先生はコンビニ弁当
翌日の昼休み、私と先輩は保健室で昼食を摂りながら、佳の帰りを待っていた。今日は佳に特別任務をお願いしている。
生徒会長との昼食。どうせ一人寂しく昼食を摂ってるんだろうし、まあサプライズの方が喜ぶと思うし。
「生徒会長の家ってお店やってるんですね」
「ん。私も初耳」
「でも私達三人も必要ですかね? お願いしといてなんですけど」
「佳は必須だがら、するにしても二人になるかもしれない。でもそれだと鳴月は困る」
「そうなんですよね」
自営業で人手が必要な仕事は限られているはず。売り場面積とか、まあその他諸々の関係で雇う余裕があるのかとか……。
それもとりあえず、なにをしているのかにもよるけど。
「とりあえず佳を待ちましょうか。話するのお弁当食べてからだと思いますし」
とりあえず落ち着いて、先輩と昼食を摂ることにした。丁度暇していた先生も一緒に。
「接客業ならぁ、なっちゃんと永海さんなら大丈夫だと思うんだけどぉ」
コンビニのお弁当を食べながら、不知火先生は私と先輩の顔を交互に見る。
「超絶美人なんで、そりゃあ売上伸びますよ。でもナンパも増えて治安は悪化するかもしれませんし、客層によってはセクハラとか凄そうですね」
「と鳴月は言ってますけど、大半が私達の美しさに恐れをなして声をかけられません」
「なので佳が危ないです」
「う〜ん、分からない世界すぎるぅ……けど佳ちゃんはそうかもぉ」
「佳の安全が最優先ですね」
あとは……アイツが接触してきたらかなり迷惑。
「佳ちゃん愛されてるねぇ」
ここにはいない佳に先生は嬉しそうに微笑む。
そして昼食を摂り終え、三人でババ抜きをしていると佳が帰って来た。
「おっけーだってー!」
「「…………」」
「お帰りぃ、佳ちゃん」
「ただいまー。あれ? なっちゃんと先輩もどーしたの?」
帰って来て開口一番おっけーとは、話が早すぎてかなり飛ばしている気がする。
「そもそも生徒会長の実家はなに屋さんなの?」
まずはそこからだ。先輩もうんうん頷いているし、佳にも伝わったはず。
「えっとねー、本屋さんだってー!」
「ほう、本屋さん」
「なるほど」
「さいてー賃金しか出せないって言ってたけど、けっこー大きいみたいで三人でもだいじょーぶだってー」
「「おおー……‼」」
こんな都合の良い条件の働き先があったなんて。
佳には頭が上がらない、これは本当に。
「鳴月、生徒会長へお礼をしに行こう」
「そうですね、じゃあちょっと私と先輩で生徒会長に会ってきますね」
△
佳を置いて、私と先輩は早速生徒会室へとやってきた。別に常日頃活動している訳じゃないけど、生徒会長は友達がいないから常日頃からここにいるらしい。
考えていたらちょっと悲しくなってきたけど、とりあえずノックをして扉を開いた。
「失礼しまーす」
「あっ……」
椅子から腰を浮かした状態で、悲しそうな顔をする生徒会長こと橘氷奈先輩。
「すいません、佳じゃなくて……」
「お礼を言いにきたの」
「そうですか、ご丁寧にありがとうございます」
目を合わせてくれないまま、ぺこりと頭を下げた生徒会長。そこまで悲しまなくても……。
でもとりあえずお礼と、詳しい話を聞かせてもらいたい。
「ん。本当に助かる、詳しい話を聞いてもいい?」
「そうですね、畑中さんにも伝えたことをそのままお伝えしますね」
そうして、生徒会長は私達のアルバイトの説明をしてくれた。
期限は夏休みの五日間、三人全員でのアルバイト、最低賃金、一時間休憩の朝九時から十八時。
時給八百十九円、それが七時間で、五千七百三十三円が五日間で二万八千六百六十五円……二万八千六百六十五円⁉ それが三人分合わせたら八万五千九百九十五円⁉
「せ、せ、せ、先輩……大金ですよ……⁉」
「ん。炬燵買っても余裕が出るね」
気が付けば私は、生徒会長に深く深く頭を下げていた。
「ここからは畑中さんには伝えていないのですが……」
なおも頭を下げ続ける私をそのままにして、生徒会長は告げた。
「本来は三人同時に雇うことはしません、大型ではない書店にそこまでの余裕はありませんから。それでも雇うのは、永海先輩、高橋さん、お二人に期待しているからです」
そう言われると、頭を上げるしかない。
生徒会長が私と先輩の目を見て、頷く。
「超絶美人の力、期待しています」




