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第2話 プロローグ

憧れたものがある。その憧れは何もない自分にとって心の拠り所だったともいえる。

自分の細腕では必ず組み伏せられてしまうような相手もそれさえあれば何とかなると思えた。

だからあれは自分にとって戦う手段というように簡単に説明できるものではないのだ。

ただ、普通に生きていただけでは手に入れられない。だからこそ私は普通の生き方から足を踏み外すことを選ぶ。

例えその先が死という結果だとしても。



・・・ー・・・

 休みというのは有りすぎても苦痛になるものだと偉い人は言っていた。

 一理ある、と思う。

 あのハードすぎる依頼から2ヶ月、当分は依頼を受けなくても大丈夫な資金を得たが、何となくすることがなくて職場に来てしまった。皆には3ヶ月ほどは休業にしようと伝えて、色々と充電期間とすることにしていた。

 だが、職場に来たからといって仕事があるというわけではないし、依頼を受けるにしても自分一人では出来ることなどあるわけでもない。それでも職員に行けば休みの間に貯まった郵便物もあるだろうし、やらなければいけないものが無いわけでは無いと思う。一応、助けられているばかりであっても自分は社長なのだ。

まぁ実際は七番街自体に娯楽が多いわけでもないため外出する理由がなく、かといって家にいてもすることがないので、結局、職場に行くしかすることが無いとも言う。

 それでもこの休みとした期間にケイティやニコとショッピングに行ったり、社員全員で四番街の行楽地に行ったりと色々やっていたのだが、さすがに2ヶ月ともなると出かける場所も無くなってくる。

 であれば、自分の足の向かう先が職場になってしまっても無理はないと思う。

 だがしかし、この状況はどうかと思う。


「なんで、休暇だって言ってるのにみんなそろって職場にいるのよ・・・。」


 アイーシャはその日、たまたま暇を持て余したので事務所に行ってみたのだが、事務所に明かりがついているのを見えた。最初は誰か1人か2人くらい職場に来ているのだろうか、と自分と同じ心境になっている人がいることに嬉しさを感じていたのだが、扉を開くと職員全員がいたので嬉しさを通り越して脱力してしまったのだった。


「アイーシャも人のこといえないでしょう?それに私は色々と支払い手続きだとかもあったし・・・、それなりに休み期間中もここに来てたのよ?」


 まず、声をかけてきたのは経理兼整備士である万能にして有能社員のケイティだ。夏場に比べて少し露出は減ったがそれでも女の自分でもドキリとするような色っぽさを感じさせる褐色の肌をした体に、今日はウェーブのかかった栗色の長髪を無造作に流している。


「それを言うなら僕だってそうですよ。組合関係の会合に出席する必要があるときは結構ここに来てますし。」


 次に声を上げたのは整備士兼営業担当のクルガンだ。今日はビジネススーツを着ておらず、ラフな格好をしており、いつもはしっかり形が整えられている短めの金髪も今日はどこか緩やかにしている。


「今日は会合無いじゃろ?今いる説明になっておらんぞ?」


 白髪交じりの大きな体を持つ主任整備士のアルガスが茶化すように楽しげに口を挟む。いつも見るつなぎというか、普段着もつなぎのためアルガスは仕事の時とオフの時の差が全く分からない。


「まぁ、確かに今日は会合無いですけど、会合に行くなら資料だって用意するんですから、色々と、まぁ、来てるんですよ。」


 クルガンはアルガスの茶化しに歯切れ悪く言い返している。


「私は趣味と実益を兼ねて来てる。家にいてもヒマだし、パーツやプログラムいじる方が楽しいから。」


 あまりふくよかとは言えない胸をはって語るのが整備士のニコだ。この子も全く仕事とオフの差が無く、短めのくせっ毛の銀髪をそのままにつなぎを着ている。


「わしも同じじゃよ。ヒマなら趣味と実益を兼ねた機械いじりが一番じゃからの。」


 かっかっかとアルガスが笑いながらニコの頭をなでる。ニコは皆の中で最も背が低くマスコットのような存在のため、よく皆に撫でられてしまっている。本人的には不服なようで不機嫌そうな顔をしながらがしがしと撫でられるままにされている。


「俺はヒマだから来てるぞ。アイーシャ、一緒だな。」


 最後にここの戦闘員であるファルフリードがいつも通り短めの茶髪を寝癖でぼさぼさにしながらニコニコして声をかけてくる。

アイーシャは何となくファルフリードと一緒にされるのは腹が立ったのでその辺にあったスリッパを投げつけておくのであった。



 季節は鬱陶しいほどの暑さであった夏が過ぎ、秋に差し掛かろうとしていた。秋に差し掛かっているとは言葉だけで、まだ空調を回さなければ夜を快適に寝ることもできず、外を出歩くと薄着であっても汗を自然にかいてしまう。

 ここは七番街の中心から少し外れた場所にあるビルの2階、アイーシャにとって最も愛する人達が集まる場所。


 傭兵会社『アステリズモ』、現在休業中のはずであるのだが、全員揃っているのであった。


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