第0話 戦闘中 驚愕
格納庫を制圧し、もう一度外に出ると装甲車や歩兵、ヘリから迎撃を受けた。
どこにこれほどまでの戦力があったのか不思議になるほどの量がいるが依然としてM,Aがいないため、回避には余裕ができる。パルサーの環境下では機械による命中補正が著しく効かないことから直感的な射撃動作が必要となるため、砲塔で射線方向がわかる戦車や原則向いている方向にしか射撃できないヘリの攻撃は比較的によけやすい。
定石であれば、パルサーの環境下で機体の性能差が開いているようならば距離をおいてできるだけ撤退しつつ射撃を重ね、パルサーの影響がなくなるまで耐えるしかないのだが、パルサーを受けることなど、例え傭兵稼業を行っていようと通常あるものではないため、彼らは右往左往するしかない。
黒煙を切り抜け、増えた残骸を盾に使い反撃に移る。もう数分もしないうちにパルサーの影響による通信障害も無くなるだろう、そうなると誘導兵器を使われてしまうため制圧を急ぐ。
「ファルフリード、アルケーから連絡があったわ。救助活動については予定通りに進行中、陽動のおかげで順調に進んでるそうよ。ただ、情報より人が多いみたいなの。予定より時間がかかる見込みよ。」
Gに耐え、歯を食いしばりながら通信を聞く。通信機の向こうも高機動状態で話すことができないことを分かっているのか返事をせずとも話が続けられる。
「しばらくしたら、救助部隊の脱出ルートの反対側に向かうことになるけど、まずは集結している団体をどうにかして。タイミングは追って通信を入れるわ。」
―いつものことだが、予定通りにはなかなかいかないか・・・。
恐らく、別の格納庫に収容されていたM,Aが3機ほど姿を現す。正規軍使用の戦闘用M,Aではなく、使い慣れた機体を選んだのだろうが機体の性能差がおおきいため、こちらの足止めにすらならない。
横へ急加速し、敵機体の射線から逃れたと思えば、機体のバランスを取り急旋回して肉薄する。1機につき1発ずつの散弾銃を放ち無駄弾を使わずに確実に無力化していく。補足できる戦力を叩いたため、機体を走らせて近くに敵勢力がいないか目視で確認していく。
―!?
ふと、気づいてしまった。今、目に見える建物には要救助者がいないはずなのだが、明らかに軽装の姿の人間が建物1階の廊下を走っているのだ。
気付いてしまった以上は知らない振りもできず外部スピーカーで呼びかける。
「助かりたいなら北の建物に迎え!そこに救助部隊がいる!」
男か女かわからないが小柄な姿をした人間はこちらに向かって呼びかけてきた。
「その道が通れない!どうすればいい!」
どうやら声を拾うと女性のようだが、それを差し引いても小柄で若く見えるが冷静に見える。手には端末を持っているためやはり科学者のようだがどうにも怪しく見える。
パルサーの影響から回復した今の状況でもレーダーに熱源がいないことを確認し、機体をかがませて左手を寄せる。
「乗れ。救助部隊に送り届ける。」
乗せた女は少女というにふさわしい幼さが見えたが、焦りながらも手に乗る姿は肝が据わっているとも見える。救助部隊に合流させようにも救助部隊のいる近辺には接近が許されていないためとりあえず近くまで向かうことにする。
先ほどの起動していたM,Aが最後の戦力だったようで、付近に敵戦力はやはり見えない。
―これで無事に終わると良いのだがな・・・。
「こちらスカベンジャーより社長、戦闘モードを解除して通常モードに移行し待機する。指示があればお願いしたい。」
「了解。アルケーに連絡を入れるわ、今はアルケーの指示に従って待機して。」
社長へ報告し、ひとまず警戒はしつつも機体のシステムを戦闘モードから通常モードに移行し、電力消費を減らして巡航速度で移動を再開する。
「こちらアルケー救助部隊長アステリズモのスカベンジャー応答願う。」
どうやらパルサーの影響も減ってきたらしく、明瞭な音で低い男性の声で無線が入った。
「こちらアステリズモのスカベンジャー、感度良好だ。どうぞ。」
「いい腕だった、おかげでこちらの戦力をほとんど失わず制圧と対象1の救助が完了できた。残りの要救助者を探す、あとしばらく待っていてほしい。」
対象1とはゲールのことだが、当初では対象のみを救助したら撤収という手筈になっていたはずだ。
「ちょっと待ってくれ、救助が完了したら速やかに撤収に入るのではなかったか!?」
「それは当初の予定に限った話だ、要救助対象が残っている以上、こちらの活動は続けさせてもらう。そもそも敵対勢力は全て撃退したのだろう?」
有無を言わさぬ声色で今しばらくの救助活動が続けられることを明言される。
救助活動が続けられる以上、進入禁止エリアに入ることもできない。手のひらの少女に謝罪して歩いて現場に行ってもらおうかとも考えるが、現場の状況を考えると誰に襲撃されるかわからない以上、その選択肢を取ることはできない。
シートベルトもないため恐ろしいのだろう、青い顔をしたまま手のひらに乗り親指にしがみつく少女へ謝罪する。
「すまん、送り届けたいのはやまやまなのだが、まだ、作戦行動中のため、もうしばらくそのままでいてもらうぞ。」
こくこくと首を縦に振る少女を見て若干申し訳ない気持ちになるが、正直コクピットには他に人を乗せられるような空間がないため、どうしても手のひらの上しかない。レーダーを眺めつつ改めて手のひらを眺めると、少女は何か叫んでいた。
「あなたは救助部隊じゃないの?」
「一応救助部隊だが、下請けだ。」
下請けという言葉に疑問を持ったのか、首をかしげている。
「緊急よ!S,Aがそちらに向かっているわ!これからパルサーが放たれるわ、逃げて!」
突如、アラートと緊急を知らせる無線が入った。
S,Aが来るということはホームによる制圧活動が行われるということ、もし、そのS,Aの目の前に立てば問答無用で待っているのは死、のみのため急ぎ機体を翻す。
「どういうことだ、救助活動はホームに連絡が言っているはずだろう?」
「現在、確認中!正門側から来ているみたい、侵入した場所から逃げて!」
手のひらの少女に気を使いつつ右手を風よけにしできるだけ段差を避けて走って侵入してきた破壊された
壁に向かって全速力で向かう。
「どうやらアルケーも寝耳に水の状態みたい。説得を試みているけど時間がかかるわ。とにかく今はそこを離れて!」
機体のレーダーにノイズが走る。どうやらパルサーが放たれたようである。S,Aの戦闘方法は基本的にアステリズモと同じく、パルサーによる混乱の中でその圧倒的な戦力をもって制圧をかけるのだが・・・。
突如、爆音とともにプラズマ兵器による光の柱が上がった。
どうやらアルケーも制圧対象となっているようだが、そもそもアルケーもホームからの依頼を積極的に受ける優良企業だ。しかも、通常こういう武装活動をする際にはホームに届け出を出すためS,Aに襲われるということはありえ無いのだが・・・。
頑丈そうなつくりの建物を見つけ、壁をけりジャンプブースターを使用して屋上まで上がり、少女を手のひらから降ろす。
「無事だったら迎えに来るが、もし無理だったら自分で何とかしてくれ!」
機体のコクピットハッチを開けて発煙筒や食料などが入ったエマージェンシーセットを放り投げて外部マイクで叫び、急ぎこの場を離れるためにビルから飛び降りた。
―抱えてはどうせ逃げれなかった。このロスがどう響くか・・・?
機体を走らせ、細い道で逃げるよりアルケーが足止めしている間に大通りで距離を稼ごうと考えたのだが、その判断は誤りであった。
「火事場泥棒のようなまねをするとは、スカベンジャー、その名の通り卑しいな。」
大人びているが、冷淡さを感じさせる男の声が広域マイクを通して響く。
―やはり間に合わなかった、か。
視界の端にこの世界における絶対強者にして死神の1機であるS,Aがこちらに向けて銃を構えていた。




