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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第34話

執事メンのモーニングコールならぬモーニングノックで気持ち良く朝を迎え、朝食を食べに下へ降りて行ってみると、キースは昨日言葉通り自部屋に篭ったままなのか、女性陣の4人しか食堂には来てなかった。



「……それで、ニア達はこの後どうするんだ?」


「私か?私なら大会用の武器受け取りと調整に行くつもりだが。」


「サシャとメイアは?」


「私は大会の準備が残ってますので、このまま会場に向かうつもりです。」


「私も一緒だけど、メイアと違って私は一旦宿に戻って大会用の衣装に着替えてから行くつもりよ。」


「んじゃ、リリアは?」


「わらわかぇ〜?わらわはもう一眠りしてから、ユージの勇姿を見に行くつもりおす。」


「ふ〜ん。」


朝からガッツリと朝食を済ませ、後の予定を聞きながら食後の紅茶を飲んでると、不意に後ろから近づいてきた執事メンに「そろそろお時間です」と声を掛けられた。


「えっ?もうそんな時間?んじゃ、皆ちょっと行ってくる。」


散歩に出掛けるみたいな軽い挨拶で3人と別れメイアと一緒に会場に向かう途中、厳つい顔したお兄さんやら見るからに全身鍛えてマス!的なマッチョなオッサン方々と何故か合流してしまい何故かジロリと一瞥された。


ーーん、なんだ?


どう見ても初対面の相手から睨まれ、訳も分からず内心小首を傾げながら会場入口につくと、メイアとの別れ際に「頑張って下さい」と黄色い声援を受け手を振り返した途中、周辺で登録手続き待ちをしていたモブ群からはリア充は死ね的な殺気に満ちた視線を背中一面に浴び謎が解けた。


しかし流石に多人数対一人では睨み返す勇気も無く、俯きながら理不尽な視線に耐え、受付を済ませると急いで会場へと足早に逃げ込んだ。



「え~それでは、これより予選を行います。番号を呼ばれた方はその場に、後の方は観客席にてお待ち下さい。」


拡声器なのか?メガホンに似た筒を手に喋る声のデカさについ、耳が痛くなるわ~!とツッコミそうになる。


ーーで、俺の番号は…と………。


受付で貰った札を見てみたが当然読める訳も無く辺りを見回し、比較的穏やかそうな熊髭マッチョメンに札を見せて書いてある番号を教えてもらう。


「んぁ〜?お前さんのは4219番だな。」


「あ、ありがとうございます。」


何故か話しながら胸筋をピクピクと動かす熊髭さんに若干引き攣った笑みを浮かべながら礼を言い、初戦では呼ばれ無かったので観客席の方へ他の人達について行く。


ーーふ〜ん。大体、100人前後を1グループにして独りが残るまで戦うのを繰り返して、人数を決めるのか。まぁ、モブキャラごときに負ける筈はないし…呼ばれる迄寝るか。


ーー4219番なんてかなり後だろう…し……?ん4219シ…ニイ・ク?……死に逝く?何この番号?不吉過ぎるっ。


ふと気付いた不吉な語呂合わせに木札をガン見しながら愕然となってる間に初戦が済んだ。


ーーえっ?いくら何でも早過ぎないか?


続いの二戦、三戦目…と疑問に思いながら会場を注視していると、試合に本気で挑む実力者と本戦前に怪我をしたくないといった輩の差がありありと見て取れ、勝敗も、1人では無く10人以下になったら止められてる事に気付いた。


理由は複数人が残ったグループが再度集められ試合をするかららしく、1人で勝ち抜いた6戦目の男は二階の方へと係りの神官に案内されて行くのが見えた。


ーーなるほどね。何回も闘いたく無かったらああすればいいのか。


予選の仕組みに納得しながら自分の出番を待ってたが、参加希望者が多いせいもあって俺の予選は午後からの二戦目となり、あまり力を見せるのもマズイと思って肉体強化で迫り来る攻撃をひたすら躱して逃げ回り、残りが少なくなった所で攻撃を避ける際に急所へ一発打ち込み偶然を装って勝った。


名付けて『漁夫の利作戦』!


その後も予選は続いたが、どうやら全部の予選が済むか敗北しない限りは会場の外に出られないらしい。


ーーはぁ〜、こんな事なら弁当でも持ってくるんだったなぁ。


大して動いてはいないが、最近は三食しっかり食べていた所為で空いてきた小腹を抑えつつ2階席でゴロリと横になっている間にかうたた寝していたらしく、司会の出場者を呼ぶ声に起こされた。


「え〜、只今の戦闘を持ちまして、全ての予選を終了とさせていただきます!なお、見事予選を通過された方々は明後日からの本戦に備え、充分な休息を取って下さい。本日は誠におめでとうございます。」


テンプレな口上に寝惚け眼を擦りつつ、起き上がり二階の観客席にぽつんぽつんと座る人影を数えてみる。


ーーあれ?34人しか居ないけど、36人が本戦じゃ無かったっけ?あれか?お約束的なスペシャルゲストとか来るのか?


そんな疑問がふと頭に浮かんだが、起きた途端に小さく鳴り出した腹を見下ろし、まぁいいか!と深くは考えずホテルへ帰り夕飯に舌鼓を打った。



「……でさ、俺も今朝になってから気付いたんだけど、予選連チャンした後に本戦連チャンって、酷くない?」


「なんだ今更?戦うのが好きなんだと思っていたぞ。」


「いやいや、俺、戦闘狂じゃないから。」


翌朝の朝食時、軽い愚痴吐きと同意を求めただけなのにニアは真顔で驚かれ、速攻でつっこんどいたが。


「まぁ、ユージには楽勝やおへんのか?」


「ユージなら大丈夫なんだと思ってました。」


リリアとメイアもニアと同意見だったらしくあっさりと言い返され俺、撃沈。


ーー皆、何か大きく勘違いしてないか?能力があっても、疲れるのは一緒なんだけど。


と説明した所で納得も信じてもらえそうに無いので、脱力しながらモソモソとパンを囓る。


その視線の先では部屋から出て来たはいいが、目の下に隈を色濃くつくったキースが、かなり眠そうに椅子の上で揺れながら、メイアに甲斐甲斐しくスープを飲ませてもらっていた。


ーー良いな~羨ましいな~、あんな優しい彼女か嫁さんなら欲しいよな~。


ジーっと羨望の眼差しで数秒二人を眺め、こんな状態じゃ予選に出てもらうのは無理かと3人の意見を求め口を開く。


「で、今日はキースも無理そうだし予選はどうする?本戦と同じで3人だけで戦うのか?」


「そうですね〜。私としてはキースに少しでも休んで貰いたいので、それで問題無いならお願いしてもいいですか?」


「それならユージも休むべきだな。よしっ!今日の予選は私1人でで終わらしても良いか?」


ニアさん…あなたドコの戦闘民族ですか?

何、その満面の笑みは?


「お、おぅ。じゃあ今日はそれで行くか。」


俺の言葉にニアは水を得た魚のよう左手に右拳を打ち付けニコニコしだし、リリアが黙ってコッチを見ながら、口元が笑ってるのがちょっと怖いけど……。


そのまま朝食が済むと今日は事前に頼んでおいた弁当を執事メンから受け取り会場に向かう。




「え~それでは、これより団体戦の予選を行います。番号を呼ばれた方はその場に、後の方は観客席にてお待ち下さい。」


昨日と同じ手続きを済ませ、拡声器の音量にリリア達が少し眉をしかめる。


「ふ〜ん、団体戦ってのは人数が少ないんだな。」


「ああ、最近は後援が付くのが当然になってしまっているから、興行的な意味合いが深くなってしまったのが理由だな。」


ーーなるほどね〜、1戦勝ち抜けば即本戦って事か。


ニアの説明に人が少ない理由も納得し後ろを振り向くと、観客席の一部を陣取ったキースがメイアに膝枕をしてもらう横でリリアは持ってきた酒瓶を煽る姿が見えた。


つまり予選は俺とニアだけが会場に降りた訳で当然、相手チームは馬鹿にされてると思って激怒!


本戦さながらの猛攻撃を繰り出してくるが、ニアが持ち前の身軽さで全て紙一重で躱し、お返しとばかりに手にした大剣の横殴りで次々と相手を吹っ飛ばしたり、倒したりしてくもんだから俺の出番は全くない。


相手チームに魔法士が居なかったのも敗因だとは思うけど、こんなにアッサリ終わらせてしまえるニアの実力に驚いた。


「ふふふっ。対人の戦いは久しかったので、ついつい楽しんでしまった。」


ーーいやいや、楽しんでって事は手を抜いた訳だろ?それでコレってやっぱ獣人はスゲーな。


その後は本戦が確定したので皆で上の観客席へと場所を移したが、そこで弁当を広げたメイアがキースに甲斐甲斐しく食べさせラブラブオーラと放つ異質な空間を観客席に作り出してしまった。


「え〜、只今の戦闘を持ちまして、団体の予選を終了とさせていただきます!なお、見事予選を通過された方々は明後日からの本戦に備え、充分な休息を取って下さい。本日は誠におめでとうございます。」


が、今日は人が少なかった事もあり、弁当を食べ終わる頃には個人戦の時と同じ口上を聞き流し、飯食った途端熟睡してしまったキースを背中に背負い、サッサとホテルに帰る。




そして個人戦当日ーー


「いよいよ本番か~。」


五人で朝食を食べながらも、少し緊張してたみたいで声に出して自己確認してしまう。


「今日こそは声援に行くぞ!」


「せやったら、わらわも弁当を持って行きますさかぃ、あんじょうおきばりやす。」


ニアとリリアは個人戦と関係無い筈なのに、何故か臨戦体制並みの気合いが入ってる。


「俺、もう一日寝てても大丈夫?」


「私もすいませんが、キースの傍に居るわね。」


ーーくっ、このリア充カプールめっ。


「いいよ!んじゃ行ってくるから、また後で。」


裏山けしからんキースにジト目をおくりながら残ったパンを無理矢理口に頬張り、今日は四人に見送られ会場へと向かう。




「皆様~、大変長らくお待たせ致しました!

今年も精鋭の集う闘技場へ、ようこそ~!」


「本日の主役達、各選手の登場で~す!!」


うぉおおぉ~~~!!!


地鳴りの様な歓声と、応援の楽器の物凄い騒音に包まれながら入場口から順番に入って行く。


「それでは各選手達の紹介で~す!」


予選の時と比べオッサンの血管切れるんじゃ無いか?とコッチが心配する程、異様にテンションが高い。


入って来た順番で横一列に並んでいく猛者達の中、場違いな程ヒョロリとした俺。


ーーうん、なんだろうね。この場違い感……。熱気と歓喜に圧倒されて、出て来てすいませんみたいな気持ちでいっぱいイッパイダヨ。


そんな肩身の狭い俺の心境など無視されつつ一人づつ、通り名か二つ名?みたいなのを呼ばれるたびに会場が沸き、前に出て行って舞台に上がりクジを引き自分の対戦相手を決めていく。


ーー通り名なんて、俺あったっけ?


なんて事を考えてると…。


「漆黒の闇よりただひたすらに力を望み、力に挑む彩龍殺しのユージ~~!!」


とか呼ばれて一段と大きな歓声が上がった。


ーー誰がつけた呼び方だよっ!


一応、心の中でツッコミながら一歩前に出ようとしたら二人隣に居た全身を俺と同じように黒装束で固めたお兄さんが先に前に出て、舞台の上でバク転を一回転決めて歓声に応えクジを引く。


ーーあれ?俺じゃ無いの?


「続いて、神の奇跡!幸運の使者、運の強者~!紅いユージ~!」


ーー…………へっ?ま、まさか、アカギユウジを読み間違えてんの?


呆けてると「ユージ~!は何処だ~!」とか観客席から怒号が飛び慌てて舞台に上がってクジを引く。


ーーなんだよ幸運の使者って?


自分の順番も済み、腑に落ちないまま悩んでいるといつの間にかクジも終わり、それぞれの対戦相手と試合の順番が発表され、俺は三戦目でタラバスとか言う奴が相手に決まっていた。


ーーえ?誰それ?


順番を読み上げる度に上がる歓声を他所に呆けたり、悩んでた所為で相手が全く判らなが、まぁ一回戦だし問題無いかと気楽に考え、順番を待つ間は試合の選手以外は退場していくのに気付きついて行く。


「此方が皆様の待機室になります。」


用意された待合室に入るなりウォーミングアップや武器の手入れを始める野郎共から、まるですえた剣道着か柔道着みたいな臭いが立ち込め、室内が漢臭さに侵食されていく。


ーーた、タスケテ~!


ただでさえ場違い感たっぷりなのに、こんな野獣達の中に俺みたいなヒョロ男が一人でいたら、無理矢理お尻合いにされてアッーーな状況になってしまう。


ーーまだお尻は処女だから激しいのは、らめぇ~~っ。


部屋に着くなり脳内に響く妄想アラームに従って、何事も無かった様に平静を装いながらも開けた扉をしめて、部屋に入らず会場まで続く通路に座り込んでお尻をガードする。


ーーふ~っ、あんな部屋に居たら危険が危ないレベルじゃね~っ。


ーーしっかし、彩龍殺しのユージって…。ハッ!ま、まさか偽者?俺の名声を傘に悪行三昧とかして請求だけ俺にくるの?なにそれこわい。


通路に居ても止まない妄想に確か…二戦目だったからどんな奴か確認しとくかと、腰を上げ観客席の方に向かって階段をのぼりきる前に会場から歓声が沸き上がってくるのが聞こえ、一戦目の勝者が決まったみたいだった。


観客席に着くと当然のごとく人でいっぱいだったが、なんとか人混みをかき分けながら下の手摺りまで降りていく途中で、二戦目が始まるらしく選手の呼出しが聞こえてきた。


ーーなんだよ偽者は女性ファン多いじゃね~か。黄色い歓声ばっかじゃん。

ーー…っと、そんな事よりどんな戦い方すんだ?


会場を見てみると(偽)の武器は小振りな剣を二本両手に構え、対する相手は大きなデスサイスを両手で持ちながらユラユラと刃先を揺らし間合いを測っていた。


「それでは、試合開始ですっ!」


司会の合図が会場の黄色い声援を更に煽り、偽者が自分の間合いへと一気に距離を詰めに走る。それを見越していたのだろう、相手も間合いを詰められない様にとサイスを斜めに振り下ろしたが、刃先が当たる寸前に偽者が急停止。振り下ろしに合わせて一気に懐に飛び込んだ。


ーーふ〜ん、なかなか動きはいいな。


決して速すぎるという速度では無かったが戦い慣れした動きに感心しながら様子見していたのだが、そこからの闘い方が少しおかしかった。


折角間合いを詰めたのに一撃離脱で距離を取り、片方の剣は相手の攻撃を受け流しにしか使っていないのだ。

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