第1話 舞台裏 ホットライン
「どうだったイミテーションは?」
「そう、ですね。操縦した感覚は非常にS,Aに近いです。ですが、出力などを比べればS,Aならば同時に8機程度相手しても全く問題ないと感じました。」
「だからこそイミテーションと言うのだが、な。だが、概ね予定通りの操作性と出力が確保されているのであれば、全く問題ないな。」
「その通りですね。かなり、有用な戦力になると思いますよ。少なくともスカベンジャーよりは確実に強力です。これから世界は変わるでしょうね・・・。」
「確かにな、まがりなりにも慣れない機体でかなり腕の立つ傭兵3匹を相手しても立ち回って見せたのだ、なかなか良い結果だ。犬どもも喜ぶであろうよ。」
「ただ、操縦なのですが、思ったよりフィードバックダメージが強いです。S,Aほどではないのですが、なかなか中枢パーツの消耗が激しくなるかと。」
「そもそも薬物を使って無理やり中枢に据えているのだ。消耗品にもなるだろう。」
「そうですね。損耗率を想定に比べて3割ほど増しにしてもらえれば問題ないかと。」
「ふむ。それは犬どもに伝えねばならんな。わかった。やっておこう。」
「ありがとうございます。」
「それで、アステリズモはどうだったか?」
「なかなか面白いですね。1対1で負ける気は全くしなかったのですが・・・。そうですね、不意を撃たれた形ですが、私があの場で不覚を取ったのはアステリズモでした。」
「・・・ほう?」
「それに、動議で出た関節を曲げる動きはしなかったものですから、実際の所は、手加減をされて不覚を取ったということになりますかね。ただ・・・。」
「ただ、なんだ。」
「恐らく片腕を撃たれた段階でこちらが殺傷の意思がないことに気付かれてしまった可能性があります。」
「凄腕なのだろう?その可能性はあるだろうな。」
「あなたが言っても嫌味にしかならないでしょうけどね。途中から身を投げ出すような攻め方をされたのでこちらも攻撃を当てにくくなってしまいましたし。気づかれていた可能性を捨てきれないです。」
「ふむ。」
「ですが、正直まどろっこしい形で機体の破壊回収とするより、手合せするということにしたおかげで、任務を受けるものとしては助かりましたね。結論としては、あの男は獣の類ではありますが、鎖のしっかりついた猟犬です。」
「ならば、静観の判断は正しかったということか。」
「そう思いました。」
「ふむ、ではそろそろ時間だ。では、通常任務に戻ってくれ。」
「かしこまりました。しかし、1席になると大変ですね。」
「そうでもないさ。ホワイトヘザーの救助部隊長なんぞと2足のわらじをやってもらっていることに比べればこんなこと何ともないさ。」
「あら、あなたの嫌いな犬の手下なんですが?」
「犬は使えるから犬なのだ。」
「そうですか。それでは、失礼いたします。」
「すまん・・・。もう一つだけ、アステリズモの機体の、あの大仰な異名についてはどう思う?」
「イミテーションはスカベンジャータイプを10機ほど同時に相手できるだけの機体性能という触れ込みですが、結果はこのザマですからね。言いえて妙ですよ。」
「ふふふ、そんな不機嫌な声をしなくてもよいだろう?引き続きよろしく頼む。」
かちゃりと音がして通信が切れる。
女はほうとため息ついて指令室から窓を見る。
―それにしても最後の質問、本当に楽しそうな声だったわ・・・。そろそろアステリズモは七番街に戻るころかしら・・・?
早めに貸しを返したいものですがね・・・。
撤収のめどが立った段階で自分も帰還する手筈になっているのだが、どうにもこの作業に面倒さを感じる。だがその面倒さも一興と微笑を浮かべてまた女は仕事に戻っていくのであった。
S,A第八席『アーク』の操縦者でもあるテスタレッツェはこれから来る波乱に不安と興奮を感じながら指令室を後にするのであった。
これにて、第1話終了です。
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