恐れている……?
佳に謝られること毎時間。放課後になり和室に揃った私と永海先輩と佳の三人。
先輩は隅に寄って様子見、私は立っていて佳は正座をしている。
ちゃぶ台の上には佳のテスト。全て欠点。
「佳」
「ごめんなさい‼」
見事に綺麗な土下座を披露してくれた佳だけど、いくら綺麗な土下座をされても結果は変わらない。
受けたテストの半分以上が欠点……どういうことだ‼
私が教えた段階じゃあ欠点なんて取れるはずないのに! 教えて数日で忘れたからとしか考えられない!
「忘れたの……? 教えたそばから」
どうしても声が震えてしまう。これは怒りを抑えているんじゃなくて、恐れから。恐れている……? いや当然か。
「忘れちゃったかな~……へへっ」
今の佳からは陽は全く無い。すっごく申し訳なさそうな顔をしている。
「そっか……」
「なっちゃん怖いよぉ……」
「教えたから、ギリギリ欠点って感じだよね……うん。私のやったことは無駄じゃなかったんだ。うん、でも……欠点」
「ごめん……」
「ねえ、佳」
「……はい」
「勉強って、大事だよ」
「はい……」
教えたそばから忘れるんだから教え方から考えないといけないけど、それは私が考えるとして、佳には……別にいいや。うん、過ぎたことはしょうがない。
「これで佳は夏休みの補習が多いけど、補習の日は決まってるの?」
ひと段落したことで、ようやく先輩が口を開く。
「えーっと……」
「終業式終わって次の週。二十八日から三十一までの七月いっぱい。それから八月四日からですね」
佳は思い出すのに時間がかかりそうだから時間稼ぎとして、私の知っていることを話しておく。
補習なんて縁が無いからこれ以上は分からない。ということで、続きは佳にお願いしよう。
私と先輩、二人分の視線を受けた佳は、記憶の奥底から掘り返しているのかと思ってしまう程時間をかけて、ようやく口を開いた。
「しょーテストのごーかくだったよーな……」
「なんで自信無さげ?」
「うっ……」
ちゃんと話を聞かないから欠点を取るんじゃないのだろうか。
とりあえず補習期間が分からないとアルバイトの期間を決められない。いや待てよ……こういうのは生徒会長詳しそうだ。
「よし、佳。生徒会長に聞こう」
「ん。それがいいと思う」
私達が働かせてもらうのは生徒会長の実家だし、あの人自身は補習とは縁が無いだろうけど、詳しいだろうし。
「うん、聞ーてみる」
顔を上げた佳は力強く頷いた。
力強く頷くだけじゃなくて、すぐに聞きに行ってほしい。
「…………?」
なにも言わない私と先輩を見て、気づいた佳は慌てて立ち上がる。
「聞ーてくる!」
バタバタと和室を出て行った佳を見送り、私と先輩の二人だけになった。
保健室の扉が開いて閉まる。佳が出て行ったのが分かった。
残された私と先輩は、無言でちゃぶ台の上に置かれている佳のテストを見る。
「鳴月は何点にしたの?」
「六十点です。先輩は百ですか?」
「ん。百点にした。鳴月は目立つから六十点に?」
「そうですそうです。下手にやりすぎると教室にすら入れなくなりそうなんで」
先輩的には周りとの差を見せたほうが楽に学校生活を送れるんだろう。
「大変だよね。私達、普通じゃないから」
「ですよねー。世の中広いと言っても、私達のコレは違いますしね」
なんとなく、しんみりとした空気に変わる。今ここでしんみりしても仕方ないし、話題を変えるために佳のテストを綺麗に並べた。
問題は補習とはなにをするのかだ。これは本当に知らない。先輩もよく知らないと言っているし、だから生徒会長に聞きに行かせたんだけど、できるのならすぐに終わらせたい。
「とりあえず、夏休みまでの短い間だけだけど、部活を勉強会にしてみる?」
「それがよさそうですよね……私は力になれるか分かりませんけど」
佳の陽がある限り、私が直接指導できるのは電話越しでのみ。部活の時間でするのなら、全部先輩に任せてしまうことになる。
「鳴月には家で復習してもらうのを任せたい」
「それなら……。でも佳にそこまでの集中力があるのかどうか」
「それはやってみないと分からない。けど、これからのことを考えると、やっておいた方がいいと思う」
「そうですね」
それから私と先輩は、佳が戻って来るまで佳の成績を上げる方法を考えるのだった。




