第31話
ひと段落つき、結界の出来にも満足しながら全員で食堂に戻ると、今度出場する事になった大会について髭男爵が詳細を知っていると言うので是非にっ詳しい話をしてもらう事にした。
それによるとこの大会ってのは5年に一度開催される武術大会に倣い三国間の独自ルールで行なわれる予選会の様なものらしいのだが、かなりの人気がある為に毎年開催されてるそうだ。
それに加え近年は裕福な商会が自店の広告の為に人を雇い参加する事が増えたり、優勝金額が増加した事で賞金目当ての登録や、選手?に賭ける闇賭博も増えてるらしい。
んで、個人戦については本来は各国の騎士団への登竜門的な意味合いが強く試合後の勧誘も多々ある為に、かなりの実力者が集まってくるそうだ。
逆に団体戦はその賞金額につられたならず者が昔は多かったらしいが、此方の方が試合時間が長い為に商会がスポンサーとなり今では多種多様な実力者の集うメインイベントに様変わりしたらしい。
そんな大会に寺院がどう絡んでるのかってのが気になり髭男爵にそのまま聞くと救急要員と大会運営を寺院の長老院って所が一手に担ってると返された。
んー、ようは教国からの天下りって奴かな?
まあ、殺すのは嫌だし死ぬのもやだし…最低限の安全が保証出来なきゃ毎年なんてやるわけ無いか。
俺が自分なりの解釈でそう理解してるとキースは大会についてあまり知らなかったらしく、髭男爵の話す内容を聞くにつれ顔色が蒼白になっていってた。
流石にその姿を見てこれ以上欠員されたら堪らんと、元々キースに戦闘なんか望んで無いし大将って事でベンチを温めてもらうつもりだからと話すと、少し安心したように安堵の息をもらしてた。
「そういやハンソンさんは大会に参加しないの?」
「いえ、出場の申請は3ヶ月前に修了してますし、ユージン様ともう少し早くお会い出来ていたら、是が非でもお願いしていたのですが……。」
「はははっ。」
髭男爵の本気で残念がってる言葉に渇いた笑いを返し、次回ならと軽く口約束をすると、本当ですかとテーブルに身を乗り出し苦笑する。
その後は、大会で戦う順番をどうしようかって話になったがここ連日の修練の結果を試したいとニアが言い出したので先鋒決定。
キースはさっき言ったばかりだか大将って事で、頭数要員なメイアは副将。俺が次鋒に決定!
出来れば戦える奴が三人いればもうちょっと盛り上げれるかもしれないが、うちのメンバーでは俺とニアで頑張るしか無い。
あ、仮メンバーのサシャは中堅確定でキース達とベンチを温めてもらう予定。
そうこうしてるうちに夕方から用事があると言い出し帰り支度を始めた髭男爵に、キースとニアは俺の大切な仲間だからと改めて紹介しておき家の外まで見送った。
残った二人には一緒に夕飯を食べて泊まっていかないかと提案すると、キースは大喜びでニアは何だか挙動不審だ。
ホントに体調悪いのか?
心配になってニアに小声で聞いてみるとトイレでした。
……そんなの遠慮しなくていいのに。
トイレの場所を教えて、キースを食堂に待たせると客室の確認に行く。
やっぱ宿が個室なんだから別々の方が良いよな~。
「ミギャャャッ~~!」
そんな事を思いつつ左右対象にベットと机を置き直し、仕切りを創ってると、ニアの叫び声が家中に響いてきた。
何だ?
慌ててさっきのトイレに行くと、ニアが下半身剥き出しでお尻を突き出して床に突っ伏してる小刻みに震えてた。
「どしたん?何があったんだ?」
濡れて光る柔らかそうなお尻についついいってしまう視線を何とか理性で修正しながらニアに尋ねる。
「み…みず………。」
みみず?ミミズが出たのか?
パイプを直に創った時にどっかから紛れこんだのか?
「お尻にプシャーって、プシャーて何か押したら温かい水がかかってきた~~。」
あ、トイレの説明忘れてました………。
なおもお尻剥き出しで興奮気味のニアを顔を横に向けたままなだめながら説明し食堂に行くと、キースは調理してるメイド達を必死に話かけていた。
しかも俺とニアに気付いた途端、スィーと何事も無かったように席につくキース。
キース…マジで出禁にするぞ。
「これは、メイアに報告しておく必要があるな。」
その態度に飽きれ今後の付き合い方を考える俺の横で、ボソリと呟くニアの顔が怖くて見れない。
ご愁傷様…ナムナム〜。
思わず帰った後の姿に心の中で手を合わせ、気を取り直してメイド隊+二人で夕飯を済ますと、風呂の説明をしてキースを先に、ニアはメイド隊と一緒に入らせる事にした。
キースは普通に覗きそうだから俺が監視しとかないとな!
そんな俺の思いをよそにメイアが居ないせいなのか、家にきてから少しはっちゃけ過ぎてるキースを見てると同性としてちょっと悲しくなってきた。
「二人は少し狭いがこの部屋で寝てくれ。」
「いや、寝るだけだから充分だ。」
「俺は大会までに、薬草の調合を少しでも多く済ませときたいから、明かりが欲しんだが?」
「あぁ、それならリリィに持って来させるよ。」
ニア達が風呂に入っている間にメイアにチクるぞ?と脅し浮かれたキースを正気に戻し、部屋に案内して何か不満は無いか聞いて食堂で後片付けをしていたリリィに灯りを持って行くよう頼む。
ふ~、また明日から色々と面倒臭くなりそうだな〜。
そのまま風呂に向かい、服を脱ぎながら両手を上にノビをしてそんな事を考える。
そういや、風呂に入ってる最中はニアの興奮したはしゃぎ声が聞こえてきてたけど、女同士仲良くやってたのかな?
かけ湯をして湯舟に肩まで浸かり、両手で顔を洗うと深く溜息をつく。
後はサシャがうまく仲間になってくれれば一応、問題は無くなるんだけど…。
今回の団体戦で思い知らされたけど、利害を超えた仲間とか友達とかって作るのは難しいよな~。
商会にしても、資産が無ければ知り合う事も無かったかもしれない訳だし…。
ザガンや「三人」にしても、あの場で知り合ってなければ今は無いんだろうなぁ。
自分をこの世界で認めてもらうには、名を知られるのが一番なのだが、突出した知名度は同じだけ嫉みや恨みと言った負の感情も招く事は理解してるので、なかなかバランスが難しい。
世界が変わっても、心のコトワリは何処でも一緒って事か…。
顔半分湯舟に埋めながら悩む。
「そういやリリア呼ぶの忘れてたけど、いつ来てもいいように結界の許可だけしとけばいいか…。」
そう水の中で呟いた声はブクブクと泡になって消えた。
さて…と、風呂に入って身体もサッパリしたし気分転換にもなったから、ちょっと湯冷ましがてらマッタリするか。
脱衣所で頭を拭きながら、鼻歌混じりにパンツを探す。
パンツ♪パン~ツっと…。
見つけたパンツを引っつかんで履くとタオルを頭からどける。
ラフな寝巻に着替え、何か飲もうと食堂に行くとリズが一人で座っていた。
「ん?どしたん?リズも喉が渇いたのか?」
「いえ、ご主人様に折り入ってお話があり、お待ちしておりました。」
「ん?」
何処と無く神妙な面持ちのリズをその場に座らせ、冷たい飲み物を二人分用意して片方を渡すと向かいに座る。
「ニア様は非処女でしたがあの方が奥様になるのでしょうか?」
ブフッ!!!
あまりの想定外な質問に口に含んだ飲み物を吹く。
非処女って風呂場でなんの確認してるんだよ…まったく。
「前に言ったけど、暫く結婚は考えて無いから。」
「……冗談です。」
……リズちゃんの冗談怖いよっ。
「実は私の前のご主人様についてです。」
「リズを捨てた奴か?」
「はい。」
思い出すのも気が悪い話を敢えてするって事は、何かそれなりの理由があるんだろう。
「…で、ソイツが近くにでも来てるのか?」
「いえ、以前の護衛の方々が大会に出ると話していたのを思い出し、その中に名前があったのでご報告をと。」
そいつは好都合だな。ムカつく護衛共々しっかり制裁できる。
「で…リズはどうしたい?」
「おっしゃる意味が判りません。」
「それなら質問を変える。もしソイツと戦う事になればどうしてほしい?」
そい聞いた途端リズは表情を崩さず涙だけ流しながら、俺に一つだけ願いを伝えてきた。
ーーそれを黙ったまま了承した俺とリズが話を終え部屋に戻る途中で客室を覗いてみると、ニアはかなり着衣を乱しながら爆睡中で、キースはまだ何かを調合してるのか扉の隙間から明かりがもれていた。
ここは一つ、ニアを見習って熟睡するか。
自室に入りベッドに寝転んだ瞬間、何かが当たった。
ん?何だこれ?
プニプニ…ゴツゴツ?
暗い部屋の中で手探りで確認してみると、聞き覚えのある声が…。
「何を急いておる。逃げんゆえ、がっつかんでもよろしおすぇ。」
「っつか、何で居んの?誰もがっついて無いから!」
またこれかよと飛び起きてベッドの上で正座になってリリアにツッこむ。
まぁ、今回は風呂場で呼んだと言えば呼んだと自覚はしてたけど…水の中も有効範囲だったんですか~?
「くくくっ、下で何やら小難しい話をしておったようなので部屋で待たせてもろぅた。」
やっぱり裸体なリリアは、恥ずかしげもなく巨乳を強調するように俺にならって向かいあう形で座る。
うん、もうね…想定内だから驚かないよ。
そのままシーツで身体を隠させ、大会の事やリズの話を相談してみる。
「ふむ、人手が足りず………と、ユージの頼みやったらヤブサカには出来んのぅ。」
「いや、出てくれるだけで…ってかベンチに座ってるだけで良いんだけどね。」
リリアは少し考え、自分の用事の手伝いを一度してくれるならと、交渉は成立した。
「もちろん、今宵は前祝いにユージの身体をジックリと堪能させてくれはるんやろ?」
上目遣いに見ながら上唇を舐める舌が艶めかしい。
「いやいや、今日は客もい居るし無理!」
「なんと!これが世に聞く蛇の半殺しかぇ。」
「それを言うなら生殺し。あー、添い寝ぐらいはするから今日は本気で勘弁してください。」
「ふんっ!添い寝如きでわらわの機嫌が晴れるものかっ!」
プイと拗ねるリリアはそれでも差し出した腕枕に全裸のまま抱きつき、逆に俺が我慢出来そうに無くなり必死で羊を頭の中で数えながら夜は更けていった。




