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第10話 買った奴隷少女を蹂躙するのは〝男として立つ〟ことになりますか?



 「よし」


 方針はなんとなくまとまった。


 まずは、〝優しいご主人様路線〟


 「ちゃんと女の子として扱ってやろう。いきなり浣腸器具なんて持ち出したりしない……安心させてやるんだ。なんだかんだルルーシアだって、内心ビクビクしてるだろうからな。表情を変えないのは、すっかり運命を諦めているせいなのかもしれない。可哀想な立場なのは間違いないからな」


 ちょっと奴隷に同情気味になるが、


 「ま、いずれあらゆるプレイを試してやるさ……これまでしたかったこと、全部やってやる」


 グヘヘな悪徳鬼畜外道路線、これも絶対に譲ことはできない。


 「さて、行くか。頭の整理もついた。ええと、ど、どうしよう……これから隣の部屋へ行って、いきなり押し倒してベッドで一戦……そうする? そうするのがルルーシアを買った俺の権利だ。そもそも、そのために……でも……買って館に連れ帰って、すぐコトに及ぶ?」


 喉がヒリついているのに、気づく。

 

 「何事も最初が大事。じっくり、心ゆくまであの子を味わうんだ。頭のてっぺんからつま先まで……ちょっと準備したほうがいいかな。俺のほうも……水とか……いや、薬湯(ハーブティー)がいいかな。淹れようか。それに、少しは何か腹に入れておいた方がいい。何しろこれからベッドの上で組んず解れつの肉弾戦になるからな。長い戦いになる。菓子かなにか……あの子にも食べさせよう。お互いしっかり食べて元気つけて、十分に肉体(からだ)を整えて……そうそう、やっぱりまず話をしたほうがいいかな。異端の魔法のこととか聞いてみるか。俺のことをどんなふうに思っているのかも……あの子はなんて言うんだろう? それも気になるな……」


 また、ぐずぐずと考えを巡らすユリオだが、


 「いや」


 きっぱりと、あれこれを振り切った。


 「何考えてるんだ? 水だ薬湯(ハーブティー)だ菓子だおしゃべりだ、なんだそりゃ。そんなことするためにあの子を買ってきたんじゃない。そうだ。もうこれ以上、準備なんてする必要は無い。やるんだ。やるべきことを。俺は前世の忌木信太朗(いまきしんたろう)じゃない。ただ妄想して……するだけの男じゃないんだ。かわいそうな境遇だろうがなんだろうが知るもんか。一番大事なのは、俺の欲望だ。そうだ、俺の欲望のため、思いのままに蹂躙する。そういう男になったんじゃないか。よし、行くぞ。俺のしたいこと、それをする。この時のために俺はこの世界に転生してきたんだ。俺がこれまで生きてきた意味、転生して人生をやり直した意味、きっとあるはずだ。今日、それを証明してやる、俺は男として立つ!」


 ついに決断したのである。妄想タイムはもう終わりである。長い長い妄想タイムであった。前世と今世で32年間。ついぞできなかったことを、いよいよ。妄想が現実(リアル)になるのだ。忌木信太朗(いまきしんたろう)はユリオ=アルゲネス=パロ=ルーベイとして〝男〟になるのだ。〝男として立つ〟初めての体験を……


 ユリオは立ち上がった。体はしゃんとしている。力が漲っている。ぎゅっと両の拳を握り締めた。


 「うん……いけるぞ……ルルーシアの前でも、……もう脳が持っていかれたりグダグダになったりなんて絶対しない! 御主人様として雄々しく、堂々と振る舞ってやる。さあ! みんな俺を応援してくれ!」


 いったい誰に向かって応援してくれなどと言っているのであろうか。少なくとも、祖母ギオラや父クロード、大公爵家の家臣団は応援しないに違いない。こんな光景を見たら、みんな顔を背けて嘆くであろう。母親セシルだって、がっかりするに違いない。


 しかし、誰が自分を応援しようとしまいと、もう構わない。


 ユリオは扉を開け、寝室に入った。



 ◇



 ルルーシアは、ベッドの上でちょこんと女の子座りをしていた。入ってきたユリオをじっと見つめる。


 「ううむ、最高だ」


 また、見惚れる。美少女。金色の紐ビキニ姿。その肢体。どんな格好をしても極上の果実だ。さっき見た揺れる(しり)を思い出す。


 ユリオは、ベッドの脇の椅子に腰掛けた。


 動悸がすごい。心臓は保つか? そういえば腹上死という言葉があった。コトの最中に心臓停止。今、ユリオの心臓はバクバクしまくっている。いやいや、腹上死なんて。俺まだ15歳だ。そんなのありえない。そういうのは、老人がなるものだ。


 気持ちを落ち着けさせる。ルルーシアの視線。どうも頭が乱される。頭だけじゃなくて、もう全身が。クソッ、また全部持っていかれる? そんなことは無い。大丈夫だぞ。


 寝室。窓から光が射し込んでいる。異世界(こっち)では電気照明というものがないので、うす暗い。光の陰影が、ルルーシアの極上の肢体を艶やかに隈どっている。完璧な絵画。そう見える。ちなみに、蜂蜜館(ハニーハニーハウス)の窓はすべて中庭に面して作られている。高い塀もある。窓を全開にしてコトに及んでいても、外から覗かれる気遣いは無い。


 「待てよ? ここでするより、居間の方が明るくてよくないか? ルルーシアの肉体(からだ)もしっかり拝めるし」


 ふと、そんな考えがよぎる。居間の絨毯の上でこの少女を。


 いや。


 せっかく頑丈なベッドを買ったのだ。これでいい。絨毯の上でも試してやるけど、まずはとにかく!


 行くのだ。誰がなんと言おうとも。前世の忌木信太朗(いまきしんたろう)も今の俺を応援してくれるはずだ。(当たり前だが)もうあれこれ考えるな。長い道のりだった。やっとゴール。俺が自分でつかんだゴールだ。そして出発点になる。ここに旗を、〝男〟の旗を、勝利の旗を立てるのだ。もう何も怖くは無い。とにかく、あの子が欲しい。ルルーシアが欲しい。欲しいものを奪る。触れる。抱く。それから、それから……あれ……そうだ……飛びかかる前に、俺がまず全部服を脱いでからにしたほうがいいかな……いや……このまま飛びかかろう。まずしっかりとあの子に抱きつく。押し倒す。おしゃべりなんてする必要ない。ルルーシアだってわかってるんだ。わかってなくても……力ずくで〝わからせ〟てやる。いいじゃないか。それが俺だ。さあ、覚悟しろ! もう絶対、絶対!


 ユリオは、椅子からすっくと立ち上がる。


 もう手順だ路線だプレイだ後先だのことは、頭になかった。


 目の前にいる究極美少女ルルーシア。あとは飛びつくだけ。そうしたら、もうノンストップだろう。何も考える必要ない。全てをやり尽くす。シュミレーションは終わったのだ。実行あるのみ。ただ一つの行動、ルルーシアに飛び掛かる。それで全てが変わる。新しく始まる。転生してきた意味、噛みしめることができる。



 「グッへへーン!」



 内心の咆哮とともに、ユリオはベッドの上のルルーシアへ飛び掛かろうと。ジャンプしようというのだ。ベッドへダイブ。それはまさしく獲物に襲いかかる獣そのものの姿であった。ある人によれば、獲物めがけて跳躍する捕食獣の肢体こそ、自然界の生み出した最高の美であると言う。


 その時ーー


 今、まさにルルーシアに飛び掛からんとしたユリオの動きがピタッと止まった。


 「なんだ?」


 笑った。ルルーシアが笑みを浮かべたのだ。初めて表情を見せた。ユリオに向けて、はっきりと笑みを見せた。


 

 ◇



 ゾクっとなるユリオ。


 縛られる。突然のルルーシアの笑みに縛られる。体が動かない。


 なんだろう、あの笑みは。


 急に笑ったのだ。ずっと表情を見せなかった子が。あの笑顔。今までの澄ました顔も極上だった。そこにさらに花が咲いた。窓から差す光線の陰影も消え、急に部屋が光で満たされたように感じだ。


 「どういうつもりだ」


 声も出せないユリオは内心、


 「笑った。ルルーシアが笑った。あの笑顔の意味は……ええと……つまり……そうだ。ルルーシアは、買われた奴隷の運命を受け入れている。俺がこれから何をするか、当然予期してるんだ。それで、俺を笑顔で受け入れようと?」



 ズウウウウン!


 

 と。ユリオの体を火柱が突き抜ける。


 頭が、カアアアアアッ! となる。


 女の子が、美少女が、俺を受け入れてくれる、はっきりと。いや、ご主人様と奴隷の関係だから、受け入れるも何もないないのだが。ユリオはこれまで、どちらかというと嫌がる奴隷少女を力ずくで蹂躙するシチュエーションばかり考えていた。単純に言って前世で、全く女の子に相手にされず、普通に女の子が自分を受け入れてくれるシチュエーションなど、想像もつかなかったからである。女の子が自分のものになるとしたら、権力か、欲得か、それだけのはずである。


 だが、ルルーシアの笑顔。


 一般論的に言えば、奴隷がご主人様の歓心を買うために精一杯の努力するのは、当然のことなのである。笑顔の一つも浮かべて当然。しかしユリオの目には、その笑顔は、本当に純粋なものに見えた。(けが)れのない笑み。純粋にユリオの全てを受け止めようとしている笑顔。打算や駆け引きや媚び、あるいは怯えからくる追従、そういった要素は一切感じられなかった。


 「尊い!」


 この子は、ルルーシアは、尊い! 尊すぎる! 可愛い! なんて愛くるしいんだ! いや、もう神々しくみえた。これが俺に約束されていた世界だ!


 ユリオの心はすっかり満たされていた。じんわりときた。


 よかった。俺は正しいことをしている。このまましっかりとルルーシアのことを受け止めてやろう。すべてを。あの子もそれを望んでいるんだ。この時ばかりは、浣腸器具のことなどは忘れていた。


 さあ、もう一度。待っていてくれ、ルルーシア。俺の尊い女よ。すぐにお前のところに行く。


 一旦硬直したユリオは、再びダイブの姿勢を構えた。至福の世界へ向けたダイブ。神々しい光に包まれた世界へのダイブである。


 その時、ルルーシアの形の良い唇が動いた。


 「やっと2人きりになれたね、忌木信太朗(いまきしんたろう)君」



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