しく困惑しているようだった。視線を下に落とせばメロンがあり、その直線上にはどうしてもお嬢様以外の女子の、あまりにも刺激的な双丘が位置してしまう。
シュレンは引き攣った微妙な笑顔を浮かべたまま、必死に窓の外の大森林の木々を数える作業に没頭しようとしていたが、その瞳は時折、磁石に引き寄せられる鉄屑のようにメロンとルルの境界線を往復してしまっていた。
そして、最も露骨だったのはクローリディアだった。
山桃の果実酒で頬を薔薇色に染めた女公爵は、抉られた深い胸元から自らの豊満な双丘をこれ見よがしに波打たせながら、アメジストの瞳を限界まで細めてルルを凝視していた。16歳の女公爵の胸もルルに比べれば一回り控えめというだけで、大貴族の令嬢としては有り余るほどの重厚な質量を誇っているが。
もっとも、クローリディアに、自分の胸と、他人の胸の大小を比較しようなどと言う気は無い。自分は絶対なのだ。他と比較するなんて、ありえないのである。
クローリディアは扇子で口元を隠しながら、手前のメロンの網目をじっと見つめ、それからルルの胸をしげしげと眺める。
それは、「興味深い産物が並んでいる。これが一同に会するのは、なんて珍しいことでしょう!」と言っているようであった。
リュクセム女公爵からすれば、メロンも、ルルの抑え切れない豊満な超爆乳も、どちらも稀にみる天然の「珍品」なのだ。
宿の主人だけが、この異常に張り詰めた、かつ、なんとなく全員の視線がルルの胸とその手前の果物、4つの見事な塊に集中する気まずい空気に気づいていなかった。
「さあさあ、ルル様! どうぞこのお見事な張りを、お手に取って確かめてみてくださいまし!」
「――っ!」
その瞬間、ルルの限界が訪れた。
ルルは真面目で聡明な優等生だ。で、自分の規格外な胸については、それが急激な発育をし始めた頃から、気にしていた。周囲の人間が自分に対してどのような視線を向けているか、その微細な空気の変化に誰よりも敏感だった。
全員の視線の「高さ」が、メロンの置いてある位置よりも、明らかに数センチメートル高い場所に固定されている。そして、その視線が奇妙な熱を帯びながら、自分の衣服の帯を押し広げている部分と、手前の緑色の果実を往復している。それが意味することに気づかないほど、鈍感ではなかった。
ルルの色白で美しい顔が、またたく間に、それこそ先ほどクローリディアが飲んでいた山桃の果実酒よりも遥かに鮮やかな、熟しきった柘榴のような赤色に染まった。その赤みは頬だけにとどまらず、細い首筋から、小さくて可愛らしい耳の根元までを一瞬で支配していく。
ルルはぎゅうっと締め付けられた胸をさらに隠すように、細い両腕を胸の前で交差させようとしたが、手前に大盆があるせいで上手く隠せない。
ルルは潤んだ瞳を怒らせ、震える声を絞り出した。
「……みんな。どうしたの?……何を見てるのよ。私じゃなくて、メロンを見てよ……っ!」
その鈴を転がすような、しかし気恥ずかしさで完全に裏返った声が食堂に響き、一同はハッとして視線を泳がせた。
エミナは慌てて「う、エミナはメロンの網目の美しさに感動していただけなのです!」と狩衣の袖を激しく振ったが、その顔は真っ赤だ。シュレンにいたっては、もはや完全にただの彫像のように硬直して窓の外を見つめ続けている。巨体の全身で、「私は何も見ておりません、知りません」と、虚しく訴えていた。
そんな中。
頭が蝦蟇のユリオは、飛び出た目をパチクリとさせながら、つい口をモゴモゴと動かしてしまった。
ルルの超爆乳。
前世と今世で合わせて32歳のエ◯ゲー脳少年のユリオは当然ながら、今もーーいつもーーそれが気になって仕方がないのであるが、まだ、「ハーレム大魔王」の正体を全開にするのは、時期尚早。潔癖症のルルーシア=超正義派クラス委員長琴見咲良に、「ユリオ=忌木信太朗が実は美少女を蹂躙したいだけのエ◯ゲー脳だ」などと疑われたら、これからの旅が危うくなる。
ここは、「女性に礼節を尽くす俺」を守らなきゃ。実に不本意であるが。
こう考えたユリオとしては、必死の言い訳をした、つもりだったのだがーー
「いや、ルル、違うんだよ! 俺はちゃんとメロンを見てるんだって! ただ、その……なんて言うか、どっちが大きいのか小さいのか、ちょっと気になって、比べてただけでさ……」
「ユリオ!!!」
ルルの悲鳴に近い怒声が食堂の天井を揺らした。
その顔は、もう赤さを通り越して、恥ずかしさのあまり湯気が立ち上りそうなほどだった。交差させた腕にさらに力がこもり、押し潰された超爆乳の質量が、皮肉にもさらに強調されてしまう。
「もう、大きいとか小さいとかの問題じゃないんだから!!! なんでそんなところを比べるのよ! どうしたの? カエルになったから、人間の思考も退行したってこと!? そういうのダメなんだから!」
「人間の思考が退行って……! 俺はただの呪いの被害者で、お前の仲間のユリオだぞ!?」
ユリオは、やや焦りながら、それでも不満げに喉を「ケロリ」と鳴らす。
「俺の奴隷」ではなく「俺の仲間」としか言えないのが悲しいが。ハーレム大魔王までの道は、まだ遠いのだ。
ルルは。
「最近のあなた、少し変よ。蝦蟇になると、これまで身に付けた礼節が、少しずつ剥ぎ取られちゃうみたい。悲しいわ。あなたほどの人でも」
普段の冷静沈着な姿からは想像もつかないほどに感情を爆発させた。
ユリオからすれば。
これまでの『礼節』こそが、仮面だったのだがーー実に忌々しい仮面であるーーでも、剥がされるのはまずい。
「お、お大尽様方……? あの、メロンの大きさに何か問題でもございましたでしょうか……?」
ここにきて、ようやくただならぬ空気を感じ取った宿の主人が、ガタガタと震えながらおずおずと尋ねた。
「何でもありません! もうメロンの見事さはよくわかったから、さっさとデザートにして!」
ルルが、きつい口調で遮る。
「ひっ、では、ただちにデコレーションしてまいります!」
主人は大盆をひったくるようにして厨房へと逃げ帰っていった。
メロンが視界から消え去った後も。卓の上の気まずさは解消されない。
ルルはプイとユリオから顔を背け、肩を怒らせたまま無言で座っている。その白い横顔はまだ真っ赤に上気しており、時折、自身の胸を忌々しそうに見下ろしては、衣服の帯をさらにきつく締め直そうとしていた。だが、いくら締め直したところで、その圧倒的な質量が消えるわけではない。その様子を横目で見ていたクローリディアが、ここぞとばかりに扇子で顔を隠しながら高笑いをする。
「オーホッホッホ! 見苦しいわね、ルル。そんなに庶民的な肉体を誇示して、殿方たちの視線を集めたいのかしら? 大貴族の私から見れば、そんな下品な質量、ただの肉の塊に過ぎないわ。美しさというものは、もっと洗練された、この私のような高貴な曲線にこそ宿るものよ!」
クローリディアは我が儘でほろ酔いなのをいいことに、自らの深い胸元を誇らしげに突き出してみせた。しかし、ルルは冷たい、氷のような視線をクローリディアへと向けた。
「……クローリディア。あなた、さっき私とメロンを見比べながら、自分の胸を触って『自分のは違う』みたいな顔をしてたの、全部ユリオの目に見えてるわよ」
「な、何ですって!? わ、私がそんな、下民のような卑しい比較をするわけがないでしょう! シュレン、何とか言いなさい!」
自分が一瞬も考えたことのない『庶民の娘との胸のサイズの比較』。自分の肉体を絶対の高貴さの一部と誇るクローリディアにとって、これは最大級の侮辱であった。
アメジストの瞳を激しく泳がせ、薔薇色の頬をさらに真っ赤にしてシュレンの腕をポカポカと叩くクローリディア。
『その者の首を刎ねよ!』
宮殿の玉座にいたならば、直ちにそう宣告したであろう。もっとも、そんな命令、誰も実行に移しはしないのだが。
「お嬢様、私はただ、窓の外の素晴らしい景色に見とれていただけですので……」
シュレンは冷や汗混じりの苦しい言い訳。余計にその場の気まずさを際立たせる。いつも、『お嬢様』のお世話、あやし方にかけては天下一品のこの忠実な従者も、お手上げなのだ。
(……あーあ、完全に全員の理性がメロンのせいで狂わされてやがる。何なんだ? でっかい球が2つ転がってきたってだけで……ま……でかい乳ってのは、人の頭を狂わせるよな。前世でも、今世でも……ああ、早くあの豊満な果実をこの手に……したいものだ)
ユリオはただただ蝦蟇の頭を抱える。未来のハーレム大魔王であっても、もはや手が出せない。
この奇妙な状況をもたらしたヴォシュの村のメロンという存在、いや、ルルの規格外な胸の破壊力に、戦慄を禁じ得なかった。
◇
やがて、厨房の扉が再び開き、主人が細心の注意を払いながら「お待たせいたしました……」とデコレーションされたデザートを運んできた。
大皿の上に美しく切り分けられたメロンは、先ほどまでの荒々しい生の果実の姿から、完璧な芸術品へと変貌を遂げていた。
瑞々しい緑色の果肉の上には、この村の地下深くで採集されたという、黄金色に輝く天然の蜂蜜がとろりと惜しげもなく回しかけられている。さらにその上には、まるで鍾乳洞の白い湯気や石灰岩の神秘を思わせるような、純白の山羊乳クリームが繊細な波模様を描いてデコレーションされていた。
「どうぞ、我が里の結晶でございます……ヴォシュの料理の精髄……こう申し上げましょうか」
険悪な空気に怯える主人を下がらせ、一行は無言のまま、配られたフォークを手にした。
ルルはまだ怒っているようで、ユリオや他のみんなの方を一切見ようとはしなかったが、目の前に置かれたデコレーションメロンの放つ、甘美極まりない香りに抗うことはできなかった。小さく口を尖らせながら、一切れのメロンを上品に口へと運ぶ、
その瞬間、ルルの瞳が、驚きで見開かれた。
「……っ!」
ユリオもまた、蝦蟇の大口で、蜂蜜とクリームがたっぷりとかかった果肉を噛み締める。
口の中に入れた瞬間、果肉がジュワリと、噛む必要すらないほどの柔らかさで溶けていった。石灰岩の大地が育んだ極上の果汁が、口いっぱいに洪水のように溢れ出す。その圧倒的な瑞々しさと、上品で濃厚な甘みの後に、遅れてやってくる天然蜂蜜の深いコク、そして山羊乳クリームのまろやかな酸味が、完璧な調和となって味覚を猛烈に刺激した。
「美味しい……! 何ですかこれは、エミナ、こんなの食べたことないのです!」
「本当ですね、エミナ殿。この高貴な甘みと、クリームのコクの対比は……まさに至高のデザートです」
エミナとシュレンが、あまりの美味にすべての気まずさを忘れて目を輝かせ、せっせとフォークを動かし始めた。
「ふん、まあ、リュクセム公国の宮廷で出される最高級の凍菓に比べれば、少しばかり野趣が勝っているけれど……。でも、この蜂蜜の濃厚さとメロンの張りの相性は、認めてあげなくもないわ。シュレン、このメロンの種も、忘れずに公国へ持ち帰るように手配しなさい! いつの日か私が公国に凱旋した暁には、晩餐会に、このデザートを添えるのよ!」
クローリディアも、白磁の頬を薔薇色に染めたまま、欲張りな矜持を満足げに弾ませメロンを堪能している。ドレスの胸元から覗く双丘が、美味の喜びでしなやかに揺れていた。
ユリオは。
自身の姿も忘れ、ただただその限りない幸福感をもたらす美味に没頭していた。
大森林の過酷な徒歩の旅、蝦蟇顔に変えられた絶望、そして先ほどの、この頃ずっと続いている屈辱。そのすべてが、この一皿の甘美なデザートによって、一時的にせよ完全に救われていくような感覚だった。
「……本当に、美味しいわね」
ふと、正面から小さな、掠れるような声が聞こえた。
ユリオが視線を上げると。ルルが小さく笑みを浮かべながら、メロンを口に運んでいた。その掛値なく美しい顔は、デザートの美味しさによる至福感からか、あるいは先ほどの気恥ずかしさの残滓のせいか、未だにぽっと赤く染まったままであった。
ルルは、今度こそユリオの蝦蟇の目と真っ直ぐに視線を合わせ、少しだけ悪戯っぽく、しかしやはりどこかビミョーな少女としての距離感を保った微笑みを浮かべた。
「ねえ、ユリオ。美味しくて、頭が茹で上がりそうなくらい、幸せな味でしょう?」
「ああ……。マジで茹で上がりそうだ……俺……いろいろなことで」
ユリオは、ルルのずっと赤いままの愛らしい顔と、その手元で小さくなっていくメロンを交互に見つめながら、複雑な、しかしこれ以上ないほどの甘美な幸福感に満たされたこの刻を、静かに噛み締めるのだった。
ヴォシュ村のすばらしい料理の数々から。
シュレンとエミナは、重要な教訓を得た。
揉め事は、すべて美味しいものが解決する!
これから、もっと料理に頑張ろう!
2人は誓うのだった。




