第28話
バインドの一件の後、気付くとあっ……と言う間に三日間が過ぎていた。
と言うのもニアの故郷で聞いた話が気になり、これ以上生態系を壊さないようにと狩りは自重してたらランクが低過ぎて仕事が無かったでござる。
ギルドのおっちゃんに聞いたら昇格試験は年二回しかやって無いそうで、強制的に受ける予定だったやつは寺院への護衛中に終了。
なので、後半年は最低ランクのままだったりする。トホホ
んで一日期限の仕事(猫探しやら、庭の草むしりやら)を地道にこなし、『三人』と今夜も宿で酒を飲む約束だけはきっちりしてたりする。
今日も元気だ!
仕事の後の酒は旨いぞ~!
「ユージ!こっちだ!」
ギルドから一直線に宿に行き、食堂に入るとカウンターでニアがジョッキを振り上げ席を教えてくれる。
あれからニアも村へかなりの金額を仕送りしたらしいが、それでもまだ余裕が残ったらしく、今は一日を剣術を磨く時間にかなり割いて一人で修練してるみたいだった。
まぁ、修練に励んでる理由ってのが二つあるんだけど、一つはこないだのバインド戦で自分の力の無さを実感したからとか言われたけど、ぶっちゃけアレは個人でどうこう出来る奴じゃ無いと思う。
ただ、あん時は俺が倒しちゃったもんでニアに火を着けてしまった本人としては、応援するしか無かった。
んでもう一つの理由は大会。
ロワーズから依頼されてたアレが団体戦だったもんで急遽人集めに奔りニア・キース・メイアの『三人』+俺で登録したんだけど、まだ一人足りないからザガンかジルにお願いして返事待ちな状態。
で、毎夜宿に集ってはニアとキースから大会の準備を聞いたり、今日の仕事の話をお互いしたりと、意味は無くとも意義のある時間を過ごしてた。
だって俺、この世界じゃよそ者じゃん?
結局何かトラブルがあれば真っ先に怪しまれる生贄みたいなもんだし、そんな時に弁護や援護をしてくれる仲間は何よりも大切だもんね。
大きな力には大きな責任がある!とか誰か言ってた気がするけど、責任まで大きくしなくても小出しで良いんじゃね?
はっちゃけ過ぎて後で痛い目みるってわかってるなら、ひっそり生活した方が良いにきまってるし。
……てなわけで、ロワーズ商会からの依頼日まではこのゆる~~い生活を満喫する事に決めて、酒を飲んだら自宅に帰ってメイド隊との親睦が深まるように気配りをする日々を続けてた。
「……そう言えば、メイアが見当たら無いけど?」
「んー実は……ユージが出張に行く前の話なんだがな、何でも寺院に謎の神官が現れて集団治療魔法をしたらしく、それに立ち会ったメイアと友人殿が寺院本部へ説明の為に呼び出されてるんだ。」
「あぁ、それなら私も噂で聞いた事があるぞ!名前も知られて無い神官だった為に、寺院の威信にかけて捜索中だという事らしいな。」
「え?そうなん?寺院本部に出張とかって大会には間に合うのか?」
「本部から大会のある会場までは馬車でも4、5時間ぐらいの距離だから問題は無い筈だ。」
「しかし、そんな高等魔法を使う謎の神官となると…かなりの上級司祭か司教なのだろうが正体不明とは…怪しいな。」
キースの台詞にピクリと反応した俺の顔色を伺いながらニアが聞いてくる。
「どうした、何か謎の神官とやらに何か心当たりでもあるのか?」
ポーカーフェースを出来るだけ崩さず「ナンニモナイヨ~」と答えて話を続けてもらう。
……二人の話だと、高等法術が使える身で身元がはっきりしないってのが寺院にとっては一番の問題らしい。
同じ教義の寺院系列ならすぐにでも登録させる必要があるだとか、新参宗教の代表だったりカルト教の人間だった場合は最悪…宗教紛争に発展するって可能性もあるから、そうならない為にもと現場に居たメイア達が参考人として呼び出しをくらったらしい。
う~ん、何でも安請け合いして後で大事になる見本みたいな出来事を既にやっちゃテタネ~~。
もしもの時はメイアを助けるのに助力は惜しまないと、キースの手を取り熱い友情ごっこで事の真相はごまかす。
ニアはこっちをジト目で見ながらジョッキを煽っているが無言なので気付かないフリをしてスルー。
下手に藪を突ついて蛇を出したく無いしね…。
「じゃ、じゃあそろそろ悪酔いする前に家に帰るわ。」
キースへの罪悪感とこれ以上ここに居たらニアに尋問されそうな雰囲気を感じ取り、ソソクサと残ったジョッキの中身を一気に流し込み会計を済ませると宿を出る。
最後の一気飲みが効いたのか帰り道の途中で足元がフワフワしだし視界が歪んでくる。
こんな事なら宿を出た時に家まで送ろうとかって追いかけて来てくれたニアの言葉に甘えてれば良かったYO~。
などと後悔しても時既に遅く、軽い酔っ払いだったのが歩く距離に比例して今は軽い泥酔者だ。
このままでは重度の泥酔者として丁寧に靴を脱ぎ揃えてからゴミの中に埋もれて寝込み、明け方には痴態を晒しながら子供達に棒とかで突かれてしまう。
まっすぐ帰ってるつもりが千鳥足のせいで途中なぜかロンドの店の前を通り、誰かに声をかけられたが今日は帰るから~と断って歩き続ける。
…だって感覚も鈍ってて何か勿体ない気がするし、お姉さんも泥酔相手はしんどいだろうし…って何故かそこは冷静に分析出来てる自分にビックリ!
うう゛~ぎぼち悪い。
ちょっとヤバいかも…
このまま歩くより、ちょっと路地裏で吐いて、一旦落ち着こうとして壁に手をつくがそのままズルズルと倒れこんでしまう。
……あれ?なんで地面が顔の横にあんだ?
ヒンヤリとした石畳のお陰で少し頭が働き、壁つたいに暗い路地裏に入る寸前誰かが見えた気がする。
「り、りり…ぁ………?」
フードを深くかぶった姿に見えたそれは、本当に見えたのか男性か女性かもわからない。
第一彼女がこんな場所に居るわけ無いかと自嘲しつつ、意識がおぼろげに遠退いていく。
あ~、背中と足元の石畳がほてった体に冷たくて気持ちいい~。
えへへっ、ちょっと横になったから楽かなぁ~。
石畳ちべたいね~
ちょっぉ~と、ほお擦りしてもいぃかなぁ~。
う~~ん……んん?
寝返りをうつと何かに当たったので薄目を開ける。
ぼやける視界に入って来たのは漆黒と薄い肌色……。
………はだ色?
意識がだんだんはっきりすると、黒髪の女性が俺の横で背中を向けて寝ている事に気付き思わず飛び起きながら辺りを見回すが、勢いがありすぎて女性にかかっていたシーツもめくれ裸体がさらけ出されて慌ててかけ直す。
「ん…っ、起きはったん?ユージ。」
目を擦りながら上半身を起こしてきたのはリリア?
明るい場所で見たのは初めてだったがセミロングの黒髪、長い睫毛に病的なまでに白い肌、腕が挟めそうな巨乳の先に薄桃色の先端突起がツンと上を向いてすましている。
まてまてぇ~い、俺っ!
えっと、まずは状況確認だ!此処は俺の部屋でここはベット。んでもって横には全裸なリリア…ほんのりと匂いそうな体と柔らかそうなおっぱいが美味しそう…って、ちが~~う!
とりあえず俺が着てたシャツを慌てて渡して着てもらう。
そうしないと無いと目のやり場が決まる!というか、困る。
「何を慌てはるん?わらわとユージの中やおまへんか?」
え?俺やっちゃった?記憶無いけど、本能で動いちゃった?
流石に「エッチしちゃった?」とはきけず、汗がダラダラ背中を流れていく。
俺も全裸だったので慌てて床に落ちてた下着とズボンを履くとその場で深呼吸。
吸って~吐いて~
吸って~は、はいて…
「昨夜はなかなか良かったどすぇ。」
そう言いながら背中にそっと抱きついて来たので柔らかい果実の先端突起が当たる感覚がダイレクトッ!
ちょっとマテマテ、慌てて振り向いた先には俺の着てたシャツをパンパンにして先端突起までハッキリわかるリリアの胸のドアップ。
くっ、着せた事で逆にエロ度が増してるとか、なんてけしからんおっぱいだ。
こ、ここは冷静に対象しないと…。
とりあえずリリアには大きめのシャツとスカートと下着を俺用の着替えから創り直し手渡して着替えさせる。
何故か下着は頑なに拒否されたが、そんな事もあろうかとスカートの裾を長めにしておいた俺よくやった!
とりあえずこれで落ち着いて話が聞けるので、リリアにどうして此処に居るのか説明してもらうと、昨夜俺に呼ばれたので来てみたら石畳の上でゲロまみれで寝ていたので、自宅に運びこみメイド隊と一緒に体を洗って寝室に運び添い寝していたらしい。
ゲロまみれって、最悪やんおれ…
「なかなか呼ばんと思えば、あんな場所で寝るとは…わらわに一言いえば、肉布団で優しく抱擁してやるものを。」
ぬぅ、肉布団とはステキな響きだ。って違う、呼んだって何?
「え?俺が呼んだ?」
「名前を呼びはったやおまへんか。」
う~ん、そうは言われても泥酔してたから記憶が曖昧だ。
「ま、まぁ、でも介抱してくれた事は素直に感謝するから一緒に朝食でも食べてかないか?」
話題を逸らして一階に行くと、俺達を見た途端にメイド隊の動きが何故かぎこちなくなる。
???
「えと、食事をこの人の分も一緒に頼む。」
その反応に小首を傾げながら追加の料理を頼むと、いつめの三人が無言のままテキパキと料理を用意してならべ深々と会釈して何故か部屋を出ていく。
「家の中は色々といじりはったみたいどすなぁ?魔力の形跡をちらほら感じますわ。」
リリアは料理には手も付けずキョロキョロと辺りを見回している。
「わかるのか?」
「当たり前どす。」
ふ~ん、魔力ってそんな判りやすいものなのか…。
自分でも「探知」で判るんだから当たり前かと軽く納得しながら料理に手を付け、気になったのでまた聞いてみる。
「そういえばリリアって、口調が何か毎回変わって無いか?」
「まだ慣れてないからのぉ。」
何に慣れて無いんだ?会話か?
そんなこんなでポツポツと雑談をしながら俺一人で朝食を済ますと、リリアは朝が苦手だからと早々に洗濯の済んだ自分のローブを羽織り、帰り際にもっと名前を呼べと念押しされ頬にキスして出て行った。
見送りに外へ出るとすっかり太陽は上がりきってて、リリアの漆黒のローブが影の様に見えた。
ふ~やれやれ……




