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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第29話

リリアを見送り自室に戻って一息つくと、今度はリズがやってきた。



「ご主人様に質問がございます。」


「おぅ、昨日はありがとな。んで質問って何?」


「先程の方は夫人になられるのでしょうか?」


「ふじん?」


「奥様になられるのでしょうか?」


「………いやいや、ナイナイ!」


「初め見る方でしたが室内の事など知悉しておられた御様子でしたので、ご主人様と親密な仲なのだと思っておりました。」


あぁなるほど、だからメイド隊は緊張してたのか。

ってか、扉の向こうで息を殺して聞き耳たててるのバレて無いって思ってんのかね?


リズは相変わらずのポーカーフェイスなので、俺も気付かないフリをしながら話を続ける。



「それに、まだ結婚する気もそんな予定も無いし彼女の事はこれからも客人として扱ってくれ。」


「畏まりました。」


「あ、それと何を心配してるのか知らないが、他の子達にも捨てられるんじゃ無いのかとか被害妄想しないように俺の代わりに念押ししといてくれる?」


「畏まりました。」


最後のはちょっとした悪戯心からわざと小声で言い、リズが部屋を出て行くと同時に今度はこっちが聞き耳を立てると数人が下に降りて行く足音がした後、小さな歓声が聞こえてきた。


やっぱ、気にしてぎこちなかったのかー。

俺がしっかりしてりゃーこんな不安にさせる事も無かったし、今回は自省だな。


そう思いつつ頬をポリポリとかいて下に降りてみると、いつもの笑顔のメイド隊に戻っていたので、安心して出かける事を伝える。


ザガンかジルに早いとこ返事もらわないとこっちも段取りがあるし…ジルは何処に居るのかよく知らないし、とりあえずザガンから確認しに行ってみるか。




そんな事を考えたながら昼前の眩しい陽射しのなかを歩いて行くと、中央広場に差し掛かった所で偶然にもまた紙袋を抱えた獣人ちゃんに出会った。



「こんにちは!今日も休み?」


「あ、ユージさん、こんにちはっ♪今日は店の買い出しですよ♪」


獣人ちゃんとの熱い一夜は恋愛フラグだったらしく、自分の休みには熱烈な自室への招待をされ続けていたのだが、どこからか話を聞き付けたニアが何故か獣人ちゃんに話をつけ、以前のお客状態な関係に戻っていた。


…とは言え、たまに熱を帯びた視線を投げかけられたり会話も普段会う分にはかなり甘えてるように聞こえるのは、気のせいなんだろうか?



「……そっか、んじゃまた近々行くから頑張って!」


「うん♪待ってるから絶対に指名し・て・ね♪」


軽く挨拶程度の会話を交わし、今日は用事があるからとその場で別れるとザガンの店に向かう。



「こんちわ~、ザガン居る~?」


いつもの机で作業してると思いきや今日は留守だったらしいが、鍵がかかって無かったからすぐに戻ってくるだろうと暫く店内の商品をウロウロと見ていたら両手に荷物を抱えたザガンが帰って来た。



「おぉ、ユージ殿今日はまた何の用じゃ?」


「いや、例の件なんだけどね。」


ザガンは両手いっぱいだった紙袋を机に置いて一息つくとあれは無理じゃなと断ってきた。



「え?」


「いや、すまんがこっちで急ぎの用が入ってな。」


「あ~、なら仕方ないよな。」


「すまんな、納期が厳しい仕事でな。」


ザガンはしきりにすまなさそうに何度も謝ってくれたが、また次回何かあった時に頼むって事で話を切り上げキース達に相談しようと宿に向かう。


まぁ、本職持ちにお願いって時点でかなり無茶だよな。

後はジル頼みだけど、何とかキース達が連れ出してくれてる事を願うばかりだな……。


流石に人数不足で残念ながら依頼は受けれません…なんてロワーズさんにも言えないしなー。


そんな事を考えながら歩いていると宿の前でキースとばったり出会いザガンの件を説明すると、ジルも無理だったのでニアが今商会に人数不足だった時はどうなるのかを確認に行ってくれてるとの事で、二人して食堂でニアの帰りを待つ事にした。



「………と、言う事だ。」


ニアが聞いてきた回答だと人数不足の場合でも商会が人員を用意するので問題は無いらしく、報酬も約束通りと言う事だったらしい。


しかし、俺の事を今以上に色々と勘繰られたり調べて報告されるリスクを考えると、やはりここは秘密を守れる仲間だけでの参加が望ましい。


なんせ彩龍狩りに続いてバインド殺しの噂もチラホラ出始めている分、余計な詮索をされてこれ以上の厄介事を受けたく無いって本音と、今後の付き合いも無さそうな商会とこれ以上関わりたくないってのが根底にあるからだ。



それと言うのも俺のギルドランクポイントが先日のバインド討伐でAランクオーバーになってしまい、最低ランクなのに専属の担当受付がつくと言う異例の事態になってしまっているのが原因だったりする。


まぁ、担当になってくれた登録時のおっちゃんが超極秘情報扱いにしてくれたお陰で俺の討伐記録なんかは誤魔化してもらえてるんだが、人の口に戸が建てれる訳もなく噂だけがひそやかに流れているのが現状。


勿論事実を知るのはギルドのおっちゃんとキース達の四人を除けば家のメイド隊と髭男爵のみだが、俺に対して何処ぞの騎士団から引き抜きがあったやら、冒険者に身を隠した歴戦の猛者だとか、とんでもない噂話が飛び交ってるのも悩みの種だったりする。



「んー、とりあえず頭数合わせってだけならメイド隊の誰かを一人入れるのとかは違反なのか?」


「いや、奴隷自体は違反では無いが……良いのか?」


一瞬何がと思ったが、すぐにニアの言わんとする事がわかり速攻で前言撤回する。


んー、でも他に仲間に出来そうな奴って………。


腕を組み首を傾げながら悩んでいると、不意にサシャの顔が浮かんだ。



「そういやメイアの友人でサシャって神官がいるんだが、頼んでみたら無理かな?」


俺の提案に初めて聞く名前だったらしく、二人は黙ったまま考えこんでいる。


結局、妙案も浮かばずこれといった人選も出てこないのでギリギリまで捜して、無理だった場合はメイアを通してサシャに頼んでみるって事で話をまとめると今度はニアが今大会について簡単な説明を聞いて来たと話しだした。



まず大会には団体戦と個人戦があって、団体戦は17チームが出場、個人戦は36人が戦っていくらしい。

会場となる場所は北のマッケラス大国との国境にある都市でアブェリと言う所が毎回開催地になっているそうだ。


俺とキースは初めてだが、ニアは以前にジルとの仕事で何度かアブェリまで行った事があるそうなので、道案内に困る事はなさそうだった。



「じゃあ明日には準備の確認で、昼過ぎに一旦ここに集まるって事で!」


「なら私は馬車の手配をしてくるとしよう。」


「俺は薬草の補充をしにもう一度市場をまわってくる。」


「じゃあそれで頼む!俺も今からロワーズ商会に早めに出発するって事で話をしてくるし。」


まだ夕飯には少し時間があったが、それで話がまとまるとそれぞれに宿を出て歩き出す。



う~わ~、今日もかよっ!


今日も今日とて大盛況な店の前で人集りを前に溜息をつき何とか肉圧に耐え店内に入ると、代表のヤンにいきさつを説明して追加要員を断った。



「判りました、では代わりにこれをお使い下さい。」


と必要経費の前金として20シリングを手渡され、足りない分はいつでも言ってきて下さいと付け足され笑顔で送られながら部屋を出ると、お帰りはこちらからどうぞと反対側にある社員用の裏口に案内されそこから店を出る。


そのまま市場に行ってキース達を探すと丁度露店に並べられた薬草?の吟味をしていたのを見つけたので、さっきの20シリングをまるまる渡す。


で、一通りの用事を済ませ家に帰ると、夕飯を食べながらメイド隊にまた出張がある事を伝えた。



「悪いけど留守をまた頼むよ。」


「それは構いませんが昼間警ら隊が御見えになり、この辺りに不審者が徘徊しているようなので注意するようにと言われました。」


「え?んじゃ、また護衛を頼んだ方が良いかな?」


一瞬、メイド達が護衛と聞いて身をすくませる。


「何か…問題ある?」


「問題はありません。私達は奴隷ですから。」


なんかさっきの仕種とリズの言い方がひっかかる。


「じゃあ、質問を変えてもう一度聞くが、前回の護衛はどうだった?何かに問題はあったか?」


「問題と言う程のモノでは御座いませんが、前回の方はターニャを襲おうとして、処女だと判ると途中で行為を止めていました。」


「ブッ……。」


「後、他の者にも似たような出来事が…。」


一瞬何を言われたたのか理解出来ず、吹き出してしまったが続くリズの言葉に全員の顔を見渡す。


ちょっと待て………処女だから止めたって事は、もしそうじゃ無かったら襲われてたかもしれないって事だよな?


なんでそんな重要な事を誰も言ってこないんだよ?


ってか、そんな奴らに一ヶ月近く家を任せて安心しきってた俺って……。


俯いたり視線を逸らしたり、年少組のリリィですら唇を噛み締め何かに耐える姿を見てふつふつと怒りが湧き上がるが、そんな大事な事に気付けなかった自分にも腹が立ちテーブルの下で拳を硬く握りしめる。



「……わかった。予定は変更で護衛の件は無しにする!ってか金輪際護衛が要らないように明日は家を改造する!それとリズは朝一で悪いけど商会に行ってジョージアを呼んで来てくれ。」


「畏まりました。」


「それと全員に改めて言っておく、もし何かあればされた事も含めて隠さず全て報告する事!」


「「「「「「「はい!ご主人様。」」」」」」」


「君達がどう思ってるかは判らないが、俺は君達の事を大切な家族として扱ってるつもりだ!だから遠慮なんてするなっ!」


「「「「「「「はい。」」」」」」」


つい語尾が強くなってしまったが、不思議そうな顔で返事をするメイド達を見てると胸が苦しくなる……。


だって、まだ当分は俺の一人相撲で家族として慣れ親しんでもらうには、もう少し時間がかかりそうだと彼女達の表情から実感させられたからーー。

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