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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第33話

「えっ?」


独り言の様に呟いたリリアの言葉が上手く聞き取れず、振り向き聞き直そうと口を開く前に「なんでもおへん」とはぐらかされてしまった。


そこでふと以前に頼まれた『人捜し』に何か関係してるのかも?と思い出し、それをそのまま聞いてみた。


「そういえば、そんな約束もしとりましたなぁ…。」


「そんな約束って……言った本人が忘れるなよー。」


「ふふふっ。」


「そうやってはぐらかしてるけど、結構真剣なんだろ?あん時も声だけはマジだったし。」


若干おちゃらけて言い返すと、普段は妖艶なリリアがなんとも言えない不思議な物でも見たような表情を一瞬だけ覗かせ、すぐに心底楽しそうな笑みで覆い隠した。


「フフフッ……ほんにユージは変わってはるわぁ。」


「えっ?な、何が?」


普段とはまた違う、柔和な微笑みに一瞬ドキッとなりながら、しどろに応え椅子から俺の横へとすっと座り直しすリリア。


「ユージやったら……。」


そんな事を蚊の鳴くような声で呟きながら俺の顎先をそっと指ではさみ、自分と視線を合わせるとそのままゆっくりと瞼を閉じた瞬間、凄い勢いで扉が開いた。


「くぉーりゃあぁぁーー!二人して一体何の話をしようとしているのだぁあああっーー!!」


リリアの雰囲気に流され、まさに唇と唇が触れ合う寸前で部屋に響きわたる絶叫。


その声で我に返った俺は慌ててリリアから距離をとり、自分からやましい事をしかけた訳でも無いのに姿勢を正した。


「……なんや、随分と騒がしぃお人やねぇ。」


突然の訪問にもしれっと返すあたりリリアの方が役者が上な気がしないでも無いが、そんな事は気にもせず突然戻って来たニアは鼻息を荒げながら元の椅子に腰を下ろしリリアを睨む。


「あ、えっと…突然どうしたんだ?」


今度はニアの雰囲気に気圧されながら恐る恐る戻ってきた理由を聞いてみるとーー。


大事な話なら部屋を出た方が良いのではと考えたものの、二人きりだとイチャイチャしだすのでは(以前裸で寝ていた事を思い出したらしい)無いか?と考え直し、全力疾走でワインを手に戻って来たと説明するニアをみながらリリアは声を上げて吹き出した。


「くくくっ、確かにさっきは千載一遇の時を逃したのかも知れんのぅ。」


そう言いながらも口に手をあて笑いつつ俺に身体ごと項垂れかかるリリアに対して、今にも射殺しそうな視線をなげつけるニアが怖い。


「せやけど、今からでも遅ぉ無いと思わへんぇ?」


そんなニアの視線を面白そうに見返し、これみよがしに首へ腕を絡めてくるリリア。その仕草を無言で見るニアの手元からピシリと何かが割れる様な音がし、


「ふ、ふふふっ…、確かにユージが誰と何をしようと、私には関係は無い!」


瓶を持つ手が小刻みに震えだす。


ーーニアさん、ニアさん言ってる事と行動が一致シテナイデスヨ~~。


「だ・か・ら、このままユージに気を失いかねぬ一撃を私がみまおうが、何をしようが私の自由だ~~!!」


いやいや、言ってる事がもう目茶苦茶すぎっだって!!


「ちょ、二人とも落ち着けって。」


「わらわは落ち着いておるぇ。ユージが煮え切らんさかぃこうなっとるやおへん?」


「そ、そうだっ!ユージが毅然とした態度でいれば私がモヤモヤする事もないのだっ!」


「はぁ?何言ってんだよ、ニア?」


怒りで訳の判らない事を言い出したニアを宥めようと立ち上がりかけると、リリアの反対側に位置を変えたニアに押さえ付けられた。


「「ユージはどうしたい?」」


いつもの悪戯っ子のような仕草で耳元に熱い吐息まじりの呟きをはくリリアと、ヒビから若干中身のこぼれ出した瓶をテーブルに置き笑い般若と化した笑顔を向けるニアとが……同時に聞いてくる。



何?この死亡確定フラグ?

ドッチ選んでも、絶対どっちかに抹殺されんじゃん俺。

全然駄目じゃん。


こ、ここは…か、考えろ考えて九死に一生を得るんだ、俺!!


「え、えと…ですね~、大会前な訳だし…二人に誘われるのは嬉しいけど…断るのも辛いから………ゴクッ…今日はネサセテク…ダサ……イ。」


瞬間、「役立たず」とリリアが左から張り手。

「浮気者~!」とニアが右からストレートパンチを叩き込み「あんな軟弱な奴はほっといて二人で飲みなおそう!」と、そのまま何故か仲良く部屋を出ていく二人……。


浮気者ってなんだよ~~。

役立たずってなんだよ~~。


左右からの強烈な一撃にそんな事を思いつつ一瞬にして視界が暗転し、気がつくとそのまま一夜が明けてしまってました……。




んで翌朝、まだ痛む頬を両手でさすりながら大食堂へ行ってみると、キースとリリアの二人が先に朝食を食べてる最中だった。


そこへ合流して俺も朝食を頼むとリリアの方をチラ見してみる。


「昨日はよぅ眠れましたかぇ?」


「えっ、いや、あっ、うん。」


いつも通りの口調に内心ビクビクしながら答えたが、リリアは気にした風も無く空のグラスにワインを注いでいく。


「ん?昨日、なんかあったのか?」


相変わらずKYなキースが焼きたてらしいパンにたっぷりとバターを塗り込みながら聞いて来たが、コッチはスルーして二人の今日の予定を聞き返す。


「俺はもう一度街へ行って薬草を見てくるつもりだ。昨日も珍しい種類のが出てたし、大会までに色々用意してても損はないだろうからな。」


「んじゃ、リリアはどうする。何かしたい事ある?」


「したい事どすか?わらわはユージと朝からくんずほぐれず、やゃ子作りをしたいんどすけど、ちぃと手伝どぉてくれはりまへんか?」


ブフーッ!


タイミングよくスープを口に含んでたキースが口の中身を豪快に吹き出し、見事に横っ面に命中する。


「……冗談だから、冗談。」


「あ、あはっはははっ、だ、だよなっ。」


何でワザワザ顔に吹くんだよ?と内心でツッコミながら顔を拭きつつ弁明すると、キースは笑顔を引き攣らせつつ曖昧に笑い返してきた。


……まったく、俺がハーレムフラグ好きの鬼畜キャラなら今頃ベットに縛りつけて、リリアの○○を○○○して、○○○に○○○を突っ込んで、喘いでる口に○○○入れて○○○○しちまう所だぞ!


口には出さず心の中で絶叫しながらナプキンで顔を拭き終え食事を再開しようとすると、リリアがジッとコッチに視線を向け「し・て・み・は・る・?」と声には出さず唇だけ動かしてきた。


いや…いやいや!いやっ!!!

……リ、リリアさんあなた思考が読めたりするんですか?

何そのベストタイミングな聞き方?


慌てて頭を振って拒絶の意思表示をするが、リリアは笑顔をますます深め上唇を小さくペロリと舐める。


・・・はぁ~。

今日もなんだかんだで色々と振り回されそうな予感。


溜息をつきながらスープを飲もうと口をつける直前に、さっきキースが吹き出した分が混ざってるかも知れないと思い直し、手付かずで無事だったパンとワインに出て来たばかりのサラダに朝食を切り替える。


それから俺が一度この都市の銀行に行ってみたい事を二人に告げると、自分の用が無いリリアは一緒について行きたいと言い出した。


まぁ、断る理由も無いのでそれ位ならと了承し朝食後は昨日と同じく別行動をとる事に決め、早速一階の受付で場所を確認して行ってみる。


ーーほぇ~~、入口に警備員とか立ってるよ。


意外にも近くにあったおかげで迷う事無く着いた銀行の中は、木造という事とその大きさ以外は元の世界と大した違いも無く、カウンターの上に天井からぶら下がっていた板をリリアに読んでもらい受付に行く。


「すいません。少しお聞きしたいんですが…。」


受付に居たのはなかなか可愛い娘さんで、丁寧に頭を下げ髭男爵も言っていた大会の賭けについての説明をしてもらう。


それによるとーー

まず賭けには銀行主催とギルド主催の二種類があって、配当金がそれぞれに違うらしい。


そのうち銀行でやってるのは個人戦か団体戦のどちらを選びその後優勝者を予想して選択する方法で、配当は売上の八割を的中者で分配するらしい。


一方、ギルドの方は登録者しか買えず、賭けの対象も個人戦のみだが全額配当金に充てられる為、一攫千金を夢見る輩はギルドに殺到するらしい。


……ギルドはどうやって儲けを出してるんだ?


一瞬そんな思いが脳裏をよぎったが、この娘に聞いても仕方ないだろうとそこはスルー。


その代わりに今の倍率なんかを参考程度に聞いてみると本選選手が揃いきって居ないので賭けをする予約受付みたいな状態らしい。


それだけ判れば充分なので、丁重に礼を言って銀行を出る。


「ユージは賭けはるんどすか?」


「ん~、最初は考えて無かったけど資産はあっても困らないし、家にはメイド隊も居るし先々に何かと出費も…って考えてね。」


そんなたわい無い話をしながら昨日の通りに向かって歩いてると前から眉間にシワを寄せたキースがやってきた。


「どしたんだ?なんか難しそうな顔して。」


「あぁ、丁度良かった。少し…話が出来たから急いでホテルに戻ってくれないか?」


キースが廻りを気にしながら神妙な顔付きで急かしてくるので、そのまま三人でホテルに戻りキースの部屋へ集まった。


するとキースは扉に鍵をかけ、腰のバックから茶色い紙に包んだ木の根っこみたいなものと、紫色の乾燥した葉っぱを取り出し目の前に広げて見せてきた。


「これが何?お目当ての物なのか?」


「いや、そうじゃ無くて…こっちの根とこの葉はどちらも禁止品なんだ。」


話が良く判らないので詳しく説明してもらうとこの二つは俗に言う猛毒の類いで、昔は狩りなどで使う武器とかに塗って使われてたらしいが、今は解毒出来る薬草が急激な天候の変化で死滅してしまった為に三国共通の禁止品に指定され、採取や所持するだけでも違法らしい。


で、それが通りから脇道に逸れた所謂裏市場って場所で売られていた上に、1人の冒険者風情を装った男がソレを買って行ったと店員から聞いてきたそうだ。


それでこの二種類が大会で使われでもしたらと、キースなりに危惧してるらしく表情が冴えない。


「何とか解毒薬は作れ無いのか?」


「さっきも言ったけど解毒用の薬草が今は殆ど手に入らない状態だからなー。」


「じゃあ、寺院の誰かに通報すればいいじゃん!」


「もうしたさ!だけど最悪も想定して売れてしまった分の対処法は考えておかないと。」


「う~ん、解毒は無理って、中和も無理なん?」


「………いや、多少効果を薄める物なら作れない事も無いが配合が難しいんだ。」


「んじゃ、寺院お得意の治癒法術は?」


「残念ながら解毒の法術なんてのは、聞いた事もないな。」


「なら、そんなの使ったら一発で自分がやりましたって自己申告してるのと一緒じゃ無いのか?」


「いや、こいつは速攻性な癖にすぐに無毒化してしまう為、確認のしようがない厄介な毒草なんだ。」


ーー痕跡が無くなる毒って……なにそれヤバすぎない?


「薬士としてコレの毒は見過ごす訳にもいかないし、何とか今から調合して緩和剤を作ってみる。ただギリギリまでかかると思うから、大会当日までは部屋に篭らせてもらえるか?」


「わかった。んじゃ、何か足りない物があったらすぐに揃えるようにするから言ってくれ。」


そう言ってリリアとキースの部屋を出ると、俺の部屋に行く。


「……今度の大会は死人が出る…かもだな。」


「……使いはるとしたら、別やと思いますぇ。」


「…え?」


「死人が出たら怪しまれはるのは当然ですし、キースはんがしはったように、寺院へ通報されんのは相手も予想してはるやろぅし。」


「つまり、現状では何にも出来ないって事か。」


「そぅやおへん。キースはんはキースはんなりに出来る事をしようとしてはる訳やし、ユージは自分の仲間が信じられへんのどすか?」


リリアに言いたしなめられ俺達はそのまま、ニアが帰って来るまで自室で待つ事にした。


待ってる間に少し眠ってたみたいで、人の声が聞こえてきて目を開けてみると、リリアとニア、メイアとサシャの四人が何やら話してた。


「ん?起こしてしまったか?」


「まぁ、ね…で、何の話をしてたん?」


「リリア殿からキースの事と毒についての説明と、後はメイアの御友人についての話だ。」


「ん~、んじゃ、まざるからちょっと説明してくんない?」


そう言ってベットに胡座をかいて伸びをすると、ニアの話を聞く。



毒に関してはやはり魔法での治療は無理らしいので、キースに一任する他無いらしい、メイアは参加出来るがサシャは今回の大会で、寺院の緊急医療班として常駐しないといけないらしく無理だと断られた。


後、大会に各国の寺院代表も来てるのでメイアが戦闘に出る事は、出来るだけ避けて欲しいと要望された。


まぁ、同宗派で戦えなんて無理だと判ってるから了承して、とりあえずリリアを中堅、メイアが副将にしとくか?


「人数も決まったし、ちょっと登録に行ってくるよ。」


「なら、わらわも一緒にどうじゃ?」


「な…なら、私も立候補するぞ!」


何、争ってんだよこの二人は?


溜息まじりに二人と行く事にして、メイアとサシャにはキースの方を確認してもらう事にした。


「もし必要な物があれば、私の権限で寺院からでも取り寄せてあげるわ。」


おぉ~、なんか意外な所で頼りなるなサシャは。

ちょっとだけ見直しておこう。


「後、よろしく!」と二人に頼んで登録所に三人で向かいホテルを出る。


両手に花と言うのはこんな状況なんだろうな~などと、ボンヤリ考えながら登録所の列に並ぶ。


左手はリリアの胸に挟まれ、右手はニアの胸に挟まている。


リリアはまた痴女状況らしく、布越しの柔らかい感触に理性を飛ばしかけ、ニアの健康的な張りのある弾力にも理性が飛びかける。


昔の俺なら…リア充爆発しろっ!と呪いをかける筈の今の姿って…。


ーーこれが、モテ期って奴デスカ~?


前が進むと自然と左右から押され、気付くと自分の番だった。


「参加者はココに名前書いて、後援がいるならそこの社名はコッチ。

後、団体戦か個人戦に丸をつけて、団体戦なら五人全員の名前をこの下に書いて。」


事務的な説明にを受け、文字が書けない俺の代わりにニアが代筆してくれる。


「ん~不備は無いみたいだから、はい、これ予選用の札。個人戦は明日、団体戦は明後日、会場で10時から予選だから来るように。

それと、遅刻とか欠席は予選落ちになるから時間厳守でね。はいお疲れさん!」


予選とかあるから、こんなに人数並んでたのか~。


振り返ると後ろにまだまだ並んでた列をが続いており、団体戦用の木札はニアに渡して個人戦のは自分の胸ポケットにしまう。


「明日は声援に行くぞ!」


「いやいや、予選だからいいよ。恥ずかしいし。」


「ほしたら、お弁当でも用意しときまひょか?」


どうしても来たがる二人を丁重に断りながらホテルに帰り、受付にいた執事メンに明日は個人戦の予選があるから丁度良い時間に声を掛けてもらう様に頼んで、今夜は早めに就寝した。

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