第2話 幕間 最高戦力者による打合せ
――――幕間 最高戦力者による打合せ――――
一席 オンライン 八席 オンライン 十二席 オンライン
「さて、テスタレッツェ、首尾はどうだ?」
「こちらは順調です。防衛任務をせっつく件が無ければもう少し早く整えられたのですが。」
「ぼやくな。私たちも為政者と出資者には逆らえん。」
「そうでしょうとも。・・・ですがこれで大手5社はイミテーションを出撃させるだけの準備を完全に整えることができました。」
「ご苦労。お前のおかげで私の苦労も報われた。ヤームオース、そちらはどうだ?」
「わしのところも順調じゃよ。無理なく傭兵組合は緊急依頼を受けられるじゃろうて。」
「さすがです、ヤームオース。あなたのお蔭で場は整いましたね。」
「嫌味に聞こえるぞ?テスタレッツェ。儂と比べれば12席と8席。名ばかりの名誉職と実行部隊長。どれもお前の方が荷が重いはずじゃろうが?」
「いえ、何をおっしゃっているんです。少なくとも傭兵組合総本部長は名ばかりで務められるほどのものではないでしょう。あなたの実績があるからこそ・・・」
「ヤームオース、あまりからかってやるな。しかしテスタレッツェ、お前もなぜヤームオースを相手にするとそこまで恐縮する?」
「はっはっは。すまんの。早口になってかわいいものじゃないか。やはり後進をからかうのが楽しいもんでな。」
「失礼いたしました。取り乱しました。」
「いや、謝るな。なかなか面白いものを見せてもらったからな。だがヤームオース、後進をからかうというが私はおまえにからかわれた覚えがないが?」
「はっ。儂もやってよい相手ぐらいわきまえておるよ。しかし一席の冗談なんぞ聞くことなど無いと思っておったわ。どういう風の吹きまわしかね?」
「優秀な後輩をいじめるような老人に対しては多少のお灸が必要だろう。」
「サリエル?あなたのそれはフォローになっていない上、私がさらに恐縮する結果になるからやめてください。」
「・・・そうか。それはすまん。」
「露骨に落ち込まないでください。困ります。」
「・・・こほん。話がそれている気がしますね。しかも名で呼んでしまい失礼しました。」
「構わん。お前からそう呼ばれるのは久しぶりで懐かしい感覚だった。それで、企業側はすべてイミテーションを使うことができるのか?」
「ええ、五大企業それぞれから2機ずつの計10機が戦場に向かう手筈となっています。」
「イミテーション、か。いままで秘匿してきたS,Aの操縦技術を渡したんじゃが、必要な因子が無い以上、そう奴らも易々と出撃できまいじゃろうて。テスタレッツェ嬢が乗った際もかなり逆流があったんじゃろ?」
「ええ。恐らく薬物で維持しても一人の操縦者が30分稼働することを繰り返すのであればどれだけ維持しようと10回程度が限界かと。」
「ふむ、ならばそこまで大企業側の有利とはなるまい。大企業とはいえ中小企業に足元をすくわれんようにと伝える必要があるな。」
「ええ、出向者会議でもそれは厳に伝えておきます。あと、情報にあった緑化組合の新兵器はどうでしょう?」
「そうじゃのう、まさかマスタープログラムだけでは無理だと思っていることまでは予想できたんじゃが、実に興味深い情報じゃな。ある意味S,Aに近づくためには確かにそうする他ないだろうがの。だが、あれでは機体のアップデートができないだろう上、代えもきかんじゃろうて。それでいて兵装は一般製品じゃからな。どれだけあがいてもイミテーションと同じかそれ以下の戦略規模にしかなるまいよ。」
「となると、中小企業もおいそれとは大企業に手出しできないだろうな。結局、予定通りマスタープログラムによる人型M,A普及に収まるだろう。」
「なればこそ七番街の奴らは企業の秘密兵器と緑化組合の切り札の実験として犠牲になってもらわねばいかんの。」
「仕方あるまい。世の常だ。しかし、これで競争は激化する。
緑化組合の目論見によってマスタープログラムが普及し、力なき傭兵たちは力を得る。中小企業はマスタープログラムの新技術を手に入れることになり成長機会と商業活動が活発化する。これで停滞している社会に対して必要な刺激を作り出すことができる。」
「いつものこととはいえ、多くの犠牲が無ければ人は成長できぬ。仕方あるまい。競争が激化すれば結果として傭兵は増える。今の時代の傭兵どもには同情するが、七番街に満足し競争することをあきらめた奴らの末路としてはいつものことじゃろう。」
「・・・さて、どうでしょうかね。」
「ほう?テスタレッツェ嬢、何かあるのかの?」
「いえ、先日の報告をご存知でしょう?少なくとも操縦に慣れている私が操るイミテーションでさえ仕留めきることができなかったものがいるものですから。」
「そういえばそんなことを言っておったな。そんな奴らが七番街に燻っておるのか。」
「ええ。ですが、大勢に影響はないでしょうし、目的は完遂されるでしょうが・・・。」
「興味がわくと?」
「ええ。死神の模造品と死神に対抗するために作られた化け物、そして傭兵たちがこれから概ね1か月後に激突する。どこまであの大仰なあだ名の傭兵がやれるか興味深いものがあります。今回は私が戦場に出られませんから。」
「そうだな。私もいつか手合せしたいと思うようなやつだったな。機会があればぜひ戦場で競い合ってみたいものだ。」
「一席、いえ、サリエル。前から貴方に思っていたのだけどいい加減立場を考えて。冗談でも肝が冷えるわ。」
「じゃの。儂らだから多少は聞き流せるが本気にするやつらがいるのだからな。」
「私も分別はあるつもりだ。お前たち以外にはこんなこと言えんよ。すまんがこれで通信を切るぞ。お互いにこれから忙しくなるだろうが、せいぜい拝見しようではないか。恨みを持った奴らの逆襲と、企業側の最高戦力となる力、そして八席の言う傭兵の矜持とやらを、な。」




